ライフサイクル型ファンド

年金など長期運用向けに設計されたバランス運用型の投信。株式組入比率が異なる複数のファンドが用意され、投資家は資金を使い始める時期を考えてファンドを選択する。運用可能期間が長いほど株式比率を高くするのが一般的。 1999年後半からファンドの設定が本格化した。確定拠出型年金(日本版401K)の主力商品として期待が高まっており、運用実績作りを目的に設定する運用会社が相次いでいる。リスク、リターンの調整方法は大きく分けて二つある。一つはファンドごとに満期を定め、運用会社が満期に向けて株式比率を下げる仕組み。もう一つは株式比率を固定した複数のファンドを用意し、投資家が時期をみて株式比率が高いファンドから低いファンドに乗り換えていく仕組みである。

ライフサイクルファンド

アセットアロケーション型ファンドの1つ。ファンドの購入者の年齢に応じて、運用機関側で運用姿勢を変えるのが特徴。例えば、20歳代、30歳代とリスクが取れる若年時にはファンドの中における株式の組み入れ比率を増やして高いリターンを追求、50歳代に入り年金給付開始時期に近づくと、確定利付き商品の比率を高め安定運用にする。株式や債券など特定の商品に投資した投信に再投資するファンドオブファンズの形態をとることが多い。401Kプランの加入者は購入時に判断するだけで、その後は定年まで運用機関が自動的に運用を請け負ってくれる利点がある。99/11現在、投資経験の少ない人が多い日本では401Kプランの主力商品の1つになると予想されている。

ラップアカウント-1

顧客から一定の資金を預かって証券会社が運用し、顧客から売買額に関係なく一定の手数料を徴収するサービス。証券取引審議会が運用業務の多様化の一環として導入を提言している。投資家にとっては証券会社が手数料獲得目的で短期売買する危険を減らせるメリットがある。手数料が自由化されて競争が激しくなる証券会社にとっても、業務の新しい柱として期待されている。ラップアカウントの導入には固定手数料と証券会社に資金を預けて運用を任せる一任勘定の禁止が問題となる。手数料については99年末に自由化されるが、一任勘定は証券不祥事以来禁止されており、導入には不正行為や利益相反の防止など証券業界のルール作りが課題となっている。

ラップアカウント-2

証券会社が顧客に資産運用に関するアドバイスをして、手数料を株式や投資信託の運用額に応じて徴収する仕組み。ラップとは株式委託手数料など経費を包み込むという意味。委託手数料の完全自由化を控え、資産運用を強化する証券会社の中心業務として注目されている。顧客から預かった試算は基本的に一任勘定だが、資産運用は証券会社自身では行わない。証券会社はあらかじめ契約している投資顧問会社を顧客に紹介する。米国では75年の委託手数料の自由加護に解禁され、90年代に入り急速に残高が膨らんだ。多田、競争激化でアドバイス料は急速に低下。株式では運用額の2%、投信では1%程度といわれ、採算が悪化している。日本で導入されても、証券会社の収益押し上げ効果は限られるとの見方もある。

ラップ口座

資産運用助言や注文執行などのサービスを一括して提供する証券口座。投資家は売買の回数に関係なく、預けた資産の残高に応じて一定の手数料を支払う。ラップとは、株式手数料などの経費を包み込むという意味。米国で株式手数料が完全自由化された1975年に登場。1987年の株価暴落後から急速に普及した。投資顧問会社が投資家に代わって運用するコンサルティングラップと、複数の投資信託で運用する投信ラップの二種類がある。日本では、1998年に日興証券と米ソロモンスミスバーニーが共同事業で個人向け投信ラップを導入したのが最初。2001年現在、投信の回転売買への批判が大きいこともあり、証券会社が資産残高重視の営業に転換するための商品としても注目度は高い。

リアルオプション

あらかじめ決められたコストで、一定期間内に事業の延期や中止などの行動を起こす権利。金融商品のオプションにおけるコール、プットを実物資産に応用したことでこう呼ばれる。不確実性の高い環境で経営者が持つことのできる権利を意味する。事業価値の評価法としては、将来生み出すキャッシュの現在価値から投資額を引いた正味現在価値を使う手法もあるが、NPVは急激な環境変化に対応できない点が問題とされる。リアルオプションでは、例えば環境変化で事業が不調になれば一時延期、様子を見た上で再開するといったことも価値として算出できる。NPVで投資不可と判断しても、事業にゴーサインを出せ、機会損失を回避できると考えられる。

履行保証-1

正式には公共工事履行保証制度という。損害保険会社や銀行などの金融機関が建設会社を審査し、工事を完成する能力があると認めた場合は保証証券を発行。建設会社はこの保証証券を発注者に提示し、公共工事を請け負う。工事の途中で建設会社が倒産した場合は金融機関が請負額の一割を発注者に支払うか、代わりの業者を見付けて工事を完成させる。日本では従来、公共工事の完成を建設業者同士で保証し合うのが一般的であった。ゼネコン談合事件をきっかけに不透明との批判が強まり、1995年に当時の建設省が金融機関などに保証業務を開放する履行保証制度を導入した経緯がある。

履行保証-2

正式には公共工事履行保証制度という。国や自治体が公共工事を建設会社に発注する際、倒産などで工事ができなくなる場合に備えて、受注会社の主力取引銀行や損害保険会社などに工事の保証を求める措置。工事の途中で建設会社が倒産した場合、銀行などが請負額の一割を発注者に支払うか、代わりの業者を見つけて工事を完成させる。日本では従来、建設業者同士で保証し合うのが一般的だった。ゼネコン談合事件をきっかけに、談合の温床になっているとの批判が高まり、1995年に金融機関が工事の保証を受け持つ仕組みに切り替わった。

