今回の話は私の見た夢、そしてその夢を見た翌日に遭遇した出来事である。

なお、これらは全て私が実際に体験した事である。
記憶を頼りに書いているので、実際の行動・時間などとは多少のズレが有るかもしれないが内容は事実である。
また、この文章を読んだことにより貴方の身辺に何かが起こっても、当方は一切責任を持たないことをあらかじめ御了承頂きたい。
怪談は、書く側は勿論だが、読む側にも覚悟がいるものなのだ、ということを知っておいて欲しい。



『〜夢・泣く子供〜』

メインの方の日記にも書いた事だが、自身にとってどうにも不思議に思える出来事なのでこちらにも書いておこうと思う。

私は時たま、冗談でも何でもなく「予知夢」のような物を見ることがある。
まだ出来てもいない店の場所・どんな店か・間取りなどをほぼ寸分違わず見たこともあれば、後に起こる事件の事を夢で見たこともある。
何年か前に、某有名TVアニメが原因で各地の子供が癲癇症状を訴えた事件があったのを御記憶の方も多いことだと思う。
その事件が起こる2週間ほど前に、私はその光景を夢で見ていた。
そのアニメのシーンを見た、とかではなく、その事件を報道しているニュース、そのニュースを見ているという夢を見たのだ。
夢を見た当時は、一体何の夢か解らなかったが、事件の当時になって何気なくニュースを見ていたときにゾクリとした。
画面に映し出されているレポーターの姿・声・立ち位置・映っている中継現場等、全てが夢の内容と一致していたのだ。
よくある既視感といわれる類のものではない。
何故なら、夢を見た翌日に何となくではあったが妙な感じがしていたので、夢の内容をノートに書いておいてあったので間違いはない。

今回の話は、そういった、ある種の予知夢のような類のものかもしれない。

その日見た夢は、こんな内容だった。

普段の日常、住んでいる寮、現実と何ら変わりない散らかった自分の部屋。
ふと小用を足しに私はトイレへ行った。
部屋を出る、寮の階段を降りる、一階の廊下をトイレに向かう。
トイレに入り、用を足す。
まぁ、綺麗な場面ではないが、ごく普通の日常の一場面だ。
この寮のトイレ、小便器のすぐ上に小さな窓があり、そこから寮の裏が見える。
寮の裏には、ちょっとした空き地のような場所があり、その向こうには小さな竹林がある。
その空き地のような場所はすぐ傍に竹林があるせいか、春先になると毎年のように若竹が地面から何本も顔を覗かせる。
夢の中で、私は用を足しつつも、窓から外を見ていた。
その夢を見た当時はちょうど春先で、現実の世界では若竹が何本も…丁度1メートル位であろうか…日に日に背を伸ばしていた。
だが、夢の中ではその若竹の姿は見られなかった。
ふと、目線を下げてみた。
現実には竹が何本もその姿を見せている地面に竹の姿はなく、代わりに一人の小さな人間の姿があった。
ソレは、まだ小さな男の子のようで、こちらに背を向け、しゃがんでいた。
その姿は…泣いているようだった。
別に泣き声を聞いたわけでも無いし、表情を見たわけでも無い…が、確かにその男の子は泣いていた。

そこで不意に目が覚めた。

目が覚めると、そこにはいつもと変わらぬ日常が待っているだけである。
ただ…夢の余韻が、何とも形容しがたい嫌な感じだった。
夢から覚めた当初は、その嫌な感じがあったものだが時間が経つにつれ、いつもの日常通りの生活に、夢の感じなど忘れかけていった。

昼過ぎ頃だっただろうか、私は小用を足しにトイレへ向かった。
部屋を出る、寮の階段を降りる、一階の廊下をトイレに向かう。
トイレに入り、用を足す。
小用を足す時、位置的に目の前には窓があり、その窓が開いていれば否が応にも寮の裏が目に入ることになる。
違和感を感じた。
季節は春先。
竹がぐんぐんと伸び出す時期である。
そういえば前日も、窓の外には若い竹が何本も伸びている姿があった。
違和感の正体は竹だった。
つい前日まで、もう1メートルばかりに伸びた竹が何本もあったはずのその場所には…。
おそらくその場所の持ち主がした事だろう、若い竹は、全て根元から刈られ、その刈られた竹は地面に打ち捨てられていた。
瞬間、背筋がゾッとした。
そして今日見た夢の内容が、半ば忘れかけていた夢の内容がザーッと鮮明に思い出された。
根元から刈られ、打ち捨てられた竹。
夢で見た、泣いている少年。
その二つの姿が重なった。

私はこの寮に住んでもう何年にもなる。
毎年のようにこの場所には春先に何本も竹が伸び、それを誰か(おそらく地主)が刈り取る。
それは毎年の事であり、別に今年が初めてではない。
だが、このような夢を見たのは今年が初めての事である。

この話は、一般に言う怪談・怪異話というものとは少々違うのかもしれない。
だが、説明のつかないこと・理解の域を超えた不思議な事を「怪異」と呼ぶとするならば、ということでここに書くに値すると私は思った。
現実の…刈り取られた竹と夢の中の泣いていた子供が、例えば同一存在だとするならば…。
子供…竹は、一体何を泣いていたのだろう。
これから伸びようと…生きようとする命を奪われた事への悲しみゆえなのだろうか?

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