男の料理。が叫ばれて久しい。
「男子厨房に入らず」という教えがあるが、
これは本来、かつて中国の大家族の家政には
家の主人である男は関わるべきではないという
家政権の分立の話である。
男子は本来大いに調理すべきであり、
女子も無論そうである。
男子がどのようにして厨房に入るべきか、
さまざまな資料から見ていこう。
1.陳伯房著、「三国呂紀伝、巻二十八、赤壁」より
「骨付き鶏肉の中華風煮込み」
「謀られたか!天下を目の前ににして、仲謀ごときに敗れるのかっ!」
曹操は紅蓮の炎に包まれ崩れ落ちる巨船に叫んだ。
「万事は終わった!」
「何をしておられるかっ!丞相閣下!」
炎と喧騒の中を貫く声がする。夏候惇元譲である。
「軽舸の用意ができました!疾くお移りなされませ!」
「元譲…。わしはこれほどの…屈辱を味わったことはない。」
「何を仰せになるか!?」
曹操は燃え盛る船団をゆっくりと指した。
「見よ、わしが営々と築きあげてきた船団が、一瞬にしてこのようになった!
わしが幾十年に渡って天下を縦横にかけてきたのだ!
それが、あの仲謀ごとき青二才に、かくまで不覚をとる!
もはや、この孟徳には天下に覇を唱える器量はない!
ならば、猛火の中で死んだがましじゃ!
この野望を焼き尽くすのじゃ!」
「孟徳ッ!」
夏候惇の大喝が、一瞬、炎を揺らした。
「たかだかこれくらいの敗戦で何をぬかしておるっ!
貴様の野望はその程度かっ!孟徳!俺がかつて亳州で貴様の中に見た炎は
この程度の炎ではなかったはずだっ!そうではないのかっ!」
曹操の目がぎらり、と光った。
「元譲ッ!」
曹操の口元が愉快そうにゆがんだ。目が燃えている。
それは決して周囲の大火の反射ではない。
はなから終わりだと思っていないくせにああいう事を言う。
それがこの曹操という男だ。
わざわざ俺が言うまでもないのだ。しかし、曹操はその言葉を
待っているのだ。夏候惇にはそれがよくわかっていた。
「退却だ!全軍、船を捨てよっ!
残存の兵を右岸に集結させ、二つに割る!
そして骨付きの鶏肉を600g、長葱を二本、隠元豆を30g、
片栗粉を小匙一杯、胡麻油を小匙一杯、砂糖を大匙一杯、
醤油を大匙三杯、酒を大匙一杯、湯を1.5カップと、
味の素中華だしの素を小匙一杯用意せいッ!」
「はッ!」
曹操は取り付かれたように指示を続けた。
「鶏肉を一口大ののぶつ切りにし、長葱は2cm長さのぶつ切りにせよッ!
油大匙二杯を用い、鶏肉に焼き色を付けm砂糖をからめ、
醤油・酒を振りかけ鶏肉が色づくまで炒めいッ!
汁気が少なくなったら、湯・中華だしの素を加えて弱火で10分ほど煮るッ!
煮汁が1/3くらいになったら、長葱・隠元豆の両菜を加え一煮し、
水溶き片栗粉でとろみを付け、ごま油を入れて香りとつやを出すのだッ!
主力が退却するまでの、殿軍の指揮は夏候惇将軍、貴様が取れ!」
「はッ!」
夏候惇の片目にも、炎が赤々と宿った。
2.週刊パソコンテクノロジースマイル6/30号記事
「この夏おすすめ!初めての自作パソコン」より
「ゴーヤチャンプル」
編集部のおすすめパーツは以下のとおりですが、
自分が作りたいパソコンとゴーヤチャンプルはどんなものかを考えて、
パソコンゴーヤチャンプル専門店の店員さんや
パソコンゴーヤチャンプル雑誌の記事などを参考にしてパーツは選びましょう。
CPU Athlon 1.2GHz
マザーボード K7T266 Pro
木綿豆腐 一丁
128M RDRAM
HDD DBI-UV40GT2
豚コマ 200g
グラフィックボード Millennium G450/Dual 32MB DDR AGP
ゴーヤ 一本
サウンドカード RE MIX-2000
ケース WiNDy MT-PRO1100W
DVD-Rドライブ LF-D321JD
卵 一個
スピーカ GX-R3(W)
削り節 少々
塩 少々
コショウ 少々
モニター SAMSUNG SYNCMASTER 955DF
キーボード 109キーボード
マウス インテリマウス
最初に説明書を見ながら、CPUのクロック周波数を設定します。
オーバークロックをしたい人はしてもいいですが、夏なのでおすすめできません。
そしてCPUをマザーボードのCPUソケットに差し込みます。
豆腐は15分ほど水抜きし、さいの目に切ります。
ピンを折ったりしないように、まっすぐ差し込みましょう。
CPUクーラーがついていない場合はファンやヒートシンクをシリコングリースで
接着させます。この時、あまり厚く塗らないように気をつけましょう。
そしてゴーヤを縦に切り、スプーンで種と種のまわりの白い部分を取り、
薄くスライスしましょう。
次にメモリーをメモリースロットに差し込みます。
これも垂直に、カチッと音がして両端のストッパーがしっかり止まるまで
押しましょう。押しすぎておらないように気をつけましょう。
そして豚肉と豆腐をゆっくりと、ちょっと焦げ目がつくまで炒めます。
ケースをあけて、マザーボードを取り付けます。
