「そんな人を化かすような狐の言うことは聞けんのう。」
「そんなことを言わんでくれ。
あんたが頭に巻いているその金輪は、わしのものなんじゃ。
それを返してはくれんかのう。 」
「何を言うかと思ったらそんなことか。だめじゃだめじゃ。
どうせこれでやることと言ったら人を化かすことだけじゃろう。
なおのことかえせんわい。 」
「その金輪が無いとわしは困るんじゃ。
実はその金輪は狐の総代の伏見稲荷様から借りたものなんじゃ。
明日までに返さんとたいへんなことになるんじゃ。 」
「そんないい加減なこというてもだめじゃ。
誰がだまされるものか。 」
うりよう狐は吾作の目をじっとみつめてこう言った。
「…人の頼みをかなえてくれるのが魔法少女じゃないのかい。」
「うっ!」
「そんな自分の思うことだけをやるんだったらあんたはただの魔法使いだ。
長い鼻だ。でかい鍋だ。イモリの黒焼きだ。 」
「ご、吾作は…吾作は…。」
「曲がった帽子だ。庭の枯れ木だ。紫のもやもやっとした霧だ。」
「い、言うなあ!吾作は…吾作は…魔法少女じゃあ!
わかった!魔法で何とかしてやる! 」
「本当かい。さすが魔法少女吾作どんじゃ。
わしは伏見稲荷様に怒られなんだらええんじゃ。
よろしく、頼む、吾作どん。」
「まかせとくだっちゃああ!」
「だっちゃ?」

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