開催期間 2003.1.12-1.19
第26回嘘競演テーマは「恋」
梅千代議長
パイソン・エアウェイズ
恋なりき
島崎藤村 【初恋】
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
その白き手を握りしめ
引く手をばつと払い除け
わがまだ白き両のほほ
紅き爪跡走りけり
われ山中にこもり来て
老師に受けしこの技で
君を必ずとらえると
月夜の山で誓ひけり
わが繰り出しし拳さえ
君は見切りてあまつさえ
大地に投げしその皮で
我を滑らしこかしたり
科学万能時代にて
そを使はぬは愚かなり
仇とらずにおれぬぞと
トラ、トラ、トラを命じたり
始めし時はよかれども
日々戦局は窮まれり
缶に残りしドロツプを
噛みて無念を留めたり
林檎畠の樹の下に
おのづからなる焼跡は
誰が戦いし戦場と
問ひたまうこそこひしけれ
ラブレター・フロム
「フランソワ―ズお嬢様、もう泣くのはおやめくださいませ。」
「ううっ…セバスチャン、…どうして、私の好きになった方は
みんなすぐに亡くなってしまうの?
ああっアンドレア様…思い切って告白のお手紙をさしあげた
ばかりなのに…ううっ…。」
伝統ある名門の令嬢、和泉守兼定フランソワ―ズさんは、
そのつもりもないのに先祖代々の刀鍛冶の技をついつい使ってしまう。