迷走

 好きで、好きで。
 本当にどうしようもなくて……重荷にしかなれなかった、過去。
(忘れるな)
 一緒にいられるだけで良かった。
 他には何も要らなかった。
 なのに、どんどん欲張りになっていった、自分。
(受け入れろ)
 過ちを何度繰り返せば、大人になれるのだろう。
 どれだけの人を傷つければ、大人になれるというのだろう。
 赫い傷が、どれだけ残れば。
(過去から逃げるな)

 そして、認めろ。
 傷つけずにいられなかった自分を。

 後悔は、するのだろう。
 きっと、いつでも。
 この手で残してきた傷の数を。
 押しつけるしか――とにかく好きだという気持ちを、知らせることでしか証明できなかった自分の幼稚さを。

 認めて受け入れなければ、成長はあり得ない。
 それがどれだけ辛い行為だろうと。
 生きていくためには。

(ああ、だけどごめんね)
 赦されることは、きっとないだろうけれど。
 せめて、自分の好きな、だけど傷つけてしまった人々を、そしてその事実を忘れずに、大切に、とっておくから。
(今は涙しか送れないけれど)
 いつか、もっと成長した自分を見せることができたなら。
 その時は……せめて、過去の過ちを思い出と変えてもらえるような、そんな人間になるから。

 出逢って良かったと言ってもらえるような、そんな人間に。
 きっと、なるから。

 いつか街角ですれ違っても、声をかけられるような、胸を張って笑えるような人に、なるから。
 見ていて、ください。
 望むことが赦されるなら……。




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