DEAR LIAR...


――何もかも
忘れたく ない――



「逃げないで」
そう言ったのは
本当は 自分自身への
戒めだった

アイツガニゲテルカラ
オコリモシナイカラ
ダカラ ナニモデキナイ
そんな風に言い換えて
本当に逃げていたのは 私だった
逃げられる前に 逃げたくて



それでも
どんなにアイツを悪く言っても
たったひとつだけ 言えなかった言葉がある
「――大嫌い」
決して言えない言葉
言う必要もない言葉
だから
どうしても 言ってあげられなかった
悩むだけだと
辛いだけだと
わかっていたけれど――



現実は きっと
哀しい 幻
歪んだ夢の中
抜け出せずに 彷徨ってるだけ

迷いもためらいもなく 笑って
時間を忘れるほど 話して
家に帰りたくない と思った日々が
一瞬にして 崩れさっていく
そんなことは 許さない
信じたくない

現実は きっと
哀しい 幻
歪んだ夢の中
抜け出せずに 彷徨ってるだけ
そう 信じていたかった――



本当は泣きたかった
悔しくて
哀しくて
どうしようもなくて
涙と一緒に 全て吐き出したかった

それでも 泣けなくて
泣き方すら 忘れてることに気付いたとき
どうしようもなくて
いつの間にか 「笑って」た……



逢いたくて
逢いたくて
逢いたくて
……逢えなくて
いつもいつも その繰り返しで
いつになったら 逢えるんだろう
いつになったら
逢えるようになるんだろう……



酷いことを言ったよね
傷つけてしまったよね きっと
だけど
何も言わなかった方が良かった とは
思いたくないし
思えない

酷いこととわかっていたけど
傷つけるとわかっていたけど
それでも
言わなければならなかった
私の気持ちにも 気付いてくれないかな



何故 好きな人のことを
「好きじゃない」と言わなければならない
何故 「好き」だと困るんだろう
一緒にいるためなら
そういう嘘もつくけど
張り裂けそうになる心を
どう 抑えたらいいというの

嘘も偽りも
貴方といるためなら
痛みも省みずに 言えるけれど……



好きなのに 好きと言えない
愛してるのに 愛してると言えない
私に勇気がないだけなら
諦めもするけど
「現実」が許してくれない
言っては いけない……

ただ 一番悔しいのは
壁に当たりにいこうともしない
自分自身の「弱さ」について



苦しくて苦しくて
仕方がなかったのに
自分では 何もしようとしなかった
何も出来ないといえば それまでだけど

苦しくて
どうにかしてほしくて
相談ばかりしていたけれど
本当は 「それじゃいけない」と
一番わかっていたのは 自分だったのに

苦しくて苦しくて
仕方がなかったのに
自分では 何もしようとしなかった
何かやれることが あっただろうに……



「人間」を好きになれなくなったとき
今の自分は きっと自分じゃなくなる
裏切られて
傷ついて
涙が枯れる程 泣いても
次の日にはまた 「人間」を好きになっている

でも
泣けなくなったとき
私はどうするんだろう
「人間」を
好きになれなくなるのだろうか……



窓から空を見ていると
不意に飛びたくなった
何故 人は飛べないんだろう
何故 人には翼がないんだろう

もしもこの背中に大きな翼があったなら
迷いもなく
ためらいもなく
この窓から飛び出すのに……



辛くて
どうしようもなくて
誰かにいて欲しかった あの日
頼れるのは自分だけだと 気付いた

身を切られるような哀しみにも
身を割かれるような苦しみにも
全て独りで立ち向かわなければいけない
せめて 支えてくれる「誰か」がいれば
泣くことも出来るだろうに

一番辛いのは
頼ることも出来ず
泣き方も忘れ
それでも「笑わ」なければいけない
自分自身について



傷ついた瞳を貴方に向けるのが嫌で
目をそらしてばかりいた
傷ついたしぐさを見せるのが嫌で
貴方から 逃げてばかりいた
それじゃあいけないと 思いつつも

いつもなら
自分自身をコントロールすることなんて
簡単に出来るはずなのに
いつもなら
ポーカーフェイスなんて
造作もないことなのに
それなのに 今は
何故 何も出来ないのだろう
私は 貴方に逢いたいだけなのに



