第59話 『足を引っぱる男』


 リーダー達はついに皇都ルルノイエに突入した。目前にルシアの隊が待ち構え、進路を塞いでいた。
「行くぞ、ぼうず。足を引っぱるなよ」
 名剣『雲』を抜いて構えるゲオルグ・プライム。リーダーは、その足にすがって動きを止めた。ゲオルグの体はそのまま床に倒れ込んだ。
「馬鹿ものっ、何をする! 文字通り足を引っぱりやがって!」
「ゲオルグさん、闘いはあとです。・・・な、クライブ?」
 リーダーは後ろのクライブを振り返って笑顔を作った。
「すまない、リーダー、みんな。オレの個人的な事情の為に」
「いいんだよ、仲間じゃないか。ほら、現在19時間52分。急がないと」
 メンバーは、倒れたゲオルグを残してきびすを返すと、城から飛び出した。
「お、おおい、待ってくれ」
 遅れを取った老練の戦士も、あわてて後を追う。
 ルルノイエに入れるようになると、サジャ村への道も開ける。クライブの20時間制限付きイベントの、クライマックスが待っているのだ。メンバーは、ほとんど走るような足取りでサジャへと急いだ。
 クライブはマントを目深にかぶったまま、まったく口を開かなかった。何を考えているのか、どんな気持ちでいるのか、リーダーにさえ表情は見えない。
 風が木々を揺らす音とうるさいほどのヒバリの声。クライブの灰色のマントが歩の早さでなびく。6人は黙々と歩き続けた。
「うおおおーっ!」
 突然、ゲオルグが叫んでしゃがみ込んだ。敵の攻撃か? みんなは身構えた。
「あ、足がつった! ちょっと待ってくれ!」
「・・・。」
「おっさんー」
 残りの5人がやれやれと顔を見合わす。「ほら、足を出せよ」とビクトールがかがみ、ゲオルグの足を引っぱって筋を伸ばしてやった。
「いたたた! あまり強く足を引っぱらんでくれ〜」
「みんな、急ごう。19時間56分。あと4分しかないぞ」
 リーダーが先をせかす。
 歩きだすとすぐに、サジャの村の標識が見えた。
「村の入り口だ! 走ろう!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 今度は心臓が・・・。今、救心を飲むから・・・」
「おっさんー」
「あと2分なんだけどー」
 ゲオルグ・プライム。おまえこそ、足をひっぱるなよー。

おわり

「ウキウキ水滸伝」108人登場させる目標、達成。最後の一人は、ゲルオグ・ブライム氏でありました。



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