対アジア包括支援策

アジア経済を再生させるため失業対策や貧困対策、環境保護策などを盛り込んだ日本政府の支援策。99/06に小渕恵三首相が打ち出し、政府が99年中に策定する予定である。従来の金融支援から幅を広げ、アジア諸国の経済の体質改善を目指す。支援内容を決めるため政府は経済界トップらによる調査団アジア経済再生ミッション(団長:奥田碩日経連会長、トヨタ自動車会長)を結成。99/08/27から99/09/07までタイ、インドネシアなど6ヶ国に派遣する。アジア各国の経済状況や課題を調査し、支援策がどの程度の効果を上げているか検証する。帰国後、各国の課題や日本の貢献策を提言にまとめ、首相に提出する。小渕首相はこの提言を基に99/11下旬の東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会談で支援の具体案を提案する。

第一特約総合口

生命保険会社が複数の年金基金の資金を内外の投資対象に分散投資する商品。預かった資金をまとめて運用する一般勘定と切り離して管理運用される特別勘定の商品の一つ。運用の成績に応じて利回りが変動し、元本の保証もない。97/04には国内株式や外貨建て債券など、資産別に投資する投資対象別口が新たに設定された。生保各社が96年に一般勘定の保証利回り年4.5%から2.5%に引き下げたことで、高利回りを狙う年金基金の注目が集まり、第一特約総合口の残高は増加傾向にある。98/04〜06期の大手生保各社の総合口の利回りは、住友生命保険が4.38%で最も高かった。円安傾向の中で、外貨建て資産の割合を昨年度下期から高めたことが効果をあげた格好だ。

第一種電気通信事業

通信回線や交換機など幅広い通信設備を自社保有する通信事業。2001年現在、第一種事業者になるには総務相の許可が必要である。改正電気通信事業法では第一種事業者は料金水準、サービス内容を取り決めた約款を総務省に届け出る義務がある。NTT東西地域会社やKDDI、NTTドコモなど全国レベルで電話やインターネット、携帯電話サービスを提供する事業者はいずれも第一種である。 これに対し、第二種電気通信事業者は通信回線や交換機などの通信施設を持たない事業者の呼称。第一種通信事業者から専用線を借りて顧客に回線再販などのサービスを提供する。総務省への届出だけで事業は始められる。2001年現在、多くのネット接続事業者は第二種事業者である。

代位弁済

信用保証協会の保証によって金融機関から融資を受けた中小企業が返済不能に陥った場合に、協会が肩代わりする仕組み。銀行などは中小企業の信用リスクを負わずに済むことから保証付融資を拡大してきた。代位弁済後は協会に求償権が発生。協会は担保の処分などで回収するが、2000年度の回収額は2,770億円にとどまった。このうち特別保証は中小企業への貸し渋り対策として始まった。倒産防止に一定の効果は残したものの、審査が甘かったことから借り手のモラルハザードを招き、倒産寸前企業の延命策にしかならなかったとの批判も出ている。代位弁済のツケは、中小企業総合事業団への出資金などの形で国民負担になる。

大うるう年問題

西暦400年、800年、1200年、1600年、2000年と400で割り切れる年のこと。地球の公転は実際には365日と数時間分あるため、4年ごとにうるう年を設けてちょうど365日との誤差をなくそうとしているが、修正しきれない。このため、100で割り切れる年は原則としてうるう年から外し、400で割り切れる年だけはうるう年にして調整する。これを知らずに作成されたコンピュータのソフトウェアが00/02/29以降、誤作動する恐れがあるというのが当該問題である。

代議員会

基金の規約変更、予算、決算など重要事項を決議する最高議決機関で、年2回以上の開催が義務付けられている。事業主が選出する選定代議員と加入員の中から選出する互選代議員が同数ずつで構成され、理事長が代議員会議長となる。

代行型

基金における給付形態の1つで、国の老齢厚生年金と同質の給付設計で国よりも給付水準を高くしているもの。基金は、国の老齢厚生年金を代行するとともに、より高い水準の年金を受けられるようにするのが目的である。国の老齢厚生年金を代行するために厚生年金保険料の一部については免除され、基金の掛金の一部となる。

大口径シリコンウェハー

半導体チップの素材であるシリコンウェハーで直径が12インチ(約300ミリメートル)サイズのウェハーのこと。00/04現在で主流の8インチウェハーに比べ、1枚当たりから取れる半導体チップの数は約2倍に増え、生産コストは3割程度削減する。 NEC以外にも、米インテルや台湾大手メーカーが採用する方針。大口径ウェハーを使用するには、半導体製造装置や搬送システムも大口径に対応した新機種が必要になり、工場1棟当たりの建設費用は従来に比べ、5割程度高くなる。

第三者割当増資

発行企業が取引先や銀行、自社の役員など、何らかの関係がある企業や人を対象に新株を発行して資金を調達すること。株価が低かったり、収益力が劣っていたりして、他の方法による増資ができない場合や、割当先との関係をより緊密にする場合に利用する。2002年現在、再建や提携を目的とするのが一般的である。 全国上場企業の第三者割当増資の件数は1999年に146件に達し、総額は約9兆5,000億円と過去最高を記録した。これは主に、1999/03に銀行への公的資金注入が実施され、大手銀行が優先株発行などで多額の増資をしたためである。2000年、2001年も経営不振企業の実施が相次ぎ、件数は100件前後の高水準で推移している。

第三セクター

地方自治体と民間が共同出資して設立した株式会社や有現会社。バブル期に急増し、自治省の調べでは、99/07時点で3,475社ある。主に観光、レジャーや地域開発を手掛け、2000年現在では臨海部の開発や鉄道新線の建設、運営母体となることが多い。

第三世代携帯電話

国連の下部機関であるITU(国際電気通信連合)の国際規格「IMT2000」に準拠したものを指す。@映像や音楽配信などの高速通信ができる、A海外のどこでも使える、B周波数を効率利用している、C個人を特定できるIDカードを差し込める、などが条件となる。 メーカーや通信会社間の思惑で規格統一ができず、2002年現在、NTTドコモが採用したW-CDMA(日欧方式)とKDDIのcdma2000(北米方式)の二方式が併用されている。KDDIのシステムは北米方式の第一ステップの規格で、ITUから第三世代と認定されたが、速度が最小限のレベルであることや、第二世代の周波数を使っていることから「二・五世代」と呼ばれることもある。

第三分野市場の自由化

がん保険など第三分野の単品商品は、対外関係を重視する旧大蔵省が外資系生保を優先させる暗黙の方針を採っていたため、大手生保は取扱を自粛してきた。販売していたのは旧東邦生命保険など中小生保だけで、市場はアメリカンファミリーなどの外資系が席巻していた。 1996年末の日米保険協議で、国内損保の子会社生保に激変緩和措置として2000年末まで第三分野の単品販売を禁止した後、2001/01から取扱を認めることで合意した。大手生保は損保系生保の参入に合わせ、2001/01から販売自粛を解いた。損保本体による参入は市場の競争激化を嫌う生保業界の反発もあって金融庁が解禁を遅らせていたが、2001/07に半年遅れで認められ、完全に国内勢に開放された。

貸借対照表

企業のある時点での財政状態を表すもの。例えば自動車メーカーは株主などから資本を調達し、それを元手に工場で自動車を作る。この際、調達した資本は貸方に、生産設備は借方に計上する。もうかるほど内部留保ができ株主資本が厚くなる。英語名でBalance Sheetと呼ばれるのは、資産と負債、資本は釣り合うようにできているためである。政府は民間企業と違って資本がない。負債が資産を上回ればすぐ債務超過になるが、それだけで資金繰りに行き詰まることはない。ただ債務超過の規模がある限度を超えれば、後世代の負担が増えて経済活力をそぐ懸念がある。

貸借対照表の配列方法

貸借対照表では、分析等に活用しやすいように各項目を流動固定に分類して表示しており、その配列方法には流動性配列法と固定性配列法がある。流動性配列法は、資産の配列を流動資産固定資産の順序で配列し、負債についても流動負債固定負債の順序で配列する方法。企業会計原則での原則的方法であり、企業の財務流動性の程度を見るのに適している。固定性配列法は、資産の配列を固定資産流動資産の順序で配列し、負債についても固定負債流動負債の順序で配列する方法。固定資産の多い電力会社やガス会社などは、業種別経理基準によって、この固定性配列法が強制されており、企業の財務安定性の程度を見るのに適している。

退職給付会計-1

2001/03期から導入され、企業は退職給付債務などの開示や財務諸表への反映を義務付けられる。同時に年金資産は時価で評価され、退職給付債務が資産を上回れば、積み立て不足が発生する。積み立て不足の処理は現役要因となる上、財務体質の悪化にもつながる。年金や退職金を企業の債務とに為すのは、将来支払いが必要になる点では借入金などと共通の性格を持つため。大蔵省は厚生年金基金で企業が国に代わって運営している代行部分に関しては企業の債務から除外する意向で、そうなれば企業の負担は大幅に軽減されることになる。

退職給付会計-2

企業が従業員の退職に伴って支払う年金や退職一時金(退職給付債務)に関する会計制度。企業は退職給付債務を毎期計算した上で、年金基金などに積み立てた資産との差額を積立不足として財務諸表に反映しなければならない。蔵相の諮問機関である企業会計審議会が98/06に、01/03からの退職給付会計導入を決めた。日本企業の退職一時金の引当水準は、これまで十分とは言えなかったうえ、バブル崩壊後の株価低迷や低金利で年金資産の運用成績も悪化している。上場企業全体の積立不足は40兆〜80兆円にのぼるとの試算もある。退職給付会計を導入した時点の積立不足は15年以内に償却する。

退職給付会計-3

01/03期から導入され、上場企業に年金、退職金の積立不足の開示と処理を義務付ける新しい会計基準。積立不足は将来の年金、退職金の支払いに必要な金額を現在の額に割り戻した退職給付債務から、年金資産と計上済みの退職給与引当金を差し引いて算出する。積立不足は15年以内での処理が必要になる。年金資産が増加すれば積立不足は減少する。企業が掛け金を上積みすれば年金資産は増加するが、そのためには損失計上が必要。年金、退職金の給付水準を引き下げるなどで退職給付債務を減らしても積立不足を縮小できる。

退職給付会計-4

01/03期から導入され、企業に退職給付債務の開示や、年金や退職金の積立不足の穴埋めなどを義務付ける。退職給付債務は年金などの将来の必要支払額を現時点でとらえたもので、金利情勢などを考慮して算出する仕組みだ。米国では同様の会計基準が既に導入されている。積み立てた年金資産は時価で評価し、退職給付債務よりも資産が少なければ、その差額が積立不足となる。退職給付会計導入時に表面化する積み立て不足は、最長15年での穴埋めが必要になる。多額の積立不足が明らかになれば、財務体質の悪化から、格付が下がるなどの可能性がある、とされている。こうした事態を避けるため、前倒しで積立不足を処理する企業が相次いでいる。

退職給付会計-5

01/03期から導入され、企業に退職給付債務の開示や積立不足の穴埋めなどを義務付ける。退職給付債務は年金や退職金などの支払いで将来必要になる額を現時点の額に置き直して算出する。金利情勢などを考慮するため、低金利だと退職給付債務は膨らむ傾向がある。積み立てた年金資産が退職給付債務よりも少なければ、差額が積立不足となる。多額の積立不足が明らかになれば財務体質の悪化から格付が下がることもあるとされる。そうした事態を避ける狙いで、前倒しで不足処理に踏み切る企業が相次いでおり、1999年度の処理額は2兆円を大幅に上回る見とおしである。00/03/28に成立した年金改革関連法案では積立不足の穴埋めへ、企業が保有する株式を年金基金に拠出することが認められた。

退職給付会計-6

企業が将来、従業員の年金や退職一時金を支払うために、どれだけ手元に資産を用意しておく必要があるのか開示させる会計制度。積み立ててある資産が将来の支払所要額に比べ下回っている場合には、積立不足が生じ、同制度が導入される2000年度から最長15年で穴埋めしなければならない。積立不足が巨額になっているのは、日本企業の退職一時金の引当水準が十分でなかったほか、バブル崩壊後の株価低迷や低金利で年金資産の運用実績が悪化したことが挙げられる。2000年現在では、投資顧問を採用するなど年金資産を積極運用する企業年金が増加している。

退職給付会計-7

従業員に対して将来支払うことを約束した年金、退職金について、企業がどれだけ資産を確保する必要があるのかを開示させる会計制度。資産の運用難や従業員の高齢化が進み、年金や退職金が企業にとって大きな負担になっている。従来の財務諸表からは、その負担度合いを読み取ることは難しかった。企業の間では退職給付会計の導入で表面化した積立不足を早期償却する動きが広がった。保有株式の含み益を活用する信託拠出方式を採用する企業も目立った。今後の運用で生じた利差損益についても、一定の年数以内で償却していくことになる。

退職給付会計-8

将来の退職金、年金の支払必要額を計算し、企業が十分な支払準備をしているかどうかを開示する制度。2001/03期から上場企業に適用された。退職金、年金の将来必要額のうち、現在までに支払義務が発生した金額を一定の利回りを使って現時点の必要額に換算。これを退職給付債務(PBO)と呼ぶ。新基準ではPBOから年金資産と退職給付引当金を差し引いた積立不足を15年以内に償却する。また、運用が予定利回りを下回ったときに発生する積立不足は、従業員の平均残存勤務年数以内に償却しなければならない。

退職給付会計-9

年金、退職金の債務や費用を開示する会計基準。年金、退職金の将来の必要額を一定の利回りを使って現在の必要額に換算し、貸借対照表に債務として計上する。従来、日本企業は年金、退職金の債務を十分に開示しなくてもよかったが、2001/07現在、積立不足を15年以内に処理することが義務付けられている。積立不足を圧縮する手法として、株式を拠出する退職給付信託を活用する企業も目立つ。しかしこの場合でも、信託設定時に比べ株価が下落すれば、企業は一定年数内にその差額を償却する必要が出てくる。

退職給付債務

企業の年金や退職金など、将来支払う必要がある債務を現時点でとらえたもの。具体的には将来の昇給による影響を考慮した年金と退職一時金の見込み額のうち、従業員のこれまでの勤務に対応する部分の現在価値を表す。@確定給付債務(VBO)、A累積給付債務(ABO)、B予測給付債務(PBO)、の3つの概念があるが、一般的にはBを示す。蔵相の諮問機関である企業会計審議会は2001年から退職給付会計の導入を決め、企業に退職給付債務の開示を求めている。年金資産は時価での評価となり、退職給付債務が年金資産の積み立て額を上回れば、積立不足が発生する。企業の財務内容の悪化や格付の低下につながる恐れがある。

退職給付信託

企業が保有有価証券を信託銀行に預け、積立不足の穴埋めに充てるスキーム。現金を使わずに積立不足を処理できるうえ、退職給付信託に使った株式は簿外扱いで資産圧縮にもつながるため、00/04現在、多くの企業が活用を検討している。退職給付信託は企業と信託銀行が@資産の使途を年金の支払などに限る、A一旦設定した資産は企業に戻すことができない、などの特殊な契約を結んで設定する。そうすることで退職給付信託と退職給付債務を同額だけ相殺し、オフバランス化することが会計上認められる。退職給付信託に活用できるのは、時価の算定や換金が容易な上場、店頭株式や公募債券に限られる。換金性に乏しい土地などの不動産は対象外。連結決算では出資比率が50%を超える子会社株の活用は認められない。

耐震改修促進法

1995/12に施行。病院や学校、賃貸マンションなど多数の人が利用する建物で、現行耐震基準を満たしていないものを「特定建築物」とし、耐震診断や耐震補強の実施を求めている。しかし、実施しなくても罰則はない。一部の補強計画を実施するには行政の認定が必要。2001年現在、全国の特定建築物は数十万棟とみられるが、国土交通省によると、2001/03末現在、補強計画が認定されたのは1,757棟であり、一般家屋の改修促進にはつながっていない。

体性幹細胞

成長した体の骨髄や皮膚、神経などの組織に微量含まれている。軟骨や骨、神経、血管、筋肉など様々な組織をつくる潜在的な能力を持つ。骨髄に含まれる幹細胞のほか、脳に含まれる神経幹細胞などがある。 骨盤などから比較的簡単に採取でき、やがて胎児になる受精卵から作り出す胚性幹細胞よりも入手しやすい。患者自身の細胞を利用するため免疫反応の心配がなく、2002年現在、再生医療の有力材料として注目を集めている。

大卒定期採用

一般に、企業が毎年春に実施する新卒者を対象にした採用を指す。日経連と大学側が就職協定を結んでいた時期、定期採用は企業にとって大卒者獲得のため重要だった。同協定が廃止された1997年以降は、海外の大卒者なども対象に通年採用を取り入れる企業が増え、2001年現在、定期採用の重要性は次第に低下している。

代替資産

ベンチャー投資や新興市場投資など、流動性に乏しいハイリスク・ハイリターン型投資対象の総称。英語ではAlternative Assetと呼ばれ、上場株式や国債などの伝統的な投資対象と区別される。米国では年金基金や銀行などの機関投資家が、未公開株(private equity)などの代替資産投資を加速している。ファンドマネジャーの経験にもよるが、未公開株投資で20%以上の利回りをあげる投資家もあるという。日本の金融機関や機関投資家も関心を寄せている。東京海上火災保険は日本興業銀行と組んでアジアの未上場株投資ファンドを設立、今後、ハイリスク型投資の数パーセントを代替資産に振り向けていくという。リスク分散や利回り向上を狙って、こうした動きが広がりそうだ。

代替投資

未公開株式に投資するプライベートエクイティファンド、金融派生商品を利用するヘッジファンドや証券化商品など、新しい金融商品への投資をいう。2000年現在、国内での主流は債券の裁定取引やヘッジファンド投資で、複数のヘッジファンドを組み合わせたファンドオブファンズ形式での運用が多い。既存の株式や債券の動きとの相関性が低く、分散投資効果が得られるほか、市場の非効率性をうまく利用して収益を得られるのが特徴。代替投資の先進国である米国では、2000年現在、年金資産に占める代替投資の割合は7%強に達している。

第二種電気通信事業者

電気通信事業法は通信サービス事業者を、自ら回線設備を保有する第一種電気通信事業者と、一種から設備を借り受けてサービスを提供する第二種電気通信事業者に分類している。二種事業者は国際通信や割安電話などを手掛け比較的規模が大きい特別第二種と、国内で回線再販事業などを手掛ける一般第二種に分かれる。 00/02/01現在、7,000社以上ある二種事業者の大半は一般第二種。特別第二種の登録は98社で、外資系通信会社やインターネット接続会社のほか、SI(システム構築)事業者、通信機器メーカーなども含まれる。

大名債

円建外債の流通性の向上を図るため、1987年に初めて発行された円建債である。発行体は、利子に関する源泉徴収が課せられない日本加盟の国際機関(世銀、アジア銀行等)に限られている。大名債の大きな特徴は、発行時にユーロ市場での決済機構であるユーロクリア、セデルに全額登録され、その後の流通市場での売買もユーロクリア、セデルを通じての受渡しとなる。受渡し方法を改善したことで、非居住者による投資も容易になっている。結局、大名債は国内債とユーロ円債を複合化して、円建外債の流動性の向上を目的とした債券といえる。

第四世代携帯電話

光ファイバー並みの超高速通信が可能な携帯電話で、2010年頃に商用化される見込み。円滑な高精細画像の送受信も出来る。2001年現在で普及している携帯電話はアナログからデジタルに切り替わった第二世代。第三世代携帯電話はNTTドコモが動画像配信を目玉として、2001/05末に東京都内などで試験サービスを開始している。第四世代携帯は高価な交換機が不要なインターネット電話になる見込みで、通信料金の低下と多様なサービスの誕生を後押しすると期待される。地上波デジタル放送も受信できる通信、放送融合端末にする方向で、総務省は通信機器などの標準化作業を進めている。