方向を間違えず、しっかりとネジで取り付けます。ゆがんでいると大変なので
慎重に、ゆっくりと取り付けます。
ケースの上段にある5インチベイにドライブ(CD-ROM、DVD-ROM等)を取り付けます。
できるだけベイの下側に取り付けると、IDEケーブルが足りなくなるということも
ありません。落っこちると大変なのでゆっくりと慎重にやります。
どうしても、という場合はFDD(フロッピードライブ)を買いにいきましょう。
道に迷うと大変なのでゆっくりと買いに行きます。
買ってきたら、疲れているでしょうからゆっくりと骨を休めます。
ビールでも飲みましょう。あまり急ぐと急性アルコール中毒になるので
ゆっくりと飲みましょう。
そしてHDDをゆっくりとネジで止めます。
そして配線をたしかなところに差し込みます。間違えると爆発なんかしたりして、
なんて思いながらゆっくりと差しましょう。
そしてグラフィックボードやサウンドカードをPCIスロットにゆっくりと差し込みます。
さらに外部出力のコネクタが出る部分をマザーボードにあわせてゆっくりと打ち抜きます。
そして電源コード等をゆっくりとつなげば、組み立ては完成です。
完成を祝してとっておきのワインをあけます。ゆっくりと口の中で転がすように味わいましょう。
さて、次はBIOSの設定です。BIOSはマザーボードのメーカーによって違うので
ボードのメーカーのサイトなどを参考にしましょう。
そしてOSのインストールをすれば完成です。ただでさえ時間のかかるインストールなので、
あせらずじっくりゆっくり行きましょう。
ここでさっきから炒めていた豆腐と豚肉にゴーヤを素早くいれて、しんなりするまで素早く炒めます。
そして塩、コショウ、削り節で味を素早くつけ、とき卵を素早くいれ、素早く炒めます。
これで自作パソコンとゴーヤチャンプルの出来上がりです。
3.週刊極道6月12日号記事
「実録!三代目根蛾底部組跡目争い!
血で血を洗う抗争の行く末は!(4)」より
「森のきこりさん風スパニッシュオムレツ」
「岩下、おどれは幹部会の意向にどうしても従えんというんかい!」
根蛾底部組の最大勢力である枕組組長、布団田のドスの効いた声が
二代目根蛾底部組組長後向舞造の葬儀の席を揺らした。居並ぶ大幹部達―
白樺組組長武者小路、電化製品組組長電球、卵6個、
礼儀組組長敬礼、じゃがいも2個、礼儀組若頭無作法、ベーコン50g―。
すべて布団田の勢力下にある者達だ。
岩組組長岩下は、その視線も一切見えていない。―彼の目の前にあるのは
二代目の遺影だけだ。
「わしは、先代には恩義がありまっせえの。」
「そんなもん、ここにおる者は誰も同じじゃい。」
トマト1個は吐き捨てるようにそう言った。
「じゃけん、その恩義を返そうとおもっとるのは、
わしひとりじゃけえの。」
「何いっ!?」
布団田の目が殺意を帯びた。
「皆もようわかっとるはずですですわ。三代目を誰にするかということに、
先代の意向がどこにあるか、それを無視して何が幹部会じゃ。」
「先代の意向は幹部会に一任ちゅうことじゃ。何が無視じゃ。」
枕組の若頭オリーブオイル少々がぬたつきながら岩下にせまる。
「それでもなんでマッシュルーム60gが三代目なんじゃい。
先代は幹部会に意見書を出しとったはずじゃい。
塩コショウ少々、それを布団田、おどれが握りつぶしたんじゃい!」
ざわつきが一座を支配した。―が、
「岩下あっ!!この席でええ加減な事言うと承知せんぞ!」
布団田の怒声でそれは静寂に変わった。
岩下の口元に笑みが浮かんだ。一介の弱小組長である岩下が
根蛾底部組の最大実力者である布団田と対等に渡り合っている。
それこそが岩下が最も望んでいるものであった。
「おどれの狙いはようわかっとる。自分の命令に従うようなもんを三代目に据えて、
おどれが実権を握るつもりじゃろ。
それでフライパンを熱して、オリーブオイルでジャガイモを炒める。
ジャガイモがやわらかくなったら、ベーコン、タマネギ、マッシュルームを炒める、
その時に塩コショウで味をつけ、ボールにうつすのがおどれの算段じゃ。
そして卵を割って、ボールでさっきの具とかき混ぜる。よう、なじませるつもりじゃろ。
で、熱したフライパンにオリーブオイルを入れて、一気に流し込むんじゃろ!
中の空気を菜箸でかきまぜて抜く、後はもうふたをして弱火で加熱するだけじゃ。
そして何回かひっくり返して両面を焼く。そうすれば根蛾底部組はおどれのもんじゃ。
じゃっけん、この岩下の目の黒いうちはそんなことはさせんけんのう!」
「いきがるな小僧!」
布団田が立ち上がった。―一触即発―。
「またんかい!」
皆が、その声のほうを振返った。
根蛾底部組の最長老、肝硬変組の髄膜炎組長である――。
次号に続く
※この記事は実話に基づいていますが、人物、団体名、材料名は仮名です。
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