第54話  幻水広告代理店2』

「シュウさん、助けてくださいよっ」
 彫刻家のジュドが、軍師の部屋に助けを求めに来た。その後を、メイザース、マクシミリアン、リドリーの三人が追って来た。
「わしの銅像を建てたまえ。著名な魔法使いの銅像を建てれば、君の名前も何世紀も残ることだろう」
「名騎士マクシミリアンの銅像を建てんで、どいつの像を建てるというのじゃ!」
「コボルトの歴史を変えたわたしの像を建てるべきじゃないか?」
 シュウは何事かと椅子から立ち上がった。
「シュウさん、4階の銅像は、お金を出せば誰の像にでもできるって、本当ですか? みなさん、その噂を聞いて、おれに像を作れって迫るんですよー」
「・・・・・・。」
 シュウはあいた口が塞がらなかった。
「シュウ殿のような名軍師ならわかるじゃろう、このマクシミリアンの優秀さ!」
「いや、それなら、わたしの政治的手腕が」
「時代を超えた、わしの名声を形にするのだ!」
 黙って聞いていたシュウのこめかみがぴくぴくと動いた。ピキッと音がした。
「だまれーっ!!」

『まったく! じじいどもは、銅像になるのがそんなに嬉しいかっ! まるで極東の小国の政治家のようだっ!』
 三人を部屋に残したまま、シュウはフィッチャーの部屋へ急いだ。もとはと言えば、あいつが悪い。城の顔とも言える場所を、広告として利用するなんて、もっての他だ。しかも、コナミのプライドもソニーの体面も捨てて、『ピカチュウ』の像など!
「フィッチャーはどうした!」
「あ、奴なら4階に行きましたよ」と、同室のジェスが答えた。シュウはその剣幕のまま、4階ベランダの扉を開けた。
「いらっしゃい。入場料、500ポッチいただきま・・・あ、シュウさんじゃないですか。 シュウさんはもちろん無料でいいですよ」
 ベランダに作られたゲートに入り、フィッチャーは入場券をもぎる仕事をしていた。見ると、ベランダには、ユズやトウタ、いや、どこから呼んで来たのか見たこともない大勢の子供たちがわいわいと集っている。子供たちは、ピカチュウの銅像と写真を撮ったり(しかも『ポラロイド1枚300ポッチ』という看板が出ている)、サクラ大戦キャラのプリクラに入ったり、ぷよぷよのすけとうだらのぬいぐるみと一緒に踊ったり、楽しそうに遊んでいた。ヨッシーとドンキーコングのぬいぐるみもいた。
「どうです、これで収入アップですよ」
 フィッチャーは、札を数えながら、にやっとシュウに笑いかけた。
 ピキピキピキッ・・・。シュウのこめかみは、さらに大きな音をたてた。
「フィッチャーっ!!!」

「シュウにいさん、機嫌をなおしてよ。フィッチャーだって、よかれと思ってしたことなんだから」
 アップルの部屋で、シュウはまだ仏頂面で腕組みしていた。プレイランドを閉園したフィッチャーは、しゅんとして小さくなって座っていた。
「シュウのだんなー、アップルさんの言うとおりっすよ。堪忍してください」
「では、あいつらを何とかしてもらおうか。わたしの部屋で、もめているじじい達三人を」
「えーっ!」
 フィッチャーは頭をかかえた。子供達を説得して帰すのも大変だったが、あの頑固じじい達は、さらに難物だ。
「シュウのだんなー、そんな無理言わないでくださいよー」
「うるさいっ。わたしだって、部屋に戻れず困っているんだぞ!」
「ねえ、とりあえず、ジュドさんに三人の銅像を作ってもらっちゃえば? 銅像にさえなれば、三人とも満足するんでしょ? 4階のMVPの場所に置かなければいいのよ。どこか、邪魔にならない場所にでも並べておけばいいんだわ。裏の畑とか墓地とか」
「墓地・・・」

 こうして、三人の銅像が製作された。除幕式も行われ、三人とも大変満足そうであった。しかし、それがどこに飾られているか、彼らは知らない。

 おわり

私の携帯ストラップには、実はぷよぷよのゾウ大魔王も下がっている(キーホルダーを自分で改造)。
告白すると、数回コンパイルの通販を使ったことがある(笑)。コンパイル倒産の頃、ゾウ大魔王の鼻が折れた。まじで。


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