大量破壊兵器

核、生物、化学兵器を指し、これらを運搬するミサイルも含む。原水爆、炭疽菌、サリンなどが代表格。小銃、大砲などの通常兵器と異なり、無差別に大量の人間を殺戮する。2001/09現在、日本では保有も開発も認めていない。兵器の拡散を防ぐため、製造に必要な特定品目の輸出を制限する国際的な合意があり、各国はこれに基づき輸出許可制をとっている。対象品目を大幅に増やせば輸出管理は徹底するが、企業、政府ともコストが膨大になる。このため2001年現在、欧米各国は、国際合意とは別に、品目を限定せず、企業が自己審査で製造に利用される疑いがあると判断した場合にのみ許可申請を義務付ける新制度を導入している。

大量保有報告書

上場企業の株式を発行済株式数の5%を超えて保有する大量保有者が、株数や保有割合などを記載して財務局に提出する書類。発行会社と証券取引所にもその写しを送付する。株式市場の透明性確保と投資家保護の徹底を図るため、1990年の証券取引法改正で盛り込まれた大量保有開示制度で提出が義務付けられた。一般に5%ルールと呼ばれている。大量保有者となった後も、発行住み株式数に占める保有割合が1%変動したり、株式を担保に差し入れるなど重要な変更があった場合は、変更報告書を提出する義務がある。2001年現在、株主名簿上には実際の投資家ではなく、投資家に代わって株式を保管、管理する金融機関が記載されているケースが多い。

ダウ工業株30種平均

主にニューヨーク証券取引所に上場する代表的な30銘柄で構成される平均株価。米ダウジョーンズ社が算出している。情報通信関連、ハイテク株が中心の米店頭株式市場(ナスダック)総合指数に対し、構成銘柄は景気敏感株が比較的多いのが特徴。構成銘柄は産業構造の変化に応じて入れ替えられる。1896年に12種平均でスタートして以来、残っているのはゼネラルエレクトリック(GE)だけ。99/11にマイクロソフト、インテルが加わり、ナスダック銘柄も取り込まれるようになっている。ハイテク株の株価上昇が牽引して、ダウ平均は99/03に初めて10,000ドルを上回った。その後も景気、企業業績の好調を背景に上昇基調で推移、00/01/14には過去最高値となる1万1,722ドル98セントを付けた。

他益信託

信託銀行に財産の管理、処分を委託した委託者が、自分以外の第3者に対して委託財産から生じる利益(信託利益)を与えることを目的にして結ぶ信託契約。信託利益を委託者が受ける場合は自益信託という。信託業法は、銀行に対して、信託財産として預かった財産と、銀行が固有財産として所有している資産を厳格に分別管理することを義務付けている。銀行はいかなる事情があっても受託した財産に手を付けることは出来ないことになっている。受託財産は受託銀行や委託者の倒産からも隔離され、分離、保全されている。さらに信託契約に取消不能条項があれば、仮に委託者側の要請であっても信託契約を変更、解消することはできず、社債を委託した企業が自己都合で財産を流用できなくなる。

多角的通商交渉

多国間で関税の引下や貿易のルールなどを一括して取り決める協議。世界貿易機関(WTO)の前進の関税貿易一般協定(GATT)が、1947年に初回の交渉を開始した。世界的に貿易自由化を進めることができる一方、各国の利害が複雑にぶつかり合うため、二国間交渉に比べると交渉をまとめるのが難しい。 従来は、交渉の開始を決めた国名などを冠して「〜ラウンド」と呼んでいたが、発展途上国が「ラウンドという言葉には先進国主導のイメージがある」と反発したため、2001年現在、正式には「作業計画」と呼んでいる。

宅地建物取引業法-1

不動産を売買する宅地建物取引業者のルールを定めた法律。最低資本金などの要件はないが、免許を一旦取り消された業者への免許再交付を禁じるといった排除規定を主に定めている。宅建業を営む個人や企業は事務所を置く各都道府県の知事か、建設相の免許を取得しなければならない。金融機関は原則として、不動産売買を禁じられているが、信託銀行は例外として建設相への届出によって宅建業の免許を取得したとみなす規定がある。銀行などが貸出金回収で担保不動産を売却するために設立したサービサーも宅建業の免許が必要だ。

宅地建物取引業法-2

不動産の売買や仲介など宅地建物取引業の基本ルールを定めた法律。誇大広告の禁止、契約の書面交付義務、物件に関する重要事項の説明義務など、宅建業を営む個人や企業への規制を列挙している。 1997年施行の改正宅建業法は、売り手から独占的に売却依頼の契約を結んだ業者が一定の期日以内に、その物件情報を建設省指定の流通機構のデータベースレインズに登録するよう義務付けた。ただ、業者が優良な物件を自社で抱え込んで登録を怠ったり、商談中を理由に他の業者への紹介を事実上、拒否したりする例も多いという。

他社株転換債-1

特定企業の株式について、あらかじめ決めた株価に対し、償還時点の株価がどうなっているかで償還方法が変化する債券。償還期日の1週間前の株価が、債券発行時に決めた価格(行使価格)以上ならば現金で額面償還され、下回った場合は株式そのものが割り当てられる仕組みが一般的。リスクがある分、どちらで償還されても一般の債券に比べ高い利息が付く。大和総研によると、99/06〜00/02までの公募ベースの発行額は約6,700億円である。

他社株転換債-2

Exchangeable Bondのこと。対象銘柄の株価が事前に決めた価格を上回れば元本と高利回りが保証される仕組債。下回れば購入者は約束した高利回りが得られなくなり、対象となる株式で現物償還されたりして、結果として元本割れすることがある。2001年現在、他社株転換債の商品性としては、期間1年以下、保証利回り年率5〜10%程度のものが多い。

単価調整

市場実勢から離れた価格で保有債券を入れ替える取引。債券価格の変動に伴い増減する含み損益を決算期ごとに平準化する目的で利用されることが多い。規制する法律はないが決算操作の温床になると問題視する声もある。例えば100円で購入した債券が90円に下がった場合、売却損を避けるため証券会社に保有債券を100円で売る一方、市場実勢が100円の債券を110円で購入する。こうして債券の含み損を先送りし償還まで平準的に処理する。基準価格の上下2〜4%を逸脱した売買を規制していた値幅制限(日本証券業協会の自主ルール)が98/12/01から撤廃された。98年末から債券価格が下落したこともあり、単価調整取引が数多く行われている模様だ。

短期金利の低め誘導

日本銀行が日々の金融調節を通じ短期市場金利の低下を促すこと。日銀は99/02/12の政策委員会金融政策決定会合で、誘導対象であるコール市場の翌日物金利(無担保)を当初0.15%前後を目指し、その後市場の状況を踏まえながら、徐々に一層の低下を促すと賛成多数で決め、低め誘導を強化した。日銀が金融緩和局面で低め誘導を開始したのは95/03末。95/07には翌日物金利を公定歩合(当時1.0%)をやや下回る水準とする金融調節を始めた。98/09には誘導目標を0.25%程度に下げ、低め誘導を強化した。 99/02の低め誘導強化の結果、翌日物金利は99/02/22現在、0.15%を下回る水準で推移している。一部の投資家はこうした超低金利を嫌ってコール翌日物での運用を減らしており、コール市場の規模は縮小気味だ。

短期国債オペ

割引短期国債(TB)と政府短期証券(FB)を売買することで、日銀が市場に資金を供給したり市場から資金を吸収したりする金融調節(オペ)のこと。日銀は、99/03/25、TBとFBのオペを99/04/01から短期国債売買オペとすると発表した。 99/03現在、TBとFBを使ったオペにはTB買いオペとFB売りオペがあるだけ。特にFBはこれまで、ほぼ全額を日銀が引受けており、買いオペが実施できなかった。しかし、99/04からのFB公募入札で民間金融機関もFBを保有するようになるため、FBの買いオペが可能になる。これを期に、日銀は担保がTBでもFBでも構わない短期国債オペを開始することにした。 TB、FBの活用範囲が広がるため、現行の手形売買に代わって短期国債売買が日銀の金融調節の中心になると見られる。

短期国債買切オペ

金融期間が保有する短期国債(政府短期証券を含む)を日銀が買い入れることによって資金を金融市場に供給する公開市場操作(オペ)手段。従来の買戻条件付の現先オペと異なり、日銀が買い切り、償還まで短期国債を持ち続けるため、金融機関は資金を返す必要がない。 99/10現在、日銀は短期国債買切オペを、短期間の資金を安定かつ潤沢に供給する手段として位置付けている。日銀が短期国債を売却して、資金を市場から吸収する売切オペも同時に導入する計画だ。

単元株

一定数の株式を持つ株主に一議決権を与える制度。与党は株式市場活性化のため、株式の売買単位を引き下げる商法改正を2001年国会で計画している。このため法務省は与党の要請を受け学識経験者の意見などを聞いたうえで、改正案をまとめた。例えば株価が5,000円の上場企業が40株を1単元とすると、20万円あれば株式投資できるようになる。2001/03現在の単位株制度では通常1,000株が売買単位であるため、500万円が必要。単元株導入により、個人投資家の拡大が期待できる。40株未満の株式しか保有していない株主は市場価格で1単元株に達しない株式を会社に対して買い取るよう求めることができる。

団体保険

企業や官公庁の職域団体、医師や弁護士などの同業者団体が多人数の構成員を対象に、一括して加入する生命保険。団体の年金資産を対象としたものには、企業の税制適格年金、官公庁の共済組合を対象にした企業年金保険、厚生年金基金向けの厚生年金基金保険などがある。またそれぞれの保険商品で、元本利回り保証の一般勘定商品、実績配当型の特別勘定商品がある。 00/01現在、従来の主力商品である一般勘定商品は、超低金利による運用難から予定利率が年1.5%まで引き下げられたため、企業や基金の解約が相次いでいる。このため各社は、運用力の強化により特別勘定商品の利回りを向上させる一方、一般勘定でも市場金利に連動するGIC型の新保険を投入することで、団体顧客のニーズにこたえていく構えである。

担保提供制限条項

企業が無担保社債を発行する際に投資家保護を目的として付与する財務上の特約の1つ。他の既発債や新規債務に担保権を設定する場合、その社債にも同じ順位で同じ割合の担保を着けることを義務付けている。担保提供制限条項の有無によって、同一企業の社債でも優先劣後関係が生じ、特にデフォルト後の債券回収率に直結する。ヤオハンジャパン債、日本国土開発債のデフォルトを機に、投資家の同条項への関心が高まった。担保制限条項の有無などで、実際に格付格差も出ている。担保提供制限条項も含め、一切の特約が付いていない阪急電鉄の既発債はR&IでBBB+だが、99/04募集の新発債では担保提供制限条項を盛り込んだため、A-となった。

担保不動産の証券化

貸付債権の担保不動産から発生する賃貸料などを裏付けに証券を発行し、投資家に販売する手法。地価の大幅な下落で塩漬けになっている担保不動産を小口化して販売することで、資金の早期回収を図るのがねらい。証券化するにあたって金融機関は特定目的会社(SPC)を設立、債務者は担保不動産をこのSPCに売却し、売却代金を返済に充てる。SPCは購入した不動産を担保に債券を発行、投資家に販売する。SPCが発行する債券は資産担保証券(ABS)として市場で売買される。 98/04/24に発表された総合経済対策には、99年度から郵便貯金や簡易保険資金でABSを購入する案が盛り込まれた。また、優良資産のABSに対しては、日本開発銀行などの政府系金融機関が保証を付けて円滑な消化を図る。

ターゲットバイイング

プットオプションを売り建てる債券オプションを使った投資戦略。債券価格が下落した時点で押し目買いを入れたい投資家が使う手法といえる。債券価格が権利行使価格まで下がれば、オプションを行使されるため対象銘柄を購入することになる。相場がオプションの満期まで下落しなければオプション料分が利益になる。対象債券価格の下落時の利益を限定することにより、価格上昇時の損失を減らす効果もある。 98/10〜98/11にかけて債券相場がこう着していたとき、証券会社の自己売買部門などがプットオプションの売りを進めた。オプション料稼ぎが目的と見られるが、その後の相場急落で割高な価格で現物債を購入せざるを得なくなり、大きな含み損を抱えていると見られる。

地域産業雇用対策プログラム

経済産業省と厚生労働省が連携し、産業、中小企業支援、就業支援の両面から一体で取り組む雇用対策。2001年現在、一部地域では完全失業率が6%を超えるなど雇用情勢が悪化していることから、2001/07に両省が2001/08末を目処に策定することを決定した。両省の経済産業局と労働局といった地方の出先機関、または雇用、能力開発機構と中小企業総合事業団などの関係団体がそれぞれ地域ごとに協力するための枠組みも盛り込んだ。具体策では、地域の求人企業と求職者の条件のずれから生じる雇用のミスマッチの解消と、新たな雇用創出の二点を重視。従来、連携が不十分だったとされる商工会議所と公共職業安定所が協力し、求人需要など地域の実情に応じた対策をとることに主眼を置いている。

地域別営業利益-1

国内米国欧州アジアなど地域ごとに本体や子会社が本業で稼いだ連結決算ベースの営業利益のこと従来は国際的に活動している主要企業でも、大半が国内と海外の営業利益の2つを開示するだけだった98/03期からようやく、海外地域を細かく分けるところが増えた国別の利益を明らかにした企業もある地域ごとのもうけが示されることで企業の国際展開力や地域競争力を投資家が判断する有力な材料になる企業決算が2000/03期以降に連結中心に移行するのを受け事業別損益などがより詳しく開示される可能性がある

地域別営業利益-2

国内、米国、欧州、アジアなどの地域別に本体や子会社などが稼いだ連結決算ベースの営業利益のこと。財務諸表規則の変更で1998/03期以降、細かく開示する企業が増加した。地域ごとの儲けが明らかになることで、企業の国際展開力や地域競争力を投資家が判断する有力な材料となっている。地域区分は本体や子会社が所在する地域によって分けられる。このため、海外に生産拠点をシフトしてきた素材、部品メーカーなどで、海外における営業利益が多くなっているケースが多い。全体の営業利益は地域別の営業利益を足した後、グループ間取引で得た利益を控除して算出する。

チェーンオペレーション

多店舗展開している小売業が、本部の指導の下に、標準的な方式により各店舗を運営すること。例えば、人員配置や売場作りを統一するほか、仕入は原則として本部で集中的に行う。一方、店舗は販売に徹することで全体の運営効率、利益率を高める。業態では店舗数の多いコンビニエンスストアや大手スーパーが先行して取り入れてきた。そごうは22社24店舗をグループで展開、ギフトや一部衣料品などでは本部での共同仕入を実施しているものの、大部分は各店ごとの仕入となっている。民事再生法の適用申請は22社が個別に行い、まず個々の店舗の力が問われることになるが、再建には、幅広い商品分野でグループのバイイングパワーを生かせる共同仕入などの営業効率化が不可欠とみられている。

地球温暖化

地球の平均気温が長い年月で上昇する現象。化石燃料を燃やして出る二酸化炭素やメタンなどの温暖化ガスが大気中に増えることで、地表からの宇宙空間への熱の放射が妨げられ、温室効果が強まることが原因とされる。海水面の上昇や砂漠化、異常気象を引き起こす要因となる。 1992年にリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議で、168カ国が地球温暖化防止条約を採択した。 1997年の地球温暖化防止京都会議で、2008〜2012年までに先進国全体で温暖化ガスを対1990年比で約5%減らすことを内容とした京都議定書が採択されている。

地球気候変動戦略

地球温暖化防止条約京都議定書を離脱した米ブッシュ政権が、代替案として、2002/02に発表した温暖化対策。京都議定書が二酸化炭素排出の絶対量削減を義務付けたのに対し、米国の戦略は経済成長に伴う排出増を容認し企業への罰則も設けていない。2002/03現在、京都議定書への米国の復帰を求める欧米諸国が代替案にならないと強く批判しているのに対し、日本政府は一定の理解を示している。

地銀の海外拠点

全国地方銀行協会に加盟している64行のうち、海外に支店を持つ地銀は97/12時点で29行ある。海外拠点を持たないと顧客が都市銀行に流出してしまうという危機感から、80年代の後半に競って開設した。こうした拠点では現地に進出した地元企業への融資や債券運用などを手がけていた。しかし、外国金融機関や邦銀大手行との競合も激しく、必ずしも収益の柱に成長しているわけではない。そこで低採算の海外事業を縮小する動きが広がっている。足利銀行や北陸銀行・広島銀行などが海外事業からの全面撤退を決めた。横浜銀行・スルガ銀行なども海外拠点網を抜本的に見直しており、今後も経営資源を国内に集約する地銀が相次ぎそうだ。

知的財産

研究開発など知的な創造活動で生まれたものの総称。画期的な製造法や事業の仕組、商標、デザイン、コンピュータプログラムなどが代表例だが、研究、開発途上の実験、解析データ、実験用マウスなども含まれる。 2001年現在、日本において知的財産を保護する法律には特許法、著作権法、不正競争防止法、不正アクセス禁止法などがある。ただ、それぞれ所管官庁が異なるうえ、不正流出や無断使用に対する民事、刑事の責任は米国などに比べて軽く、保護が不十分とされる。

地方交付税

地方自治体の必要経費である基準財政需要と、地方税収入など基準財政収入の差額を埋めるため、国から支給される財源。自治体間の不均衡を調整し、どの地域に住んでいても一定の行政サービスを受けられるよう財源を保障する制度。2001/05現在、所得税、法人税、消費税、酒税、たばこ税のいわゆる国税五税の一定額が自動的に地方交付税に充てられている。現在の税体系では国税が約6割を占め、地方税は約4割。一方、歳出規模では地方が国を上回っており、地方の不足分を国からの地方交付税や国庫支出金で補っている。国はこうした財政調整を通じて地方への影響力を保っており、これが地方の自立を妨げ、中央の肥大化につながっているとの批判が強い。

地方債格付

地方自治体が発行する債券の元利払いの確実性を表す格付。東京都が国内の自治体として初めて格付を取得する準備を進めている。公開情報に基づく格付をする準備を進めている海外格付け会社もある。地方債に明示された政府保証はないが地方交付税を中心とした国家財政の支援体制や、国が地方債発行を許可している状況から、信用度は国債に準じるとの見方が一般的。実際は地方債の流通利回りは発行する自治体によって差があり自治体による財政状況の違いを織り込みつつある。東京都が格付取得の準備を勧めている背景には、外債を発行することで有利に資金を調達する狙いがある。政保外債を発行できる自治体は東京都、大阪府、神戸市、横浜市に限られていることから、他の自治体にも格付を取得する動きが広がりそうだ。

地方債の抽選償還

地方公共団体があらかじめ引受先を決めて発行する縁故債の償還方法の1つで、抽選で選ばれた投資家の地方債だけを償還する仕組み。地方自治体は償還の確率が投資家の間で平等になるように、抽選という方法を採用している。自治体が政令により地方債を抽選で償還できる規定(地方財政法)に基づいている。投資家は償還までの見通しを立てた上で債券を購入する。抽選により期限前に突然償還されると、事実上の繰上償還と同じ影響があり、投資家は不測の損害を受ける可能性がある。投資家の間では同規定の廃止を求める声が多かった。政府は99/03に抽選償還規定の撤廃を含む法案を提出、2000/04からの施行が決まった。地方債購入に不安が高まる中、投資家の買い安心感を増し、地方債の円滑消化を促進する狙いがある。

