青年よ、プライドを抱け!

  ボードネタを立て続けに2つ書いて、今時の若者と私とのジェネレーションギャップの深さに改めて気が付いたので、本コーナーの趣旨からはちょっと脱線するけど(元々そんなもんないか?)、ボードやフリースキーでやたら横行する、最近の横文字文化について”喝!”。

 しかし最近本当にこの世界、横文字増えてきましたね。私もようやく最近一部理解出来るようになりましたが、それでもまだちんぷんかんぷんでさっぱり。では古くから山スキー事情に詳しい、長屋の熊さんに聞いてみましょう。

     ”えっ、俺も蝦夷っこならおめーさんも生粋の蝦夷っこだってねえ!、まあこっち来て、食いねえ食いねえ、シャケ食いねえ!。

     えっ、なにっ?。ばっくかんとりいすきいって知っているかって?。なんだい?その舌噛みそうな長ったらしいのは?。うちは鞄屋じゃねえんだから、バック買いてえんだったら他当たっとくれよ!。えっ?、山スキーの事?。だったらおめー、最初からそう言えばいいじゃないか!。べらんめー、知ってるもなんもこっちとくればよー、産湯に浸かった翌日には板履いて滑ってたくれーだから、なんでもかんでもお見通しよお!。でもおめー、そんな横文字使わずに、日本人だったら”山スキー”で良いじゃねえか!。

     ”そんなのCOOLじゃない?”だって?。てめーこの野郎!、俺の言った事、お寒いギャグとでも言いてえのか?、こんちくしょうのこんこんちきめ!。帰れ帰れ!、二度と来んじゃねえぞ!この毛唐かぶれが!。かかあ!塩持ってこーい、塩ー!。”(以後取材拒否)


 以前私が学生時代だった頃、山関係の専門用語はほとんどがドイツ語から。アイゼン、ピッケル、ゾンデ、モルゲンロートetc。で、近年は、ゲレンデより山のパウダーの方が面白いボードの影響で、山関係までもなんでもかんでも英語が使われ始めましたね(アバランチが雪崩の事だって気が付くのに一年かかった)。最近のボードやフリースキーの雑誌読むと、なんか長島語録みたい?!。
     例〜バックカントリーをハイクアップしてクリフからドロップインし、マッシュでクールなエアー決めながらハードでコアなエキストリームツリーランをエンジョイした????。
    ”山登って林の中飛んだり跳ねたりしながら崖滑り降りたら、なまらすげー面白かった”の方が、よっぽど短くて分かりやすいじゃんかよー!。
 確かに横文字多用すると今風で、若者たちにはかっこよく見えるのかも?。またボードのようにまだあちらのものをこちらに直輸入しただけの状況では、多少はやむを得ないでしょう。また横文字(英語ではなくて実際は単なる英単語の羅列)を多用すれば、なんか自分がインターナショナルでワールドワイドな世界(これも横文字?)に居る感じがするのかも知れませんね。しかし物には程度って言うものがあるでしょうが!、程度って言うものが!(年寄りの愚痴?)。
 以前学生時代、なぜか言いしれぬ虚無感や、今なにかしなきゃと言う漠然とした不安にさいなまれ、そこに行けばなにか見つかるかもと、海外貧乏放浪一人旅をトータル3ヶ月した事があります。来る日も来る日も強烈な下痢に悩まされ、ネパールの山奥で高山病を体験し、インドの内陸でマラリヤでぶっ倒れ、タイでは空港の税関と一悶着あって(役人に2万円すられた!)両腕を掴まれて事務所に連行され、あげくのはてには帰りのチケットがオーバーブッキング!。現地の航空会社に連日交渉し、オープンチケットがただの紙切れになる直前の便でようやく帰国出来てやれやれ!と思ったら、帰国が遅れて大学を無断欠席した罪で、教授会にかけられる直前だった。 結局トラブル続きでなにしに行ったのか分からない旅だったけど、それはそれで面白かった。

 貧乏だったので当然安宿しか泊まれず、YMCAとかサルベーションアーミーとかの、世界中から貧乏な若者旅行者が集まる安宿を探しては泊まっていた。そう言う安宿には当然エアコンなんかないし、おまけに至る所南京虫に噛まれたお陰で熟睡なんか出来ず。

 その宿で強く感じた事が、”自分はどうあがいても日本人なんだ!”って事。なのに日本について興味を持って質問してくる他国人に対しまともに答えられない、情けない自分がそこにいた。またカオスのようなその宿の中で自分は何一つ、”俺は日本人だ!”と言う自己表現の手法を持ち合わせていなかった事を悔やんだものだ(帰国したとたん、その事をけろっと忘れたけど)。柔道でも弓道でも書道でも、はてまた歌でも料理でも折り紙でも、とにかく何か一つでもいいから、他の国の連中を”ほー!”と言わせる事が出来れば、彼らとのコミュニケーションもまた違ったものになったと痛感したね。その点同じアジア系でも、韓国や中国系の方がコミュニケーションは上手。なにせ民族意識は強いし、自己主張はっきりしているからねえ。

 真のインターナショナルって事は、ただ猿真似のように、あちらの横文字や語学を使うことではなく、まずは自国の文化をしっかり吸収し、その土壌の上で相手に自信をもってはっきり自己主張出来ることなんだってば!。ただの無国籍人なんて、あちらでは誰も相手にしてくれやしない。他国人を理解するには世界史も必要だが、自分をあちらに理解させるには日本史も重要。同じように、他人に自分を認めさせるためには、確固たる”自分史”もなくちゃ、相手納得させる自信なんかないっしょ?。


 話はちょっとそれるけど、ファッション業界で世界的に認めらている、例えば山本カンサイ氏らに代表される日本のブランド。一見あちらの模倣にも見えるけど、彼らの根底にあるのは日本の伝統美(らしい)。それをあちら風にアレンジこそしているけど、決して無国籍ではない(らしい)。だからこそあちらでも評価されると聞いたことがある(人の受け売り?)。

 我々アジア人がいくら丁寧に良いものをあちら風に作っても、確固たるオリジナリティーがなければ、”随分良く出来たコピーモノ(フェイク)ですね!”と軽くあしらわれるのが関の山!。例えば電気製品だって、ソニーはあちらでも一目置かれているけど、その他のメーカー品は”メードインジャパン”の十把一からげにされてる。


 青年よ、プライドを抱け!。横文字にかぶれたり、あちらの格好を猿真似してどうする?。日本にはちゃんとした日本語っちゅーもんがあるんじゃい!。プロも、変なイングリッシュネームで自分らを呼ばせるの、おかしくない?。ビデオのバックにあちらの意味不明のラップ流す位なら、日本には日本の伝統ラップもあるんだぜ!(♪秋田音頭ですー、ハーソレソレ♪)。鬼畜米英!金髪に染めるのなんか以ての外!。ピアス?そんな牛の付ける物付けて喜んでりゃ世話ないわ!。(オイオイ!)

 言葉や髪の色真似してどうあがこうが、変えられないものは変えられない。ただ無国籍になるだけだ。それよりもっとオリジナリティー溢れる、日本らしく自分らしい自己表現方法を磨く事の方が今君らには必要なのだ!。幸い君らはまだ若い(俺はもう年だ?!)。新しい境地を目指しがんばってくれたまえ。


 最初は横文字の話だったけど、段々支離滅裂で収拾が付かなくなったのでこの辺で。またしても辛口おじさんの主張でした。(俺ってナショナリストだったっけ?)
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