ONE

 ずっと願っていたことがありました。
 ずっと欲しかったものがありました。
 それが手に入るなら全てを失ってもいいと、
 そう思ったこともありました。

 手に入ったと思いました。
 これだったと、思いました。
 だけど少しずつ何かが変わって、
 気がつけばそれは、
 偽りになってました。

 きっとどこかで間違えたのでしょう。

 たった一度の間違いは、
 小さなものだと思っていたのに、
 いつの間にか膨らんで、
 取り返しがつかなくなっていました。

 きっとこれが最後のチャンスだったのでしょう。

 ずっと願っていて、
 ずっとずっと欲しがっていたものは、
 手に入れることができなくなってしまったのかもしれません。
 もう二度と。
 永遠に。

 だけど、
 もしももう一度チャンスが与えられるなら、
 今度こそ手に入れるでしょう。

 たったひとつのものを。
 さしのべられる腕を。




作品集 Vol.3の目次へ戻る

コーナーの入り口へ戻る or 案内表示板の元へ戻る