地方自治体の公金

地方自治体が金融機関に預ける公金は、決済資金である歳計現金、特定の政策目的のために積み立てる基金、中小企業などへの制度融資の原資となる預託金の三つに分類できる。歳計現金は自治体の日々の支払いに充てるもので、地方交付税が入る六月頃に大幅に増加する一方、年度末に目減りする傾向がある。 自治体と金融機関の関係でいうと、2002年現在、公金の収納と支払事務全般を指定金融機関が請け負い、これらの事務の一部を指定代理金融機関が、公共料金の収納の一部を収納代理金融機関が担っている。

地方単独事業

地方自治体が地方税や地方債などの自主財源を活用して自主的に判断して実施する公共事業。国からの補助はないが、国から配分される地方交付税交付金は使途が限定されていないため、自治体がこれを地方単独事業の財源に充てることはできる。自治省は地方財政の指針となる2000年度の地方財政計画で、地方単独事業を前年度に比べ4.1%減の18兆5,000億円と、2年ぶりに減額した。財政難の自治体が単独事業を手控える動きが相次いでいるためで、当面は事業量の落ち込みが確実視されている。

チャイニーズウォール

証券会社の引受部門と営業部門の間の情報隔壁。中国の万里の長城になぞらえてこう呼ぶ。上場企業のファイナンス情報など、株価に影響を与える情報を公表以前に知り得る引受部門が、営業部門にこれを流して顧客勧誘に使うことはインサイダー取引にあたる。 88/05の証券取引法改正に伴うインサイダー取引規制の強化に対応して、証券会社はチャイニーズウォールの徹底のため、企業の情報を一元的に管理する部門の増員や機構改革などを行っている。

着陸料

航空機が空港に着陸する度に、航空会社が空港の運営主体に支払う料金。航空機の重量によって異なる。2001年現在、成田空港の場合、ボーイング747-400型機(395トン)で94万8,000円、DC-10-40型機(252トン)で60万4,800円となっている。いずれも世界最高水準で、航空会社は一貫して引き下げを求めている。 成田空港を運営する新東京国際空港公団は、2002/04の暫定平行滑走路の供用開始に向け、着陸料を機体重量1トン当たり現行より200円引き上げて、2,600円とする案を航空会社側に提示している。しかし、着陸料をさらに引き上げれば、海外の航空会社が着陸料の安いアジアの空港に移りかねないとの懸念も根強い。

中期経済財政展望

政府が構造改革を柱に経済や財政をどう運営し、その結果として日本の経済社会がどう変化するかを示す今後五年間の政策の青写真を表す。2001/01に発足した首相を議長とする経済財政諮問会議が11月末に2002年度から五年間の展望をまとめ、年末までに詳細を詰める。展望は毎年の経済財政動向を踏まえて毎年度改定する。 歴代内閣でも中長期の経済計画を策定してきたが、実際の財政事情や政策の実現性などを反映しきれず、効果的な政策が打ち出せなかったとの見方がある。

中期国債ファンド-1

運用会社が期間2〜4年の利付国債などを中心に資金を投じる公社債投資信託。事前に予想の運用利回りが公表され、実績がこの水準を下回ったことがない事実上の確定利回り商品。流動性と安全性を備えた証券商品として1980年に登場した。中国ファンドは過去に組み入れた債券の含み益を活用しながら預貯金などに比べ優位な利回りを維持してきた。01/04から投信の組入債券の評価が時価方式になり、運用実績に応じた分配に変わる。時価方式の場合、金利上昇局面では元本割れの可能性も出る。野村証券グループは中国ファンドの運用、販売を01/09下旬で中止する。中国ファンドの業界全体の残高は6兆6,000億円に達しており、運用各社は受け皿となる後継商品作りを急いでいる。

中期国債ファンド-2

毎日決算する追加型公社債投資信託の一つで、残存期間2〜4年の中期国債を中心に運用する。1980年に商品化された。2001/03までは予想分配率を事前に提示しており、それまでは過去一度もこれを実績が下回ったことのない事実上の確定利回り商品であった。

中期答申

政府税制調査会が毎年度の税制改正とは別に、中長期の税制を展望するためにまとめる報告。3年に1回の割合で公表しており、2000年は21世紀初めの税制のあり方が示された。答申で提言した内容のうち、実現可能なものは翌年度移行の税制改正に盛り込まれる。ただ、実際の税制改正では自民党税制調査会など与党税調が主導権を握る。政府税調は1974年から中期答申に近い形で提言を開始した。97/01に提出された中期答申これからの税制を考えるでは、所得税、個人住民税の最高税率引き下げや、消費税率の再引き上げの必要性に言及した。

中国株式市場

1990/12に上海、1991/07に深せん(?土偏に川)で証券取引所が正式オープンした始まった。2001/02現在、両証券取引所とも国内投資家向けA株と外国人投資家向けB株の二つがあり、従来外国人はA株が、国内投資家はB株が買えない仕組みだった。A株の決定通貨は人民元だが、上海B株は米ドル、深せんB株は香港ドルと分かれている。上海、深せんをあわせたA株市場への上場企業数は2001/02/19現在、1,717社。B株市場は114社だが、うちA株、B株とも上場している会社が86社ある。2000年上半期時点で、上海、深せんに口座を開設した投資家は内外合わせ5,000万人強。9割が個人投資家で機関投資家の育成と閉鎖的な市場の改革が急務となっている。

中国の五ヵ年計画

旧ソ連に倣い、1953年から開始された。経済運営の長期目標を5年ごとに決める。1960年代に、政治、社会的な混乱の影響で一時中断した時期もあった。1970年代末からの改革、開放政策に伴う市場経済化の進展で、経済計画が政府や企業を規制、制約する度合いは低下してきた。ただ、2001年現在でも、マクロの経済運営や産業政策、企業の経営戦略にとっての長期的な指針として、依然大きな役割を果たしている。

中国の三大改革

国有企業、金融、行政機構の3分野の改革を指す。中国では長い間、国有企業の業績が悪化しても監督責任のある行政機関は見て見ぬふりをし、天下り先確保のため国有商業銀行に延命資金を融資させてきた。その結果赤字国有企業が増え、国有商業銀行だけで総額2兆元ともいわれる不良債権を生んだ。朱首相は98/03の就任に際し、この3大改革に3年前後で目処をつけると宣言した。ただ国有企業改革に伴う一時帰休者が1999年末現在で650万人に達するなど、急激な改革の痛みも強まっている。改革と社会安定のバランスを取ることが重要になってきている。

中国の乗用車市場

中国の1999年の乗用車販売台数は前年比12%増の約57万台。日本勢だけでなく欧米の自動車メーカーも現地生産の拡大を急いでおり、ダイムラークライスラーは2001年以降、毎年ミニバンなど現地生産する新モデルを1車種ずつ増やしていく方針。米フォードも長安汽車との間で小型車合弁プロジェクトの最終交渉に入っている。中国の世界貿易機関への加盟に伴う関税率引き下げも市場拡大を後押しする。米国と中国との政府間合意によると、完成車の輸入関税は2000年現在の80〜100%から2006年までに25%へ引き下げられる予定である。

中国のWTO加盟

00/09現在、世界貿易機関(WTO)への中国の加盟に向けて交渉は大詰めを迎えている。WTO加盟には関税率やサービス分野の市場開放などを定める二国間交渉と、加盟国が貿易の制度や条件を定める多国間議定書の作成が必要となる。二国間交渉はメキシコを残すのみだが、焦点の多国間協議は遅れ、年内決着は微妙。加盟が実現すると、外資の参入が難しかった金融や保険、通信、流通などの分野でも市場開放のための規制緩和が進む。また自動車など工業製品の関税率が段階的に引き下げられるため、製品輸入が増加すると予想されている。中国企業は厳しい競争にさらされ、生産性向上や不採算部門の縮小などが課題となる。

中小企業基本法

中小企業政策に関する理念や方向性を示すために、1963年に制定された。99/09現在の基本法は、大企業に比べて技術力や資金力が劣る中小企業の経営基盤の全般的な底上げを第一の目標としており、、弱者救済的な色合いが濃い内容となっている。基本法見直しの是非を検討してきた中小企業製作審議会(首相、通産省の諮問機関)は99/08に中間答申を策定。同法の目的を横並び的な中小企業救済策ではなく、新規分野進出や新技術開発などを目指すベンチャー企業などへの重点的な支援に移すべきだと強調。これを受けて通産省は99年秋の臨時国会に基本法改正案を提出する。

中小企業の事業承継

平成11年版中小企業白書によると、後継者が決まっていない中小企業は65%にのぼる。特に個人事業主の77%で後継者が未定となっている。経営者の高齢化が進み中小企業の後継者難は深刻化している。後継者がいない場合、株式公開、第三者への事業譲渡、清算、廃業などの手段が考えられる。しかし、事業承継手段として株式公開を選択できる中小企業は限られているのに加え、工場などの保有資産を売却し清算しても、負債を返済できない例も多い。そのため、しんきん中金などは、中小企業の第三者への事業譲渡の働きかけを強めている。優良中小企業が事業譲渡すれば取引関係が続くほか、手数料収入も期待できる。貸出に依存した収益基盤を広げるためにも、事業譲渡の仲介が増加する見込である。

中小企業の信用情報

金融機関が企業への融資のリスクを判断する際に利用する経営、財務面のデータが信用情報で、売上高や経常利益、有利子負債額などがある。中小企業への融資拡大を目指す銀行は、リスクを正確に判定するためのデータの蓄積を急いでおり、信用情報の管理会社を共同で設立する動きもある。信用情報は銀行による融資だけでなく、投資家が出資する企業を決めたり、社債を購入したりする場合も使う。中小企業の資金調達手段を多様化させたい通産省は、00/05現在、データベースに蓄積した情報を投資家に提供することも検討している。

中短期国債

中期は償還期限が2年から4年、短期は1年以下の国債。中期国債は石油ショックによる不況を克服する景気対策の財源手当てのために、大量の国債発行が必要となり、70年代後半から発行が始まった。短期国債は石油ショックや第二次石油ショック後の景気対策の資金調達に発行した国債が大量償還を迎えた80年代後半から発行されている。短期国債には3ヶ月物、6ヶ月物、1年物がある。つなぎ資金を手当てする目的が強い。郵貯の定額貯金は高金利時代に集めた106兆円(元利合計)のうち、2000年度、2001年度に合わせて49兆円が流出すると試算されている。定額貯金は99/09現在、10年の利回りが0.2%程度だが、2年物の中期国債は0.3%程度の金利があり、償還まで保有すれば定額よりも有利な状態となっている。

中東和平

1948年のイスラエル建国以来、同国と周辺アラブ諸国は数次にわたる中東戦争で砲火を交えている。1993年の暫定自治宣言で突破口が開かれたパレスチナとの本格的な和平交渉は、和平推進を掲げるバラク氏が1999年に首相に就任して実現への期待が高まっていた。 2000年夏には、当時の米クリントン大統領を仲介役に三首脳会談を開いたが、聖地エルサレムの主権問題などで合意に至らず物別れに終わった。その後、発生したイスラエル治安部隊とパレスチナ住民の間の衝突拡大により和平への機運は大幅に後退した。中東和平交渉の行方は、ユダヤ系住民の存在感が大きい米社会での関心が非常に高いほか、歴史的、宗教的経緯からアラブ、イスラム世界への影響も大きい。2001年現在、中東からの原油輸入に大きく依存する日本政府も仲介外交に力を注いでいる。

超大型旅客機

乗客の座席数が500を超える大型旅客機を指す。2000年現在では、米ボーイング社のB-747-400の標準仕様客席数が416で最大。ボーイングが計画しているB747Xシリーズで最大の拡張型は522人乗り。欧州エアバスインダストリーが生産を決定したA380も555人乗りで、現行のジャンボ機を上回る。

超過準備

金融機関が日銀に対して無利息で積み立てる準備預金を、法律で決まった額以上に積み立てること。準備預金は金融機関が預金引き出しや銀行間決済に備えて日銀に預ける制度で、毎月16日から翌月の15日までに積み立てることになっている。98/10/27の必要額は1日当たり約3兆5,000億円〜3兆6,000億円程度。超過準備分は金融機関にとって準備預金に参入されず、利息も生まない無駄金となる。これまで日銀は超過準備にならないよう金融調節してきた。しかし、98/10現在では金融システム不安から手元に資金を多めに置く金融機関が増加し、超過準備を抱えたまま最終日を迎えることが多くなっている。日銀も市場の流動性を確保して市場金利を安定させる必要があると判断し、超過準備を容認する方針を打ち出している。

長期公社債投資信託

利付金融債や社債など中長期の債券が主な投資対象の追加型公社債投信。安定的な利回りを期待する個人投資家向けの証券商品として1961年に登場した。当時、発行が急増した民間債の消化を促す狙いもあった。

長期公社債投信

利付金融債や社債など中長期の債券を主要投資対象とする追加型公社債投信。発行が急増した民間債の消化促進を目的に、安定的な利回りを期対する個人投資家の資金による購入を期待して1961年に創設された。証券会社や銀行などの店頭を通じた販売のほか、一部企業の財形貯蓄としても採用されるなど個人投資家への浸透度は高い。00/07末の口座数は業界全体で延べ139万口座にのぼる。証券投資信託協会は、99/04、長期公社債投信に組み入れている非上場債券について、01/04から時価評価に移行することを決めた。日本公認会計士協会が企業会計審議会の答申を受け、非上場債券の評価を取得価格ではなく、その時点の時価でするという実務指針を公表したのに対応した。

長期国債の買入

日銀が金融機関に資金を供給する公開市場操作の手段の一つ。金融機関が保有している期間2〜20年の中長期国債を日銀が買い入れることで、金融機関の使える資金が増加する仕組になっている。 国債の買入を無制限に増やせば、「日銀が財務省の発行する新規国債を直接引き受けることにつながりかねない」との連想も市場に出ることになる。この場合、財政規律の喪失を招き、長期金利が急騰するとの懸念から、2002年現在、日銀は保有残高を銀行券の発行残高の範囲内に抑えることで歯止めをかけている。

長期負債

特殊法人の借入金と債券のうち、短期の資金繰りのためではなく、それぞれの法人が事業を実施するために調達する資金。借入金には旧資金運用部借入金で2001年現在の財政融資資金のほか、簡保資金借入金、特別会計借入金、民間借入金などがある。債券は政府保証債や民間金融機関が引き受ける縁故債のほか、財政融資資金や簡保資金が引き受けるものもある。2001年度からは、一部の特殊法人が政府保証の付かない公募債を財投機関債として発行している。

朝鮮半島連邦制

分断状態にある朝鮮半島を直ちに統一するのは困難なため、過渡的措置として南北が連邦制をとるべきだとの構想。統一政府の下に南北双方がここの体制を維持したまま地方政府などを置くことを認め、将来的に完全な統一を目指す。 1960年に、当時の朝鮮民主主義人民共和国首相である金日成氏が打ち出し、その後も1973年に高麗連邦共和国、1980年に高麗民主連邦共和国という名で連邦国家を創設することを提案した。韓国の金大中大統領は国家連合→連邦制→完全統一という三段階統一論の中で連邦制に言及してきた。韓国では連合制と呼ばれることもある。

長短分離

長期金融を専門とする金融機関と短期金融を主な業務とする普通銀行の活動範囲を分けた日本独自の金融制度。52年の長期信用銀行法の公布による分離政策の下で、長信銀は戦後日本の基幹産業を育成するために安定的な資金を供給する役割を担ってきた。都市銀行などが主に預金で資金を集めるのに対して、長信銀は金融債の発行を通じて資金を調達し、企業に長期資金を供給する。ただ、84年の日米円ドル委員会報告を機に金融の自由化が進展、長短の垣根は低くなっている。日本版ビッグバンの本格化で、今後、都銀などにも金融債の発行が認められる見通しのほか、社債などの直接資本市場の発達で企業の資金調達手段も多様化しつつある。長信銀の存在価値そのものが問われていると言える。

超長期国債

償還期限が十年を超える国債。現在は20年国債しか発行されていない。83年に15年国債が発行されたのが最初。これは85年度以降に集中する大量償還をならすことや、種類や資金調達ルートを多様化して国債の消化を円滑に進めることなどが目的だった。入札は直接公募の価格競争による入札方式で行われる。利回りの低いものから順次落札させ、合計が発行額に達したら入札を打ち切って落札者を決定、それぞれの落札条件で売却される。 97/07末現在の市場現存額は、26兆5,595億円で国債全体の10.6%を占める。金利変動時の価格の振れ幅は大きいが、少しでも高い利回りを得ようとする投資家を中心に買われている。97/07発行の37回債(20年物)は97/08/07以来、業者間取引で3%割れの水準で推移している。

超低金利政策

日銀が政策金利を極めて低い水準で推移するように調節すること。景気回復の下支えや金融機関の資金繰りの改善、経済構造改革に伴うデフレ圧力の緩和などが主な狙いとなる。日銀は1999/02に無担保コール翌日物金利を実質ゼロ%に誘導するゼロ金利政策を導入。2000年夏に一旦解除したが、2001/03には景気低迷によるデフレ圧力に対処する狙いから金融市場に供給する資金量を増やす量的緩和に踏み切り、事実上のゼロ金利政策復活となった。日銀は消費者物価指数の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上になるまで量的緩和を継続することを決定した。

著作権管理団体

1939年に制定された仲介業務法に基づいて政府が許可する著作権保護、育成のための管理団体。著作権者の委託を受けて、使用料の徴収や分配などを行っている。2000年現在、音楽の日本音楽著作権協会(JASRAC)、小説の日本文芸著作権保護同盟、脚本の日本脚本家連盟、日本シナリオ作家協会の3分野4団体のみが認められている。仲介業務法が対象としている著作権の範囲は、施行時の勅令によって音楽、小説、脚本に限定されている。情報技術の進歩で情報内容の複製、流通が容易になったことから、ゲームソフト業界なども強い著作権保護を求めており、仲介業務法に代わる新しい法的ルールの重要性が増してきている。

著作権侵害

音楽やゲームソフト、文章など作者や管理者が著作権を持つものを無断で販売したり、使用したりすること。被害者は損害賠償を請求できる。情報が発信者匿名のまま流通するインターネット上では著作権を含めた知的所有権の管理が難しいといわれている。文相の諮問機関である著作権審議会の国際小委員会は、2000年夏、ホームページ上で著作物を無断複製したり、人格権を侵害した場合のプロバイダの責任を明確にすべきだとの提言をまとめた。

ツイストオペ

日銀が金融市場に期間3ヶ月などの長めの資金を大量に供給する一方、1〜2週間程度の短期間の資金を大量に吸収する金融調節方針。資金供給量を増やしても足元で短期間の資金を大量に吸収することで日々の資金需給は保たれるため、無担保コール翌日物金利の誘導水準は変えずに、3ヶ月物など期間が長めの金利を引き下げる効果を出せる。コンピュータ2000年問題を控えた1999年末や、即時グロス決済導入直前の2000年末には資金需給が逼迫し、年末越えの金利が急上昇しそうになったため、日銀はツイストオペに近い金融調節を実施した。

通貨オプションの予想変動率

為替相場の変動を確率的に予想した値のこと。ボラティリティーとも呼ばれる。通貨オプション取引で、コールやプットを売買する際の価格を決定する基準となる。予想変動率は過去の為替相場の変動を元に今後の相場変動予想やオプション取引での需給関係を考慮して決める。直物相場が乱高下しているときには上昇し、膠着状態が続いていると低下する。先行きの相場見通しが片寄った場合も上昇する傾向がある。円・ドルの直物相場が約5年3ヶ月ぶりの円安・ドル高となる128.07円を付けた97/11/25には、1ヶ月先の予想変動率は13.7%まで高まった。その後も、高い水準で推移している。

