ハッピーニューイヤー。  
  

ハッピーニューイヤー。

ハッピーニューイヤー!

 
 

ハアアアッピー
ニュウウウイヤー!!

もしもし?  

ハアアアアアアアアアアアアアア
ッピイイイイイイイイイイイイイイ
ニュウウウウウウウウウウウウウウウウ
イヤアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアアアッ!!

ハアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

 

ピイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
イイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
ニュウウウウウウウウウウウウウウウウ!!

やかましいっ!!  

なんだね!
我がホームズ家に代々伝わる
「ハッピーニューイヤーの儀」を
邪魔する気かいっ!

そう、年が明けた瞬間から
大声でハッピーニューイヤーと
呼び合うことによって無病息災となる
そんなホームズ家の美しい伝統だよ。
 

そうなんだ。
このハッピーニューイヤーの儀を
大晦日までつづけることが
ホームズ家の男子に課せられた
重大な責務なわけだよ!

去年そんなことやってる姿
見たことないぞ。
 

とにかくまあよくぞホームズ家のお正月に
きてくれたねワトスン君。
まあこの
賀正フィッシュアンドチップス煮でも
食ってくつろいでくれ。


ローストビーフぐらいでいいよ。
それにしても、このでっかい屋敷に
お兄さんひとりで住んでいるのかい?
 
   

うむ、たしかそうだったね
兄さん。

ん?ああまだ知らんのか。
じつはわしは後妻を迎えたのだ。
 
 

後妻?
そんな話聞いてないよ
マイクロフト兄さん!

聞いてないのも無理はないな
わしは言っておらんからな。

 
 
ひどいやマイクロフト兄さん!
大体前の義姉さんの存在だって
今の今まで知らなかったよ!
 
知らないのも無理はないな
わしは言っておらんからな。
 
 

ひどい!ひどいよ!
ひどすぎる!

確かにちょっとひどいですよ。
身内に結婚ぐらい知らせるべきでしょうが。
 
 

ひどい!
ひどい!
ひどい!

ひどいのも無理はないな
わしはひどいからな。
 
 

そうか、じゃあしかたないな。
あっはっは、まったく兄さんたら
ひどいやーっ。

…まあ、君らがいいんだったら
いいんだけどね。
で、その奥さんはどちらですかね。
 
 

そうそう、まだご挨拶も
してませんでしたな。
義姉さん、義姉さーん。

何をいっておるのかな。
ずっとそこにおるじゃないか。
 
 

え、いったいどこに…?  
 

ワ、ワトスン君…
き、君…ローストビーフを
食ったのかい…?

え、食べたけど…
それがどうかしたのかい…?
 
 

忘れていた…
兄が…
異常性格者だということを…
…このビーフは…
ビーフじゃなくて…

!!そ、そんな…  
 

義姉さん!義姉さあああああああん!

うむ惜しい。
正解は、その
賀正フィッシュアンドチップス煮。
 
 

ぎゃあああああああああ!

の、スプーンでした。

 
 
なんだあ、スプーンかあ
あはははははははははは。
カタン
 
 

あああああ!
スプーンが折れてしまったああああ!
僕に、日常生活では全く
役に立たないレベルの超能力が
あったばかりにいいいいい!!
義姉さああああああああああん!!

はっはっは、
驚かせたな、シャーロック。
実はわしは異常性格者では無いのだ。
 
 

そ、そんな!
30数年間僕を
だましてきたのかいッ!?

30数年間異常性格者のふりを
するというのも
十分異常性格者だよ。
 
 

とすると本当の義姉さんは?

 
そのスプーンだよ。  
 

えっ。
や、やっぱりいいいいい!

はははははは。
ただ単に家内は…
ナンシーは変装上手なだけだよ。
ほらっ。
 
 

うわっ!?

はじめまして義弟の
シャーロックさんに
ワトスンさん。

 
 

ハ、ハドスン夫人!
マイクロフトさんの
奥さんはハドスン夫人だったのか!

それも変装だよ。
 
 

なんと念の入った姉さんだろう。

ほっほっほっほ。
そうほめていただけるのと
照れてしまうわシャーロックさん。
 
 

また変装ですか。

これは腹話術ですわ。
今、ドクター・ワトスンは
わたくしの沈黙の法で
しゃべれなくなっているのですわ。

 
 

はっ、とすると
義姉さんはいったいどこに!?

 
ほっほっほ…
見つけ出せるものなら見つけ出して
ごらんなさい…ほっほっほ…
 
 

くそうっ!
マイクロフト兄さん!
どうしたらいい!?

ふっふっふ…
わしがナンシーの変装だという線は
考えなかったのかね…?
 
 

くっ!
そうだったのかっ!

違うよ。

 
 

くっ!
なんて性格が悪いんだ
マイクロフト兄さん!

性格が悪いのも無理はないな
わしは性格が悪いからな。
 
 
くそうっ!
こんな性格の悪い兄さんとつきあって、
よく結婚したな義姉さん!

なにしろあいつはかつては
「夏色のナンシー」と異名をとったほどの女だ。
一筋縄ではいかんよ。

 
 

そ、そんなにすごいのかい、
義姉さんは…。

何しろまだわしも
素顔を見たことがないからな。
 

 

無事解決!次回のシャーロック・ホームズの活躍をお楽しみに!

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