ふたご1 「私を…愛さない…人は…い・な・い…。」
ふたご2 「早い者でもう9月も終わり、20世紀も後三ヶ月となりました。」
ふたご1 「月並みな言い方やね。」
ふたご2 「埼玉県の浦和、大宮、与野、の三市が合併して「さいたま市」になることが市議会で正式に承認されたそうです。」
ふたご1 「またひとつ県名と県庁所在地がちがう県が消えたか…。」
ふたご2 「小学生は楽でええね。しかし、ひらがなの県庁所在地ねえ。」
ふたご1 「住所を書くときは埼玉県さいたま市になってすわりが悪いですね。」
ふたご2 「口で言うぶんには同じなんですが。」
ふたご1 「さらにさいたまレッズですよ。」
ふたご2 「なんかリトルリーグみたいですね。」
ふたご1 「そのうちSAITAMA市とかЗАЖМЬЩШЕ市とか言い出しかねないですよ。」
ふたご2 「それは調子に乗りすぎやね。」
ふたご1 「よその市もくさび形文字やバスパ文字や神字や梵字で書くようになって。」
ふたご2 「うっとうしいことこの上ないですね。」
ふたご1 「ユーゴスラビアの選挙。」
ふたご2 「ミロシェビッチ大統領の再選を決める選挙なんですが、ミロシェビッチ大統領が選挙管理委員会に指示して自分に有利なように仕組んだのではないかという話ですね。」
ふたご1 「それでも対立候補の48%に対し、40%ぐらいと負けてるんですけどね。」
ふたご2 「しかし大統領になるには過半数を取らなければならないという規則があるんで決選投票をすることになったんです。しかし選挙管理委員会は大統領の手の中にあるわけで、野党側はボイコットを表明しているんです。」
ふたご1 「そりゃ大変だ。」
ふたご2 「それだけか。」
ふたご1 「別にミロシェビッチ君と知り合いじゃないしなあ。」
ふたご2 「今まで言うて来た奴に一人でも知り合いがおるか。」
ふたご1 「ミロシェビッチという人は、ユーゴ内戦のときの虐殺の最高責任者として、国際戦犯法廷に起訴されていて、大統領を辞めるとつかまっちゃうんですね。」
ふたご2 「そういう話をせんかい。」
ふたご1 「しかし、だからといって選挙をちゃんとやらないのはよくないです。どうです。ミロシェビッチ君が大統領に落選してもつかまらない方法を考えてあげようじゃありませんか。」
ふたご2 「知り合いでもなんでもないんやろ。」
ふたご1 「まずユーゴスラビアといえば、」
ふたご2 「何。」
ふたご1 「なにもおもいつきませんな。」
ふたご2 「あんまりユーゴ名物とか思いつきませんな。」
ふたご1 「戦争とか。」
ふたご2 「バルカンの火薬庫やからね、って戦争起こしたからミロシェビッチはつかまるんと違うんかい。」
ふたご1 「いえいえ、ユーゴといえば第一次世界大戦の勃発を招いたサラエボ事件をはじめ、平和だったのはチトー大統領治世の時くらいなものです。ミロシェビッチ君だけをせめるというのは酷なものです。」
ふたご2 「そうかなあ。」
ふたご1 「ミロシェビッチ君はもし負けたらロシアへ亡命するつもりなんです。ロシアとセルビアは同じスラブ人の国ですから親しいのです。だからもっとミロシェビッチ君をロシアに行きやすくするのです。」
ふたご2 「そうくるか。」
ふたご1 「しかし、うかつに逃げようとすればルーマニアのチャウシェスクのようにつかまってしまいます。そこでカモフラージュとしてベオグラードにボリショイサーカスを招くのです。」
ふたご2 「サーカスの団員に化けて逃げようというのですか。」
ふたご1 「キミね、ミロシェビッチ君がそんなに体柔らかいと思いますか。酢を飲んでいたと思いますか。団員になりすますなんて無理ですよ。」
ふたご2 「いや別に曲芸はせんでもええんちゃうか。」
ふたご1 「それに人間が増えてたらあからさまにあやしいじゃないですか。」
ふたご2 「じゃあどうするんですか。荷物にでもまぎれるんですか。」
ふたご1 「人間一人隠れようとすればスペースをとります。そんなことはしませんよ。」
ふたご2 「じゃあどうやって。」
ふたご1 「肉を削り、骨を断ち…ライオンのエサとしてユーゴを出るのですよ。」
ふたご2 「死んでどないすんねん!」
ふたご1 「選挙の邪魔をする奴はみんなそうなってしまえばいいんじゃあ!」
ふたご2 「選挙はあんたのなんなんだ。」
9月29日、スーパーカミオカンデ。