「何処にも行けないね」
ぽつりと呟いた言葉。哀しみとは別の、笑顔で。
胸の中には重い嘘。それと同じくらいの、大事な人。
「何処にも行けないよね」
嘘を真実にすることも出来ない。
誰にも言えない、大事な……大切な、秘密。
心も、想いも、何も、何処にも。
だけど、それはそれで楽しくも……なくもない。
だから、笑顔。その刹那は、どんな時間よりも楽しくて嬉しくて、優しくて。
目覚めなくてもいい夢。そんな感じ。
この場所だけが、永遠。
だけど、いつまでもここにはいられないことも、知ってる。
「何処にも行けないね……行けるよね」
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