〜注〜
当作品は、『創作』怪談です
作中に登場する人物・場所・事件・現象と、現実でそれらに符合するものとの関連は一切ありません
また、それらに符合するものを誹謗・中傷する目的で書かれたものではない、ということをあらかじめ御了承ください



『カウントメール』


カウントメール、というものを御存知だろうか。
ひらたく言えば「おまじない」の一種で、インターネットや携帯電話のメール機能を使った物である。
やり方は至って簡単で
1:メールを自分宛てに出す
2:そのメールに返信(つまりまた自分に送信)
という事を繰り返せば良いというもの。
この際、メールに「自分の願い」を明記しておくとその願いが叶うという。
実行に際して
1:最初のメールに任意の数字を記入し、返信のたびにその数を減らしていく事(例 最初のメール100、返信時のメールは99と記入)
2:減らしていく数字を間違えてはいけない(例 100>99はOK 100>98や100>100はNG もちろんカウントが増えていってもNG)
3:メールは必ず一日に一回…前回のメールから24時間後以降、48時間以内に…送ること(例 日付が変わっても24時間以内のメールはNG)
4:自分から届いたメールは、消去してはいけない
などの点を守る必要がある。

メールの度に数字を減らしていく…カウントしていく事が、カウントメールと呼ばれている所以。
カウントする数が多いほど、開始から終了までの日数が多いほど大きな願いが叶うらしい…。
願いが叶うという事から、古来からある「お百度参り」などの願掛けの一種であるといえよう。
携帯電話などの広く普及しているツールを使って行うため、誰にでも簡単に実行できるのが最大のポイントである。

カウント最後の送信後、そのメールがすぐに届かなければこのおまじないは成功。
最後のメールも以前の物と同じように、すぐに着信できた場合は、カウント数と願いが適正でないなどで失敗なのだという。
成功した時は、その願いが近い将来必ず叶い、願いが叶った後に最後のカウントメールが届くらしい。

カウントメール、一部の女子高生やOLなどの間で流行らしく
「憧れの人と両想いになれた」
「テストでヤマカンが当たった」
「嫌な上司がリストラにあった」
「企画が会議で通った」
などなど、効果があったという噂が噂を呼び、そこそこの広がりを見せているらしい。


ただし
気を付けなければいけない。

上記「実行に際して」以下の4項目を守らなかった場合には、不幸が訪れるという。

訪れる不幸は、願い・カウント数に比例して大きくなるといわれている。

ある者は身内に、ある者は自身の身に、ある者はその願いの相手…例えば両想いになりたいと願った相手…に不幸が訪れたと…。

話によると、不幸が訪れる直前、自分が送ったメールが届かず、送り主不明のメールが届くのだそうだ。
それに、どのような内容が書かれているのか…。
残念ながら、それを知る事は出来ない。
それを話す事は、訪れた不幸以上の不幸を呼ぶ事になるといわれており、また話そうにも、自身に訪れた不幸によって話すことの出来ない…。


以下、条件を守れず不幸を呼び込んでしまったという例をいくつか…。


Aさん(女性 10代後半)の場合

Aさんは大学受験を控えた高校生。
受験勉強に追われていた夏休み、友人からカウントメールの話を聞いた。
最初は半信半疑で気にも留めていなかったが、二学期が始まってしばらく後、担任から今の状況では志望校に合格するのは難しいと言われた事がきっかけでカウントメールを始めた。
その志望校はAさん自身も昔から憧れていた学校であり、また、両親もぜひその学校にと望んでいた学校。
Aさんはカウントを100で開始した。
ちょうどカウント終了の1日後に合格発表の日を迎えるように合わせてカウントを開始した。
ある意味、藁にもすがる思いで…。

年も明け、残りのカウントも僅かという頃になった。
そんな中、ついに入試が始まる。
試験は、Aさん自身も納得の出来だったという。
終わった後で自己採点しても、ほぼ確実に合格ラインは超えていたし、面接、論文問題もおそらく大丈夫だと確信できた。
そんな安堵感と、今までの受験勉強の疲れが出てしまったためだろうか……。

