SOS

 いつも、こんな夜は、車を出して遊びに行ったり遊びに連れてってもらったり、してた。
 そこそこに穏やかで楽しい時間は、一晩分の安らぎと数日分の勇気をくれた。

 けど、それはもう昔の話。

 ここには、それを理解ってくれる人はいない。
 どうしようもない夜、その気持ちを隠して電話してさえ出てきてくれる人はいない。
 素直に言うと駆けつけてくれるような人なら、もっといない。

 離れてから、はじめて気づいた。

 薬を見ると、不安が広がる。
 枕元のカッターは危険信号。
 どんどん堕ちていくのがわかる。
 丸くなって自分を抱きしめて、気持ちを押し殺す。

 ダレカタスケテ。ソバデミハッテイテ。

 のばした腕を受け入れてくれる人は、ここにはいない。




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