リサイクル

廃棄物の量を減らすため、製品や容器を原材料、燃料などに再利用すること。企業や消費者の取り組みを促す法律としては、再生資源利用促進法(リサイクル法)のほか、容器と包装の再利用に関しメーカーなどに負担を求める容器包装リサイクル法、家電4品目のリサイクル率を決めた家電リサイクル法がある。リサイクル法は再生原料を利用しなければならない業種やリサイクルしやすい原料を使わなければならない製品などを規定。再生原料を使用する数値目標も設けている。

リスクアセット

銀行の自己資本比率を計算する上での資産のこと。貸出金や保有する有価証券などを、損失が生じる危険度に応じて算出する。自己資本比率はリスクアセットに占める自己資本の割合で、リスクアセットが大きいほど同比率は低くなる。国際決済銀行(BIS)の自己資本比率規制の見直し案は、これまで融資残高の100%をリスクアセットにしていた企業向け融資を、融資先の格付に応じて分類することを提言している。優良企業向け融資は20%だけリスクアセットに計上するものの、格付が特に低い企業向けは150%を計上することになる。貸出先企業の財務状態でリスクアセットが増減する仕組みだ。新規制のもとでは貸出債権の質が一層問われることになるため、銀行はリスク管理の更なる徹底を迫られそうだ。

リスク管理債権-1

98/03期から銀行が公表を始めた不良債権の名称。米証券取引委員会(SEC)の基準に準拠して、それ以前よりも不良債権の開示範囲を拡大した。00/03期の大手銀行のリスク管理債権は総額で18兆円近くに達する。旧基準の公表不良債権額は、破綻先債権と6ヶ月以上延滞債権、金利減免債権などで構成されていた。リスク管理債権では3ヶ月以上延滞債権や貸出債権のうち不良債権とみなす貸出債権額が膨らんだ。 99/03期からは新たに金融再生法基準の不良債権が公表された。リスク管理債権が利払状況を重視するのに対し、再生法基準は貸出先の財務状態を反映する。ただ2000年現在、業種別や国別の内訳では、リスク管理債権の基準で不良債権額を開示する銀行が多い。

リスク管理債権-2

貸出金の返済状況に着目した不良債権の計上基準。融資先が経営破綻した破綻先債権、元利返済が6ヶ月以上滞っている延滞債権、3ヶ月以上滞っている3ヶ月以上延滞債権、元利の返済猶予や金利減免など救済措置をとった貸出条件緩和債権の4種類からなる。リスク管理債権は事実上破綻している企業向けの融資でも、元利の一部返済があれば不良債権として開示されない問題がある。1998年に成立した金融再生法ではリスク管理債権のほかに、取引先の財務内容に応じた破産更生等債権、危険債権、要管理債権の開示を民間金融機関に求めている。

リスクキャピタル

企業がリスク管理上、内部の事業部門に擬似的に割り当てる資本のこと。収益の源泉となると同時に、各部門が取り得るリスクの上限ともなる。擬似資本が多ければ事業を積極化でき、少なければ事業縮小を迫られる。経営権限を事業部門に委譲する一方、全体のリスクを制御する上で不可欠な仕組みとされる。金融機関のリスクは主に信用リスク、市場リスク、事業リスクに分類される。その総額が擬似資本の範囲内かどうかがポイントになる。もっとも制度導入段階では各部門のリスクを現状追認する形で資本を配分する格好になりがち。さらにシステム故障など業務上発生するオペレーショナルリスクの把握が課題。本来、自己資本から再生所要資本とそうしたその他リスクを控除した上で、擬似資本を決める必要がある。

リスク細分型自動車保険-1

地域や年齢など加入者の条件に応じて保険料率を設定した自動車保険。97/09から損害保険会社に取り扱いが解禁される。自動車の保険料率は中立団体の自動車保険料率算定会が一律に決定していたが、自動車保険損害率は運転者の年齢や居住地域によって差がある。今回の解禁で事故率が低い契約者の保険料率は低くできる。大蔵省が98/06に発表したガイドラインによると、年齢別に保険料を設定する場合の格差は最高3倍、男女間や地域間の格差は同1.5倍まで認められる。価格競争に慎重な国内の損保各社はリスク細分型商品の投入を見送る方針。一方、外資系は加入者を限定して保険料を割安にした自動車保険を通信販売で取り扱うとみられる。

リスク細分型自動車保険-2

事故の起きる確率に応じ保険料に細かく差をつける自動車保険。年齢や性別、居住地域、事故歴、車の使用目的などで運転者の危険度を判断する。中高年層など事故を起こす確率が低い人の保険料は現行より安く、逆に若者など危険度が高い人の保険料は高くなる。国内では97/09に解禁された。金融庁の00/08現在の認可基準では、保険料の格差を@年齢別で3倍、A男女別で1.5倍、B地域別で1.5倍以内に収めることを条件にしている。

リスクマネジメント

機関投資家などが資産を運用するうえで損失につながりかねない様々な可能性を把握し、運用のルールなどを設定、管理すること。最も代表的なのは株式や債券の相場が変動することで資産価値が目減りする価格変動リスクの管理である。過去の相場データなどから統計的に保有資産の変動性を推計し、高い確率で最大損失額を予測するといった手法でリスクを定量化する。投資家は、より小さいリスクでより高い収益を上げるのが望ましい。危機管理だけでなく、運用力を測る目安としてもリスクの定量化が重要になる。リスクマネジメントの対象にはこのほか、社債の発行体などがデフォルトに陥る信用リスク、法令順守義務違反などによる損失リスク、人為的なミスによるオペレーショナルリスクなどがある。

リスケジューリング

債務返済繰り延べと同義語。外国の民間銀行や政府組織から融資を受けている国が返済の時期を当初の計画よりも遅らせることを指す。経済情勢の悪化などで返済原資が確保できなくなった債務国が債権銀行に返済期限の繰り延べを要請し、銀行側がこれを認めればリスケジューリングが成立する。インドネシアでは民間企業が日米欧を中心とする民間銀行から600億ドルを超える融資を受けていた。だが現地通貨であるルピア相場の下落で、外貨による返済が事実上、不可能となった。事態打開のため、同国政府は98/03に邦銀などに対し、正式に債務繰り延べを要請した。98/05現在、両者は解決に向け協議中だが、繰り延べ期間などを巡っての溝が深く、最終合意には至っていない。