「もう二度と行かない」
そう言った貴方を 待ち続けている
絶対に来ないと わかっているのに

フラレルより哀しい別れ方をしたのに
それでもまだ 待っている
信じようと している

「もう二度と行かない」
そう言った貴方を 待ち続けている
午前零時
絶対に来ないと わかっているのに……



許せないのに 許したい
信じられないのに 信じたい
矛盾してると言わないで
本当のことだから 仕方ない

忘れたいと言っても
貴方が 忘れさせてくれない
「嫌え」と言っても
それだけは 絶対無理
だって 貴方が好きだから

いっそのこと 傷つけてくれれば
こんなに悩むことはなかった
いっそのこと 殺めてくれさえすれば
こんなに苦しむことはなかったのに

許せないのに 許したい
信じられないのに 信じたい
矛盾してると言わないで
それでも逢いたいんだから
仕方 ない



とらないで
私の 好きな場所を
くつろげる場所を
大切な場所を
壊さないで

私のいることの出来る
唯一の場所なのに
たった一言だけで
その場所を壊さないで

貴方も苦しいのかもしれないけれど
貴方も辛いのかもしれないけれど
私の想いもわかってほしい
あの場所は 私にとって
たった一つの「聖域」なのだから



何が悪かったというのだろう
何故 こんな風になってしまったのだろう
私が彼を好きにならなければ
こんな風には ならなかったのだろうか

私が彼のこと好きになったのは
嘘じゃないし
後悔したくない
だけど こんな風になるとわかっていたら
好きにならなかったし
なれなかった

願わくば
もう一度あの頃に戻りたいけれど
それすらも貴方は
無理な望みと 言うのだろうか……



好きだったのに
本当に好きだったのに
フルより酷い去り方
それじゃあ 私は
どうすればいいというの

いっそのこと
思いっきり
フッてくれれば良かったのに
そうじゃなきゃ
私は貴方を……憎めない

好きだったのに
本当に好きだったのに
フルより酷い去り方
それでも 私に
「笑え」というの――



聞いてよ 聞いて
みんな 「いらない」って言うんだ
僕のことを
聞いてよ 聞いて
みんな 「死んじゃえ」って言うんだ
僕のことを

それじゃあ 僕は
何の為に生まれてきたのかな
何の為に笑っているのかな
何の為にここにいるのかな

聞いてよ 聞いて
みんなが 「好き」なんだよ
僕は
聞いてよ 聞いて
それでも ここにいちゃ駄目なのかな
僕は



落ち着きなさい
お願いだから
貴方一人で
そんな風に 先走られて
誰が 嬉しいと思うものか

まわりをよく見れば
もっと違う 対処の仕方があるでしょう
何も私たちは
貴方に 無理をしてもらいたい訳じゃない
このままだと 貴方は
倒れてしまうよ

落ち着きなさい
お願いだから
貴方一人で
そんな風に 先走られて
誰が 一番心配すると思うの――



酷いことを言ったね
哀しいことを言ったよね
それでもなお
想ってくれる貴方が
凄く 愛(かな)しい

だけど
あたしには
まだ 何も言えないから
かわりに 精一杯の気持ちを込めて
「ありがとう」



貴女が 去っていく
僕の側から いなくなる
嫌だよ
失くしたくないんだ

いっそのこと 貴女を殺めて
僕だけのものになった貴女と
永遠に暮らそうか
それとも 恨み恨まれ
歪んだ快楽のなかに
一生身を浸そうか

貴女が去っていく
僕の側から いなくなる
どれだけ恋に狂ったら
貴女は ここにいてくれるのだろうか





作品集 Vol.1の目次へ戻る

コーナーの入り口へ戻る or 案内表示板の元へ戻る