四角い小さな水槽の中、自由そうに動く魚。だけど自由そうだけど自由じゃない。行き場がなくて彷徨ってるだけ。
(外に出たら)
死んじゃうかもしれない。水がなくて。水がなきゃ生きられないから。
(だけど、駄目かな)
外に出たい。自由に。泳ぎたい。何処までも……何処までも。
たとえ逝きつく先が一緒だとしても。
水槽の中の水、足りない。
空なんか飛べない。水があるところにしか行けない。
その中で最大限の自由を望むのは、ある意味贅沢なのかな。
そんなこと知らない。知らない。わからない。
(だけど)
だけど、やっぱり。
(この水槽は、狭くて死んじゃう)
水が足りてないから。いつもいつも。
水槽大きくしても駄目。水の量増やしても駄目。そういう意味じゃないから。
そういう意味じゃないけど。
(水、足りない)
多分、生きていくための、大事な『ナニカ』。
何処にあるか知らない。
誰が持ってるのか知らない。
だけど。
(この水槽から出たら)
小さい、狭い水槽から出たら。
外の世界に行けたら。
(水、いっぱい、あるのかな)
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