リストラ費用

企業が事業を再構築する際に生じる一時的な費用。例として、不採算事業からの撤退、工場や店舗の閉鎖、売却、在庫処分、人員削減のための割増退職金などが挙げられる。

リテール

主に預金や住宅ローンなど、個人顧客向けの小口取引を指す。広義では中小企業取引も含まれる。銀行にとってはコストがかさむため、従来は低収益の分野とされてきた。しかし、大企業の銀行離れが進むなかで、00/03現在、都市銀行各行はリテール業務を将来の収益基盤と位置付け、個人顧客の開拓を強化している。銀行が海外でリテール業務を展開する際には、現地の銀行を買収するのが一般的。住宅ローンなどを実施する場合、本国の貸倒れ確率は適用できず、地元銀行のリスク管理手法が必要になるためだ。欧米の主要銀行は大半が買収を通じ、顧客基盤を確保、国外でリテール業務を展開している。

リナックス

フィンランドの大学生だったリーナス・トーマス氏が1991年に開発したコンピュータの基本ソフト。核となるプログラムを無償で公開し、誰もが自由に改良できるオープンソースという方式で、急速に世界中で普及した。米ハイテク調査会社IDCによると、1999年現在、リナックスは世界のサーバ用で約130万本を出荷して約25%のシェアを占めている。

リファレンスレート

銀行間市場で信用度の高い取引相手に資金を出す場合を想定した運用希望金利。特定の複数の銀行が提示するリファレンスレートの平均が市場の指標金利になる。取引相手の信用力を考慮してこの金利水準では取引に応じない場合もある。円の東京銀行間取引金利(TIBOR)は全国銀行協会連合会がAM11:00に指定17行の金利を集計する。円の英国銀行間取引金利(LIBOR)は英国銀行協会(BBA)がロンドン時間AM11:00に16行の金利を集計する。対象行が異なるため、指標金利の水準に差が出る。 98/11現在では、LIBORの算出対象になっている邦銀がジャパンプレミアム(邦銀向け上乗せ金利)を反映した金利を提示するので、LIBORが市場実勢を顕わしていないとの批判も出ている。

リフレーション(reflation)

通貨再膨張のこと。デフレーションから抜け出て、まだ激しいインフレーションにはなっていない状態をいう。

リフレ政策(reflation policy)

不況下で生産活動が停滞しているとき、インフレを避けながら金利の引き下げや財政支出の拡大などにより景気を刺激し、景気回復を図ること。リフレ政策の代表的な例は、1933〜1934にかけて米国で行われたニューディール政策である。日本でも、バブル不況時のマネーサプライ低迷をリフレ政策によって解消すべきとの論議が高まった。

リボルビングクレジット(revolving credit)

中期資金の調達方式の1つ。融資契約期間内ならば、あらかじめ契約した融資限度の枠内で、実際の資金ニーズに応じ、短期の手形を振り出す形で、随時借入の実行ができる方式。手形の発行残高が融資限度額を超えなければよく、また資金が不要なときは融資枠まで借りなくてもいい。手形が短期のため、融資期限が絶えず到来、必要に応じて手形の再発行で借入を継続できるので、この名称(revolving=回転式)がある。

リボルビング払い

分割払いの一種で、直訳すると回転信用支払い。クレジット販売における1つの方式。単品ごとに月々決まった額を支払う月賦販売と異なり、返済回数を限定せずに、顧客ごとに未払い代金の残高に一定率の金額、または一定額を支払う仕組みになっている。前もって決められた利用限度額内であれば、返済と借入を繰り返すことができる。リボ払い債権の証券化が定着するには、こうした将来発生する債権の譲渡が法的に有効と認められることが課題だった。98/10の債権譲渡特例法施行や99/01の最高裁の判例でリボ払い債権の証券化のための環境が整ってきた。イオンクレジットサービスが00/02に発行するABSの組成を担当した第一勧業証券はシステム開発や法律など実務作業の検討を進めて証券化にこぎつけた。

粒子状物質

ディーゼルエンジンから排出される有害物質で、Particulate Matterを略してPMとも呼ばれる。主要成分はスス、燃え残った燃料や潤滑油、軽油中の硫黄分などである。人体に入ると喘息など呼吸器系の病気につながるとされている。従来、日本は光化学スモッグの原因とされた窒素酸化物対策を先行して進めてきたため、PMについては1994年まで未規制だった。 2002年現在の規制で比べた場合、試験方法が異なるため単純比較はできないが、窒素酸化物、PMともに日本よりも欧州が先行しているのは事実。日本でも2005年から欧州よりも厳しい排ガス規制を実施するが、PMはエンジン内の温度が上がらない低速時に発生するため、渋滞の多い日本の方が欧州に比べてハードルは高い。

流動化商品の対象債権

リース会社やクレジット会社、銀行など資産を流動化する企業が保有する債権。リース債権、住宅ローン債権、割賦債権、手形債権など幅広い。複数債権をまとめて流動化するケースが大半で、00/05現在、債権数が増える傾向にある。格付会社は資産担保証券を格付する時にはそれぞれの債務者の年齢や年収などの属性、支払能力などを考慮する。債権数が多いのは割賦債権。100億円を流動化する場合、債権は30〜40万件に達することが多い。

領域警備

戦争状態でない平時に自衛隊が出動して領土、領海の治安維持にあたることを指す。2001年現在の現行法では第一義的に警察と海上保安庁が対処し、両者の対応能力を超える場合に限って自衛隊法の治安出動、海上警備行動が適用されるが、武器使用は厳しく制限されている。海上警備行動が初めて適用された1999/03の朝鮮民主主義人民共和国による不審船事件では、武器使用規定が壁となり不審船を捕らえることができなかった。この事件を教訓に自民党、防衛庁が中心になり領海警備に関する研究を進めている。

