A・Sへの手紙


「十時までに電話が来なかったら……」
カウントダウン始めた 五分前
来るか来ないか ドキドキしている

本当は 試してみたいの
貴方が何日間連絡して来ないか
それはきっと 「好き」のバロメーター
だけど 独りはもう嫌だから

「十時までに電話が来なかったら……」
カウントダウン始めた 五分前
こっちから電話すべきか
かかって来るのを待つべきか……



眠っていたかったのに
現実は夢で 夢は現実だと
ずっと 信じていたかったのに
何故 私は目覚めてしまったのだろう
また彷徨うだけなのに

何も見えない 貴方以外は
何も聞こえない 貴方の声以外は
なのに すがりつくことも
話しかけることすら 出来ない

何故 私は眠っていなかったのだろう
何故 私は目覚めてしまったのだろう
何も見えない暗闇を
また 彷徨うだけなのに



苦しい恋をした
言い出したくても 言えなかった
彼の人を 苦しめたくなかった
ただそれだけ

哀しい恋をした
他に好きな人がいると知っていた
だから 言い出せなかった
ただそれだけ

淋しい恋をした
自分の淋しさ紛らわせるための
もう 独りは嫌だった
ただそれだけ

一緒にいると楽しくて
だけど少し 切なくて
だから ずっと一緒にいたかった
ただ それだけ



ほんの少しで良かったんだ
かけらほどの 「勇気」
すぐに出すことが出来たなら
苦しくなるほどの後悔なんて きっと
していなかったはずだから

ほんの些細な 喧嘩
裏切ったのは 君
裏切られたのは 僕
それでも そばにいたかった
誰よりも大切だった事実
嘘にはしたくなかったし
謝った君の想い
嘘じゃないと 思ってたから

ほんの少しで良かったんだ
君を信じられる 「勇気」
すぐに出すことが出来たなら
身が裂かれるほどの淋しさなんて きっと
ずっと遠くにあったはずなのだから



貴方が誓った 「永遠の約束」
五秒後にはすぐ 崩れるのにね
わかっていながらも 信じている
そんな自分が きっと哀しい

「嘘つき」なんて 言ってやりたいけど
「信じてるよ」なんて 言い換えてる
本心は 別の場所にあるのにね
そんな自分が きっと切ない

貴方に裏切られ 悪口の限りをつくしても
「大嫌い」の一言だけが 言えなかったよ
それでも 貴方が好きだから
そんな自分が きっと愛(かな)しい……



『約束』


貴方と交わした 幾つかの「約束」
どうして私が 違えることが出来ましょう
私にとって「貴方」は
誰よりも大切な存在で
神よりも絶対的な存在なのです
なのにどうして 裏切ることが出来ましょう

後悔ならば 狂いそうなほどしています
貴方を見つめる眼を持たなければ
貴方の声を聞く耳を持たなければ
きっと こんなにも苦しみはしなかったでしょうに
貴方を見つめる眼を持ってしまった
貴方の声を聞く耳を持ってしまった
私はもう 逃れることは叶わない

貴方を諦めるための 幾つもの「約束」
本当に守ることは出来ないでしょうが
私は「私」を 一生騙し続けましょう
それが貴方のためならば
自らを騙すことなど 何でもないことなのですから



貴方だけを見つめてきたから
誰を好きなのか 一目でわかるよ
だからごまかさないでいて
貴方は 自分に素直でいればいい

「つきあってる人がいるんだ」なんて
そんなのは 嘘
本当に好きな人は別にいるくせに
それじゃあ 彼女が可哀想だよ

貴方の全てを知ってる訳じゃないけど
誰を想っているのかは すぐにわかるよ
だから嘘はつかないで
一番好きな人の元に
早く 行きなよ



『つづれなかった 「HAPPY END」』


「嫌いだ」と言って欲しかった
嘘でも冗談でもいいから「
顔も見たくない」と言って欲しかった
せめて恨むくらいは 自由にさせてよ

納得のいかない 「サヨナラ」
もう一度 やり直せたはず
逃げること以外の「何か」を
見つけようともしなかったよね

見つめ直してよ
自分の気持ちと 今までの事実
きっと今までは「嘘」じゃない
それだけ 覚えていて

「好きだ」なんて言われなくてもいい
そこまで贅沢にはなれないから
ずっと友達で構わないよ
せめて一緒にいたかっただけだから

涙も出ない 最後の夜
終わりにはしたくなかったけど
つづれなかった 「HAPPY END」
哀しみだけが 残っている

忘れないで
貴方と私で刻んだ時間と
私が貴方を好きだったこと
せめて 「嘘」にしないで

「友達だ」って言葉だけで
ごまかしたりしないで欲しいから
一緒にいられないと言うなら
友達にも 戻れないから

「嫌いだ」と言って欲しかった
嘘でも冗談でもいいから
「顔も見たくない」と言って欲しかった
せめて恨むくらいは 自由にさせてよ



後悔はしちゃいけない
振り返ることは 赦さない
どんなに悔やんだとしても
「運命の輪」は すでに動き始めている

本人たちさえ気づかぬうちに
「運命」は 少しずつ動いていく
狂った秒針
「運命」を弄ぶ いくつもの「手」
未来を教えるタロットカードにさえ
予測出来ない 未来へ
選び取るのは 誰でもない
それはきっと 「自分自身」

だから
後悔はしちゃいけない
振り返ることは 赦されない
どんなに悔やんだとしても
「運命の輪」を廻したのは
誰でもない 「自分自身」



顔をそらしたまま 貴方は
私の前から 消えていった
あとには ただ
「想い出」だけが 残っている

目を見て話すことも出来ない
そんな貴方を どうしたら信じられる?
別れてから知った 貴方の「嘘」
もう 何も信じられない

顔をそらしたままの貴方に
「裏切り者」と叫んだとしても
貴方は 応えてもくれない
「想い出」が「嘘」になっていく……



もう二度と届かない人へ
想いをせめて伝えたくて
用意した バレンタインチョコ
すでに行き場を失くしているけれど

もしも今日一日だけ
風が 願いを聞いてくれるなら
多すぎる願いはしない
ただ 私の涙を
どうか 彼の人に届けて下さい

もう二度と逢えない人へ
今日で終わりにしますね
行き場の失くした想いは
残ってもただ 身を焦がすだけですから……



泣くのだけは やめようと思った
貴方の所為にはしたくないし
泣いたらきっと 立てなくなるから

独りはもう 嫌だし
だけど貴方はここにいないし
ラジオの音も 妙にうるさい
眠れもしない 午前零時
貴方だけが ここにいなくて

強くいようと 思ってたんだ
独りでも立てるように
貴方の重荷にだけは ならないように……



哀しいほどに 今
貴方に逢いたい
何をするんでもなく
ただ 貴方に逢いたい

本当は怖かったの
貴方に嫌われていないと思いたくて
電話の声聞くだけで
不安と切なさ 膨らんでいく


涙は見せられないし
笑顔はぎこちないし
だけど 貴方の言葉ひとつで
不安が とけていくから

泣きたいくらい 今
貴方のいない隣が
妙に淋しくなるから
貴方に すぐに逢いたい



好きじゃないよ
貴方なんて 好きじゃない
私のこと 好きになってくれない人を
好きになんて なってあげないから

一緒にいて楽しかったよ
ずっと一緒にいたかったよ
だけど 怖かったんだよ
ずっとずっと 怖かったんだよ
「現実」は 必ず訪れるから

好きじゃないよ
貴方なんて いなくても平気
私は元の「私」に戻って
感情のない「人形」を
ずっと 演じるだけなんだから





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