その日、Aさんはカウントメールを実行しなかった。

翌日、何気なく携帯電話のメールチェックをしていると、覚えの無いメールが着信されているのにAさんは気付いた。
送信元は…不明。
そのメールがどのような内容だったのか…それは残念ながらわかっていない。
…が、その日からAさんの様子がおかしくなっていった。
ほぼ間違いなく合格、という安心感はAさんから消え、不安で不安でどうしようもないといった様子。
挙句、カウントメールの話を教えてくれた友人に「なんで、あんなもの教えたの!!」と、半狂乱で掴みかからんばかりに…。
合格発表の数日前まで、Aさんはほとんどノイローゼのような状態にあったらしい。
それでも、合格発表の当日には精神状態もなんとか持ち直し、念のため両親同伴で発表会場へ向かったAさん。
Aさんは…見事に合格していた。
後に聞くところによると、Aさんの試験の内容は、全受験者の中でも上位の成績での合格だったらしい。
とにかく、Aさんは見事志望校に合格していた。
Aさんと両親は互いに肩を抱いて泣き、喜んだ。
ひとしきり嬉し涙を流した後、Aさんは「ちょっと化粧を直しに」と一人で会場のトイレに行った。

それを最後に、Aさんの姿は消えた。

追記:
Aさんが消えて何ヶ月かした後、Aさんにカウントメールの話をした友人の携帯電話にAさんからメールが届いたらしい。
…が、その内容がどのような物だったのか、その友人は誰にも…Aさんの両親にも…話していない。
決して…たとえ警察やAさんの両親であろうと…話していい内容ではないと言い、メール自体も既に消去してしまったという。
なお、Aさんは現在も行方がわかっていない。


Bさん(女性 20代)の場合

Bさんの願いは「美しくなりたい」というもの。
これはおそらく全ての女性が持っている願いであり、また、カウントメールの願いとしてもよくある願いであった。

Bさんが設定したカウント数は30。
軽い気持ちで、とりあえず1ヶ月、という感じで始めたらしい。

ちょうどその頃、職場の女性の間でカウントメールが流行っており「○○さんはこれで彼氏が出来た」とか「宝くじが当たった」とか色々噂になっていたらしい。
その噂があったからこそBさんもカウントメールを始めたわけである。

当時、Bさんは職場のある男性に想いを寄せていた。
「美しくなりたい」という願いも、ある意味そのための願いだったとも言える。

ある日、Bさんは職場の飲み会で飲みすぎてしまい、かなり酔った状態で帰宅した。
その酔った状態でもBさんは「あ、メール(カウントメール)をしておかなくちゃ」と思い携帯電話でメール作業をしてから眠りについた。

だが

かなり酔っていたせいか、ミスを犯してしまっていた事に気が付かず、メールを送信してしまっていた。
前回送ったメールのカウント数は14、もちろん今回のメールのカウントは13で送らねばならないのだが、実際に送ったメールに記入されていたのは33。
手元の操作ミスだ。
さらにミスはもう一つあった。
前回のメールから24時間経っていない状態で実行してしまっていた。

翌日、目が覚めて携帯電話のメールチェックをしていたBさん。
寝る前に送ったはずのカウントメールが届いていない。
しかしBさんは、それがカウントメールの恐怖の予兆だということを知らなかった。
噂話で触りの部分だけをかじった程度のBさんは、単なるメールのサーバーエラーか何かで届いていないのだと思っていた。
そのまま、Bさんは職場へ。

仕事中、携帯電話にメールの着信があった。
送信元は…不明。
その内容がどんな物だったのか…残念ながらこのBさんの場合でも明らかにはなっていない。
なぜなら、Bさんはそのメールが送信元不明であったので、イタズラメールか何かと思い、開くまでもなくすぐに消去してしまったから…。

その日、Bさんは、想いを寄せている男性が揚げ物料理が好きだということを噂で聞いた。
それを知ったから、というだけでも無いのだろうが、Bさんは夕食に鳥の唐揚げを自分で料理することにした。