領事関係に関するウィーン条約

大使館や総領事館など在外公館の領事業務に関する特権を認めるため、1963年にウィーンで採択された多国間条約。領事機関の設置、移動、通信の自由、裁判権からの免除など79条から成る。日本は1983年に加入、2002年現在、165カ国が加盟している。 在外公館への立入については、31条で「接受国の当局は、領事機関の長などの同意がある場合を除くほか、領事機関の公館に立ち入ってはならない」と在外公館の不可侵権を規定。ただ、「火災その他迅速な保護措置を必要とする災害の場合には、領事機関の長の同意があったものとみなす」とも定めている。 また、これとは別に外交全般に関するウィーン条約もある。

量的緩和-1

日銀が金融市場に供給する資金の量を増やすこと。通常の金融緩和は金利を下げて間接的に資金の量を増やすことを狙う。量的緩和は長期国債の買切増額などの方法で、直接的に資金供給量の拡大を目指す。日銀が金融機関の保有する有価証券を大量に買い取る必要があるが、短期の債券を対象とする従来のオペでは限界があるからだ。マネタリーベース(流通現金と日銀当座預金の合計)やマネーサプライ(通貨供給量)などの目標値を設定する場合もある。

量的緩和-2

中央銀行が金融市場に供給する資金の量を増やすことを主眼にする金融政策。日銀は短期市場金利の指標である無担保コール翌日物金利を操作目標とする政策手法を採用していたが、2001/03/19の金融政策決定会合で目標を日銀当座預金残高という量的な金融指標に変えることを決定した。日銀当座預金は民間金融機関が預金の払出などに備えて資金を積み立てておく口座。この残高は金融市場の資金が潤沢かどうかの目安となる。日銀は当座預金残高が市場の需要を1兆円前後上回る5兆円程度になるように資金供給を拡大する金融調節を実施し、余剰資金が株式や債券、企業への貸出などに回る波及効果を期待している。

リンク債

株価、金価格、原油価格など様々な市場価格や指標に連動して、償還時の元本や利回りなどリターンが変動する債券。仕組み債の1つであり、リスクは大きいが高いリターンを狙う投資家が購入する傾向がある。日経平均株価リンク債が一般的。99/10現在、株価上昇を背景に、日経平均株価が上昇すれば大きなリターンを得られるリンク債を個人投資家に積極的に販売する証券会社が増えている。金融ビッグバンの一貫で店頭デリバティブが解禁された99年末以降、個人向けに公募で販売された株価リンク債は累計8,000億円前後に達したと見られる。バブル期には機関投資家が日経平均株価リンク債を大量に購入し、その後の株価下落で多額の損失を被ったと言われる。販売証券会社は元本割れなどリスクの大きい点を投資家に説明する必要がある。

リース

リースにはファイナンスリースとオペレーティングリースの2つがある。ファイナンスリースは設備投資などの際に当該企業に代わって投資資金を調達することで、銀行が資金を融資するのと同じ性格を持つ。ただ、ファイナンスリースはリース会社の相応の資金調達力が必要で、銀行など母体企業の体力が落ちている状況では難しい。オペレーティングリースはリースをする前にリース期間終了後の残存価格(残価)をあらかじめ見積もり、残価を差し引いた額でリース料を決める。中古市場があることが前提となるが、99/12現在ではファイナンスリースに変わって需要が増加している。

リーズアンドラグズ

為替相場の変動を予想して売買の時期を早めたり遅らせたりすること。早めるのをリーズ、遅らせるのをラグズという。円が高くなりそうな時に、輸入企業がドル建ての支払い時期を通常よりも遅らせたり、為替予約(先物のドル買い)を控えることで、円の支払い額を少なくする。目先の相場観がはっきりしていれば、安心して売買時期を前後に動かせるのでこの手法を取りやすい。93〜95年の円高局面では、輸出企業が円高差益を狙って為替予約(先物のドル売り)を急いだり商談を早めることが多かった。方向間の定まらない相場展開では、予想とは逆に相場が動くと為替差損を被りやすいので売買時期を変更しにくい。98/10上旬の円急騰後はこの手法を手控える傾向が強い。

類似株券

証券取引所の上場会社と同一社名の会社の株券が間違って取引された場合、類似株券として扱われる。類似株券は会社が存在するので偽造株券とは異なる。このような問題が生じる理由には、同じ市町村でなければ同一社名の会社があってもかまわないこと、株券に本社の所在地などを記入することが義務付けられていないことなどがある。

累進税率

稼ぐ人ほど税の負担能力があるという考え方に基づき、段階的に税率を高くする仕組み。2002年現在の所得税の場合、収入から配偶者控除などを差し引いた課税所得にまず10%の最低税率がかかる。課税所得が330万円、900万円の境目を超すと、超過部分に対する税率はそれぞれ20%、30%となり、1,800万円超の部分には37%が適用される。 高めの税率区分が適用された納税者にとっては収入を増加させても税負担が重く感じられ、意欲をそがれる恐れがある。経済の向上には、税率を下げたり、税率が上がる収入の境目を高めに変更したりして、累進度をなだらかにするのが有効とされる。

ルータ

インターネットなどのコンピュータ通信網を支えるネットワーク機器。パケットと呼ばれるデータのかたまりに付いたアドレスで送り先を判断し、適切な経路を選択しながら情報を伝送する。経路選択装置とも呼ばれる。

レギュレーションFD

米証券取引委員会(SEC)が2000/10に導入した株式公開企業による情報開示に関する規則。証券アナリストや機関投資家だけを優遇するのではなく、重要情報は個人投資家ら全ての投資家に公平に開示することを義務付けている。FDとはFair Disclosureの略。レビット前SEC委員長が、個人投資家の保護強化の一環として、証券界などの反対を押し切り導入した。アナリストらに重要情報を開示する場合は、一般投資家にも事前か同時に同じ情報を開示する必要がある。説明会などで偶然に重要な情報を出した場合も速やかに開示しなければならない。情報開示の方法は、報道機関向け発表資料の配布や、個人投資家も電話やインターネットなどを通じてアクセスできる記者会見の設定など。SECは、自社のウェブサイトに情報を掲載するだけでは適切な開示にはならないとしている。