通過オプション売買高

外国為替市場であらかじめ決められた値段で円やドルなどを売買する権利を取り引きする通過オプションの取引額のこと。東京市場では日銀が毎日、午後5時に円/ドルの取引額を発表している。 97年の東京市場で円・ドルのオプション売買高は約4,067億ドルで、前年比3割以上増えた。97年の東京の直物・先物・スワップ取引も過去最高を記録したが、伸び率は約2割とオプションを下回った。輸出入企業などが為替差損を割けるために積極的に利用しはじめたことなどが、オプションの普及につながっている。リスクヘッジのためにオプションを組み込んだ外債投資商品も増えている。最近のアジア通貨危機を受け、オプションを活用した通過防衛策を提唱する学者も増えている。

通貨資本規制

ロシア経済危機以降、新興国の当局が相次ぎ導入し始めた通貨、資本取引上の規制のこと。マレーシアが98/09に入り、国外でのマレーシアドルと外貨の交換停止に動いたほか、中国も保税区での通貨規制を強化した。各国が規制を強化したきっかけは様々だが、底流にはヘッジファンドなど投機筋の短期資金による自国市場の混乱を抑える狙いがある。マレーシアのマハティール首相はジョージソロス氏との対立姿勢を鮮明にしている。ただ、規制による副作用も懸念される。規制は短期資金の流出入を抑える一方で、主要国からの進出企業の資金調達を制限することにもなり、今後、直接投資が鈍化しかねないとの懸念も浮上している。

通貨のドル化

自国通貨を米ドルに切り替えること。基軸通貨であるドルを自国通貨として採用することで通貨の安定を図ることが目的。すでにパナマなどが採用している。投機的な短期資本の移動によって生じる通貨危機を回避する手段として、中南米諸国などで注目を集めている。ドル化は通貨を安定させる一方で、中央銀行の役割が限定されてしまうため、主体的な金融政策を取ることは難しくなる。又、米国の金融政策の変更がドル化した国の経済に打撃を与える可能性も指摘されている。中南米市場では99/05末のアルゼンチン通貨ペソ切り下げ観測をきっかけに、通貨危機の懸念が再燃した。アルゼンチンは99/06/02現在、ペソを米ドルに連動させる通貨政策をとっているが、これを一歩進めて、完全にドル化させようとする動きが強まってきている。

通貨バスケット制

自国通貨をドル、円、ユーロなど、複数の通貨に連動させる仕組み。自国の貿易取引や資本取引に応じた比率を元に複数の通貨のバスケットを作成、その加重平均値に自国通貨を連動させることで通貨の安定を目指すのが目的。 97年のアジア通貨危機ではドル連動(ペッグ)制や、ドルに偏った通貨バスケット制を採用している国地域が危機に陥った。このため日本の蔵相諮問機関である外国為替等審議会はドル、円、ユーロのバランスの取れたバスケット制をアジア通貨に導入するよう提言。これを受けて日本政府は、99/04下旬の国際通貨基金暫定委員会で導入を正式に提案した。 99/05/15から開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)蔵相会議でも通過バスケット制の導入が議論される予定。

通信回線接続料金

2002年現在、市内、圏内通信網を持たない通信事業者はNTT東西地域会社の通信網を使い、企業や家庭にサービスを提供している。接続料金はその際の回線使用料として両社に支払う卸通信料金の一種。NTTが地域通信網を独占している日本では、接続料金の水準が高すぎて新規参入を阻害していると欧米から批判されていた。 2000年夏の日米規制緩和協議において、接続料を大幅に引き下げる方向で合意。料金引下の原資ができた通信各社は一斉に値下げ競争に走ったため、利用者料金は接続料引下以上に値下がりした経緯がある。しかし、2002年現在、欧州では接続料はさらに下がる傾向にあり、欧米水準を実現するにはNTTの一層の経営効率化が必要と指摘されている。

通信回線の敷設

通信事業者は自らの回線を利用するか、他社の回線を経由して利用者にサービスを提供する。広いエリアをカバーする回線を敷けるのは、既存のインフラに敷設できる業者に限られる地域通信網を独占している日本電信電話を筆頭に、送電線を活用する電力系新電電、高速道路沿いを活用するKDD、JR線路沿いの日本テレコムなどがこれにあたる。こうした基礎インフラを持たない新規参入業者は、所有者と交渉して回線を併設させてもらうか、接続料を払って他社の回線を借りなければならないため、競争力が劣る。通信回線の敷設を容易にすることは、情報技術普及の鍵といえる。

通信の自由化

1985年に旧電電公社をNTTに民営化した際に、通信事業への民間参入も認めた。一方、過当競争に陥らないように需給調整をするなど競争を制限する権限を国に残した経緯がある。その結果、NTTの独占力が維持され料金の高止まりにつながったとの指摘が多い。 1990年代後半に、NTTの通信網開放や事業分割など新規参入促進のための法改正を繰り返したが、2002年現在、新規参入事業者がNTTの独占力の排除に必要と主張する同社完全分割実現の目処は立っていない。

通信放送の融合

放送が現在のアナログ方式からデジタル方式に切り替わると、電波をより効率的に利用でき、高精細の画像や多チャンネル放送など大量の情報を送信できるようになる。インターネットと組み合わせた双方向通信サービスも実現し、家庭のテレビを使ったネット通信販売なども可能になる。 00/12のBS(放送衛星)デジタル放送の開始を睨んで、証券会社や銀行、娯楽ソフト会社などが放送とネットを使った金融サービスやソフト販売などを計画している。ケーブルテレビ(CATV)会社も動画を送れる大容量回線を使った高速ネットサービスを売り物に顧客を獲得している。

つなぎ売買

値下がりによる現物の損失をカラ売買で回避する方法。掛けつなぎ、保険つなぎともいう。売りつなぎと買いつなぎがあるが、大部分は売りつなぎである。株式や商品を持っている人がその値下がり損を防ぐために株式では信用取引、商品の場合は清算取引で売っておくこと。

低硫黄軽油

2001/02現在、軽油の硫黄成分は500PPM以下に規制されており、実際には300PPM前後の製品が販売されている。硫黄を多く含む軽油がエンジンなどで燃焼すると硫黄酸化物が発生する上、排ガスから有害成分を除去するための触媒にこびりついて触媒の働きを劣化させ、公害の原因になる窒素酸化物の発生量を増やす。このため軽油の低硫黄化はトラックやバスなどによる大気汚染防止の切り札ともいわれている。低硫黄化のためには石油精製設備の脱硫能力を増強するなどして対応する必要がある。東京都が2003/10から50PPM以下へ規制するほか、埼玉県や千葉県、神奈川県なども2003/10から東京都と同様の規制の導入を検討するなど、規制強化の動きが広がっている。

ディスカウントブローカー-1

従来のフルサービスブローカーのように多数の営業社員を使った販売活動や投資情報の提供をせず、営業経費を切りつめることで、大幅に割り引いた手数料で株式の売買注文などを受け付ける証券会社。米国で75年の株式売買委託手数料の自由化をきっかけに登場した。 90年代に入るとインターネットを活用したオンラインディスカウントブローカーが伸びだした。手数料が安い上、複数の情報提供会社と契約し、投資情報や資産管理に必要な分析ツールの提供もしている。日本でも、住友銀行が米ドナルドソンラフキンアンドジェンレット(DLJ)グループ傘下のオンラインディスカウントブローカーのDLJディレクトと合弁会社を設立する。

ディスカウントブローカー-2

多くの人手を使う営業活動や調査情報などを提供せず、大幅に割り引いた手数料で株式の売買注文などを受け付ける証券会社のこと店舗数を極力抑え、顧客の注文はインターネットや電話で受け付けるなど、営業経費を抑えている。米国では1975年の株式売買委託手数料の自由化をきっかけに登場した。フィデリティブローカレッジサービシーズ、チャールズシュワブ、Eトレード、TDウォーターハウス、アメリトレードなどが大手。日本では手数料が自由化された99/10に証券会社が一斉に値下げに踏み切り、2000年は再値下げの動きも相次いでいる。預かり資産が多いほど手数料率が安くなる方式や、1日の売買代金の合計で手数料が決まる方式など、料金体系も多様化している。

抵当証券-1

貸付債券と、それを担保する不動産の抵当権を一体のものとした有価証券の一種。抵当証券法に基づいて、債権者の申請により、法務局(登記所)が発行する。融資期間は15から30年と比較的長いのが特徴だ。抵当証券会社が一般の個人投資家に抵当証券を販売する際には、抵当証券を複数の小口の共有持ち分権に分けるのが一般的だ。投資家の手元には、共有権の購入を証明するモーゲージ証書などと呼ばれる書面が渡される。抵当証券会社が破綻しても、投資家は自分で債務者から債権を回収できる。しかし一件の抵当証券に多数の投資家が共有者として存在することから、回収業務は困難。このため抵当証券保管機構が投資家の委任に基づき、融資の元利金の回収を代行する。

抵当証券-2

抵当証券会社が企業などに不動産を担保として融資し、その担保付債権を小口に分割後、抵当証券として販売する金融商品。抵当証券会社が半年ごとに金利を支払い、満期時に買い戻す。1〜3年物が多い。自由金利で、一般に銀行などの預貯金よりも高利回りだが、預金保険の対象外で顧客は保護されない。1995年の旧木津信用組合や旧兵庫銀行の経営破綻で系列の抵当証券会社が倒産し、証券の購入者が元本保証を受けられずに社会問題化したこともある。

ディーゼルエンジン

ガソリンエンジンよりも、熱量を動力に転換する効率、いわゆる熱効率が高いため燃費に優れ、二酸化炭素の排出量が少ない。半面、エンジンの振動や騒音が大きいなどの欠点もある。2002年現在、特にディーゼル車の排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)や窒素酸化物は大気汚染の元凶とされている。

手形債権流動化

企業が製品納入代金などとして受け取った商業手形を、手形支払期日前に現金化するため、第三者を通じて流動化すること。手形債権を保有する企業は早期に資金を得ることで資金効率が高まる。主に短期の資金調達手段として使われる。手形債権を流動化する手法には、特定目的会社方式と信託方式がある。SPC方式はSBCが債券やコマーシャルペーパーを発行。信託方式は企業が信託銀行に手形債権をまとめて譲渡し、それを裏付けに信託銀行が小口の信託受益権を発行する。 2000年現在、手形債権の流動化は対象債権が小規模のケースが多いため、ほとんどが発行コストの小さい信託方式を採用している。手形の振出人が知名度の低い中小企業の場合、銀行が手形割引に応じないこともあるが、流動化を活用すれば複数の手形債権をまとめて現金化することが可能になる。

デジタル家電-1

デジタルテレビ、DVDプレーヤーなどデジタル技術を活用した家電製品の総称。音声や映像などの情報を数値化することで情報伝達の質と量が飛躍的に向上した。2001年現在、情報通信機器との情報データのやり取りも容易になり、機器のネットワーク化が進行している。 BSデジタル放送の開始などを機に、日本でも音響、映像機器がアナログからデジタルに切り替わるとみられている。インターネットとの接続などで新たな市場が広がり、日本のデジタル家電市場は2000年以降の10年間で約60兆円になるとの試算もある。

デジタル家電-2

BS(放送衛星)デジタル放送の受信機を内蔵したデジタルテレビ、DVD(デジタル多用途ディスク)プレーヤーなど、映像や音声などの情報を、デジタル方式で記録、再生する機能を備えた家電製品のこと

デジタル機器

パソコンやデジタルカメラ、ゲーム機、プリンタなどデジタル技術を活用した機器の総称。データをデジタル信号に変換して処理するため、インターネットやLANなどの通信回線を介して相互に情報交換できる。従来は業務用を中心に普及してきたが、2001年現在ではAV分野を筆頭に家庭向け製品の開発も急速に進んでいる。冷蔵庫や電子レンジ、娯楽機器などあらゆる電気製品にデジタル技術が取り入れられてきた。インターネットのアドレスの数を飛躍的に増やすデータ転送技術IPv6が本格導入されれば、インターネットで結んで携帯電話等を使い、外出先からのテレビ録画予約等の遠隔操作も可能になる。

デジタルデバイド-1

情報化が生む経済格差と訳す。情報、通信技術の急速な発展は産業や社会に大きな変革をもたらし生活を豊かにする可能性を秘めている。半面、技術発展についていけない途上国や、先進国内の貧困層や高齢者がますます不利な立場に置かれ富裕層との経済格差が広がる懸念がある。 2000年現在、アフリカや南米ではインターネット利用者の9割以上が高額所得者。米国でも一定の年収を境に家庭のネット普及率に20倍以上もの差があることが、商務省や国連開発計画(UNDP)の調査で分かっている。

デジタルデバイド-2

インターネットに触れる機会など情報技術の恩恵を受けることのできる人とできない人との間に生じる経済格差。端末やネット接続の技術の有無が情報収集などの差を生み、所得格差を拡大させる。格差の解消は民主化推進や労働生産性の向上、相互分化の理解推進に役立つとされる。日本政府は格差是正のため、2000年度からの5年間で、150億ドルの包括的協力を実施する方針である。2000/10からは、具体策を検討するために、タイ、フィリピン、カンボジアなどに調査団を派遣した。世界銀行や国連開発計画などの国際機関も格差是正に向けた取り組みを強化している。

デジタル放送-1

放送がデジタル化すると多チャンネルで高画質の番組が楽しめるほか、従来のアナログ放送ではできないインターネットと連動した双方向通信サービスが可能になる。例えばテレビで音楽番組を見ながら気に入った楽曲を配信販売で購入できるようになる。郵政省の計画では、すでにデジタル化されているCS(通信衛生)放送に続き、BS(放送衛生)、地上波も2010年までにアナログからデジタルに置き換わる。主要なケーブルテレビ局(CATV)局も2005年までにデジタル化を完了する。

デジタル放送-2

画像や音声などのコンテンツ(情報の内容)をデジタル信号に置き換え、コンピュータで圧縮処理して送信する放送。画像のゆがみや雑音も取り除くため、現行のアナログ放送に比べて、音質、画質ともに優れている。将来は地上波、衛星、ケーブルテレビの全ての放送がデジタル化される見通しである。視聴者と放送局がリアルタイムでデータをやり取りする双方向サービスの実施が最大の利点。英国では衛星放送大手のBスカイBやブリティッシュテレコム(BT)、松下電気産業などの合弁会社が1999年から金融取引やオンラインショッピングができる双方向サービスを提供している。

デジタル放送-3

放送がアナログからデジタル化すると、電波が効率よく使えるため、高画質、多チャンネル放送が可能になるうえ、インターネットなどデータ通信と組み合わせた新しい放送ができる。映像を一方的に受信するだけでなく、視聴者から情報を発信できるため、視聴者参加番組やネットショッピングも簡単に実現する。 2000年末に放送を開始するBS(放送衛星)デジタル放送でも、ネット連動を想定したデータ放送が始まる予定。次期CS(通信衛星)では、より高速通信が可能になる見込みで、ネットバンキングやネットショッピングなどへの応用が期待されている。

デジタル放送-4

映像や音声などの情報を0と1で構成されるデジタル情報に変換した上で、電波に載せて伝送する放送方式を指す。従来のアナログ信号と異なり、画像圧縮技術を利用できるために、同じ電波の帯域により多くの情報を乗せることができ、多チャンネル化が可能になる。海外では米国、英国が1998年から、スウェーデンが1999年から地上波のデジタル放送を開始。2000/10現在、米国では52都市、158局が実施し、約1億ある世帯のうちの66%が受信可能とされるが、受信機内蔵型テレビが高価なこともあり、普及は33万台にとどまっている。

デジタル放送-5

映像や音声などの情報を0と1で構成するデジタル情報に変換し、電波に乗せて伝送する放送方式。アナログ信号と違い、画像圧縮技術を利用できるので多チャンネル放送が可能になるほか、画像を劣化させずにテレビに備蓄して見たい番組を瞬時に引き出すこともできる。 1996年にまずCS(通信衛星)放送がデジタル化し、多チャンネル放送が実現。2000年末にはBS(放送衛星)放送もデジタル化し高画質、双方向のサービスが始まった。基幹放送である地上波放送は2003年に首都圏などで開始する予定。2001年現在、2011年までのアナログ放送の廃止が決まっている。

デジタルAV機器

映像や音声などの情報をデジタル方式で記録、再生する音響映像機器。大容量記録メディアであるDVDやデジタルスチールカメラ、デジタルテレビなどが主役。従来のアナログ方式に比べ、情報量が飛躍的に多く、機器間で情報をやり取りしやすくなる。電子情報技術産業協会の予測では、デジタルテレビの2001年の国内需要は前年比2.5倍の150万台。デジタルカメラも、2001年度の出荷台数が前年度の2倍近い2,000万台に急増する見込み。

デットアサンプション

社債発行会社が銀行の海外支店に既発行社債の残存利払い金及び償還金支払いを委託するもの。これにより、社債発行会社は、残存利払い金と償還金をオフバランスすることが可能で、バランスシートの改善を図ることができる。また、償還時にリファイナンスが予定されている社債を対象とする場合、預託金を現時点の過去最低水準での低利調達を実現することもできる。電力各社では、残存5年以下の利率6〜7%前後の高クーポン債を対象に、95年度以降に活発に実施している。

デビットカード

金融機関のキャッシュカードで百貨店やスーパーでの買い物などができるサービス。病院やタクシーでの支払いにも使える。本格的にスタートしたのは2000/03で、利用可能な店舗は2001/01現在、全国で15万ヶ所。現金自動預払機から預金を引き出す時と同様、支払いの際に暗証番号を打ち込み、口座から即座に代金が引き落とされる。

デビットカードサービス-1

金融機関のキャッシュカードで買い物ができる決済上のサービス。店頭の専用端末にカードを通すだけで、顧客の口座から自動的に代金が引き落とされる。金融機関や小売店が日本でビットカード推進協議会を作り普及を狙っている。 99/01に試験的にスタート。1年間の利用件数は39万5,400件、取引金額は111億円。郵便貯金や富士銀行など都市銀行、地方銀行など7行が試験的に導入している段階だが、システムの準備が整う00/03/06以降は約900の金融機関に広がる。利用できる店舗数も00/02現在の10倍の10万店舗に増える。普及に伴い盗難や紛失時の不正使用の増加を懸念する声が出ており、銀行が保険会社と組んでキャッシュカードに盗難保険を付けるケースも出始めている。

デビットカードサービス-2

銀行などのキャッシュカードを使って買い物ができるようにするサービスのこと。99/01から一部の金融機関と百貨店などが開始し、00/03/06から本格展開している。00/03/30現在、都市銀行や地方銀行、郵貯など600の金融機関が発行した通常のキャッシュカードを全国10万ヶ所で使用できる。欧米では既に普及しており、日本でも現金やクレジットカードと並ぶ決済手段として定着する可能性がある。ただ、これまで銀行の現金自動預け払い機(ATM)などでしか使えなかったキャッシュカードの利用範囲が広がることで、盗難や偽造などの危険性が高まっており、対策が急務となっている。

デビットカードサービス-3

銀行などが発行するキャッシュカードで買い物できるサービスで、00/03に本格的に立ち上がった。加盟店店頭の端末にキャッシュカードを差し込み暗証番号などを入力すると、瞬時に顧客の銀行口座から代金が引き落とされ店側の口座に入金される仕組み。日本デビットカード推進協議会が推進するジェイデビットには2000年現在、都市銀行や地方銀行、郵便貯金など670以上の金融機関が参加。国内約3億2,000万枚のキャッシュカードが利用できる。

