――Quick USOYA 2001.03.20―――――――――――――――――――――――
今週の内容........
1. しーもす君と小猫さん
2. 更新情報(Dの嘘)
3. 嘘書籍探訪 by 壇つな
4. しーもす君と小猫さん

1. しーもす君と小猫さん ――――――――――――――――――――――――

 (見渡す限り、白い吹雪。シベリアの極寒がしーもすと小猫を包む)

しーもす:シベリアは…寒いね…骨まで凍るようだよ…
 小 猫:寒いね…
しーもす:ほら…バナナで釘が打てるよ…
     トーントントン…ほぉらね。
 小 猫:お前が持っているのはトンカチじゃないか…
しーもす:いいんだよ。黙っていれば誰も気づかないんだからさ…
     よく言うだろ?雄弁は銀、沈黙は菌…
 小 猫:字が違うよ…
しーもす:沈黙はツウォリキン ?
 小 猫:そんな20世紀初頭の電子工学者誰も知らないよ…
しーもす:まぁ、いいか…さて、揺れるか…
 小 猫:揺れる?

  ドンッ!

 小 猫:うわっ!ぶつかるなよ!おでんの汁がこぼれたじゃないか!
しーもす:いいじゃないか…大体、シベリアでおでんを食べているなんて変だよ…
 小 猫:いいだろ!おでん好きなんだよ!

   ドンッ!

 小 猫:うわっ!だからぶつかるなって!
     卵落としちゃったじゃないか!
     味が染みていたのに…
しーもす:ぶつかってないよ…左右に揺れているだけだよ…
     君がそこにいるのが悪いのさ…
 小 猫:揺れる方が悪いよ!揺れるのやめろよ!
しーもす:嫌だよ…だって僕は左右に揺れるためにシベリアに来たんだからね…
 小 猫:なんでシベリアなんだよ!
しーもす:だって、東京みたいに人が多いところじゃあ、周りの人に迷惑だから
     ね。
     僕は心優しいのさ…

   ドンッ!

 小 猫:うわっ。だからぶつかるなって。
しーもす:「シーガイア〜 ハサ〜ン♪ ハハハ〜ン♪」
 小 猫:へ?
しーもす:「シーガイア〜 ハサ〜ン♪ハハハ〜ン♪」
 小 猫:何言っているんだよ!?
しーもす:だからさ、宮崎のシーガイアは破産したのさ。
     第3セクターの哀れな末路ってわけさ。
 小 猫:だからって、何で歌っているんだよ!
しーもす:だからさ、シーガイアをつくった奴らは僕にシベリアで
     歌われているとは思わないだろう?
     つまり、これは嘲笑なのさ。
     やつらへの復讐なのさ…
     「シーガイア〜 ハサ〜ン♪ハハハ〜ン♪ハ〜ン♪」
 小 猫:その変な歌止めてくれ!
しーもす:歌うさ。奴らはバブルに踊った愚かな奴らだからな。
     僕は左右に揺れながらシベリアで奴らを笑う。
     今ごろ、奴らは青い顔をしているぞ…
 小 猫:お前の唇が青いぞ。

2. 更新情報 ――――――――――――――――――――――――――――――

【Dの嘘】 http://d-uso.com/ 

古来より伝わる「ベストセラーの尻馬には乗れ」の諺通り、早速扱ってみました。
「チーズはどこへ消えた?」
この本、日本では馬鹿みたいに売れています。企業おじさん大絶賛。
四文字熟語「臨機応変」を英訳すると90ページになるという東西文化の差異の実
例です。

3.  嘘書籍探訪 ――――――――――――――――――――――――――――
壇つな@Dの嘘  http://d-uso.com/
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第ニ回
 「羽根むしられて」 著・ウディ・アレン
          訳・伊藤典夫・堤 正久
  嘘 度:★★★★
  笑 度:★★★★★
 入手易度:難しい(大型書店をめぐって運がよければ…)
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「あふれんばかりの才能を持った人間があらゆる手練手管を尽くして
人を笑わせようと努力した本」

 それがウディ・アレンの短編集、「これでおあいこ」「羽根むしられて」
「ぼくの副作用」である。

 そのウディ・アレンの短編集の中でも最も趣向が凝らされ、最も密度が高く、
そしてなによりも笑える短編集がこの「羽根むしられて」だ。

客との知的会話を商売とするコールガール組織を探偵カイザー・ルー
ポウィッツが追うハードボイルドパロディー『コールガール組織を追え』
天才詩人ショーン・オーションの難解な詩に克明かつ噴飯な注釈をつ
けた。『アイルランドの天才詩人』、椅子にかけておいた下着が、夜中
の三時に、ローラースケートをはいたドイツ皇帝に見えてしまったり
する驚愕の爆笑内省日記『ぼくの日記帳』、目がさめたら、ブリーク
ネス・ステークスで馬と競争してしまうような不思議な現象を扱った
『心霊現象を探る』

