開催期間 2001.9.1-9.9
第20回嘘競演。
テーマは「INPUT/OUTPUT」(入力・出力)
きだてたく議長
イロブン


 

歴史に見る入出力

1623年、徳川幕府は国内の反乱防止と人口増加の目的として
高機能変換装置「江戸」を完成させた。
鉄砲を入れると女性に変換して出すこの装置は
一般には「入り鉄砲に出女」と呼ばれて親しまれた。
徳川時代中期には「江戸」は庶民の手に移り
火縄銃やスミス&ウェッソンやアーマライトを
「江戸」に入れ、鉄砲が女性に変換されるのを見て楽しむのが
春先の風物詩となった。
徳川時代末期になると国内の鉄砲が不足し、ゴム鉄砲や豆鉄砲や
肘鉄砲なども投入されるようになったため、「江戸」は崩壊をむかえた。

現在、日本国内に鉄砲が少ないのはこのためである。

 


関西極道三国志

刺青組の跡目を狙う、刺青組若頭・指山剛三は
関西最大の暴力団である虎具会の会長、者武山造吉に接近し、
跡目争いの抗争に勝利を収めつつあった。
そして指山は最後の一手を打つため
者武山の屋敷を訪れた…。

者武山 「どうじゃ指山。刺青組の跡目は相続できそうか。」

指山 「へえ、もうほとんど反対派も片付きまして。
来週には襲名式ですわ。」

者武山 「そうかそうか。」

指山 「これもみんな者武山の親父のおかげですわ。
じゃけえ、まだわしの跡目に反対するやつがおらんとも限りまへん。
そこで組の名前を変えようと思いまして。」

者武山 「組の名前を?」

指山 「へえ、それで新しい組の名前を
者武山の親分につけてもらいたいんですわ。」

者武山 「わしにか。」

指山 「へえ、者武山の親分に新しい組の名前をつけてもろたら、
わしのバックには者武山の親分がついとるちゅうことが
皆の頭ににはっきりと入りますよってに。」

者武山 「ふむ。お前らしいのう。わかった。新しい組の名前を考えよう。」

指山 「へえ、おおきに!」

者武山 「よし、これじゃ!」

指山 「さすが者武山の親分!早いことこの上ないですな!」

者武山 「ええか、指山。極道ちゅうのは堅気の衆みたいに
長生きしよう思うたらあかん。太く短く生きるつもりでおらなあかん。」

指山 「へえ!」

者武山 「そしてお前じゃ。
お前が今まで生きてこれたんはその粘り強さじゃ!
組の上にたつ存在になってもそれを忘れたらあかん。」

指山 「へえ!」

者武山 「そこで組の名前じゃ。
組の構成員は太く短く生きる極道じゃ。
太く短く生きる極道…太く短いといえばうどんじゃ。」

指山 「は。」

者武山 「その上に立つ粘り強い組長…。
うどんの上にある粘り強いもんというたらモチじゃ。」

指山 「…。」

者武山 「うどんの上にモチがある!
つまり力うどんじゃ!
新しい組の名前は力うどん組じゃ!」

者武山の屋敷を出た指山の顔は激怒と屈辱でゆがんでいた。
なぜ組の名前が力うどん組なのか。
モチが入ったうどんがなぜ力うどんなのか。
モチよりももっと力の出そうなものは他にいくらでも
あるではないか――。
指山の心に、ひとつの決意が宿った。

「出入りじゃあ!!」

後に関西を震撼させることになる、
虎具会と力うどん組の抗争の始まりである――。

 


ウォータードア・イエローゲート

助 「ひかえいひかえい!このお方をどなたと心得る!
先の副将軍、権中納言水戸光圀公にあらせられるぞ!」
悪 「と言われてもなあ。何でその人が偉いのかわからないしー。
なんでひかえなきゃなんないわけ?」
格 「何だと無礼者!」
門 「はっはっは。まったく無教養で愚昧な庶民は仕方ないですね。
格さん、ちょっと懲らしめてやりなさい。」
格 「はっ!」
ぶっすうー。
悪 「ぐわっ!」
格 「どうだ秘剣「インプッ刀」の切れ味は。」
悪 「い、インプッ刀?」
格「そう、この刀には徳川家の由緒正しさ、ありがたさ、偉さがデータにして
820ギガバイトも入っているのだ。
そしてこの刀で切られたものにそれらのデータが入力されるのだ。」

そもそも徳川家は清和天皇後裔の新田氏にその家系を発し、三河松平の地を根拠にして悪の今川氏や武田氏と戦い、
悪 「うわ―っ!!」
神君家康公はそこで奸賊石田三成を破り征夷大将軍に就任なさり天下泰平の礎を築かれたのであります。
悪 「はあ、はあ、な、なんだかすごく徳川家がありがたい気がしてきた。」
神君家康公はその後東照大権現という神になられ、今も日本中の民をお守りになっておられるのであります。

悪 「だ、だが人間は生まれながらにして平等なはず!
いくら先祖が偉かったからといって子孫まで
偉いということはないはずだ!」
門 「はっはっは。まったく戦後の民主主義教育を受けたものは仕方ないですね。
ちょっと助さん、懲らしめてやりなさい。」
助 「はっ!」
ずばー。
悪 「ぐわっ!」
助 「どうだ秘剣アウトプッ刀の切れ味は。」
悪 「ア、アウトプッ刀?」
助 「この刀は反徳川的な思想、構想、妄想を吸い出して
団子にしてしまうという刀なのだ。」