レコードキーピング-1

確定拠出年金制度で個々の加入者の口座を記録、管理する業務のこと。加入者の掛け金の積立記録や運用状況を管理するシステムが必要になる。確定拠出年金には欠かせない業務で、膨大な情報処理量になるといわれている。 2001年現在、金融機関がこのコストをどう転嫁するかが焦点となっている。加入者にとっては運用資産が小さい段階で管理コストが重いと運用収益が大きく目減りすることにもなる。

レコードキーピング-2

各艇拠出年金で個人別に加入者の口座を管理、記録する業務。加入者からの運用指図を取りまとめて信託銀行や生保などが担当する資産管理機関に伝達する。加入者の口座情報の記録、保存、通知なども請け負う。多額のシステム投資が必要なため、2001年現在、国内勢は二大陣営に分かれてレコードキーピング会社が設立されている。三菱東京フィナンシャルグループや日本生命保険などがが属する日本レコードキーピングネットワークと、みずほフィナンシャルグループや野村証券などが属する日本インベスターソリューションアンドテクノロジーがそれである。一方、海外で既に使用しているシステムを日本に持ち込むことで投資額を抑える会社もある。AMPやINGグループのほか、安田火災シグナ証券などがこれに該当する。

連結営業利益-1

連結売上高から原材料費など製造原価や販売費、本社費用などを差し引いたもの。本業の利益を示す。00/03期から持株比率が50%以下でも社長を派遣し、事実上経営権を握っている場合は連結子会社に含めることになり、グループ全体の利益をより実態に近く把握できるようになった。連結決算では地域別、地業部門別の売上高や利益を開示している。利益のベースになるのが連結営業利益で、投資家はこれを分析することで企業の収益がどんな事業に支えられているかが分かる。営業利益と並び、連結決算では純利益も収益動向を判断する指標として使われる。

連結営業利益-2

連結売上高から原材料費などの製造原価や販売費、本社費用などを差し引いたもの。金融収支や株式売却など財務活動の損益を足し引きする前の利益で、製品の生産や販売、サービスの提供で得た本業のもうけを示す。 2001年現在、連結決算では付随情報として地域別、事業別のセグメント情報を開示する。連結売上高と並んで部門の連結営業利益を開示しており、投資家はこれを分析することで収益がどんな事業に支えられているかを判断することができる。

連結経常利益-1

子会社などを含めたグループ全体の事業活動によって発生する利益。本業に伴う活動から得る営業利益に、受取利息、支払利息や有価証券売却損益など営業外収支を加減する。親会社が経常黒字でも赤字の子会社を抱えていればその分を差し引くので、グループ全体の収益が反映される。 1999/03期からは子会社以外で株式を20%以上保有しているような関連会社の最終損益を持分比率に応じて比例配分し、営業外損益に計上するようになった。この結果、従来は連結最終損益にしか含まれなかった関連会社の業績が、子会社並みに連結経常利益に反映されるようになった。

連結経常利益-2

売上高から原材料費や販管費を差し引いた営業利益が純粋な意味で本業のもうけを表すが、経常利益段階ではさらに利息など金融収支に代表される営業外収支を加味する。これは、有価証券や固定資産の売却、取得などによる特別損益や税金を控除する前の段階でもある。連結対象子会社に加え、1999/03期からは持株比率の低い関連会社の最終損益も持株比率に応じて連結ベースの営業外損益に計上するようになった。2001年現在、決算発表の重点は本体だけの単独ベースから、グループ全体の収益力を表す連結ベースに移っている。

連結経常利益-3

企業グループ全体の通常の事業、財務活動によって生み出される利益。本業のもうけである連結営業利益に財務活動で発生する金融収支などを加えて計算する。固定資産の売却益などの特別損益や税金を計上する前の段階の利益を指す。米国会計基準を採用する企業は経常利益にあたる項目がないため、税引前利益を経常利益に近いものとして扱うことが多い。関連会社の最終損益を出資比率に応じて連結決算に反映する持分法投資損益を、1999/03期から営業外損益に計上するように制度が改正された。これによって関連会社の業績が連結経常利益に算入され、グループの収益力をより反映するようになった。

連結経常利益-4

子会社などを含めたグループ全体の事業、財務活動によって発生する利益。本業の儲けを示す連結営業利益に財務活動で発生する金融収支などを加味する。米国会計基準を採用する企業は経常利益に当たる項目がないため、税引前利益を経常利益に近いものとみなす。 1999/03期からは連結対象子会社だけではなく、関連会社の最終損益も持分に応じ「持分法投資損益」として連結ベースの営業外損益に計上するようになった。この結果、関連会社の業績が、子会社並みに連結経常利益に反映するようになった。

連結決算-1

親会社に子会社や関連会社などを合算、調整した決算。法的には別会社であっても、親会社が出資を通じて支配している子会社などを含む企業集団の実態をつかむため、日本でも77年度から制度化された。 2000/03期から連結決算重視の新会計制度に移行する。また実質支配力基準の導入によって、出資比率が50%未満でも取締役会の過半数を支配する関連会社などが、新たに連結子会社に加えられることになる。

連結決算-2

親会社に子会社や関連会社などを加えた、グループ全体の業績を表す決算。日本企業は単独決算を中心に情報開示してきたが、00/03期から連結決算を重視する新たな会計制度に移行し、有価証券報告書の記載も連結が主になった。実質支配力基準により、出資比率が50%以下でも役員の派遣や取引関係などを勘案して連結対象の子会社となる場合がある。単独決算中心の時代は本業のもうけである営業損益に営業外収支を加減した経常損益が重要視された。グループ収益力を見る連結決算では、税引前利益から税金や少数株主損益などを差し引いた最終損益が重視される。赤字の子会社が多ければ、親会社の最終利益よりも連結最終利益の方が少なくなることもある。