デフォルト

公社債など債務利払いが遅延したり元本のが不能になること。社債を発行している企業が倒産した場合などにこうした状態に陥り、投資家は元利金を殆ど回収できなくなる。無担保社債の発行が認められていなかった時代には、デフォルトした社債は受託銀行(現在の社債管理会社)がかいとっていた。しかし、国内公募無担保債で始めてデフォルトしたヤオハンジャパン債の場合、買い取りは行われず、投資家が損失を被った。 97/11に自主廃業を申請した山一證券の転換社債は全額償還された。商法に基づく会社整理の手続きなどをとらないうちに、日銀特融を使って山一が投資家に元利金を支払った。一部には投資家の自己責任原則を求める動きに逆行するとの指摘も出ている。

デフォルトオプション

株式や債券の将来価格を想定して、一定期間後の売買権利を取引するオプションの一種で、企業の破綻に備えることを目的にした金融取引。ある企業が破綻すれば、多額の損害を受ける投資家は、金融機関の仲介で、破綻したときの損害分を別の投資家に引き受けてもらう契約をする。代わりに契約期間中、手数料を相手側に支払う。破綻すれば、契約時に決めた元本を全額支払ってもらえる。デフォルトオプションなどの信用リスク取引は、クレジットデリバティブと呼ばれ、90年代に入って欧米で流行した。国内では信用不安の高まりを背景に、都銀や長信銀などの一部が、対象担っているという。市場規模は拡大しており、金融監督庁などは、法整備を進める方針だ。

デフォルトスワップ

クレジットデリバティブの基本型で、最も普及している。例えばCの債券を持つAが、一定のプレミアムを払い、Cの信用リスクをBに移転する。Bはプレミアムを受け取るが、Cにデフォルトなどが発生した場合、Aに生じる経済的な損失をBが肩代わりする必要がある。

デフレ

物価が持続的に下落する経済現象を指す。日本政府は2001/03に「日本経済は緩やかなデフレにある」と正式に認定した。2001年平均の全国の消費者物価指数は前年比で0.7%下落し、戦後初めての三年連続のマイナスを記録した。最近ではオーストラリアやカナダが物価下落の経験を持つが、一年程度で歯止めがかかっている。 日本の物価下落は需要不足や低価格の輸入品の流入、技術革新などが原因とされる。消費者にとっては購買力の増加につながるが、長期化すれば企業収益の減少や所得低迷、実質的な債務負担増を招く。物価下落と景気悪化が連鎖的に進むデフレスパイラルに陥る懸念もある。

手元流動性

バランスシート上の現預金と短期保有の有価証券の合計で、手元資金ともいう。この数値が大きいほど、企業は急な資金需要への対応力が強いとされる。 97年以降の信用収縮の動きに対応して、有利子負債を増やしてでも手元流動性を高め、資金面での安全性を確保する企業が目立つ。サッポロビールは99年に償還期限を迎える社債向けの資金を前倒しで調達した結果、98/12月期末の手元流動性は546億円と、1年前に比べ171億円増加した。ただ、現預金に含まれる特定金銭信託や、原価法採用企業の保有株には含み損が発生していたり、重要な取引企業金融機関の持合株式は簡単に売却できない場合もある。企業の実際の資金余裕度を知るには、資産内容の詳細な分析が必要だ。

手元流動性比率

手元流動性は現預金と換金性の高い短期保有の有価証券を合計したもので、企業の支払準備を示す。手元流動性が月間売上高の何倍かを表す指標が手元流動性比率である。 80年代末に日本企業は手元流動性を大きく膨らませた。株高を背景に財テクにあてていたもので、バブル経済が崩壊した結果、運用していた株に含み損が生じた。最近は低金利、株安で資金の運用難に陥っており、,企業は手元流動性の圧縮を急いでいる。96年度末の全産業ベースの上場企業の同比率は1.56倍(95年度は1.67倍)まで低下した。日本飛行機は手元流動性を減らして有利子負債を返済する計画だ。収益をあまり生まない資産を持つより財務体質の改善を優先することにした。

デュレーション

英語で期間の長さを示す用語だが、債券市場では保有債券の償還までの残存期間を表す。複数の銘柄で構成されるポートフォリオの場合、各銘柄の時価総額加重平均をとることでポートフォリオ全体のデュレーションの値を求めることができる。例えばある銘柄に対して、それよりもデュレーションの短い銘柄と長い銘柄を組み合わせれば、元の銘柄とデュレーションの同じポートフォリオを作り出すこともできる。国債増発に伴う需給悪化懸念が強まった98年末から99年初めにかけては、投資家が保有債券のデュレーションを短期化する動きが目立った。金利が上昇した場合に価格下落リスクが相対的に高い長めの債券を売却し、短めの債券にシフトした。

デリバティブポートフォリオ管理

保有するスワップやオプションなど金融派生商品のリスクや時価、損益などを適切に把握し、効率的な運用を可能にすること。00/04から導入された金融商品会計基準で、期末にデリバティブの時価評価が義務付けられたため、企業は対応を迫られることになった。デリバティブ取引はリスク管理を怠れば、巨額の損失を被りかねない。1994年には米カリフォルニア州オレンジ郡が破産。1995年には英金融機関、ベアリング社がトレーダー1人の取引失敗から経営破綻に追いこまれた。日本でも1998年にヤクルトがデリバティブ取引で巨額の損失を被った事例がある。企業はリスク管理能力を高めれば、デリバティブを活用することで、管理されたリスクを積極的に取れるようになり、効率的に経営資源を配分できるようになる。

デルタヘッジ

通貨オプション取引で買い手が権利行使する場合に備えて、売り手が損失を回避する手段。売り手は為替相場の水準が不利にならないうちに必要な通過を直物市場で調達する。オプションと為替相場の動きを見ながら、オプションの売り手がドルを手当てするヘッジ額を変える。その際の目安になるのがデルタ値である。デルタ値は為替相場にオプションの価格がどれだけ連動するかを示した値。通常、ドルを買う権利(ドルコール)を売却した銀行は、同時に一定額のドルを直物市場で購入する。その後、為替が一段と円安ドル高に振れた場合には、損失が膨らまないようにデルタ値に基づいてドル買いを積み増していく。反対に、円高ドル安に振れれば、デルタ値に基づいてドルを売って持ち高を減らす。

テロ支援国家指定

米国は国際的なテロ活動を支援する国家を指定し、単独で経済制裁を科している。米国務省が2000年春に発表した1999年版国際テロ報告書で指定したのは朝鮮民主主義人民共和国、イラク、イラン、キューバ、スーダン、リビア、シリアの7カ国。北朝鮮にはテロ防止に関する前向きな声明などが見られると一定の評価をしたものの、指定解除には至っていない。大韓航空機爆破事件が起きた後の1988年にテロ支援国家に指定された北朝鮮は、米国に指定解除を強く求めている。米政府は1970年のよど号ハイジャック事件で北朝鮮にわたった日本赤軍メンバーの国外追放などの問題解決が先決との立場を崩していない。

テロ資金供与防止条約

国連のテロ対策関連条約の一つ。公共物を爆弾などで破壊する集団などに資金が流れないようにする国際的な取り決めで、国連は2000/01に署名作業に入った。日本政府は米同時テロを機にした反テロ機運の高まりを受けて、2001年秋に署名、2002年通常国会で必要な国内法を整備する計画である。 条約は加盟国に対して、@テロ資金を提供する行為を罰する法律を整備する、A海外から逃げ込んだ容疑者を国内で罰しない場合は被害国に引き渡す、Bテロ資金提供の疑いがある金融取引を当局などに通報させる、金融機関に対して取引記録を保存させるなどを求めている。

テロ対策国連条約

ハイジャックや爆弾などを使ったテロを防ぐため、国連が採択した取り決め。2001/09現在、12の条約が存在する。テロ撲滅に向け、条約は各国に刑法の整備や捜査面での国際協力などを求めている。条約加盟にはテロ行為やその準備行為などを処罰する国内規定を設けることや、国内処罰しない場合には被害国に被告人らを引き渡すことが必要な場合がある。

電気事業法

電力事業の適正な運営や消費者の利益保護のために、電気事業者(電力会社)が守るべきルールを定めた法律。65年に施行された。96/01の改定では、自家発電事業者などが電力会社に電気を販売する電力卸売りへの参入を自由化した。 99年の通常国会では、既存の電力会社と競合する形で消費者に電気を販売する電力小売りも部分的に自由化する改正法が成立した。2000/03に施行する。法施行から3年後をめどに、電気事業審議会(通産省の諮問機関)が一層の自由化の是非を検討することになっている。

電気通信事業法

国内で固定電話や携帯電話、PHS、インターネットなど通信サービスを手掛ける企業を規制する法律。2001年現在、自前で通信回線を保有するNTT東西地域会社やNTTドコモ、KDDIなどは第一種事業者と規定され、安定してサービスを提供するように事業の開始や停止について総務省の認可が必要となっている。 NTTグループなど大手通信事業者から通信回線を借りてサービスを提供している中小プロバイダなどは第二種事業者とされる。国内の通信事業者の9割以上を占めるが、一種事業者に比べて規制が緩く、総務省への届出だけでサービスを取りやめることも可能である。こうした二種事業者がNTTなどから通信設備を借りやすくするように、2001/06に法改正が実施された。

電気通信審議会

郵政相の諮問機関で、電気通信行政に関する郵政省の許認可事項、法律改正、新法制定などを検討する。00/07に日米交渉で決着した日本電信電話通信回線接続料を割り出す新算定方式も電通審で検討、基本方針を決定した。

天候デリバティブ-1

異常気象などで、食品会社やスポーツメーカーなどの売上高や利益が変動するリスクを回避する目的で開発された金融派生商品。投資家にとっては天候変動などのリスクを取って収益を期待できる。97年に米エネルギー大手、エンロンが初めて開発、店頭市場での取引規模は約30億ドルまで成長した。シカゴマーカンタイル取引所(CME)は99/09末に初の上場商品となるHDD(ヒーティングディグリーデー)の取引を開始。シカゴ、アトランタ、ニューヨーク、シンシナティの気温が対象である。CMEは取引単位を店頭市場の50分の1に縮小、エンロンを値付業者に指定した。日本でも日本工業銀行などが相次ぎ天候デリバティブの開発に着手。市場の調査研究開発段階から、実用化の段階に入りつつある。

天候デリバティブ-2

天候変動によって企業などが被る損害を穴埋めするための金融派生商品。代表的なものとしては、冷夏や猛暑、多雨などによる損害を防ぐことを狙った商品がある。仕組みとして損害保険に近いが、損保が実害を補償するのに対し、天候デリバティブは実害と関係ない。例えば冷夏を対象とした商品では、契約者は一定のオプション料を支払う代わり、気温があらかじめ決めた水準を下回った場合には、1日につきいくらという形で保証料を受け取ることができる。支払額には上限が設けてあることが多い。

天候デリバティブ-3

天候変動で企業が被る損害をヘッジすること狙った金融商品。代表例としては冷夏や猛暑、多雨などによる損害の防止を目的とした商品がある。2001年現在、冷夏対策の商品では食品、飲料関連やエアコンなどを製造する電機メーカーが、長雨対策では農業関連の業者などの利用が目立つという。冷夏による損害防止を狙った商品の場合、契約者は一定のオプション料を支払う。代わりに気温が前もって決めた水準を下回ると、一日ごとにいくらという形で補償料を受け取ることが可能。仕組みは、保険商品に極めて近いといえる。 1990年代に米国で取引が始まった。エネルギー市場の規制緩和を受けて、エネルギー関連企業が使い始めたのがきっかけとされる。日本では1999年に取引が始まった。

電子決済-1

電子データを活用した決済方法のこと。一般的にはインターネットを使って自分の取引銀行に口座の振替や他行への振込などを指示したり、仮想商店(バーチャルショップ)で購入した商品の代金を自分の口座から即時に引き落とすことを依頼する場合に実施される。パソコンがあれば、自宅にいながら手軽に銀行サービスが受けられるため、消費者の利便性が大幅に高まるとされる。99/02現在では、顧客獲得の手段として、世界重の金融機関が積極的に取り組んでいる。現金に代わる次世代の決済手法としても注目を集めているが、通信手順の順序や暗証処理の方法などはサービスを提供する金融機関ごとに異なっている。このため、世界規模での普及のためには、決済手法を共通化することが課題となっている。

電子決済-2

銀行や郵便局、商店などで現金をやり取りせず、電子化された顧客や金額の情報をコンピュータ処理するだけで買い物などの代金を支払うシステム。インターネットを活用した電子商取引における代金支払いや、2000年になって本格展開が始まったデビットカードサービスなどが電子決済に相当する。電子商取引を普及させるためにも電子決済手法の統一が必要になっており、00/04現在、金融機関や流通業者、政府などは決済ネットワークの接続を検討している。ネット決済やICカードの規格について統一する方向で調整している。

電子証券取引ネットワーク(ECN)

コンピュータネットワークを活用して株式を売買する電子的な証券取引市場の総称で、ECN(Erectronic Communication Network)と呼ばれる。証券会社や機関投資家がお互いに株式を相対で取引できる私設の取引システムとして、97年以降に米国で急速に発達した。米国のECNはニューヨーク証券取引所やナスダック(米店頭株式市場)の通常取引時間及び時間外でも稼動している。日本では98/12のビッグバン(金融大改革)で取引所集中義務が撤廃されたのに伴い、制度面で創設が可能になった。

電子商取引-1

企業や消費者がパソコン通信やインターネットなどを経由して商品やサービスを販売、購入すること。物品、サービスの受発注や契約だけでなく、資金決済を含め電子ネットワーク上でやり取りする取引全般を指し、エレクトロニックコマースと呼ばれる。ネットワークの種類によって、仮想店舗を使った企業と消費者間、CALSを使った特定企業間、インターネットによる不特定企業間の3タイプに大別できる。従来、専用線による特定の企業間の取引はあったが、99/12現在、インターネットの普及で不特定多数の企業を相手にした取引が急拡大している。取引相手の身元が確認できても、新たに取引を始めるには、相手企業の財務状況や信用力を判断することが不可欠。従来はこの手段が不足しており、本格的な普及の障害となっていた。

電子商取引-2

エレクトロニクコマース(Electronic Commerce)の訳。サービスや情報、物品などの商取引を、インターネットなど電子的なネットワークを通じて企業や消費者が行うこと。2000年現在の通産省の予測によると、日本の消費者向け電子商取引市場は、2003年までに98年の50倍に相当する3兆1,600億円に達する見込み。米国では、クレジットカードなどを活用した電子ネットワーク上の代金決済が進んでいるが、個人情報の流出の危険性があるため、日本では普及が遅れている。コンビニエンスストアの店頭で代金を支払い、商品を受け取る方式は、日本でのEC普及のカギを握ると注目されている。

電子商取引の消費者保護

電子商取引には2003年に国内の市場規模が70兆円に拡大するとの推計がある一方で、消費者など利用者の保護も進めなければ健全な発展は難しいとの指摘が多い。政府は他人になりすますことを防ぐ電子署名認証法案を2000年国会に提出したのを皮切りに法整備を進め、企業のコスト削減や消費者の選択肢増加につながる電子商取引の拡大を後押しする。 00/04現在、経済協力開発機構(OECD)などの国際機関や民間団体も消費者保護策を検討している。信頼できる事業者だと証明するマークを作ったり、費用や時間がかからない紛争処理窓口を設けたりすることが中心になりそうである。

電子署名

インターネット上の押印にあたる行為で、ネット上でやり取りする電子文書に付ける。政府は電子署名のついた電子文書が名義人によって作成され、内容に間違いがないことを確認するため、2000年通常国会で電子署名認証法を制定。電子認証は電子署名が本人であることを証明するネット版印鑑登録証明書で、同法では電子署名の法的効力を証明する認証機関の資格制度を導入した。 2000年現在、政府は国民と中央省庁との間でやり取りする電子文書に関して公開鍵暗号方式によるデジタル署名を用いた認証システムの構築を進めている。

電子政府-1

行政の無駄を省き、効率化するため、国や自治体への届出や申請などの手続きを電子化する仕組み。インターネットなどを経由して行政機関と企業や家庭がつながれば、公共施設の予約や届出といった行政サービスが24時間利用できるようになる。システムには利用者の本人確認が不可欠で、ICカードなどに個人情報を記録する。

電子政府-2

中央省庁や自治体と企業、家庭をインターネットで結び、24時間いつでも行政サービスを受けることができるようにする制度。許可証の申請、税金や手数料の支払い、住民登録、政府文書の公開などが対象で、行政サービスの効率化と住民や企業の利便性を高めるのが狙いである。行政手続の電子化ではオンライン上での本人確認が不可欠で、2001年現在、総務省は住民が市町村に電子証明書の発行を申請し、都道府県が交付する仕組みを検討。住民は電子証明書を添えてネット上で申請などを行い、関係省庁が照合して本人確認する。2002年度に全国規模の実証実験を計画中である。

電子認証

インターネット上で情報をやり取りする際に、相手に対して自分が電子文書に署名している本人だと証明するネット版印鑑証明。相手の信用する企業や他人になりすますこと、更に後になってから取引内容を自分の意思ではないと否認することを防ぐことができる。互いの顔が見えない電子商取引では重要なインフラである。認証機関といわれる民間企業がサービスを提供している。ネットを使って相手に送る公開鍵と、送り手の手元に置く秘密鍵という一対の鍵を作成。送り手が秘密鍵を使って暗号化した文書を、受け手が公開鍵で解き、読めるようにする公開鍵基盤(PKI)というシステムを使う。産業界がPKIの標準規格作りを進めており、00/07末にみ固まる予定である。

電子ブローキング-1

電話を使わず、コンピュータ端末同士で外国為替取引をつなぐこと。銀行間市場の取引手段の一つ。市場参加者が自分の端末に売買の希望水準を打ち込み、売値と買値が一致すると瞬時に取り引きが成立する。取引相手名と取引が可能な与信枠を予め登録しておくことも出来る。電子ブローキングは、外為ブローカーと呼ばれる"ひと"が売買を仲介するボイスブローキングに比べ、売買手数料が安いというメリットがある。コンピュータシステムがダウンしない限り24時間いつでも取引が出来ることもあり、93年頃から急速に広がった。 97年の東京市場での円ドル直物取引高(仲介業者経由分)に占める電子ブローキングのシェアは70%を超えた。直近の98/06では83.3%に達している。

電子ブローキング-2

電話を使うボイスブローキングに対し、コンピュータ端末同士で外国為替取引をつなぐこと。銀行ディーラーなどの市場参加者が自分の端末に売買の希望水準を打ち込み、売値と買値が一致すると瞬時に売買が成立する。電子ブローキングはボイスブローキングに比べ、売買手数料が安いというメリットがある。コンピュータが仲介するため、取引相手さえ見つかれば24時間いつでも取引が可能だ。99/10現在、東京市場ではすでに8割以上のシェアを占めている。外為ブローカー各社は電子ブローキングの拡大に伴い、軒並み収益が圧迫されている。なかでも直物取引はコンピュータでの売買が容易なため、撤退の動きが相次いだ。先物やデリバティブの仲介業務は数少ない収益基盤となっている。

店頭株

取引所には上場されていないが、公開されており、証券会社の店頭で売買できる株式。公開基準は比較的緩く、収益を生んでいないベンチャー企業などに広く門戸を開いている。店頭市場から資金を調達して収益力を上げて上場を目指すのが一般的で、新興企業の登竜門ともいえる。日経店頭平均株価は99/04/05にバブル崩壊後の最長となる16営業日連騰を記録。ヤフーなどネットワーク関連株が相場を主導し、99/04/08に約1年9ヶ月ぶりに1,200円台を回復した。年初から99/04/14終値までの上昇率は約66%に達した。店頭市場活況の背景には、日本オラクルなど好業績が期待できる新規公開企業が相次ぎ、個人投資家からの資金が店頭市場に流入。値上がり益を手にした投資家が割安な銘柄に買いの手を広げ、店頭相場全体を底上げする形になっている。

