「どうすればいいのか、わからないんだ」
眠ることもままならぬままに、問う。誰に向けたものかもわからずに。
「外に出るのは怖い。だけど家にいるのも怖い」
自分が何をするかわからないから。
ただ意識を他方に向けるしかない。今のところその方法は読書と睡眠のみに限られている。
「今日眠れたとしても、明日は? その次は? 眠れるのかな……今日眠れるって保障もないのに」
怖いのは、眠りに落ちるまでの……何もできない、時間。
「怖いんだ。……自分を、傷つけてしまうからね」
気がつくと握りしめているカッターナイフ。何も考えていないのに。いなかったのに。
左手首の、微かな傷。何ヶ所も、何ヶ所も。
「痛くしたら、それしか考えないで済むと思ってたんだ。痛いって思うだけで、それで終わりだと思ったんだ」
死のうとしたわけじゃないから。だから、浅い傷。
だけどそれできっと一番痛いのは……
「僕じゃ、ないんだ。僕は痛くないんだ。きっと痛いのは……あの人の、方なんだ」
関係ない、なんて言えない。きっと言っても信じない。関係ないのに。関係ないのに……本当に?
「わかんない。わかんないんだ本当は……本当に」
どうすればいいのかも、どうしたらいいのかも、全部。
「言われたよ。あの人との距離を今は取ったほうがいいって。でも、僕にはそれがいいとは思えないんだ。今そうしたらきっと一生後悔するんだ。お人好しって言われたけど、僕もそう思ったけど、でも僕がそうしたいんだ。
それじゃあ駄目かな。駄目なのかな」
問い、ではない。確認でもない。
あえて言うなら、そうするから、と言い切るような。
強い……強い、願い。
「でも、駄目だよね……あの人が痛いのは、駄目だよね。
だから……誰か……」
誰でもいいから。少しでもいいから。
一人の時間を減らすために。
「誰か僕を、見張っていてくれるといいのに」
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