連結決算の実質支配力基準

2000/03期決算から大蔵省が導入する新しい連結決算制度で、企業グループの経営実態を正確に開示するための基準の一つ。子会社でも資産規模や売上高が小さかったり、出資比率が20%未満といった理由で、現行では連結決算から外している会社も、@経営権を握る取締役を派遣している、A財務や営業方針に重要な影響を与えているなどの場合、連結対象にすることを義務付ける。これまで、不良資産や余剰人員の受け皿に非連結対象の企業を活用する例が相次ぎ、信頼性を損ねる要因になってきた。出資比率がゼロでも巨額の債務保証類を付けている会社の扱いや、経営不振から銀行管理状態に陥った企業を親銀行の決算にどう反映させるかといった問題もある。

連結最終損益-1

子会社、持分法適用会社を含めたグループ全体の最終的なもうけを表すのが連結決算。親会社が黒字でも赤字子会社を抱えていればその分を差し引くことになるので、グループ全体の収益が反映される。連結決算の経常損益には、子会社の損益が他の株主の出資分まで含めて全額表示されてしまっている。このため連結経常損益から少数株主持分を差し引くことで、グループとしての純粋な損益を表示したのが連結最終損益である。連結決算が主体である米国では、もともと経常損益という概念がない。表示を国際的な基準に合わせる意味合いもあって、2000年現在、日本でも連結決算の最終損益が重視されるようになってきている。

連結最終損益-2

企業とそのグループ企業が一年間の事業活動などで得た売上高から、一年間に発生したあらゆる費用を差し引いた額を指す。通常の営業活動による損益である営業損益に、財務、金融活動から生じる金融収支や人員削減に伴う特別退職金の支払いなど一時的な要因の性格が強い特別損益を加え、最後に課税所得に対する税金などを差し引く。 1990年代以降、日本企業は事業の再構築、いわゆるリストラクチャリングに伴い、多額の特別損失を計上してきた。将来の退職金、年金の支払必要額への支払準備の不足額を解消するための支出など会計制度変更による特別損失も目立つ。連結最終損益は企業の収益の中で株主に帰属する部分であり、株主への配当の原資となる。2001年現在、株主重視の経営姿勢が求められるなか、連結最終損益をどれだけ改善できるかが企業にとって重要課題になっている。

連結最終損益-3

子会社や持ち分法適用会社を含めたグループ全体で生み出した最終的な損益。売上高から原材料費や人件費などを引いたのが、本業の儲けを示す営業損益。経常損益はそれに支払利息や受取配当などを加味する。更に株式の評価損やリストラクチャリングに伴う一時的な損失、税金などを差し引いて最終損益が算出される。最終損益は株主への配当や企業の内部留保の原資となる部分である。

連結最終利益-1

子会社などを含めたグループ全体の最終的な収益力を表す指標。単体の決算では税引後利益にあたる。子会社に他社などが出資している場合、税引前利益を出した後で、出資比率に応じて損益を調整して算出ため、経常利益段階よりも連結ベースの収益力をあらわすといえる。関連会社にフジテレビジョンを持つニッポン放送はoo/03期の連結最終利益が単体の税引後利益の10倍程度になった模様。子会社などに赤字会社が多ければ、単体より小さくなることもあり、グループ全体の収益力を向上させる必要がある。

連結最終利益-2

企業がグループ全体で得た最終的な利益を指す。一年間を通じた売上高から、あらゆる経費を差し引いたもので、本業の儲けを示す連結営業利益に、金利支払などの金融収支と、人員削減に伴う特別退職金や土地の売却益など一時的に発生した特別損益を加えて、税金などを差し引く。 企業収益の中で株主に帰属する部分であり、株主への配当や社内に積み立てる内部留保などの原資になる。

連結自己資本比率

連結決算書表に基づいて算出した銀行の貸出残高、保有有価証券など総資産に占める自己資本の割合。総資産は保有資産ごとにリスクの掛け目(リスクウェイト)を乗じて計算し、リスクアセットと呼ぶ。資本は普通株式など狭義の自己資本と、有価証券含み益の45%など広義の自己資本の合計。比率が高いほど経営が健全といえる。国際業務を営む銀行では単体、連結のどちらも8%が健全性の分岐点で、国内業務の銀行は4%超が健全性の目安になる。

連結重視の会計制度

企業の決算情報を個別中心ではなく、連結中心で開示する制度で、2000年度から上場企業に義務付けられた。時価会計導入と並ぶ会計制度改革の目玉。子会社及び持株比率20%以上の関係会社の資産、負債や損益を親会社と連結して財務諸表を作成、従来は簡易にとどめていた開示内容を詳しくする。欧米の企業の情報開示が連結重視であるのに加え、グループ企業への損失隠しなどの決算操作をしにくくし、企業会計の透明性を高める必要があるという機運の高まりが導入の背景にあるが、課題も多い。法人税の連結納税制度の導入は2002年度から。2001/03現在、商法では株主への配当原資を連結ではなく個別の剰余金としている。企業会計と税制、商法の不整合の解消が企業改革促進に欠かせないとの指摘がある。

連結剰余金

連結決算のバランスシート上で資本金や法定準備金と並び、資本を構成する項目の1つ。グループ企業の任意積立金や未処分利益の総称で、不良債権など予想外の損失が発生した時には取り崩して損失の穴埋めに充当できる。連結剰余金はその性格上、企業がどの程度の財務余力を持っているかを示す指標ともなる。00/03期の金融ビッグ4の連結剰余金を比較すると、三菱東京グループが約1兆6,000億円、みずほグループが約9,500億円、三和東海あさひ銀行が約7,400億円、三井住友銀行が約4,500億円。一部には連結剰余金の厚さが財務余力に直結するわけではないとの指摘もある。連結剰余金を不良債権処理の原資に使う銀行も少なくないだけに、それが厚いことは不良債権処理が遅れている可能性があると解釈することもできるからだ。