電脳犯罪

インターネットを悪用した犯罪行為で、他人のコンピュータに不正侵入してデータを改ざん、破壊したり、多数の接続要求でサイトをパンクさせたりすること。00/05のラブウィルス事件では、電子メールを介してコンピュータウィルスが世界中にばらまかれ、被害総額は100億ドルを超えたといわれる。日本でも00/01に中央官庁のホームページの内容が相次いで書き換えられ、00/02には不正アクセス禁止法が施行。政府は全省庁が参加する情報セキュリティ対策推進会議を設けるなど対策を急いでいる。

電力系新電電-1

1985年の通信自由化を契機に、全国10電力が主体となって設立した地域通信会社。企業向けの専用線サービスが事業の中心だが、首都圏で営業する東京通信ネットワーク(TTNet)が98/01から3分9円の割安電話サービスに参入したことで一般消費者からの認知度も高まった。送配電線沿いに敷設した大容量の光ファイバー網を通信回線として活用している。高速道路沿いのKDD、JR線路沿いの日本テレコムなど新電電他社に比べ、企業顧客のオフィスビルに直結する通信網を保有しているのが強みである。

電力系新電電-2

1985年の通信自由化を受けて、全国の電力会社10社が主体となって設立した地域通信会社。電力会社の営業地域を基に分かれている。企業向けの専用線サービスが中心だが、2001/02現在、東京電力系の東京通信ネットワーク(TTNet)と九州電力系の九州通信ネットワーク(QTNet)は電話サービスにも参入している。送電線沿いに敷設した大容量の光ファイバー網を保有しているのが強みとされる。

電力系新電電-3

電力会社が主要株主となっている第一種電気通信事業者のこと。全国十電力会社の業務地域ごとに設立された。電力会社の電柱など送電用インフラを利用して通信網を構築している。まず1986年に東京電力系の東京通信ネットワークがサービスを開始。2002年現在、データ通信や電話、PHSサービスなどを提供している。 電力系新電電の強みは高速大容量の光ファイバーを張りめぐらせた地域網であるが、全国一貫サービスを提供するには他の電力系との連携が必要となる。2001/10には各社が出資するパワードコムが誕生し、TTNet、大阪メディアサポート、中部テレコミュニケーションの三社から企業向けデータ通信サービスを引き継いだ。

電力小売自由化-1

国際的に割高な電力料金に競争原理を導入する狙いから、大手電力会社以外にも電力供給の門戸を開いた規制緩和措置。2000/03に改正電気事業法が施行された。自由化の対象は電気の使用規模が2,000キロワット以上で、20,000ボルト以上の特別高圧電線で受電している大口需要家。2001年現在で新規参入したのは、新日鉄、東京ガス、NTT系のエネット、三菱商事系のダイヤモンドパワーなどである。

電力小売自由化-2

従来、10電力会社により地域独占されていた電力市場での小売を、新規参入企業や他地域の電力会社などに開放すること。2000/03に契約規模が全需要の約3割に相当する2,000キロワット、2万ボルト以上の大口部分が自由化された。2002年現在、総合商社やガス会社など新規参入者が事業を拡大しているが、発電所の建設負担が重く対象市場でのシェアは0.4%程度にとどまっている。 2001/11から、経済産業省を中心に自由化範囲の見直し議論が進められており、2003年度にも範囲が拡大される見通しである。新規参入者の増加などで競争を促進、電気料金水準を下げるとの期待がある。

電力小売自由化-3

電力を消費者に小売する事業について、既存の十電力会社以外の自由な参入を認める措置。大規模工場向けなどの特別高圧分野の自由化が2000/03に実施された。2002年現在、三菱商事系のダイヤモンドパワーやセントラル短資などが出資するイーレックスといった新規参入会社が、トヨタ自動車や三越、鹿児島県庁などに電力を供給している。

電力自由化

改正電気事業法により、00/03から、電力の使用規模が2,000キロワット以上で20,000ボルト以上の特別高圧電線で受電する大口需要化への小売りが自由化され、電力会社以外も参入できるようになった。大規模な工場やビル、百貨店など販売電力量全体の約3割が対象。ガス会社や大手商社、米エンロン社などが参入を表明している。新規事業者の参入で国際的に割高な電力料金水準も下がると期待されている。

電力の規制緩和

国際価格と比べて2割高いとされる日本の電気料金の引き下げが目的。00/03の改正電気事業法施行で、2,000キロワット以上の電力を使用し、20,000キロワット以上の送電線で受電する大口顧客向けの電力小売が解禁された。工場やオフィスビル、百貨店などが対象で、国内販売電力量全体の3割に達する。新規参入企業の自家発電設備の余剰電力を買い取って顧客に販売するなどの方法で電力各社より安い価格で販売、電力会社も00/10から値下げするなど料金競争が始まっている。2003年に制度を見直すことになっており、自由化の対象領域が拡大する可能性が高い。

電話会社の事前登録制

消費者が利用する電話会社をあらかじめ決めておく制度。市内、都道府県内市外、都道府県間市外、国際の4通話区分ごとに電話会社を選ぶ。利用者は通話時に001(KDD)、0077(DDI)などの事業者識別番号のダイヤルが原則不要になる。通信会社側は番号の桁数による有利、不利がなくなるため、一層の競争促進が期待できる。 00/05からマイラインの名称で制度の周知活動が開始されている。通信各社は01/01から事前営業を開始、01/05の実施に備える。1985年の通信自由化で新電電が参入して以来の大改革で、全国5,500万台の電話の掛け方が大きく変わることになる。

電話加入権

新規に固定電話に加入する際、NTT東西地域加入から購入する権利のことで、施設設置負担金ともいう。契約料800円、宅内工事が必要な場合の工事費8,000円とは別に支払う7万2,000円がそれにあたる。戦後、電話網の整備が遅れていた電電公社時代に設備投資資金を集めるために創設。電話契約を解約しても返還されない。無形固定資産として扱われ、加入権の再販売業者に売却できる。 2001年現在、電話網はほぼ完成したといわれ、加入権制度廃止論が強い。NTTは固定電話の契約の落ち込みを防ぐため、廃止を模索してきたが、再販事業者らの反対で実現は先送りしてきた。加入権支払負担のない米国では、現在でも固定電話の加入数は増加している。

テーラーメイド医療-1

体質の違いを遺伝子レベルで解析して、より効果的な医薬品を投与する医療。体格に合わせた仕立て服にちなんでテーラーメイドと呼ぶ。癌の場合、過剰に働いている遺伝子が、癌の種類や患者によって違うため、2001年現在、この遺伝子によって作られるたんぱく質をターゲットにした抗癌剤の開発が進んでいる。また、同じ病気の遺伝子でも構成する塩基が一つだけ異なっているSNP(一塩基変異多型)によって薬の効果は異なる。この違いの研究も盛んになっている。

テーラーメイド医療-1

個人の遺伝子のタイプに応じて最適な薬を投与する治療法で、「オーダーメイド医療」とも呼ばれる。遺伝子の個人差によって医薬品の効果や副作用が異なることが分かり、1990年代半ばごろから欧米で研究が盛り上がってきた。2002年現在、欧米製薬会社は既にテーラーメイド医療向け抗がん剤など、製品化を始めている。

ドイモイ政策

1986/12の第六回ベトナム共産党大会で採択した改革、開放路線。市場原理導入、外資誘致、重工業重視の産業政策見直しなどを進め、社会主義化の硬直した経済体制が招いた不振を打破することを狙った。1995/07の米国との国交樹立や東南アジア諸国連合加盟などで、この政策に弾みがついた。

東京外国為替市場委員会

民間銀行や日銀、ブローカーなど東京外国為替市場の関係者で構成される任意団体の委員会。市場環境問題のほか、リスク管理や金融派生商品などを中心に議論し、東京外国為替市場の自主ルールをまとめる。99/01現在、約20人のメンバーで構成されている。平均月1回のペースで定例の会合を開くほか、議題ごとに小委員会を設置する。市場参加者の行動規範から2000年問題の慣行対応まで、小委で話し合ってルールを作る。あくまでルール作りなど外為取引の環境を整備したり情報交換するための役割に徹し、98/12には電子ブローキングなどに対応した行動規範も策定。しかし、規範に違反しても法的な拘束力はないなど、同委の機能の限界を指摘する向きもある。

東京金融先物取引所の証拠金分別管理

東京金融先物取引所で取引する投資家は金融先物オプション取引の利口を担保するため、証拠金を支払う。現在は証拠金の一部は銀行や証券会社などの清算会員が管理しているが、98/11にも同取引所が管理する体制に移行する。証拠金を管理している金融機関が経営は単に陥ると、証拠金が投資家に戻ってこない可能性もある。邦銀の経営体力に対する不安感が高まるなか、海外の投資家を中心に証拠金の分別管理を求める声が出ていた。同取引所は手数料が高かったことなどからシンガポール国際金融取引所(SIMEX)などへの顧客流出が問題になっていた。このため、手数料規制を撤廃したり、限月間スプレッド取引を開始するなど、取引所の整備を進めている。

統合リスク管理

金融機関が自社の抱える様々なリスクを包括的に把握、管理する仕組み。金融機関のリスクには、有価証券運用に伴う、市場リスク、融資による信用リスク、事務上の事故を起因とする事務リスクなどがある。2000年現在、金融機関の規模が巨大化しており、各国の金融当局は経営陣が包括的にリスクを監視する体制作りを求めている。欧米ではFPモルガンなど先進的な銀行が各リスク量を計量化し、一元的に管理する仕組みをいち早く導入した。国内では都市銀行が先行。さくら銀行が98/04から、富士銀行が99/04から統合リスク管理手法を導入した。相互会社形式の生保業界や多額の株式含み益のある損保業界では対応が遅れ気味だったが、相次ぐ生損保の破綻や金融庁の保険版検査マニュアルの策定で、リスク管理への関心は高まっている。

倒産法制

現行法制では倒産処理手続きとして破産、和議、会社更生、会社整理、特別清算の5つがある。いずれも法律制定時期は戦前か終戦直後と古い。バブル崩壊後の景気低迷で倒産処理件数は大幅に増加しており、倒産法制の抜本的な見直しが求められていた。 96/10に法相が破産、和議、会社更生に関する制度改善に必要な要綱の提示を法制審議会に諮問、倒産法部会が設置されて具体的な見直し作業に入った。破産法、和議法、会社更正法、商法などが主な見直しの対象となっている。

投資一任業務

顧客から委託を受けて、自己の裁量で年金などの資産を運用する業務のこと。投資の助言を手掛ける投資顧問とは区別されている。投資顧問業法に基づき、投資一任業者は顧客との間で投資判断と投資の実施に必要な権限を委任するため投資一任契約を結ぶ。投資顧問業者として登録した企業のうち、財務面などの審査を経て監督当局から認可を得た場合、投資一任業者と名乗れる仕組みである。00/03末時点の投資顧問業者は604社。うち投資一任業者は137社ある。このうち銀行系の投資一任業者は25社。投資一任業務を銀行の本体で手掛けることは、銀行の本業との利益相反の懸念などがあり、認められていない。ただ、信託銀行は信託契約に基づいて資産の運用と管理を一体化して手掛ける場合には特例として認められている。

投資銀行-1

機関投資家や法人企業向けの取引を主な業務とする金融機関。株式や債券を発行して市場から資金を調達する企業と、資金を供給する投資家を結びつける。企業が発行する有価証券の引受、仲介と、それに伴って発生する事業組織、資本構成、合併、買収戦略のコンサルティングが主要業務。有価証券の自己勘定取引やデリバティブ(金融派生商品)開発などに積極的に進出してきた。自ら投資リスクをとることから、投資銀行と呼ばれる。米国では1933年に成立したグラススティーガル法で投資銀行業務と商業銀行業務の兼業が禁じられたが、1980年代以降、金融機関同士の合併、買収で商業銀行と投資銀行の一本化が進み、実態を追認する形で同法は99/11に廃止された。欧州では大手金融機関の大半が両業務兼営のユニバーサルバンクになっている。

投資銀行-2

法人顧客向けの証券業務を中核にした金融機関。具体的には企業が発行する株式や債券の引受や、発行に伴う資本政策の助言が代表例で、2001年現在、企業のM&Aや企業の持つ資産の証券化に関するコンサルティングが注目されている。

投資銀行業務-1

企業取引を中心とした業務で、企業の合併買収の仲介をしたり、大型融資の取りまとめにあたったりする。有価証券の引受業務も含まれ、金融派生商品など最先端の金融技術を駆使する。収益は調達金利と貸出金利の差である利ザヤではなく手数料収入が中心となる。収益性が高いとされている投資銀行の分野で、2000年現在、日本の銀行はドイツ銀行、JPモルガンなど欧米勢に比べて大きく出遅れている。

投資銀行業務-2

機関投資家や企業向け取引を主体とする金融仲介業務。企業が発行する株式や債券を引き受け、機関投資家に橋渡しするほか、M&Aの仲介や資本政策の助言なども行う。 1990年代後半からは、外資系投資銀行の日本進出が顕著である。2001年現在、特に米系が業務を急拡大しており、グループで1,000人以上の体制を持つところも多い。ドイツ銀行などの欧州系もここ数年急追している。

投資銀行業務-3

企業や機関投資家向けの法人取引を中心にした金融仲介業務。企業が発行する株式や債券を引き受け、機関投資家に橋渡しするほか、企業のM&Aの仲介業務や財務戦略の助言業務なども担う。欧米の大手金融機関が日本市場で投資銀行業務を積極展開し、存在感を高めている。2001年上半期で見ると、日本企業にかかわるグローバルなM&A案件でゴールドマンサックス証券が、日本株引受主幹事シェアで日興ソロモンスミスバーニー証券がそれぞれ1位を獲得した。米国市場では巨大銀行グループが投資銀行業務で勢いを増している。企業側にワンストップサービスを求める傾向があるため、銀行が融資業務を武器に株式や債券の引受などで実績を上げ、大手証券が劣勢に回るケースもある。

投資顧問業

株式など有価証券の価値や売買の方法といった投資に関する助言をする業務。投資顧問業社は一任業者と助言業者からなり、一任業者は顧客から投資判断の全部又は一部を任され運用を代行する。日銀の超低金利政策が長引き、生命保険会社の運用利回りが低迷する中で、年金資金が運用委託先を投資顧問に移し替えるケースも増加している。99/03末で一任業者の契約資産残高は初めて70兆円台に乗せた。個人資産の運用ニーズも高まっていることで国内市場に外資系が積極的に進出している。一方で規模の大きい業者による寡占化が進んでおり、合併や廃業の動きも頻繁に見られる。99/03末時点で全体の登録業者数は596社と前年に比べ10社減少した。

投資顧問の合同運用

運用方針が一致する顧客の資産を同じ口座でまとめて運用すること。これに対し、顧客ごとに別々の口座で資産を管理するが、同じ運用方針で有価証券の売買を同じに執行する方式は同一運用と呼ばれる。投資信託、生保の一般勘定、信託銀行の年金合同口など他の業態は合同運用商品を持つ。一方、投資顧問は個別契約、個別投資判断、分別管理が特徴とされ、合同運用が禁止されてきた。日本証券投資顧問業協会は、1987年から当局に合同運用の解禁を要望しつづけてきた。 2000/12/28に有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律施行規則が改正され、合同運用と同一運用が解禁された。合同運用を開始するには、信託銀行との事務ルートや、信託銀行のシステム変更などの準備が必要である。

投資差額償却

会社の価値を図る指標に、株主資本を発行済株式数で割った一株純資産がある。ある企業が他社の株を買い入れて連結上の子会社や持ち分法適用会社にした場合、購入株価は一株純資産より高いと、その差額(のれん代)を会計上償却しなければならない。これを投資差額償却と呼び、一株当り差額×購入株数が償却総額になる。米国では株式公開会社の株を購入し投資差額が発生すると、原則としてその期末に全額を一括償却する必要がある。だが日本では、通常5年以内に分割償却している。償却額は連結税引き前利益から差し引かれる。 CSKは98/03期に連結最終赤字が70億円になる模様だが、うち63億円は、過去に持ち分法会社のセガエンタープライズなどの株を決算対策で売却した後に買戻したため生じた投資差額の償却額だ。

投資信託の規制緩和

投資信託の規制緩和は、1994年、1998年末、2000年末と行われてきた。1994年はヘッジ目的以外の金融派生商品の利用拡大、1998年は私募投信、会社型投信の解禁、運用会社参入規制の緩和、銀行による投信窓口販売解禁などが盛り込まれた。 2000年の規制緩和の目玉は、投資対象が従来の有価証券の枠を超えて大きく広がったことである。中でも不動産投資信託解禁が大きい。不動産以外にも、金銭債権、約束手形のほか、商品先物、金利、通貨なども含めたデリバティブに直接投資できるようになった。具体的には、銀行ローンだけで運用するバンクローン投信のほか、先物オプションだけを投資対象にしたマネージドフューチャーズなどのヘッジファンド的な投信の登場が期待される。

投資信託の参入基準

投信の運用業務へ参入するための基準で、大蔵省が通達や省令で定めてきた。92年春に銀行の参入を認めた際に新設した通達が基本となっており、投信会社を新設できるのは、@証券会社、A海外の運用会社、B既存の投信会社、C投資一任業務を営む投資顧問に限定、人的要件や収支見通しの基準を定めている。この基準は、投信業務への参入を求める銀行界と、銀行本体の参入を拒む証券会の利害調整の産物で、投資顧問経由で銀行が孫会社として投信会社を設立することを認めるのが狙いだった。事業会社など非金融業からの参入を想定していないため、異業種からの参入をかえって難しくした面がある。

投資信託の代行手数料

投資信託はファンドの運用費用である信託報酬が、運用期間中に自動的に資産から差し引かれる。このうち購入、解約の手続きや保護預かり、開示資料の送付など各種事務を代行する対価として、証券会社など販売会社が受け取るのが代行手数料である。答申資産を預っているだけで自動的に入るので販売側にとっては安定した収益源となる。代行手数料を増やせば株式委託手数量などフロー収入の影響を受けにくい安定した経営体質になるとされる。投信販売をめぐっては、販売時の手数料欲しさに顧客に頻繁に乗り換えを勧める回転売買への批判が多い。こうした動きをやめて預かり資産から代行手数料を得る体質へ脱皮すれば顧客との利益相反を起こしにくいといわれている。

投資信託の窓口販売

日本版ビッグバンの目玉の1つとして実施された規制緩和策。投資信託の販売は証券会社や投資信託会社しか扱うことができながったが、97/12に銀行が系列の投信会社などに店舗の一部を貸し出す間貸し方式が認められた。98/12に、銀行本体が投信を店頭で販売できるようになった。これを窓販という。 2000年現在、銀行は本業の利息収入以外の新たな収益源の拡大を目指しており、投信販売による手数料をその柱としたい考え。低金利が続くなかで、これまで本格的な資産運用の経験がなかった預金者の間で投信への関心が高まっている。銀行や生損保が窓口で販売した投信の残高は、00/11末ですでに5兆円を突破している。投信販売全体に占める比率も10%を超えている。

同時多発テロ

過激派団体や反政府組織などが政府、警察などに打撃を与える目的で複数の場所で同時に行うテロ行為。政府、軍施設やインフラ整備が標的になりやすい。爆弾や毒物などを使うケースが多い。

