アッカムイの森に寄せて.5


『禁じられた想い』

帰って もう来ないで
もう何も聞きたくない
もう何も見たくない
あなたの姿も 声も
その 全てを

帰って もう来ないで
嘘 本当は嘘 全部
逢いたいの 今すぐに
だけどきっと 逢ってしまったら
私はもう 止められないから
だから 帰って
もう何も 壊したくないの



『旅人』

長い旅の途中で
行き先のわからなくなった 旅人
誰かに問うてみても 答えはない
「あなたの行き先は ただ
あなただけが 知っている」

そして今日も ためらいながら
ただひたすらに 道を歩く
自分だけが知っている
行き場所を 探して



『二人』

頑張っていた 二人とも
どうにかして道を見つけようと
頑張って頑張って
……疲れてしまうほどに

そうして結局 見つけた道が
違うほうへ向いていても
それでも こんなに
似ているところがある 二人とも
結局まだ 考えることは同じ

そうして今でも頑張っている きっと
違う道を選んで 泣けないままで
それでもきっと頑張ってる 二人とも
ただもう 行き先がもう 違ってしまっただけで



『空虚』

何もかも消えて 何もかも
ひとつ残らず 全て
灰色なこの街も 凍えそうなあたしも
曇ったこの景色も 変わらないあなたも
全て消えて 消してしまって
全部! 全部! 全部!!

そうして 空虚なこの世界で
たった独りで 静かに眠らせて



『時間の波間』

何も変わってなんかいなかった
その後ろ姿も 身にまとう雰囲気も
気づいたか気づいていないか
それさえわからなくなるほどの
虚ろな表情以外には 何も

その姿だけでわかった
遠くから見ただけで気づいた
すれ違う瞬間まで 目が離せなかった
あなただけをただ 見つめていた

何も変わってなんかいなかった
忘れそうになる時間の波間でも
あなたの姿も その空気も
何もかも変わってなんかいなかった
ただ 遠くなっただけで



『暖かい心』

毎日でも逢いたいのを我慢して
毎日短い電話で我慢して
そして 逢ったときは時間を大切にして

そうしたら いつまでも
毎日一緒にいるよりも
長く長く 続いて行くかな

毎日一緒にいられないぶん
時間の大事さがよくわかるから
無駄遣いしないで 過ごせるかな

時間は少ないけどいっぱいあるから
焦ったりしないで 急いだりしないで
ゆっくり進んで行こうね 二人で
ずっとずっと 暖かい心を持って



『懇願』

もうほっといて お願い
何も望まないから
何も欲しないから
だからもう ほっといて

何も期待なんかしないで
あたしはそんなに凄くない
何も望みをかけないで
あたしはそれに応えられない

もうほっといて お願い
何も要らないから
全て捨てるから
だからお願い もう逃がしてよ



『言葉の欠片』

無視された言葉の欠片
もう何処にも行きようがなくて
片隅で 泣いている

どうしてあなたは独りでいようとするの?
どうして私には何もさせてくれないの?
ただ「逢いたい」 その言葉だけじゃ
あなたを動かすことはできないの

無視された心の欠片
もう何処にも行きようがなくて
それでもあなたの場所まで行きたくて
片隅で 泣いている ずっと



『逢いたい』

逢える時間が一秒ずつ減っていく
ほんの少しだけど たくさんの時間
あなたがそれで平気だとは思わない
だけどあたしは もっと平気じゃない
独りはいや 淋しいから
淋しさ全部 あなたで埋めたいわけじゃない
だけど あなたが埋めてくれたらと思う
矛盾してる そんなのわかってる
だけど 結局のところ 本当は
ただ「逢いたい」 それだけのこと



『約束の場所』

今日また あの場所へ行ったよ
君と来ようねって約束した あの場所に
たまたま偶然知り合いに逢ったよ
しかも 二人も逢った
それはそれで やっぱり嬉しかったよ

だけど僕の目は ずっと君を探してた
せめて偶然でもいいから逢えないかなって
いるはずのない君の姿を ずっと
飽きることなく探していたんだ

遠い昔に約束した あの場所で



『不安』

不安なら いっぱいある
ずっと側にいてはもらえないこと
側にいたいときにいられないこと
弱音を吐くことさえ赦されないこと

だけどきっと 辛いのは
我慢してるのは私だけじゃない
不安なのは私だけじゃない

不安なら いっぱいある
だけど平気でいるから
大丈夫なフリをしているから
あなたは気づかないでいて
ずっと 気づかないでいて



『思いこみ』

君はもしも 今どうしても
僕に逢わなければならないとしたら
一体 どうするんだろうね

どうにかして 抜け道を探して
どうしようもなかったとしたら
冷たい横顔で 感情のこもらない笑顔で
僕の前に現れるのかな
僕を映さない その瞳で

君はもしも 今どうしても
僕に逢わなければならないとしたら
それでも力一杯嫌がるんだろうね

僕の勝手な思いこみ
だけどきっと 当たっているよね?



『ユリカゴ』

揺れる 揺れる
カラダの中の
一番大事な ドコカ
揺れて 流されて
イッタイドコニイクンダロウ?
秘密 秘密?
ダレにも言えない
アタシだって知らない
コノキモチハイマダケノモノ?

ゆらゆら 揺れて
ユリカゴの中に入るのは
最後は ダレなんだろう?



『ダレカ』

ソコにいるのはダアレ?
知らない人 でも知ってる人
ココロの中通って
裏側まで突き抜けて
行く場所もないの
行ける場所もないの
辿り着かない 何処にいたいの?
でもちゃんと残ってる
ダレカの形に 穴が空いてる

ソコにいるのは ダアレ?





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