思い出

 思い出すのは、決まって高校時代のこと。

 どこにでもあるようなセーラー服も、古くて雨漏りするくせにやたらと頑丈な校舎も、一般生徒はほとんど知らない放送室も。

 全部、あたしのお気に入りだった。

 どこよりも一番安らげる場所。
 たったひとつの大切な場所。

 特別いいことは何もなかったけど、特別悪いことも何もなかった。

 戻れないことなら、知っているけど。

 もう校舎はなくなって、放送室も広く綺麗になっているけど。
 あたしの中のあの高校は、いつでも古びた校舎。
 綺麗じゃなくても、みんなで過ごしやすく変えた放送室。
 タイの結び方をちょっとだけ変えただけのセーラー。

 思い出は、色褪せることなく、いつだって蘇ってくる。
 あたしが一番好きだった場所として。




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