開催期間 2002.6.2-6.14
片吹柳葉魚覆面議長

第24回嘘競演は6月23日新宿ロフトプラスワンで開催された
嘘屋ライブvol.3と連動して行われました。
「嘘ニュース」
「あの人への手紙」
「大型小説」
「投稿えまののぞきみ」
「ロックの花道」
「サッカー豆知識」 の六つのテーマでした。


サッカー豆知識

レッドカードにはミシマオオアカハムシのオスをひきつけるフェロモンが
含まれているため遠くから見ると赤く見える。

「なかたひでとし」というのはイタリア語で
「飲酒は二十歳になってから」という意味である。

スイスのチューリヒにあるFIFAの本部には、最高峰の選ばれた
サッカー選手だけが使うことができる
「ペレのつるぎ」が安置されている。

サッカー漫画として有名な「キャプテン翼」は今昔物語の一編、
「僧正、球を蹴りたる事」を漫画化したもの。

イングランドの名門、アーセナルのホームスタジアムで
売られているサッカー最中には
隠し味としてグラウンドの芝が入っている。

イングランド国王ヘンリー6世はサッカーボールの毒によって暗殺された。

サッカーボールの中に入っている気体はネオンガスなので
電気を通すと光る。

サッカーボールの中にはたまに小さい蟹が入っている。

今回のワールドカップ予選時の試合前日に
チームのメンバーがステーキとトンカツを食べた48カ国中、
決勝に進出できたのは日本のみである。

フーリガンが暴れる理由は
試合に勝ったり負けたりしたからなどと
毎試合ごとに異なるが、
約0.2%のフーリガンの暴れる理由は常に
「オフサイド」を理解できた自分への
喜びに酔っていることによる。


嘘ニュース

太平洋上に張り出した高気圧の影響で好天に恵まれた今日、
各地の行楽地は大勢の親子連れなどでにぎわいました。
京都市左京区の橋本義雄さん宅には全国から約4万人の
家族連れが集まり、床の間や逆さに立ったほうきなどを
満喫、橋本さん宅を訪れたものにすすめられるという、
名物のぶぶ漬けを熱そうにすすっていました。


大型小説
「残照」

 気づかなければよかったのだ。気づきさえしなければ笑っていられたのだ。
八月の昼下がりの暑い日ざしが私と、乾いた地面をじりじりと照らす。
「どうしたの?」
女が薄気味悪い笑みを浮かべている。下井美満子だ。
その薄っぺらな笑顔の奥で、私の目の動きを凝視しているのだろう。私が気づいたという
ことはけっして気づかれてはならない。あわてて目をそらした。
「何か隠し事でもしてるんじゃないの?」
そのとおりだ。冗談めかしていきなり核心を突いてくる。やはり気づかれたのか。冷たい
汗が腋の下を伝う。私は急いで言葉を探した。
「ベ、別になんでもないよ、先生。」
――――最悪だ。何かあるとしか考えられない言葉だ。特に、この教師という人種には、
そういうことをかぎつける能力があるのだということを、この四ヶ月間で私は嫌というほ
ど知ったのだ。それなのに。
「まだ十五日よ。学校が始まるのは九月一日からよ、友治くん。」
下井美満子の声が、私の耳に突き刺さる。知っている。私は幼稚園児では無いのだ。そん
なことは当然彼女も心得ているはずだ。こうやってゆっくりと、周囲からじわり、じわり
と秘密を探り出すのが彼女のやり方だ。木村、大橋、川島…泣きを見たものは数知れない。
彼らの轍を踏んではならない。右手に力をこめた。
「何を持ってるの?あ…」
――――失敗だ。決定的な証拠を見られてしまった。これを見られてはもはや言い逃れで
きない。
薄桃色の花をつけ、添え木にからみつく朝顔の植木鉢。
八月十五日に、ここにあってはならないものを見られてしまったのだ。この植木鉢を八月
中に持ってくるものなどいない。みな、家で観察をしているからだ。だが、私は気づいて
しまった。気づいた瞬間、私は全身からほとばしる衝動に耐えることができなかった。こ
の植木鉢を家に置いて観察することなどできない。この、欺瞞に満ち満ちたこの物体を私
のそばに置いておくことなどできないからだ。
「それって、夏休みの観察の植木鉢よね。」
――――植木鉢!そうだ、その名だ!我々大衆の無知につけこみ、慙愧と誤解の人生に陥
れる、赤茶けた罠!私は知ってしまったのだ。その表面には現れない真の名を!
――――漢字―――。この、我等大衆にはわずかしか知られていないおそるべき文字!そ
の複雑極まりない線と点の集合体文字にはひとつひとつ意味がある。そしてうえきばちは
三文字の感じで表される。まず植(うえ)ー。これは植物を植えるという意味だ。そして
――よく聞いていただきたい。木!そうだ、木だ!あの大きくそびえる木だ!植木鉢とい
うものは、木を植えるものなのだ!それに、教師どもは、このひょろ長い、朝顔という名
の草を植えさせたのだ!木ではなく草を!なんということだ!
鉢に関しては説明がはなはだ煩雑なので割愛させていただく。
この秘密に気づいた私を、下井美満子はけっして許さないだろう。強い逆光で見えないが、
その視線は私を凍りつかせるのに十分だった。
「友治くん…。その植木鉢の花、朝顔じゃなくて昼顔じゃない?」
八月の昼下がりの生暖かい風が、薄桃色の花をゆらした―――。


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