開催期間 2002.2.1-2.8
第22回嘘競演テーマは「うぬぼれの実例3つ」
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Donald Mac議長
Lankin' A
Go! Go!
「それではどうしても、私の結婚を許してはくださいませんの?」
お母様の綺麗な指が、コオヒイカップをつまみあげました。
昼下がりの居間には、テラスから春の光が差し込み、
お母様のシルエットをいっそう際立たせるのでした。
「靖子さん、私はあなたが吉原さんを、
本当に愛しておられるというのはよくわかります。
けれども靖子さん――――。
この棚倉の家は、吉原の家とは家格が違うのです。
私が許しても、亡くなったお父様、藤宿のおじい様、
仲小路のおば様、大炊御門の中将様など、
皆がお認めになるはずはありません。」
「かまいません!
私は…、吉原さんを、愛しているのです!
お母様も、吉原さんに会えば、どんなにすばらしい人か、
きっとわかっていただけるはずですわ!」
お母様はそこでふっとさびしそうに笑われました。
「靖子さん――。
仮に親族の皆様が吉原さんをお認めになっても、
この棚倉の家が、吉原さんを認める事は決してありませんわ。」
「棚倉の…家が?」
「そうですわ。棚倉の、家が!」
お母様のその言葉に、私ははっと胸をつかれました。
棚倉の家は古くから武門として名をはせ、
数々の戦いを繰り広げてまいりまして、
一度たりとも破れをとったことがないという
無敵の家だったのです。
屋根のひさしから飛び出す剣は、
この世のもので斬れないものはないという名刀で、
近づくやんごとなくないものを、
すべて一刀の下に切り捨てるのです。
これを防ぐことはけっしてできないのです。
また、レンガ積みの塀からは、
この世の攻撃で防げない攻撃はないという盾が出現し、
庶民のくだらない攻撃など、一切通用しないのです。
そして壁にからまるツタはその筋に素早く手を回し、
官憲の介入や政府の圧力などを呼び起こし、
下賎の者の侵入などまったくかなわないのです。
「わかりましたか、靖子さん。
吉原さんがどんなにすばらしい人であろうと、
吉原さんの家が下賎である以上、
この棚倉の家に一歩たりとも入れないのです。」
お母様はことりと音を立てて、コオヒイカップを置かれました。
その音は、私にもうこれ以上吉原さんのことをおっしゃいますな、
というお母様の言葉でした。
それでも私は、口を開かずにはおれなかったのです。
「お母様…」
そのときです。
宇宙外金属アダモストロンチウムのパワードスーツに身を固め、
ギュリアン98式魔道拡散メガ粒子砲を小わきに抱え、
外交官特権を身につけた吉原さんが居間に入ってこられたのは――。
(つづく)
鋼の首を持つ男
「ふう、やっとできた。後はいよいよ渡すだけね。
…あの人のために心をこめて作ったんだもの、
きっとあの人は振り向いてくれるはず!」
「大丈夫かな…。彼、人気あるからなあ。
うーん。
でも、思い切ってアタックしたら、
ひょっとしたら振り向いてくれるかも。」
「だめだってわかってる。
でも…あきらめられないの。言うだけ言ってみる。
彼が振り向いてくれる可能性が、ほんの少しだけだとしても。」
彼女達の目指す地は上野公園!
―――西郷隆盛―――
鋼の首を持つ男である。
懐かし映画劇場
「うぬぼれ屋さーん!」
「はいよっ!」
昭和三十年代に一世を風靡した
「ご存知!慢心屋新助」シリーズは
主人公のうぬぼれ屋新助こと慢心屋新助の痛快な活躍で
悪人達の悪だくみをどんどん粉砕していく娯楽時代劇映画である。
「ご存知!慢心屋新助・唐傘屋敷の怪」
彦根藩井伊家の江戸屋敷に侵入する唐傘をさした謎の女!
ひょんな事から家老の奥田玄蕃の井伊家転覆の野望を察した
新助は井伊家を守るために立ち上がる!
新助の商品、「自己愛伝達機」で奥田玄蕃らは見事懲らしめられ。
井伊家に平和が戻ってくるのだった。
・うぬぼれ屋商品番号41-5020「自己愛伝達機」
マイクに向かって話しかけると、ターゲットの屋敷の
要所要所に仕掛けたスピーカーからその声が伝えられるという
システム。映画の中では奥田玄蕃の屋敷に仕掛けられ、
新助が「自分がいかにインターネットに詳しいか」を
とうとうと語る中、奥田玄蕃が発狂する様はまさに
最高の見せ場である。
「ご存知!慢心屋新助・謎の蛇姫城」
大奥を巻き込んだ大掛かりな不正が行われている事を
知らず知らずのうちに知った新助。
不正の黒幕の跡部大炊頭をうぬぼれ屋商品「スペシャル握り飯」で
見事に追い詰める新助の姿はまさに痛快である。
・うぬぼれ屋商品番号51-8245「スペシャル握り飯」
悪の黒幕跡部大炊頭の気高いその美貌に
すっかりとりこになってしまった新助は、
「こんなに愛している私の愛こそが最高の調味料」
という信念に基づき、24時間たってすっかりかぴかぴの
握り飯や腐ったみかんやイチゴがあんこと同じ色になってしまった
イチゴ大福などを次々に跡部大炊頭の屋敷に送りつける。
神経衰弱になった跡部大炊頭が燃え上がる屋敷の中で
新助の幻に切りつける様は当時の流行語ともなった。
「ご存知!慢心屋新助・江戸大騒乱」
幕府転覆の野望を達成しようとする紀州大納言と
老中水野甲斐守。二人の悪事を役人達も知らないうちに
新商品「高枝切りバサミ」で解決する新助!
お江戸は今日も日本晴れ!
・うぬぼれ屋商品番号67-4508「高枝切りバサミ」
伸縮自在で1.5mから3mまでのばせて、高いところの
枝を切るのもラクラク!各種アタッチメントを交換すると
柿もぎやノコギリにも使えます。
陰謀の証拠がまったく無い時期に遠くから紀州大納言と
水野甲斐守の首を首切り用アタッチメントをつけた
高枝切りバサミでちょん切る新助!
自分こそが正義と思っていないとなかなかできることではない
その活躍ぶりに観客は皆、惜しみない拍手を送った。