夜桜の下で Ver.1.0 Beta


「……もう、ちょっと右かな。あ、いきすぎいきすぎ」
「そんなこと言ったって、こっちは脚立の上で作業してるんだから、そう簡単に動けるわけ無いだろうが」

俺と下で騒いでる彩は、新入生歓迎の花見のための準備をしている。
もう日付も変わってしまったが、こいつがついさっき思いついた仕掛けの準備だ。
いくら家が近いとか、幼馴染だからといって、こんな夜中にこき使われるのは正直あまりいい気はしない。

「あーもう、とろいな〜」
「だったらお前がやれ」

そういってさっさと脚立を降りて、彩を上らせる。

「ほれ、金具」
「…わかってるわよ。ちゃんと押さえててよ」

言われたとおり脚立を押さえる。
……それにしても、いくら幼馴染とはいえ、こんな無防備でいいのかね。
上を見上げると、スカートの中が……。

「はい、次、垂れ幕」
「へいへい……」

言われるままに働く俺。
……なんか、無性に自分が可哀想になってきたぞ。
昔っからこいつにはこき使われてたし……なんか、腹立ってきた。
スカートの中覗くだけじゃ割に合わんぞ。
……やるか。

どうせここの近くには民家は少ないし、少しくらい騒いでもばれないだろう。
そうと決まれば、どのタイミングで?
今引っ張ったら、倒れてこいつが怪我するかもしれないし、降りてからではちと難しい。
じゃあ、降りきる直前に芝生に倒しこんで……よし。
幸い彩は取り付けるのに夢中でこっちなんか目もくれてないし……おっと、もう終わるな。

カツンッ、カツンッ

彩が脚立を降りる音がやけに大きく聞こえる。
その音が近づくに連れ、俺の心臓の鼓動も大きくなってきた。

5……4……3……2……1……
今だっ!

ドサッ

「きゃっ」

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  できるわけねーだろ。