太平洋戦争当時、日鉄(現新日鉄)大阪工場に徴用された呂運澤氏、申千洙氏の二名が未払賃金の支払い、強制連行・強制労働に対する謝罪と補償を求めて九七年十二月、日本政府と新日鉄を相手に大阪地裁に裁判を提訴しました。

 私たちは、現在、新日鉄にこの問題の一日も早い解決を強く求めています。ところが、新日鉄は裁判において、戦前の日鉄と新日鉄は別会社であり責任がない(別会社論)などの主張を繰り返し、責任を認めようとしていません。

 しかし、戦争中の強制連行問題については、今年三月、ILO(国際労働機関)が中国人・朝鮮人の強制連行について第二十九号(強制労働)条約違反であると断罪し、日本政府にその解決を強く促しました。四月には、NKK(日本鋼管)に強制連行された金景錫さんの裁判が東京高裁で和解を実現、九月には、中国人強制連行について、鹿島建設の花岡事件が裁判所から和解が勧告されるなど日本企業の強制連行に対する補償問題については、解決にむけた流れができつつあります。

 新日鉄については、旧八幡製鉄で強制労働させられたアメリカ在住の韓国籍の男性が新たにワシントン州の連邦地裁に訴えを提起するなど補償を求める声が大きく上がってきています。

 一方、ドイツでは、戦時中の強制連行に対する補償のための基金の設立がすでに合意されるなど、戦後補償は世界の流れになってきています。

 太平戦争当時、一万人を強制連行したといわれる新日鉄は、日本を代表する企業として、いまこそ先頭に立って未払賃金の支払い、強制連行・強制労働に対する謝罪と補償を行うことを決断するときです。