連結中間決算

企業グループの半期の財政状態、経営成績、キャッシュフローなどの情報を提供するもの。本決算では00/03期から会計制度が連結中心となったが、中間決算についても00/09中間期から連結主体に移行した。損益計算書や貸借対照表だけでなく、キャッシュフロー計算書、事業の種類別所在地別セグメント情報などが本決算並みに開示される。従来は季節要因による収益の変動を緩和するための営業費用の繰延、繰上が中間決算ということで許されていたが、00/09中間期からは認められなくなったのが特徴である。

連結納税制度-1

企業グループを単位として税を納める制度。子会社や系列会社の損益を親会社と合算できるため、個別企業ごとに納税する場合に比べて全体の利益水準が抑えられ、当年度の納税額は少なくなる。海外での導入例が多く、産業界は持ち株会社の設立などを通じた企業再編を進める上で不可欠な税制だと主張してきた経緯がある。 99/12現在、政府税制調査会(首相の諮問機関)が検討を進めており、連結対象は当面100%出資子会社に限定、海外法人は除外するなど大まかな枠組みが固まってきた。一方でグループへの参加と離脱を頻繁に繰り返して税負担を軽くする行為をどう防ぐかなど、具体策は詰まっていない。

連結納税制度-2

親会社と子会社で構成する企業グループを1つの企業のようにみなして法人税を課税する制度。持株会社などを使った企業のグループ経営に対応した税制で、2001年現在、米国などの主要国では導入済みである。日本でも2002/04から適用できる見通しである。従来の単体課税との選択制で、対象は全額出資子会社に限定される予定である。 制度を利用すると、黒字企業の利益から赤字企業の損失を差し引くことができるため、一般的に課税所得を圧縮できる利点がある。半面、財務省試算では8,000億円程度の税収減が見込まれ、穴埋め策が焦点となっている。2001/12現在、企業が従業員の退職金支払いに備えて積み立てる退職給付引当金の段階的な縮小で、3,000億円程度を捻出する方針が固まっている。

レンジバイナリー

通貨を売買する権利を取引する通貨オプション市場で販売される商品の1つ。円相場が一定の範囲内に収まれば、購入した顧客は利益を得ることができる。なぎオプションとも呼ばれる。例えば、あらかじめ1ドル118円から123円というレンジを設定し、ある期間内に円相場がこのレンジを外れると買い手の権利は消滅する。反対に、この範囲内で相場が膠着すれば、買い手は支払ったオプション料に対して数倍の利益を手にすることができる。輸出企業は外貨建て売上高の為替リスクを回避するために、先物でドルを売るほか、円高に備えて通貨オプションを購入する。しかし、円相場において膠着状態が続くと、通常のオプション利用が減少するため、銀行は相場環境に合わせた商品の販売に比重を置く。

レンジフォワード-1

上限レートと下限レートを設定し、その一定幅の中で為替取引を発生させるようにする通貨オプションの手法。オプションの売りと買いを同金額で同時に契約することによりオプション料を相殺する。輸出型と輸入型があるが、輸出型の場合はドルコールの売りとドルプットの買いの組み合わせとなる。実勢相場が1$122円のとき、輸出企業がドル安リスクを回避するために120円のドルプットを購入するとする。同時にオプション料が同額の124円のドルコールを売却すれば、オプション料のコストをゼロにして、120円から124円の範囲内で仕上がりのレートを確定できる。ドル安のリスクは回避できるが、同時にドル高のメリットも放棄することになる。

レンジフォワード-2

一定の変動範囲で為替を先物予約することで、外貨建て資産の為替リスクを回避する手段の一つ。通貨オプションのプットの買いに、コールの売りを組み合わせ、ヘッジコストを軽減する。 110\/$のドルプットを買うと同時に120\/$のドルコールを売ると、円相場が110円以上の円高になっても110円でドルが売れ、為替差損を回避できる。ただ、円が120円より円安になると、取引の相手方にドルコールを行使され、120円でドルを売らなければならないので、損失を被る。一定水準以上の円高リスクを回避する代わりに、円安メリットも一定以上は受けられない仕組みと言える。ある水準で将来の為替取引を約束する為替予約に比べて柔軟性があり、企業の間で利用が増えている。

連単倍率-1

連結決算の数値が単独決算の何倍の規模になるかを示す指標。単独税引き利益に対する連結純利益の倍率が利用されることが多い。単独決算だけでは分からない企業グループ全体の収益力を見る目安の1つになる。通常は子会社などの収益が親会社の収益に加わるため、連単倍率は1倍以上となる。逆に倍率が1倍未満だと、グループ内に赤字の子会社や関連会社を抱えていることを示す。98年近辺では、内需低迷の長期化で親会社の業績が伸び悩むなか、海外の子会社が収益を伸ばしており、連単倍率は上昇傾向にある。

連単倍率-2

グループ企業の連結決算の利益や売上高などが親会社単独の数値の何倍であるかを表す。連単倍率を見ることでグループの収益力を把握できる。連結純利益と単独税引後利益を比較するケースが多い。倍率が高くなるほどグループに対する子会社の貢献度が大きい。99/03期の決算ではリストラに伴う特別損失を計上する企業が多く、本体の税引後利益が減少し連単倍率が上昇する特殊な状況が目立った。以前は単独決算が中心だったため不採算事業を子会社に押し付け単独決算の内容を良くする例があった。このため健全性を見極める目的で連単倍率を使った。ただ会計制度が連結重視に移行するのに伴い、企業はグループ全体の業績を意識して連結決算の開示を進めており、倍率を使う必要性は薄れている。