人間は生まれながらにして権利を持っておりこれは誰も侵すことができない。
悪 「ぐわーっ!」
人類皆平等であり自由であり…
悪 「ど、どんどん記憶が…あ…。」

助 「はい印籠。」
悪 「ははーっ!」
門 「じゃ、君切腹ね。」
悪 「ははーっ!」
格 「また一件落着ですねご老公!」
門 「はっはっは。では出かけますかな。」
八 「ご隠居お。あっしもう腹がペコペコなんですよお。」
格 「これ、八兵衛、みっともないぞ!」
門 「はっはっは。いいではないですか。
さっき出てきた団子でも食わせてやりなさい。」
八 「やったー!うんうんうめえー!」
助 「はっはっは。しょうのない奴だ。」
門 「さ、先を急ぎますぞ。」

越後名産小千谷ちぢみを徳川一色に染め上げて、今日もゆくゆくご老公。
この世に幕府ある限り、今日も日本は日本晴れ。

八「…人民の人民による人民のための政治を我々に取戻すため、
この世から徳川は滅亡してもらわねばならぬ…。」


はじまり

研究日誌より抜粋

時と場所、所を選ばず世界各国の言語を翻訳する
プロジェクトがようやく成功の兆しを見せた。
今回の発見はたいへん重要である。
なんといっても自動翻訳にコンピューターなどの
機械を必要としないことがわかったのだ。

人間の身体には微細な電流が流れており、
それをうまく操作―キーボードのように―することによって
言葉をしゃべらせる事ができるという理論は
私の父がすでに発見していた。
それを翻訳プロジェクトに応用することができそうである。

人間の言葉は多種多様だが、元来人間が思考していることは
同一である。それを引き出すことができそうだ。
電流の流れを特定の方法に従い指で素早くさえぎることにより
こちらがしゃべった言葉を相手に認識させることができる。
そしてその後の操作によっては、その言葉を翻訳して
しゃべらせることも可能だということがわかったのだ。

このプロジェクトが成功すれば今まで言語の壁にさえぎられていた
人間同士のコミュニケーションが機械の助けを借りずに、
しかも煩雑な言語の習得の訓練をすることなしにできるのだ。


ただ、現時点での問題点としてはまだまだ翻訳精度が低い。
たとえば「お前はすでに死んでいる」と入力しても
被験者の口から出力されるのは
「あべし」や「ぐわば」や「ひでぶ」などという
あまり聞いたことのない言語ばかりである。
また、被験者にあたえる負荷もまだまだ大きく
爆発したように体が砕け散ってしまうのだ。
掃除がたいへんである。また妻に怒られた。

(北殿創始郎博士研究日誌、平成12X年、8月12日分より)


自然とともに生きていく

「畑に愛情を注いでやると、必ず結果をかえしてくれるんですよ。」

茨城県ひたちなか市の農業、竹橋舞次郎さん(82)はそう言って笑った。

近年の農業を取り巻く環境は厳しい。諸外国からの安い農作物の輸入の急増、
環境の悪化、後継者不足…。竹橋さんの周囲でも離農する人が相次いでいる。
しかし、竹橋さんは農業をやめようとはみじんも考えていない。

「自然と対話して、自然の中で生きていく。
そういう生き方が人間本来の生き方なんじゃないですか。
収益が上がらないとか、肉体的に限界だとか言って
農業をやめていった人は、こう言ってはなんですが
自然に愛情を注いでいなかったということじゃないですか。」

竹橋さんは80歳を越えた年齢になっても毎日畑に出る。
自宅わきの小さな畑にはサツマイモが植えてある。
畑にやってきた竹橋さんはいつものように畑にキスをした。

「愛してるよ…。ああ、なんて水分をよく吸い上げるんだ君は…。
ああすごく美しい葉緑体だ…。」

畑の中で汗まみれ、泥まみれになって作物に葉の浮くような言葉を
かける竹橋さん。六十年以上、毎日繰り広げられた光景である。
五分後、竹橋さんはけだるそうに起き上がり、シャワーを浴びに家に戻った。

「畑の作物はね、いつも愛情を求めてるんですよ。
ですから少しでも愛情を注いでくれる人がいると、
それに必死で報いようとする。かわいいもんですよ。」

紫色のサテンのガウンを着た竹橋さんはそう語った。

竹橋さんの愛を一身に受けたサツマイモの朝は早い。
朝は四時に起き、新聞配達のバイトに出かける。
新聞配達から帰ると水と窒素肥料の朝食をあわただしくすませ、
日中は工事現場で働き、夕方に畑に戻る。
そして五時頃に竹橋さんとの愛の時間をすごす。
それが終わるとまた夜の仕事に出勤していく。

「人間の本当の豊かな暮らしというのは自然とともに生き、
自然に愛情を注ぎ、また自然の愛情を受けて暮らす。
そういうものじゃないですか。」

竹橋さんは毎日畑に出て、愛情を注いだサツマイモなどの作物から
金を受け取り、競馬やパチンコをして一日を終える。
都会で働く我々ではけっして得られない豊かな暮らし―――。
人間本来の生き方とは、こういうものだったのではないだろうか。


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