アッカムイの森に寄せて.2


『隠し事』

ふと気がつくと時計が一時を指している
今日も電話は来なかった
少しだけ淋しくなるけど
それでも 気にしない
「忙しいって言ってたし」
「縛り付けるのやだし」
本心に言い訳をちりばめて
嘘で隠し通す
「だけど 声が聴きたい」
「だけど 逢いたい」
溢れてくる想いを
伝えることもしないまま
ひたすらに 隠し通す
負けないでいられる時間が欲しい
今はただ それだけ
それでも時計の音は気になる
「今頃なにしてるだろう」
「今頃なにを考えてるだろう」
思えばずっと アイツのことばかり
考えてる自分がいる
だけどまだ「アイシテル」を
全てに勝る勇気に変えるには
ほんの少し 時間が足りない



『海』

懐かしい海を見た
懐かしい人と見た
昔と変わらないその場所は
寒空の下で変わらない景色で
私たちを 迎えてくれた

「私はこの人が好きだったんだ」
胸が苦しくなるような想いを
だけど『過去形』で思い出せる自分を
なんとなく 嬉しく感じた
今は違うんだ 『この人』じゃないんだ
強く想う自分が なんとなく愛(かな)しかった

懐かしい海を見た
懐かしい人と見た
だけどそれは なにかの始まりではなく
確実にわかる 『過去の終結』だった



『眠り』

久しぶりに疲れ切った体は
それでも安らかなる眠りを誘いはせず
ただ 彼の人の声だけが
安息の地へと 導いてくれる

もう少しだけ 側にいて
伝えられない言葉
無言の裏側に隠された願い
だけど どこにも届かない

彼の人のために 眠れない夜を過ごした
眠れなかった夜 彼の人が眠らせてくれた
私の眠りを左右することができるのは
ただ 彼の人だけに与えられた特権なのかもしれない



『考え事』

服のまま眠りについて
悪戯電話で起こされる
そんな日々が続く
体はいくら眠っても
疲れが全然とれない

いつまで惰眠を貪れば
「朝」を迎えることができる?
真夜中に起きて ふと考える
どこまで疲れをため込めば
永遠に 眠ることができる?
真夜中に ふと……考える



『願い』

縛り付けたくない
でも 淋しい
声が聴きたくて
ただ それだけで

誰かお願い
あの人に逢わせて
何もしなくてもいい
ほんの刹那で構わない
だから お願い
あの人に逢わせて

縛り付けたくない
だけど 淋しくて
声が聴きたい
ただ それだけで

ただ それだけなのに



『ありがとう』

ありがとう なんて
言えるほど まだ大人にはなれない
だけど ばかやろうなんて
言えるほど 子供でもない

でも それでも
いいことなら 確かにあったよ
想い出に変えるのも
今ならきっと 難しくない

だけど ありがとうなんて
言えるほど 大人じゃないから
今はただ
「これからも よろしくね」



『カウントダウン』

カウントダウンがはじまる
未来に向けての 新しい始まり
夢が叶いそうな予感
現実に近づいてくる実感

READY?
秒読みの開始
見えてくるのは 近い将来
たったひとつの 可能性

カウントダウンがはじまる
未来に向けての 新たなる始まり
夢が叶う日ならきっと
手が届きそうなほど 近くに



『大丈夫』

大丈夫 きっとなんとかなる
なんとかするさ
だから 大丈夫

負の感情を正の場所へ
考え方の転換
「自分」でいれば それでいい

大丈夫 きっとなんとかなる
なんとかするさ
だから 大丈夫

まずは そう信じることから
少しずつでいい はじめよう
ゆっくりでもいいから

大丈夫 きっとなんとかなる
なんとかするさ
だから 大丈夫



『失くしたもの』

眠れないまま 夜が明ける
ただ何もせずに 思いを馳せてみる
いつからか 昔に戻った気がした
全ての記憶を携えたままに
それでも 何かが違うと感じる
何かが違うと わかる
大切な何かを失くしたような
そんな 感覚

きっと失くしたものは
何よりも大切で
壊れやすい 想い



『なんとなく』

なんとなく 楽しい時間
なんとなく 面白い話
なんとなく 好きな仲間
なんとなく なんとなく

だけど 本当に欲しいものは
そんなものなんかじゃなくて
ぬるま湯の心地よさを脱ぎ捨てた
痛くなるほどの 「真実」



『道』

今歩いている その道が見えなくて
手探り状態で 前に進んでる
いつか通ったはずのこの道は
だけど 記憶に残ってもいない

どこに行けば逢える?
そんな言葉が胸をよぎる
誰かに逢いたいの
誰かを見つけたいの
誰かを捜してるの
その指し示す意味さえわからずに
ただ 問い続ける

今歩いてる その道が見えなくても
立ち止まることは もっと怖くて
ただひたすらに 前に進み続ける
この道の果てを見るまで



『我待ち望む』

何を求めているの
問う声 幾重にも重なり
響く 地平の果てまで

泣かないで
君は独りじゃない
そんな言葉で 癒やされた昔

本当に欲するもの
何も知らない 赤子のように
駈ける魂と 引き換えに

夢のまた夢
目に映るすべて
我待ち望む ただそれだけ



『ごめんなさい』

ごめんなさいと 何度思ったことだろう
彼の人に出逢って それからの月日で
泣いて 声にならぬ声で
そう呟いた夜もあった
どれだけ贖罪を乞うても
叶えられない夜もあった

だけど 今はもう違ってしまった
あの頃のように 彼の人を
盲目的に信じることはできない
必然的に愛することはできない
私に何を望んでも
もう 何も返すことはできない
だから 「ごめんなさい」
私は心を 偽れない





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