第56話  墓を暴く者』


ララ・クロフトは、両側が切り立った崖にはさまれ、途方に暮れていた。この先を昇り切るには、サイドジャンプの繰り返しで進まねばならない。おまけに、途中で壁は切れているので、そこに足をつかないようにしなくては。
「はっ」Alt + → 右へ横っ飛びジャンプ!
「はっ」Alt + ↑ 前へジャンプ!    
「はっ」Alt + ← 左へ横っ飛びジャンプ!
 しまった、足が(プレイヤーの手が)滑った。
「きゃーーーーーーっ」 奈落へ落下。グキッ!
 もうこの場面で、何十人のララが死んだであろう。プレイヤーは思った。ああ、これが『幻想水滸伝2』のニンジャのサスケやモンドなら、簡単に横っとびするのだろうが。

 ララ・クロフトは、両側が切り立った崖にはさまれ、途方に暮れていた。この先を昇り切るには、サイドジャンプの繰り返しで進まねばならない。
「・・・? あれは何?」
 「はっ」「はっ」「はっ」・・・小柄な日本人の少年が、青いマフラーをなびかせて、横っとびで進んで行く。少年は、コーラならぬララの前を横切って、そのままどこかへ消えてしまった。
『い、いったい今のは・・・?』
「いやあ。若い方はご存じないだろうが」
 声にララが振り向くと、モンドが木の枝に足を引っかけ、宙吊りのポーズで腕を組んでいた。
「・・・『コーラの前を横切るやつ』・・・」
 ララは、ボソリと、昔の炭酸飲料のCMのキャッチコピーをつぶやいた。モンドは「うむ」とうなずく。
「では、あの少年の名は『サスケ』・・・」
「よくご存じで」
「若くなくて悪かったわねっ!」

「きゃーーーーーーっ」 奈落へ落下。グキッ!
 プレイヤーは、まだこの場面をプレイし続けている。

 おわり

 ☆ 「トゥーム・レイダー」はイギリス製作のPCゲームである(TVゲームでも発売されている)。考古学者であり、冒険家であるララ・クロフトのクールでタフなキャラクターが人気。シリアスなグラフィックも場を盛り上げる。
    やってることは、走ったりジャンプしたり掴まったり、スーパーマリオと似たようなことなんですけどねー。 ☆

「トゥームレイダー」は、現在「ラスト・レベレーション」をプレイ中です。 炭酸飲料水「サスケ」って、覚えている人、いるかなあ。「コーラの前を横切る奴」というキャッチフレーズだったんですよ。「横切ったきり、どこかへ行ってしまった」とも言われています。ジョルト・コーラーはまだ時々自販機で見ますけどね。


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