 読んだことのある方にならわかるだろうが、正に珠玉の名にふさわ
しい短編ばかりだ。

 ウディ・アレンの短編作品の最大の特徴は、その密度の高さだ。

『もし印象派画家が歯科医なら』

この短編は、かのゴッホが歯科医だったら…その情景を弟テオとの往復
書簡という切り口で描いた作品でその着想だけで面白いのだが、
そのディティールがさらに凄い。ゴッホが歯科に悩み、他の歯科医との
交流に悩み恋に悩む様が克明に描かれている。

 とにかくウディは満足するということを知らない。笑える着想一つ
でも徹底的にディティールを付加し、これでもかこれでもかこれでもか
と笑わせようとする。とにかく手数が多い。その技の種類も様々で
あらゆる笑いの手法が尽くされている。その膨大さは目も眩むほどだ。

一個の平凡な着想を短編あわよくば長編にまで引き伸ばして、それだ
けで、ユーモア作家などと言っていられる日本ほど気楽なお国柄では
ないと言うことか。

 そして、もう一つの特徴は、その「センスの良さ」だろう。

作家を誉めるのに「センスが良い」だけで済ませてしまうとは何事だ
と怒られそうな感じだが、とにかく、ウディのセンスは卓越してるのだ。

どこが面白いのか?と言われても説明しようがないが、確かにとても
面白い。ウディの作品はそんな不可説な面白さがある。
「笑いってそんなもんじゃないの?」と言う冷静な意見もあるだろうが、
まぁとにかくそんな感じだ。

『羽根むしられて』の中で私が最も好きな『幻獣図鑑』から少し
だけ引用させていただこう。

 ・ナーク
   ナークは全長2インチの小鳥である。言葉を話す力があるが、
   つねに自分を三人称で表現する。「彼は実に偉大な小鳥では
   ないか、えっ、そうだろう?」という具合にである。
   ペルシャ神話によれば、午前中、ナークが窓辺に現れると、
   親戚の誰かが大金を手に入れるか、あるいはサイコロ賭博で
   破産してしまうと言われる。
     ゾロアスターは誕生日の贈り物にこのナークを贈られたと
   いわれているが、実は彼が欲していたのはグレーのスラック
   スだったという。
     ナークはバビロニア神話にも登場しているが、そこでは
   かなりの皮肉屋で、いつもこんな台詞を口にしている、
   「よぉ、気取るんじゃないぜ」

面白くて笑ってしまうのだけれど、どこが面白いと言われると
困ってしまう。とにかく、この面白さがわかる方は大型書店を
めぐるなり、古本屋を巡るなりして手に入れていただきたい。
色々探し回るだけの価値はある本だ。

特に「嘘を書こう」と思っている向きには必携必読の本と言えるだろう。
我々が嘘として知っている笑いの基本形は全てここにある。
ただし、あまりにも様々な手法が既に尽くされている現場を見てやる気
を失ってしまう可能性があるため、その点に関しては注意が必要かもしれない。

書籍データ------------------------------------------------------
書名/羽根むしられて 著者/ウディ・アレン 訳/伊藤典夫・堤雅久
出版社 河出書房新社  ISBN 4-309-46107-7   販売価格 670円(税抜)  
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4. しーもす君と小猫さん ――――――――――――――――――――――――

しーもす:ふふふ。宮崎では奴らが慌てふためいているね。
     何しろこの僕にシベリアで笑われたんだからな。
 小 猫:わかったわかった。帰ろう。
     もう手の感覚がないよ…寒い…
しーもす:お、あんなところに室伏広治がいるぞ。
 小 猫:何言っているんだ…あれはシベリアイタチだよ…
     かわいいじゃないか…
しーもす:いや、室伏さ。アテネ五輪を目指して
     シベリアまで寒稽古にきたのさ…
     感心じゃないか。ホリが深いのにさ…
 小 猫:ホリが深いのは関係ないよ。
     それにアレはイタチだって。あんな尻尾がある室伏がいるかよ…
しーもす:いや、室伏さ。見ろよこの鉄球。
     彼がココまで投げたんだぜ。凄い腕力じゃないか…
 小 猫:それはさっき落とした僕の卵だってば…
     そんな白くて小さい鉄球があるかよ…
しーもす:そうかな?でも白くて小さい鉄球かもしれない…
     ほら…硬い…やっぱり鉄球さ。
     釘だって打てるよ。
     トーントントン…ほおらね。
 小 猫:それだけ凍っていれば卵でも釘打てるよ…
しーもす:「シーガイア〜 ハサ〜ン♪ハハハ〜ン♪」
 小 猫:もういいよ!

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