投資不動産の会計基準

企業が値上がり益や賃貸収入を得る目的で保有する土地建物の会計基準。工場、ホテルなど企業自身が生産サービス活動に使う物件や販売用不動産は含まれない。国際会計基準の原案によると、投資不動産は2001年から時価会計が義務付けられる。企業は市場での取引価格などに基づいた時価で貸借対照表の計上価格を毎期洗い替えた上で、評価損益を損益計算書に利益または損失として計上しなければならなくなる。日本では投資不動産の会計基準はない。バブル期に高値で取得した不動産の含み損が顕在化する公算が大きく、時価会計には不動産業界の反発が強い。ただ時価会計が世界の主流になる中、財務諸表の透明性を高めるため、日本でも会計基準導入の気運が盛り上がる可能性がある。

東証上場国債価格

東京証券取引所が毎日公表している上場国債(10年物、20年物で約120銘柄)の出来高と気配値。従来、企業が保有している債券の時価評価やレポ取引(現金担保付債券貸借取引)の値洗いなどの際の基準として幅広く活用されてきた。しかし、98/12の改正証券取引法施行で、取引所集中義務が撤廃されるため、東証はこれまでのように上場国債全ての銘柄の価格を毎日公表することはできなくなる見通しだ。これを受け、東証以外の団体などが新たな基準価格の公表に向けて動いている。日本相互証券が98/12から新たにBB国債価格を公表する予定のほか、98/09現在で公社債店頭基準気配を公表している日本証券業協会が、上場国債を公表対象に含めるかどうか検討中だ。

東証の上場審査基準

企業が証券取引所に上場するには、株式数や株主の数、株主資本、利益の総額など、取引所が定めた上場審査基準を満たしていなければならない。東京証券取引所は成長力のある企業の上場を促進するため、99/01に上場審査基準の緩和に踏み切った。見直しの柱は、@配当基準の撤廃、A1株当り利益基準の撤廃、B上場前の監査対象期間の短縮など。2000/03期から会計制度が連結決算主体になるため、利益の総額は連結財務諸表に基づく数値で判断するなど、連結重視の姿勢を鮮明にしたのが特徴だ。上場審査の段階で配当基準が撤廃されたため、上場廃止基準の1つだった最近5年間無配かつ3期連続で債務超過という基準も単独かつ連結で3期連続債務超過に変わる。2003/01から実施となる。

東証マザーズ

新興企業に資金調達の場を提供するのを目的に東京証券取引所が設けた市場。1999/11に創設された。1999/12にインターネット総合研究所とリキッドオーディオジャパンが上場した。2001/02末までに、合計32社が上場している。会社設立後の経過年数や利益水準といった過去の業績についての上場基準がないかわりに、上場企業は四半期業績の公表や上場後三年間は年二回以上の会社説明会を開く必要がある。投資家は過去の業績を参考にすることはできないが、透明性の高い情報公開が期待できる。会社設立から短期間での上場を実現するという市場の性格から、上場審査にかかわる提出資料が簡素化されている。また、上場申請から上場までの期間も相対的に短い。

投信関連コスト

投資家が投資信託を購入する場合に負担しなければならないコストは、販売手数料と信託報酬の二つ。販売手数料は、商品説明や投資相談の対価として購入時に販売会社に支払う。信託報酬は、資産運用への報酬や口座管理事務に対する対価として、運用資産から定期的に差し引かれる。 2001年現在、運用者が投資する銘柄を選択するアクティブ型株式投信の販売手数料は3%、信託報酬は年率2%弱が一般的。株価指数と連動する運用利回りを目指すパッシブ型では販売手数料無料、信託報酬0.6〜0.8%の商品が多い。解約時に差し引かれる留保金というコストもある。

投信純資産残高

投資信託が保有する資産の時価総額のこと。信託財産の資産総額から負債部分を差し引き、有価証券などの評価損益を加減して算出する。これをファンドの受益権口数で割った1口当たり純資産残高が基準価格になる。純資産残高の変動要因は、投資資金の流出入(設定、解約)と、運用の巧拙による資産増減。投信全体の純資産残高は00/06末に過去最高の60兆円に達した模様。1989年末は株式投信が8割だったが、現在は公社債投信が7割を占める。

投信の純資産

投資信託のファンドに集まった口数(受益権口数)に基準価格を乗じたもので、ファンドの時価を表している。組み入れた株式や債券が値上がりしたり、新規資金が流入すれば純資産は増加する。投信の純資産残高は89年末の58兆6,892億円から、98/03には38兆4,675億円まで減少した。99年は4月から増加に転じ、99/08末は51兆2,106億円となり5ヶ月連続で増加した。株式相場回復に加え、個人投資家の資金流入が進み、株式投信の純資産が増加。日銀による短期金利の実質ゼロ%誘導で、より有利な運用先を求める法人資金も入っている。追加型株式投信の純資産では、99/08現在、フィデリティ投信のフィデリティジャパンオープンが3,592億円で最大。

投信の非上場債時価評価

投資信託に組み入れている非上場債を時価評価すること。これまで時価評価の対象は国債など一部の上場債券に限られていた。証券投資信託協会は99/07から原則として全ての債券を時価評価することを決めた。非上場債は現在取得原価で評価しているため、投資家には運用内容が不透明との不満が高まっている。時価評価は投資家の信頼を取り戻すための必要条件と見られているが、中期国債ファンド、SOP、フリーフィナンシャルファンド、利金ファンドに関しては、予想分配率をあらかじめ表示するため対象外となった。時価評価が導入されれば、公社債投信も基準価格の変動が大きくなると見込まれる。これまで貯蓄型商品と見られていた公社債投信の商品性も大幅な変更が見込まれるため、投資家への周知徹底が必要となっている。

投信の普通預金口座設定

99/02/12の日銀の金融緩和で、無担保コール翌日物金利が実質ゼロ金利に低下するなか、投資信託会社は運用手段の1つとして普通預金口座開設を検討し始めた。投信はファンドごとに資金運用しているため、普通預金で運用する場合もファンドごとに口座を設ける必要がある。又、運用を信託銀行に委託しており、口座開設やコンピュータシステム変更などで信託銀行も対応する必要がある。普通預金での運用を想定していなかったため信託銀行の対応も遅れている。運用資金を一括で管理している生命保険会社はすでにコール市場から普通預金への資金シフトを実施した。一部の投資では運用を始めている。他の各投信も運用益引き上げのため、普通預金での運用を信託銀行に要請している。

投信の間貸し販売

銀行の店頭で、投資信託委託会社が投信を直接販売する手法。銀行窓口での投信販売の第一弾として97/12から解禁される。投身会社は銀行に賃料を支払い、顧客に投信商品を販売することになる。銀行預金と違って投信は元本割れのリスクがあるため、大蔵省は間貸し販売のガイドラインを設ける考えだ。顧客の誤認防止が課題で、預金窓口とは離れた場所で投信を販売することや、商品内容の説明方法などが示される見通しだ。都市銀行では富士銀行やさくら銀行などが間貸し販売の実施を決めている。両行とも系列の投信会社に店頭を間貸しする方針。ただ、98年度中には銀行本体での投信販売が解禁になる見込みで、間貸し販売は実験的なものにとどまりそうだ。

投信の目論見書

98/12の制度改革で、受益証券説明書に代わって投資信託に目論見書の発行が義務付けられた。目論見書には商品内容の説明だけでなく、運用会社の役員名や略歴、約款の全項目、運用会社の関係法人の業務内容なども記載されている。98/11までに信託約款の承認を受けた投信は、経過措置として2000/12までは目論見書の発行対象になっていない。 99/10現在、目論見書のページ数は受益証券説明書の4〜5倍程度に増え、情報量も豊富になった。その反面、運用会社が負担する作成郵送費用がかさみ、コスト削減のためにパスポート程度の小冊子に小さな文字で記載している例もある。その上文章や表現方法、用語が一般の投資家にとっては難解なものが多く、実際に目論見書を読んでいる投資家は少ないのではないかとの指摘も出ている。

投信販売チャネル

投資信託の販売を担うチャネルには、証券会社のほか、銀行や生損保を通じた窓口販売、投信会社が電話やインターネットで投資家に直接販売する直販がある。投信窓販は98/12に解禁された。当初は、MMFや中期国債ファンドなどリスクの低い公社債投信がほとんどだったが、2000年現在、株式投信の割合が次第に高まってきている。窓販は証券会社経由に比べて解約率が低く、残高はほぼ一本調子で拡大している。米国では証券会社の販売シェアは半分程度に過ぎない。直販、銀行、貯蓄機関、保険会社、ファイナンシャルプランナーなどチャネルが分散している。00/06現在、日本では証券会社を通じた販売の残高が80%超である。

騰落レシオ

株式市場の日々の値上がり銘柄数を値下がり銘柄数で割って百分比で表した指標。値上がり銘柄数と値下がり銘柄数が同数なら騰落レシオは100%。5日間、25日間の移動平均がよく利用される。通常、騰落レシオの上昇は相場の活況を、低下は調整を示す。一般的には120以上になると相場は加熱しており、目先、株価が天井を打つといわれる。70%以下は底値圏といわれ、株価は反発局面を迎えることが多い。日経平均が直近の安値を付けた99/01/05の東京証券取引所第1部の騰落レシオ(25日移動平均)は、70%と底値圏を示していた。その後、日経平均は戻り局面に入り、99/01/20に14,000円台を回復。99/01/27の騰落レシオは99%と上昇しており、相場の活況を示している。

道路料金の格差制度

一定の地域に入ってきたり、ある道路を利用する自動車に料金を課したり、料金に割高感を与えて交通量の削減を図る方法。英語でRoad Pricingと呼ばれ、シンガポールやノルウェーなどで実績がある。東京とも一般道向けの制度を2003年度に始める方向で検討している。自動車排ガスによる健康被害が争点となった川崎公害訴訟が99/05に和解した際、国は中長期的な対応として自動車交通を臨海部に誘導したり、そのためのロードプライシング活用を検討すると表明した。ほぼ同内容の尼崎公害訴訟を抱え、導入時期を大幅に前倒しする格好だ。

特殊法人

行政に関連する事業を遂行するために特別な法律によって設立する法人。政府から補助金を受け入れ、公共事業や政策金融、研究開発など幅広い分野で設立されている。総務省が設立時に審査することになっており、2001/06現在、77法人が存在する。任意に設立できる認可法人を合わせると約160法人にのぼる。中央省庁出身者が再就職する天下りの受け皿としての機能や非効率で不透明な組織運営に対する批判がある一方、業務の肥大化により民間企業を圧迫する弊害も指摘されている。

特殊法人改革

2001/01に内閣官房に設置された行政改革推進事務局が中心となり、2002/03末までに全ての特殊法人の事業と組織を見直すことになっているもの。77の特殊法人と86の認可法人が対象。2001/06現在では、廃止や整理、合理化、民間委託、国や地方への移管などを決め、最終的には、@廃止、統合、A民営化、B独立行政法人化の3つの組織形態に集約する方針である。特殊法人には、住宅金融公庫のように高度成長期に果たしていた役割を既に終え、民間企業の事業と競合して民業を圧迫している法人などがある。多大な財政支出をあてにして非効率な経営を続け、不良債権を抱え込むケースや、公務員の天下り先になっているなどの問題点も指摘されており、抜本的な改革が必要とされていた。

独占禁止法

企業間の競争をテコに経済活動を効率化して国民生活を豊かにする目的で、1947年に制定された。事業者が共同して価格を吊り上げたり、大手企業が下請けいじめなどをすることを禁止する。運用機関として公正取引委員会がある。同委員会は入札談合などの違反をした企業に対し排除勧告を出したり、不当な利益を没収するため課徴金をかける。悪質な場合には刑事告発する場合もある。同法は「市場経済の基本法」とも呼ばれる。

特定関係者

預金取扱金融機関の子会社や関連会社で、銀行法に定められた定義に入るグループ会社のこと。子会社と関連会社に大別できる。証券子会社からカード会社、リース会社まで幅広い。銀行の連結対象会社がほぼ相当する。 98/12の銀行法改正により、子会社や関連会社の定義が大幅に広がった。出資比率が50%未満でもその会社を実質的に支配していれば子会社とみなされるようになった。銀行法は大口融資、銀行に不利な条件でグループ企業向けに融資することなどを制限しており、金融機関は支援する場合には金融当局に承認を求める必要がある。グループ企業向けの過大な融資などにより金融機関の健全性が損なわれないようにするための規定と言える。

特定金外信託

特定金銭信託以外の金銭信託。金銭信託の内、金銭の委託者が受託者に運用方法(運用対象、数量、売買価格など)を具体的に特定し、信託終了時に信託財産を運用している現物のままの形で受け取る方法。信託財産をすべて換金した形で受け取る特定金銭信託とは異なり、運用損益を含みの状態で受け取ることになる。特定金銭信託と特定金外信託を合わせて、一般に特金と呼ぶ。委託者が直接保有する有価証券と同種類・同銘柄の有価証券が信託財産の中に含まれていても、両者を税務上区別して経理することが認められる。委託者が直接保有する有価証券が信託財産の簿価や含みに影響を及ぼさず、資金運用の成果の把握が容易であるため、法人の株式や債券などへの投資方法として積極的に利用されたが、90年に入ってからの株価急落で、これら特金の処理には大量の含み損が発生、事業会社や中小金融機関などは損を抱えた特金の処理に苦しんでいる。しかし不良資産を減らさないと財務体質が改善されないため、売却損を出して特金を減らす動きは続いている。

特定金銭信託-1

投資家から資金を預かり信託銀行がその資金を運用する金銭信託の一種。投資家が運用対象、取得、処分の時期などすべて指定できるが、間に投資顧問会社を立てることも多い。企業会計上、企業が既に保有している株の簿価とは切り離して株を売買、処理できるのが特徴。生命保険のほか、信用金庫といった中小金融機関や事業会社などの活用が目立ち、一時、第3の機関投資家とまでいわれた。特定金外信託と同様、90年以降、株価急落に伴い含み損が大量に発生、解約する一般企業が増えた。一方で、95年夏からの株価の回復を受けて一部地方金融機関などの間には新たに設定する動きもある。

特定金銭信託-2

金銭信託の一種で、特金ともいう。投資家が信託銀行に指示して株式、債券に投資し、信託配当金を受け取る。信託期間が終われば、信託財産が金銭で返還される。バブル経済期にかけて、企業の財テクの有力な手段として利用が活発化した、企業が保有する一般の有価証券とは別勘定で、有価証券報告書などで含み損益や銘柄を開示する義務はない。多くの企業ではバブル崩壊後の株価下落で含み損が膨らんだが、バランスシートなどには反映されないため、企業の資産の実態を見えにくくする原因の一つとなっている。最近は株価低迷が長引いたいることもあり、総合商社やアサヒビール、ヤクルト本社など売却損を計上して特金による運用を縮小、全廃する企業が相次いでいる。

特定目的会社

企業が保有資産を証券化して投資家に販売する際に設立する会社。略称のSPCはSpecial Purpose Companyを指す。SPCは証券化の対象となる資産を企業から買取、それを担保に証券を発行する。証券化する資産を企業から切り離し、そこから発生する収益を投資家に分配する役割を果たす。 SPCは海外設立と国内設立の2種類がある。海外の場合、税制上の優遇措置があり、設立の事務手続きが簡単な英領ケイマン島に設立される場合が多い。従来、国内設立の場合は、商法上の株式会社として、最低でも資本金1,000万円と3人の取締役が必要だった。しかし、98/09にSPC法が施行され、資本金は300万円、取締役は1人で済むなど設立条件が緩和された。

特別会計

国の会計のうち、一般の歳入と歳出を整理する一般会計とは別に、特定の目的についての歳入と歳出を明らかにする会計のこと。2000年度予算では合計38の特別会計が設けられ、予算総額は歳出ベースで約318兆6,900億円と、一般会計予算の4倍近い規模になっている。港湾整備特別会計など特定の事業を行うための事業特別会計や、地震再保険特別会計など民間では扱いにくい特殊な保険事業を行う保険特別会計など5種類に大別できる。借入金などで歳入を賄っており、一般会計を見るだけではわからない国の隠れ借金になったいる。

特別加算

住宅金融公庫の個人向け融資額のうち、希望すれば住宅の種類に応じ最大1,000万円まで上積みできる資金枠のこと。適用金利は実質的な最優遇貸出金利である基準金利よりも高い。2000年現在はローン返済の当初10年目までは年3.8%、11年目以降は年4.0%となっている。特別加算の限度額は1993年度に1,200万円まで増えた。その後は住宅ローンを圧迫しているとの批判を踏まえ、1995年度に1,000万円、1997年度初めに800万円と順次削減。1997年度の途中に再び1,000万円に引き上げられた。

特別勘定-1

運用結果を契約者に還元することを目的に、他の資産と区分して経理上、管理される財産。生命保険会社では個人変額保険と団体年金保険の2つが主なもの。これらを除く一般勘定は契約者に対して予定利率を約束しているため、リスクを避け、比較的安定した運用を目指す。これに対して特別勘定は元本保証がない代わりに、高利回りを狙ってリスクがある成長株や外貨建て資産などに投資することができる。運用能力が実際の運用成績に反映する。特別勘定の運用利回りは企業が年金委託先を選ぶ際の判断材料。99/10現在では、長引く低金利の中、生保は一般勘定ではなく特別感情での年金受託を積極化している。国内株価回復を受けて運用利回りは改善しつつあるが、投資顧問会社などとの競合が激しくなっている。

特別勘定-2

生命保険会社が預かった資産を一つにまとめて運用する一般勘定と切り離して管理・運用する商品。一般勘定が元本と一定の利回りを保証するのに対し、特別勘定は運用の成績に応じて利回りが変わり、元本の保証もない。一般勘定の保証利回りが96/04に4.5%から2.5%に引き下げられたため、好利回りを狙う年金基金の注目が集まり、特別勘定の残高は増加傾向にある。特別勘定はさらに、複数の年金基金の資金を合同して運用する第一特約と、単独の基金の資金を個別に運用する第二特約に分類される。第一特約は従来、生保が内外の投資対象に分散投資する総合口しかなかったが、97/04に国内株式や外貨建債券など資産別に投資する投資対象別口が新たに設定された。基金はどの運用口に投資するかを生保と協議して決める。

特別検査

大手銀行を対象とした金融庁の検査のこと。通常の金融検査と異なり、経営不振の大手企業向け債権が不良債権かどうかの査定に目的を限っている。

特別国会

衆院解散による衆院選の後に新しい首相を選ぶため召集される国会。憲法54条は衆院選の投票日から30日以内に特別国会を開くと規程している。衆院議員運営委員会の構成が決まっていないため、会期は各党代表による各派協議会で決める。衆院は召集時点で議長が不在のため、まず事務方の事務総長の議事進行により議長選挙を実施。この後、議長が着席して首相指名選挙に移る。常任委員長選挙、常任委員の選任なども行われる。国会には特別国会のほか、毎年1月に召集される通常国会、内閣が必要と判断した場合などに召集される臨時国会の3種類がある。

特別参加者資格

証券取引所において、正会員権が無くても株価指数先物・オプション取引などの自己や委託売買ができる資格。東京証券取引所には国債証券先物取引等・株価指数先物取引等・株券オプション取引の三種類がある。業務範囲は資格を得た取引に限られる。現在、東証で資格を持つのは国債証券先物が154社、株価指数先物が14社、株券オプションが3社。大蔵省の業務範囲見直しを受けて、97/11には銀行の証券子会社12社が株価指数先物の資格を取得。大証では、97/07に始まった個別株オプション取引に3社が特別資格で参加した。一方で採算に見合わないなどとして、返上するケースもある。東証では97年に入り、2月に徳陽シティ銀行、7月に新潟証券(当時の中証券)が資格返上を申請した。

