鏡の中の私

 鏡の前で、はさみを握りしめてる私がいる。
 コノヒトハダレ?
 何度見てもわからない。自分が一番わからない。
 虚ろな目で、私を見ないで。
 こんな人、消してやりたい。消してしまいたい、今すぐ。
 ああ、でもカッターじゃなくてはさみなのがまだおとなしいよね。
 どうして、自分の好きにできないんだろう。
 傷から守るのは、好きにできるのに。
 傷をつけるのは、どうしていけないことなんだろう。
 別にいいよ。何だって。
 もう、どうでもいいよ。
 髪を一房握りしめる。これがなくなったら、何か変わるかな。
 傷はつけないよ。だから、いいよね?
 どんどん短くなってく髪。
 でも、駄目だ。
 鏡に映る姿が変わるだけで、何も変わらない。他には何も。
 コノヒトハダレ?
 どうしたら、私、自分をちゃんと認識できるんだろう……?




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