個性

 いやー、最近の若者の奇妙キテレツなファッション感覚には、おじさん舌を巻くね。象足みたいなルーズソックスが流行ってはすたれ、ヤマンバファッションもしかり。コンサドーレの応援団(サポーターって言うンだっけ?)の、あの派手なくま取りメイクも凄いし、昔の竹の子族もどきのよさこいの踊り子の、やたら後ろの長いハッピもそうだしね。

 先日、テレビのレポーターがそれを称して”最近の若い子達も皆さん個性的になりましたね!”だって。”あんたの頭、ピーマンちゃうか?”思わず突っ込みを入れてしまった(決して私は関西人ではない!)。

 確かに彼らが一人で地下街とか大通りとか歩いていれば、そりゃーもう個性的に見えるかも知れないけど、彼らがその格好をしている理由はただ一つ、”みんなこんな格好しているしー!”。つまり、仲間で徒党を組んだ時、自分だけ浮かないようにしているだけ。それって個性的じゃなくて逆に”没個性的”って言うっんだっつーの!。

 でも振り返って我が身の回りを見回すと、あまり人の事は言えない。山スキーとか行くと、みんなノースフェースの同じヤッケ上下に身を包んで、誰が誰だか区別が付かなかったり、山ボーダーも例の、体温調節のやりにくそうなダブダブオーバーオールのゲレンデファッションのまんま、山に登ってくるし。

 えっ、私?。そりゃー頭の先からつま先までこだわりの塊のような私のことですから(意味不明?)、人から見れば個性的らしいですよ。今時流行らない、秀岳荘のナイロンヤッケ上下だって、ちゃんとこだわりがあって着ているんですから(厳冬期の冬山に、高くて嵩張るゴアテックスは必要ないし、なにしろ安くて丈夫)。スキーの長さから幅からシールまで、すべてこだわりを捨てない。もっともストックのように、単に”安い”という一点だけで使い続けているアイテムも、数多いのも事実だが。


 そこで”本当の個性ってなんだ?”って事になるんだけど、なんか最近、教育現場でも判を押したように”個性を伸ばす”って叫ばれているみたい。確かに今までの画一的教育みたいに、”個性の芽を摘む”ってゆーのはもう流行らない。でもなんでもかんでも子供の好き勝手やらして、これを”個性を伸ばす教育だ!”っていうのもなんか変。

 個性って、教育でもスポーツでも勉強でも芸術でも、まずは”スタンダード”という基礎を皆で真剣勝負して初めて、”この分野には他の連中にはない"Something else"があるって、本人や回りが初めて分かるもの。だから子供の好きな事だけやらせておけば、将来人より抜きん出る人間になるかって言うとまるで逆で、一般常識のない偏った人間の大量生産にもなりかねない。最近問題になっている、大学生の学力不足なんて、これの典型的な例だよね。

 あと”個性!個性!”って、とにかく世の中では枕詞みたいに皆四六時中使っているものだから、人よりなにかずば抜けて秀でているものがないと、まるで自分はダメ人間だって錯覚を覚えさせるけど、そんなこともないっていうのも事実。確かに当人の個性・特性と、仕事や趣味のベクトルがピッタリ合えば、それはそれで凄いことが成し遂げられるかも知れないけど、そんなの実際極めて希。現実は、たとえ得意分野で仕事出来たとしても、それ以外に当人の不得意・苦手な事もわんさか押し寄せてきて、たとえ浅くても広い知識・見識を持つジェネラリストじゃないと現場じゃ役に立たない。

     実は専門家って、結構楽なんですよ。知らない事は”それは私の専門外だ!”って突っぱねれば済むんですから(私も一応専門家の端くれ)。
 得意分野を持っているからと言って、基礎を軽んじてもいいのか?。おまけにそんな”好き嫌い”をしておいて、その行為を”個性”の名の下に正当化する?おいおい!。個性とは、決してそんな事じゃない。本人が、人の意見に左右されない・流されない、不屈の”こだわり”や”自信”を持って実行する、そんな”頑固者”こそが、よしもあしきも”個性的”なんだけどなあ。つまり基礎と個性とはまるっきり次元の違うって事を言いたかった訳!。
 なんで突然そんな事言い出したかって?。いやー、この年になると、仕事でも遊びでも、後進の面倒を見る事が多くなってね。私の目から見ると、”こいつちょっと一足飛びに結果を急ぎすぎるなあ”と感じる事がよくあるんだっけ。例えば山でもスキーでもバイクでも、初心者がいきなり応用技やるのは、基礎が出来てないと危ないっしょ?。

 だからと言って若い頃、”年寄りが惰性で過ごしてきた時代と、自分らがこれから切り開く時代とでは、やり方からして違うんだゼ!”って反発していた自分に、今更手のひらを返したように後進に”基礎から修行して出直してこい!”と言う資格も説得力もまるっきりないし。うーん、難しい。

 来シーズンは私も、基礎スキーから出直さなきゃだめ?sakaguchi指導員!。


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