特別参加者制度

東京証券取引所の国債先物取引の特別参加者制度は、85/10にスタートした。株式、先物など東証に上場する全商品を取引する権利がある正会員権とは別に、国債先物取引に限り、参加を希望する銀行などに特別参加者という形で受け入れる体制を整備した。正会員権に比べて権利が限定される代わりに損失準備金積み立てなど費用拠出の負担が低い。 99/10現在、国債先物のほかに特別参加者制度を採用しているのは、株価指数先物、株券オプション取引などのデリバティブ取引。株価指数は88/09から、株券オプションは97/07から同制度を採用している。東証は99/02にまとめた証券政策委員会の答申で会員制度について触れ、会員特別参加者の権利と義務の関係などを再検討する必要性を指摘、制度の見直しを進めている。

特別清算指数

株価指数先物、オプション取引で取引最終日までに転売や買戻しがされなかった建玉を清算する時に用いる特別の指数。取引最終日の翌日の各構成銘柄の始値に基づいて算出する。英語ではSpecial Quatation(SQ)と呼ぶ。未決済の建玉は約定価格とSQの差額で決済される。日経平均株価プットオプションで権利行使価格15,000円、買建玉10枚を14,952円34銭のSQで権利行使する場合、権利行使価格からSQを引いた金額を1,000倍し、10枚分掛け合わせた476,600円が利益となる。通常5月のSQ算出は株価指数オプションに絡むものだけで通常は相場への影響は少ない。

特別損失

特殊な事情で一時的に発生する損失。リストラに伴う特別退職金、高値で買った不動産の売却、台風による機械設備の被害などの事情で出てくる。経常利益を算出するうえで、毎期発生する損失とは区別される。金利負担など本業の営業活動以外で恒常的に生じる費用は営業外費用に算入される。特別損失に計上できるケースは概ね決められている。主に@固定資産の売却損、A転売以外の目的で取得した有価証券の売却損、B災害による損失。この他にも退職給付会計や時価会計など会計基準の大幅な変更に伴う損失も特別損失とすることができる。

特別特定財源

ガソリンに課税する揮発油税や軽油にかかる軽油引取税、自動車取得時や車検の際に納める自動車取得税、自動車重量税などで構成する。自動車を使う人は道路の整備で利益を得るという受益者負担の考え方に基づき、所得税や法人税などの一般財源と区別して使い道を道路整備に限っている。2001年度予算では、国税分で4兆2,933億円、地方税分で1兆7,329億円の税収が見込まれている。

特別目的会社

不動産、債権の証券化など特別な目的のために設立する会社。略称のSPCはSpecial Purpose Companyのこと。証券化の場合、対象となる資産をSPCが買い取り、それを担保に債券を発行し投資家に販売する。資本関係のないSPCに資産を切り売りすることで、企業は貸借対照表上から対象資産を切り売りすることで、企業は貸借対象表から対象資産を落とすことができる。その分、財務内容の健全化を進められる。税制上優遇措置のあるケイマン島などに設置することが多い。規制緩和が進んだことで国内で同様の特定目的会社を置く事例も増加している。金融機関の不良債権の処理や企業の資金調達手段多様化の一環としてSPCが活用される例が多い。特に、不動産やクレジット債権などをSPCに売却し、資産担保証券を発行する手法が急速に普及している。

特別養護老人ホーム

寝たきりや痴呆症の高齢者が入居する老人福祉施設で、介護保健の施設サービスの柱の一つ。症状が比較的安定している人向けの老人保健施設などと異なり、常に介護が必要で自宅での生活が難しい人を主な対象にしている。入居者は自分の要介護度に応じた介護費用の一割と定額の食費負担を支払う。平均的な負担額は2000年現在、5万6,000円程度。国や自治体が建設費用を高率で補助しているため、運営は公益性が高い社会福祉法人と自治体にしか認められていない。経済界では、民間企業などによる特養ホームの運営を解禁すべきだとの要望が強い。

独立行政法人-1

中央省庁再編に伴い、主に現業部門の効率化を目指して設立する法人。英国のエージェンシーがモデル。予算や定員を弾力的に設定でき、業績が良ければ職員の給与を増加させることができる。業績は3〜5年ごとに中期目標を達成できたかどうかを所管官庁の評価委員会が評価する。業務の透明性を高めるため、財務諸表、監査結果などの情報を公開する。 01/04から86業務を実施する59法人を設立する。研究所が多く、学校、博物館などもある。公務員の身分を保障するものが大半だが、貿易保険などは非公務員型となり、より人事の自由度が高まる。

独立行政法人-2

中央省庁の事務のうち、造幣局や国立病院など国の現業部門、試験研究機関、美術館などに独立した法人格を持たせ、企業会計手法を導入し効率的な業務遂行を目指すのが独立行政法人。英国のエージェンシーがモデルで、01/04から59法人が発足する予定。

独立行政法人-3

国が直接行う必要のない業務を省庁から分離して法人格を持たせるもので、行政改革の一環として事業の効率化を目的に考え出された。2001/04/01から、東京、京都、奈良の三つの国立博物館が独立行政法人国立博物館に、東京と京都の近代美術館、東京の西洋美術館、大阪の国際美術館の四館が独立行政法人国立美術館に統合された。なお、国有であった各館の土地と建物、所蔵品は、それぞれの独立行政法人の所有となった。

都市ガス事業者

決められた区域内の不特定多数の顧客に導管を通じてガスを売る事業を手掛けている者のこと。政府は一般ガス事業者という言葉を使っている。2000年現在、全国の事業者数は約240.東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガスの大手4社などの私営事業者と、地方自治体の公営事業者からなる。都市ガス事業の供給区域は都市部に偏っているが、取付メーター数で見た総顧客数は約2,500万に達し、全国世帯数のほぼ半分を占める。導管が整備されていない地域は、ボンベで運ぶ液化石油ガス(LPG)の利用が一般的。

都市計画

都市地域の道路、公園、上下水道などの配置や土地の利用方法に関する計画。2002年現在、都市計画法で計画の作成方法を定めている。都道府県知事は市や町村で一体的に整備、開発すべき地域を「市街化区域」、開発を抑制する地域を「市街化調整区域」と呼ぶ。 従来は国が人口10万人以上の都市などで都市計画地域と指定するように都道府県に義務付けていた。しかし、市街化がなかなか進まない地域があることを考慮して、2000年成立の改正都市計画法で市街化区域と市街化調整区域の線引きについて、三大都市圏を除き、自治体が選べるようにした。

土地開発公社

地方自治体が全額出資して設立する外郭団体。総務省の調べでは、2000/06末時点で、政令市以外の市区町村も含めて全国1,594公社が存在する。1999年度末の保有地は面積で約3万3,000ヘクタール、簿価で前年度比5.6%減の約8兆3,000億円となっている。この内、10年以上の保有地は5,400ヘクタール、簿価で5.7%増加の1兆1,000億円である。公社は自治体の委託、要請を受け、公園や学校などの事業用地や地権者に提供する代替地を取得する。独自に工業団地の造成に取り組むケースもある。先行取得用地は事業の実施段階で親元の自治体が買い取るが、財政難などで事業に着手できず、2001年現在では、公社が抱え込んだままの塩漬け用地が問題となっている。

土地再評価益の資本算入

企業が長期保有している事業用土地の取得原価(簿価)を時価で評価し直した際に発生する帳簿上の利益を自己資本に算入すること。日本の会計制度では取得原価で評価してきたため、企業の保有資産の実際の価値が分かりにくいとの批判があり、再評価の気運が高まっている。 98/03に2年間の時限措置で、土地再評価法が施行された。銀行は自己資本比率算出の際に自己資本の補完的項目に算入できる。しかし、再評価益は貸借対照表上は資本ではなく負債の部にまわるため、ほとんどの一般企業は実施を見送っている。自民党は土地の再評価益の自己資本への組み入れを認める特例法制定の検討に着手。土地含み益を自社株の買入消却、過剰設備の廃棄など経営合理化の原資に使えるようにする考えだ。

土地再評価法-1

企業の保有する事業用土地の決算書上の評価額を、取得時の価格から現在の時価に変更できるようにした法律。現在の価格が取得時より上昇していれば、その差額を株主資本に繰り入れることができる。当初は金融機関の自己資本比率向上を目的に、98/03に2年間の時限立法として成立。1999年に事業会社の自己資本増強のためにも利用できるように変更、法律の有効期限も01/03/30まで1年延長された。株主資本に算入できる金額を再評価差額金といい、取得時からの値上がり分の6割。算出に際しては決算期末の時価を採用する必要がある。2月決算企業では01/02期でも可能だが、3月決算企業にとっては00/03期で法律の有効期限が切れる。

土地再評価法-2

企業が保有する本社や工場、賃貸ビルといった事業用土地を時価で評価し直し、含み損と含み益の差額を株主資本に反映できるようにした法律。保有する全ての事業用土地を路線価などで再評価し、簿可から値上がりした額のうち、実際に売却した際に負担する税金分を差し引いた額を「再評価差額金」として資本の部に算入できる。2002/02現在、法律の有効期限は2002/03末までとなっている。 銀行の自己資本増強策として、1998年に導入され、その後、一般企業にも利用しやすいよう法改正された経緯がある。土地の含み益はあるが株主資本が乏しい企業など、2002/02までに100社以上の上場企業が採用している。損益計算書を通さず、帳簿上で土地の含み損と含み益を相殺できるため、建設、不動産会社などの利用も相次いでいる。

土地譲渡益課税

土地取引取得価格を上回る収入が出た場合の譲渡益を対象に課税する制度。地価が高騰したバブル期には土地投機を沈静させるために税率引き上げなどを実施したが、地価下落で95年度以降は軽減されている。個人が長期保有(5年超)していた土地を売却して譲渡益が出た場合、98年末までは6,000万円超の譲渡益には32.5%(住民税を含む)、6,000万円以下には26%(同)の税率が適用されている。99年春の国会で審議する税制改正法案が成立すれば、99/01にさかのぼって一律26%になる。

特化型運用

株や債券など特定の資産に特化して運用する手法のこと。リスクは高いが運用効率の向上を見込めるため、2000年現在、採用する年金基金が増加している。年金福祉事業団の場合、1999年度末の運用資産約27兆5,000億円のうち特化型運用が10兆4,000億円(38%)を占め、バランス型運用は17兆1,000億円(62%)だった。具体的には、東証株価指数など市場平均を示す指標とほぼ同じ運用を目指すパッシブ運用や値上がりが見込める銘柄に重点投資するアクティブ運用がある。年金基金は資産運用にあたり政策アセットミックスと呼ばれる資産配分戦略を策定する。運用手法が専門、細分化しているため、基金の配分戦略と実際の資産配分に乖離が生じやすい。米国では複数の運用機関が運用する資産全体を把握し、総合管理する業態も登場している。

特記事項

公認会計士、監査法人が提出し、有価証券報告書に付記する監査報告書で、投資家に注意を喚起した方通いと判断される情報を記載する事項のこと。92年に導入された。監査報告書は適正だが、経営に重大な影響を与える事項があることを示す。合併や株式分割のほかに、債権の回収可能性や債務保証の状態、再建計画の進捗状態、前提条件などが特記事項として取り上げられるケースが多い。7月に会社更正法を申請した東海興業を初め、60前後の上場企業の監査報告書につけられている。経営再建計画について関係金融機関と合意した飛島建設の場合、97/03期の監査報告書では特記事項が7期ぶりに外れた。

特許権

物や方法の発明を対称にした独占的な権利のこと。特許庁に出願して、審査を受けて認められた発明に付与される。技術などの新規性や進歩性などが審査のポイントになる。2002年現在、日本は欧州と同様に、同じ発明であれば先に出願した方が特許権を得る。

特許権の保護対象

特許法2条は発明について自然法則を利用した技術的思想の創作の高度なものと定め、物と方法の2つの方式を列挙している。コンピュータのソフトウェアは1977年になってフロッピーディスクやCD-ROMなどの固定した記録媒体を保護対象とするよう特許庁が審査基準を改正、独創的なものは特許の対象となった。 00/02現在、インターネットを活用した新しい手法への特許は、コンピュータを利用して処理する要件を満たすソフト関連発明の一環として物の形を取ることが条件。しかし、最近ではネットなどの伝送媒体そのものを特許取得のための記録媒体として申請する例が出ており、特許庁の対応が注目されている。

特許収支

企業は自社が保有している特許権や商標権、意匠権、著作権などの知的所有権について、他社がそれを利用する場合には権利の使用料を請求できる。逆に他社の権利を使う場合には使用料の支払義務が生じる。海外企業から受け取るライセンス使用料から、海外企業への支払いを差し引いた額が、財務省の国際収支統計に特許等使用料の国際収支として示される。日本の電気メーカーが米社製ソフトを自社のパソコンに組み込んで販売した場合も、ソフトのライセンス使用料を支払う必要がある。日本の特許収支は赤字が続いてきたが、1996年に3,400億円あった赤字額は2000年まで年々縮小している。

特許審査

特許庁が企業や個人に特許を与えるかどうかを判断するために実施する調査のこと。出願された発明について、@一般に知られていない新規性、A既存の技術と大きな違いがある進歩性、B実際に産業や社会の役に立つ有用性があるかどうかを点検する。同じ発明が出願された場合、出願の早かった方に特許を与える。日本は国際水準に比べ1人当たりの審査官が抱える案件が多く、審査期間が長くなりがちである。1997年に期間短縮に取り組み始め、2000年現在、従来より3ヶ月程度短くなったが、未だに米国より長い。このため、日本企業が日本の特許庁への出願を避け、米国の特許商標庁での権利取得を目指す特許出願の空洞化が進んでいるといわれる。

特許の国際出願

2002年現在で115カ国が加入する特許協力条約に基づく統一的な出願手続き。企業が複数の国で特許を取得したい場合、各国で個別に出願できるが、PCTを使えば権利保全を求める国を指定し自国語で自国の当局に出すだけで各国で国内出願したとみなされる。複数の国で書類を揃え、各国語に翻訳するなどの負担を省ける。 国際出願した後、特許を実際に取得するには各国で改めて国内手続きに入るが、出願から最大30カ月の猶予期間が認められる。商品化できるかどうかはっきりしない技術でも、まず国際出願して他社に世界標準を奪われないよう保険をかけ、状況を見ながら特許出願への戦略を練ることができる。

ドミナント規制

支配的なという意味の英語からきた言葉で、圧倒的な市場支配力を持つ企業に対する規制を指す。特定企業による市場独占を緩和して、他の企業の新規参入を促し、最終的な消費者向けサービスの改善につなげるのが狙いだ。 2000年現在、通信市場では欧米で採用されている。例えばドイツでは3分の1以上の市場占有率を持ち、競合する事業者があることなどが条件。

ドメイン名

インターネット上の住所表示に相当するもので、www.企業名.co.jpといった構成になっている。日本の企業や団体であることを示すjpで終わるドメイン名は郵政省や通産省の外郭団体である日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が登録を管理。comは米国の民間企業であるネットワークソリューションズ(NSI)が扱っている。 2000年現在、先着順で好きなドメイン名の登録を認めているため、不正目的で取得されるケースが絶えない。日本弁護士連合会と弁理士会が共同で運営する工業所有権仲裁センターは、2000年秋から裁判より負担が軽く、決着までの期間も短い仲裁業務に乗り出す計画である。

トラッキングストック-1

企業が経営権や組織形態を分離せず特定の事業部門だけの業績を対象に発行する株式。特定部門を追尾する(track)意味でTracking Stockと呼ぶ。米国では1984年にゼネラルモーターズ(GM)が情報処理会社を買収する資金を調達する目的で子会社となる比買収企業を対象に発行したのが第1号。00/04現在は約40種が上場、取引されている。過去1〜2年は遺伝子解析やインターネット関連の成長分野を対象にしたTSの発行が、分析機器、化学、投資銀行、通信関連会社で相次いだ。1999年はパーキンエルマー社が遺伝子解析部門(セレーラジェノミクス社)を、ウォルトディズニーがネット事業を対象にそれぞれ発行した。00/03/14にはAT&Tがワイヤレス部門の発行を決めた。

トラッキングストック-2

企業が組織や経営権を分離せず特定の事業の業績を対象に発行する株式。特定部門を追跡(トラック)する株式(ストック)という意味からこう呼ばれる。株式公開や分社などの必要がなく、事業部門の支配権を握ったまま資金調達できる。米国では1984年にゼネラルモーターズが第1号を発行したが、2000年現在、約40銘柄が取引所に上場、取引されている。日本では法相の諮問機関である法制審議会が、商法の50年ぶりの抜本改正を進めており、産業界の要請に応える格好でトラッキングストックの法整備に乗り出している。ただ登記制度や会計処理方法についての調整が難航している模様で、早期に法改正が実現するかどうかは不透明である。

取締役会改革

コーポレートガバナンスを確立しながら、効率的な経営を実現することが狙い。具体的な改革手法としては、取締役の削減や執行役員制、社外取締役の導入などがある。日本では1997/06末にソニーが取締役数を38人から10人に大幅削減するとともに新たに執行役員制を導入して以降、大手他社に広がってきた経緯がある。

取引所集中義務の撤廃-1

上場株式や転換社債の取引は従来、証券取引所で行うことが義務付けられていたが、日本版ビッグバンの一環で、98/12に撤廃された。様々な市場の競争を促し、日本の株式市場の利便性を高めるのが目的で、顧客と証券会社間の相対取引や証券会社が私設取引システム(PTS)で幅広く売買注文を集める業務が可能になった。

取引所集中義務の撤廃-2

上場株式や転換社債の取引は証券取引所で行うよう義務付けていた規制が撤廃され、一定の条件を満たせば取引所外で取引できるようになった。日本版ビッグバンの一環で98/12に実施された。撤廃の狙いは証券取引所を含めた市場間の競争を促すことで、投資家に利便性の高い市場機能を提供すること。取引所外取引は売買高に応じて証券会社が取引所に支払う手数料などが不要になるため、投資家の負担が軽減されるなどのメリットを期待できる。集中義務の撤廃と同時に証券会社が私設取引システム(PTS)を運営し、独自に売買を成立させることが可能になった。これまで取引所外取引は機関投資家など大口取引に限られていたが、ネットの活用で個人投資家も参加できる環境が整いつつある。

取引信用保険-1

商取引に伴う売主の貸倒リスクを保証する保険で、通常、継続的な取引先への売掛債権が倒産などで回収不能になった場合に取引による利益を差し引いて支払われる。2000年現在、世界全体の市場規模は保険料ベースで約4,000億円。欧州で始まり発達した。日本では1994年に認可された。売り手が保険に加入する際、まず保険の対象となる取引先を指定。保険会社は指定された取引先の与信力に基づき、回収不能になった場合に支払う保険金を算定する。保険会社が徴収する保険料は、売り手と取引先の年間の取引額に一定の料率をかけて算出する。

取引信用保険-2

保険契約企業(被保険者)が保有する企業の売掛債権を保全する保険。取引先の倒産に伴う売掛金の貸倒損失を最小限に抑える手段として活用する。2001年現在、景気の低迷に加え簡易型の倒産法制である民事再生法の施行で、企業の関心が高まっている。企業が望んでも特定取引に私募って加入することはできず、原則として全取引先の売掛債権を対象に保険をかけるのが特徴。逆に、損保側がある特定企業に対する売掛債権を保証範囲から外したり、保険金支払限度額を大幅に引き下げたりする例は多い。

iMi フルーツメール Click Here!