やぶにらみテレマーク考

 あれ?どこかで見たようなタイトル?。坂口さん!、気にしない気にしない(^0^)。

 最近、山に行くとテレマーカーが増えてきた。ここ1〜2年、なんか年々倍増している感じ。アウトドア系の雑誌を見ても、冬は”パウダーテレマークは楽しい!”等の記事が目白押し。(と言うより、山スキーの話題は、”バリエーションルートのアプローチに便利”等位しか取り上げられていない(;_;))

 機動力で差を付けられ、遊びの盛り上がり方でなお差を付けられ、おまけに札幌近郊・ニセコのようなライトツーリング山域では、この勢いではもはやマイナーどころか絶滅危惧種に指定されつつある我が山スキー派。山は、ボーダー・テレマーカー・山スキーヤー・スノースクート(?)と、遊び方が多様であればあるほど文化的に豊かである!と主張する私にとって、劣勢になるのは仕方ないとしても、絶滅は困る?。

 ”敵を知り己を知れば百戦あやうからず”(孫子の兵法)と言う訳で、己であるアルペンと、ライバルであるテレマークに対し(別に敵視してる訳じゃないよ!)、ここで状況分析を試みる事にした。(こんな事書くから嫌われる?)


 まずは己の分析から。近年のアルペンスキーのめざましい発達。発達自体は良いにしてもその反面、靴や板や金具等の用具は年々、重く、硬く、きつく、動きづらく、高価格化し、”気軽さ・手軽さ・親しみ易さ”からはまるで逆の方向に向かっている。これはまさに物欲に支えられた現代の大量消費時代を象徴しているかの如くで、頑固なおじさんには付いていけない。

 技術に関しても、滑降性のみの追求で生まれたハイバックの硬い靴に頼り切り、後傾で混んだゲレンデをぶっ飛んでいく暴走スキーヤーの増加を目にすると、かなり違和感を覚える今日この頃。結果として転倒時のリスクも年々大きくなるし。

 挙げ句の果てには、滑降性能に特化した用具・技術に迎合し、バブル時代に巨大化・肥大化し、今はその巨体の維持に青息吐息のスキーリゾート(山を虎刈りにしてなにがリゾートじゃい!)。その惨憺たる状況についに嫌気がさし、”もはや行き着くところまで来てしまった!”と感じて10年前にゲレンデから足を洗った私としては、ゲレンデの設備・用具・既成テクにこだわらない、黎明期のテレマークの自由な思想には、実に大きく共感する点がある。(あれれ?、最初から旗色悪いぞ!)


 次にライバルの分析編。テレマーク発祥の地、と言うよりスキー発祥の地北欧では、スキーと言えばノルディックを指す。つまりフリーヒール(ヒールフリーって、"キ"氏によると和製英語なんだって)。あちらでは老いも若きも歩くスキー(とは言わずラングラウフ)を楽しみ、その延長上に、ダウンヒルも楽しめるテレマークが存在する。層の厚さたるや、国民皆がテレマーク予備軍みたいなもの。その点我が国では、テレマーカーのほとんどがアルペンからの転向組、しかも30〜40代がほとんど。老若男女の本場とは、層の厚みがちと違う。

 今のテレマーカーの盛り上がり方は大変楽しそうだし、関心もあるけど、その層の厚みの違いにちょっと不安を感じる私ではある。確固たる土台となりうる層(多くの草の根愛好者や予備軍たる子供達)がいないと、移ろい易い世間の風潮に揉まれ下火になったり、熱狂している現役世代が引退したらそれっきりという事象が多いからネ。今のテレマークがブームなのか、それとも冬の新たな遊びとして確固たる地位を築くのか、今後の推移には関心がある今日この頃。


     ”テレマーカーでもないお前が、知ったかぶり言うな!”って?。でももしかしたらフリーヒール歴はそんなあなたより古いかも?。私が道内にUターンしてクロカン・山スキーを再開した10年前、当時は鉄下駄のような山スキーの重さに辟易していたし、始めたばかりの歩くスキーの可能性も試したかったので、ラッセルのない春山・残雪期のなだらかな山は、すべて歩くスキーで踏破していた(十勝岳・三段山・藻琴山・チトカニ・愛山渓周辺e.t.c.)。

     あんな不安定な歩くスキーでもって、アルペンターンで山を降りるなんて、そんな優れたバランス感覚持っていたら、私今頃別な仕事しているだろうから、下山時はいつも、見よう見まねで覚えたいんちきシュテムテレマークもどき。それでもバランス取りにくいものだから、ストックを一本に束ね、内側に転けないように常に山側に引きずって支えるという、レルヒ真っ青の一本杖スキー!(クロカンストックは長いからね!)。でもこんな不安定な靴・板でも意外と降りてこれる事に、驚きと快感と達成感を覚えたなあ(そのかわり死ぬほど転けたけどね)。

     もしもゲレンデでキッズテレマーカーがギンギン幅を利かせ、ショップにも大人用と変わらない位、小さなテレブーツが並ぶ時代が来れば、私もアルペンターンには未練なくなってテレマーク軍団に寝返っているかもね。


 しかしよく考えてみれば、今やスキー全般が既に、層のもろさを抱えているんだよなあ。最近のスキーヤーの年齢構成たるや、少子高齢化の日本の未来を既に先取りしている感じ?(特にXCスキーヤーなんて最たるモノ!)。山スキーの方が安定性が良いだの、テレマークの方が楽しいだの、プラブーツだの革靴だの云々言って、自分の砦ばかり守っていたら、気が付いた頃にはスキー全体が地盤沈下してた?(もはや、こんな状況分析している場合じゃないってか!)。

 スキーって実に幅広いフィールドを持つ、本当に奥深い遊び!。歩くスキーでひっそりした原始の森に自由に踏み入ったり、XCスケーティングで爽快に高速クルージングしたり、山スキーで広大な天然スロープを一気滑りしたり、フカフカの粉雪でテレマークターンを決めたり、ザックにショートスキー忍ばせて残雪期の下山時に遊んだり、整地バーンでワールドカップ気取りでポールくぐりしたりと、数えだしたらきりがない。そんなスキーの持つフィールド全体から見れば、フリーヒールか否か?なんて、実にちっちゃな違いでしかない。同じスキーだもんね(ますますこんな状況分析している場合じゃないってか!!)。


 でもゲームやらケータイやらファッションやらに熱心なインドア指向の若者世代にどうやって、ゲレンデだけじゃない、スキーの持つ幅広い楽しさを伝えるか?。うーん、実はこのHPを立ち上げた理由には、そんな趣旨も一部あるんだけど、しかしそんな妙案あるのかな?。

 でもそんなむずかしい事考えるより、今滑っている我々おじさん世代が色々と、自分自身うんと楽しんでさえいればそれがかっこよく見えて、若者・子供達もそのうち引きずり込まれる、案外そんなものかもね!。


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