理学博士 橋本腿一郎博士 |
日本国のちくわを使用せんとする諸君! 只その形状と風味に溺れ、 無益なるちくわの人生を送り、 あたら前途洋洋たる青春の身を散らす青年が この平成の聖代においても跡を絶たない! これは、小さくは一身の嘆き、大きくは国家の損失である! そこで、工学博士にして理学博士たる、 四国帝大の教授にして亦この日本国の師表と仰がれる 橋本腿一郎博士により、 青年諸君に正しきちくわの使用法を ここに開陳するものである! 青年諸君よ、正しきちくわの使用法を学び、 堂々たる道を歩みたまえ! |
1.食用に供せらるるちくわ
ちくわとは元来が煮物用に製造されし物ゆえ、おでん等で煮ることを只良しとする青年が、世間には大変多い。亦、生食用として、マヨネイズの類をかけて食することのみで、満足する輩もいると聞く。
噫!青年の怠惰此処に極まれり哉!
福沢諭吉翁曰く、「青年の本分は新しき創造を専らとするのが本義である。」
青年がそのような意気を失っては国家の存亡に関わることであり、亦当人のためにも悲しむべき事である。
露国沿海州の一部に於いては、ボルシチなる露国の煮物をちくわの穴(この名称は不適当であるが、通俗性を尊重し敢えてこのまま記す)に詰め、橄欖油にて素揚げした食品を食すことがあるという。他国の人民はこのような冒険を為すならば、我が東亜の大国である日本国の青年はもっと冒険心に富んだ行動をとるべきである。
そこで我輩が松山市道後温泉において行った、「ちくわの逃走食い」を青年諸君にお勧めしたいと切に願う。
「ちくわの逃走食い」
まず、ちくわを用意する。そして広大なる浴場においてこれを放流し、激しく泳ぎ、湯を掻き回し、さながら蜘蛛の子の様に逃走するちくわを口で追いかけて食らうのだ。
湯が飛び散り、ちくわが揺れ、尻が舞う。ダイナミズムの極致であり、亦体力の増強にもなる。青年諸君に是非お勧めしたい。
亦、コンビナァト付近、原油流出事故直後、原発付近等場所によりちくわの風味も異なり亦、乙なものである。
2.愛玩動物としてのちくわ
現今の愛玩動物(ペット)の流行により、多種多様な動物を飼育する者が多数増加しており、昨今では電子機械の犬などを飼育するものも多い。然し、悲しむべき事ながら他者と異なる動物を飼育することにより他者との差別を図ろうとする者がある。
咄!愚かなる哉!
須藤真澄女史曰く、「無くても別に支障が無いが、あると無しでは慶び具合が違うもの」(意訳)である。然し亦、「生活の中心に成り代わる存在」(意訳)である。
愛玩動物を人間の得手勝手で決めるのは動物にとっても人間にとっても、大きくは国家にとっても不幸である。
そこで我輩が薦めたいのがちくわである。
「ちくわ飼育法」
ちくわは、湿気や感想に弱く、亦長生きしても3日位であるため、あまり飼育に適さない。然し、そうだからといって飼育できないわけではない。亦、大型のちくわは市場で高額で取り引きされる。青年よ、将来の利殖のためにちくわの飼育に挑戦してみては如何であろうか。
ちくわは夜行性であり、冷蔵庫等での飼育の際はできるだけ庫内灯を日常の太陽と同じサイクルでつける。餌として鯔子(からすみ)や鱈子(たらこ)等の魚卵を与え、北に黄色、西に竜の置物を配置することが肝要である。
20pを超えるとかなりの高額となる。
3.伴侶としてのちくわ
最近は出生率が低下し、亦女性が社会に進出したため結婚率が低下し、家庭制度崩壊が叫ばれている。少年少女の非行率は高まり、驚愕するような凶悪事件が多発している。
噫!嘆くべからざる哉!
吉川ひなの嬢曰く「超ラブラブ。」
結婚は家族の根幹、家族制度は社会の根幹、社会は国家の根幹である!男児たる者、家庭を構えずして何の忠君愛国か!
然し、現今の社会情勢から、婦女に家庭に入れと強談することはできず、亦すべきでもない。男女が共同せずしてこの日本国を支えることはできないからである。そこで家庭を支えるものとして我輩がお薦めしたいのがちくわである。
「ちくわとの家庭生活」
ちくわは家庭をささ得る大黒柱として必ずしも十分ではない。だが、1本では貧弱なちくわも、30,40と集まればかつての賢婦人山内一豊の妻にも比肩しうるほどになる。亦、婦女子ばかりを追いかける荒淫なる男児も一度ちくわを知れば、その魚臭さの虜となるだろう。
ちくわは高額なる洋装もせず、亦子供を甘やかしもしない。まさに失われた「日本の母」の典型であろう。
総論
ちくわの使用により、外に威を張り、宇内に平静を取り戻すことができることがよく分かったであろう。だが、ちくわの使用法を誤ってはならない。それは神が我が日本民族に与え給うた、試練であろう!