連立政権

1党だけで国会の過半数を占める政党がない場合などに、複数の政党が政策協定を結んで内閣を構成した政権。一般には閣僚を送り込む閣内協力を指す。広い意味では閣僚を送り込まない閣外協力の場合にも使われることがある。連立政権時代の幕開けとなった細川政権は93/08に、社会、新生、公明、日本新、民社、新党さきがけ、社民連の7政党と参院会派の民主改革連合の8党派により樹立。94/04にできた羽田政権では社会党とさきがけが閣外協力に転じ、94/06には自民、社会、新党さきがけの3党連立の村山政権が誕生した。単独政権でスタートした小渕政権は99/01に、自由党との連立政権になった。

レートチェック

通貨当局が外国為替市場で売買している民間銀行などに、いくらでどの程度の規模の取引をしているか電話で問い合わせること。当局が為替相場の急激な変動を抑えようとする時に実施する。実際に市場介入しない場合でも、チェックの姿勢を強めるだけで市場に介入の思惑が広がり、相場を安定させる効果を狙っている。相場が急激に変動している時にチェックが入れば、市場参加者は当局は今の相場の動きを快く思っていないと受け止める。ただ、介入と同様、当局はレートチェックをいているかどうかを明らかにしないのが通例だ。ヘッジファンドの経営危機をきっかけに円が急騰した98/10の上旬には、各国当局がレートチェックを実施したとの噂が流れ、一方的な円の上昇に歯止めがかかった。

老人保険拠出金

健保組合や国保などの医療保険が原則70歳以上の高齢者の医療費財源を分担する仕組み。高齢加入者が集中している国保の老人医療費負担を軽減するために83年度に導入された。健保組合や政管健保などサラリーマンが加入する医療保険(被用者保険)の負担割合が年々高まり、97年度は全体の約3分の1を国保、約3分の2を被用者保険が負担している。各医療保険の拠出金額は、個別の老人加入率が全国平均より高い場合は必要な医療費より少ない負担で済むように調整している。ただ、極端な調整にならないように調整幅には上限がある。

労働債権

企業倒産などで不払いになっている賃金、退職金など、労働者が受け取る権利を持つ債権。2001年現在、日本では、担保の無い一般債権よりは支払順位は高い。ただ株式会社、有限会社では全額が一般債権より優先されるのに対し、個人事業主、公益法人については6ヶ月分の賃金までに限られている。会社更生法では、6ヶ月分の賃金は担保付債権より優先して支払われる。民事再生法でも担保付債権よりは優先順位が劣るものの、税金と同順位に扱われている。しかし、実際の倒産のうち大半を占める任意整理または破産で、労働者は不払賃金を受け取れないことが多いのが実情である。

ロシア危機

1998年に起こったロシアの金融危機。夏にかけてロシアの債務不履行に対する懸念が広がり、98/08にはルーブルが実質的に切り下げられた。国際金融市場ではリスクを恐れる傾向が極端に強まり、資金は新興国の通貨、債券や、格付の低い社債から一斉に逃避した。先進国の国債など信用度の高い資産以外は暴落し、世界規模の金融混乱に発展した。このあおりで国際的に業務展開する金融機関や有力投資家は軒並み大規模な損失を被り、日本の大手金融機関の海外からの撤退が加速するきっかけになった。一方でロシア危機は、世界を巡る資金の規模や移動の速さが一昔前とは比べ物にならない市場の変貌振りを印象付け、金融機関がリスク管理を再構築するきっかけになったとの指摘も多い。

ロシア大統領制

91年の人民代議員大会(当時)で導入されたロシアの大統領制は、93年成立の現行憲法により大統領独裁体制といわれるほど大統領に強大な権限を認めている。主な権限は、@首相の任命と内閣総辞職の決定、A下院の解散と国民投票の公示、B非常事態の宣言など。大統領の任期は初代のエリツィン大統領だけが5年、次期から4年で、連続再選は2期まで。35歳以上に被選挙権がある。大統領が死亡、又は職務遂行不可能となった場合、首相が暫定的に代行し、3ヶ月以内に大統領選を実施する。

ロンバート型貸出

日銀が金融機関の申し出に応じて自動的に資金を貸し出す制度。貸出金利は基本的に公定歩合を適用する。従来の日銀貸出は日銀が実施するか否かを判断していたが、ロンバート型貸出は金融機関が日銀に差し入れた国債などの適格担保の範囲内であれば実施される。金利の急上昇を防ぎ市場の安定を図るのが目的。2001/03現在、海外では欧州中央銀行などが既に導入している。日銀は名称を補完貸付制度に改めた。

ローン担保証券

金融機関の作る特定目的会社(SPC)が銀行などの企業向けローン債権を譲り受け、それを担保として新たに機関投資家向けに発行する証券。複数の銀行のローン債権をまとめて証券化することもできる。ローン担保証券(CLO)の発行は米国では盛んで、邦銀も米国企業向けを中心に証券化を進めている。しかし、99/11現在、日本国内では住友キャピタル証券と米メリルリンチ証券が99/02に実施した案件にとどまっている。しかもマツダなど格付の高い企業などの債権が対象で、中小企業のローン債券を対象とした発行実績はない。都版CLOは信用保証協会の保証を前提とするのが特徴。中堅中小企業が無担保で資金を調達するには、何らかの保証が欠かせないからである。このため都版CLOの対象は倒産リスクの少ない中小企業に絞り込まれる見通しだ。

ローンパーティシペーション

英米の金融市場で発達した債権流動化手法の一つ。債権譲渡のように貸し出し債権そのものを移転するのではなく、債権から発生する元利金の受け取りなどの経済的利益と、債務不履行などの与信リスクや金利リスクのみを投資家に売却する。債権譲渡方式と異なり、債権者である金融機関と債務者である企業との法的な権利関係には変化が生じない。また債務者への通知も必要無いので、流動化しやすい。売却後の返済条件が同じで、金融機関側に買戻し義務が無ければ、企業会計上は譲渡と同じ扱いなので、金融機関の資産圧縮につながり、自己資本比率を向上できる。さくら銀行が98/03に不良債権4,000億円をローンバーティシペーションを使って米金融機関に売却した。

iMi フルーツメール Click Here!