揚げ物をしていると、携帯電話が鳴った。
相手は、あの男性であった。
男性は、前々からBさんのことが気になっていて、Bさんの友人からBさんの電話番号を教えてもらい、思い切って電話してみたのだという。
Bさんと男性の会話は弾んだ。
それがいけなかった。
気が付いた時、揚げ物の鍋には炎が上がっていた。
「あぁッ」
動転したBさんは、炎があがる鍋に向けて水を…。
バヂッ!!
油が、炎が弾けた。

瞬間、部屋一面に炎が広がったが、幸いにも天井に備え付けの消火装置(スプリンクラー)が作動したおかげで火事になることは免れた…。
…が

数ヶ月後、Bさんは職場を辞め、引っ越していった。

あの時弾けた油はBさんの顔を直撃していた。


Cさん(男性 20代)の場合

Cさんは社会人になって2年。
社会の厳しさに呑まれながらも、それでも頑張って仕事に励んでいた。
恋もした。
相手は同じ職場の1才下の女性。
恋に、仕事に、全てが順調に進んでいた。
だが、職場に一つ問題があった。
ある上司が非常に嫌な人間だった。
この上司、職場内でもかなり評判が悪い男だった。
「才能などまるで無いが、コネだけで会社にいる」という噂を社内の誰もが知っているほど。
もちろん、この噂はその上司自身の耳にも嫌でも入っている。
その為に、よけいに好き放題やっている感さえあったらしい。

基本的にCさんとこの上司はソリが合わなかったらしい。
何かにつけ、この上司はCさんの仕事にケチを付け…というよりもCさんをウサの晴らし所のように接していたようだ。
Cさんはそれでも耐えていた。
それがまた上司には気に食わなかったらしい。
もはや上司のCさんに対する態度は、誰が見ても嫌がらせ以外の何物でもないほどにエスカレートしたという。
やがて、上司の嫌がらせ行為は、Cさんの恋人の女性にも向けられた。
執拗にセクハラなどの嫌がらせを受けた女性は、会社を辞めた。
女性が上司と肉体関係をもった、という噂が社内に広がったためだ。
もちろん、社内の誰もが、その噂自体が上司が自分で広めた嫌がらせ行為であると知っていた。
…が、噂という物は一人歩きする。
誰もがそうだとわかっていても、もしかして、ひょっとして、と思ってしまう…それが噂という物である。
女性が会社を辞める時、ほとんどノイローゼの状態だったという。

Cさんはカウントメールに願いをかけた。
カウントは365…まる一年。
願いは…「上司が死にますように」

溜まりに溜まったストレス、恋人への嫌がらせ行為…、それでもCさんは何とか耐えようとした。
だが、恋人が会社を辞めて…上司の顔を見たとき、もう我慢は出来なかった。
カウントメールの事は大学生の時に既に知っていた。
当時、試した友人は、願いが叶ったといっていた。
実をいえば、Cさん自身、カウントメールを試した事があり、実際に願いが叶ったらしい。
つまり、願いが叶うと確信していた。

カウントメールで上司の死を願いつつ、半年以上が過ぎた。
相変わらず上司のCさんに対する嫌がらせは続いていたが、Cさんはそれを全く気にしなかった。
カウントメールを完全にやり遂げれば、上司はこの世から消える…。
その事を考えれば、今、自分への嫌がらせなど全く苦にはならなかった。
いや…この毎日のように続く嫌がらせがあるからこそ、カウントメールを確実に完全にやり遂げる事ができる。

恋人の女性は、ノイローゼが治らず、実家に帰っていた。
既に何ヶ月も連絡さえ取っていない。
Cさんはカウントメールをひたすら続けた。
カウントメールを送るときだけが、一日の内で一番心安らげる…そんな毎日をただひたすら…。

そんなある日。

Cさんは突然、この世を去った。
事故死だった。

カウントメールの不幸がCさんの命を奪ったのか?
それは違う。
Cさんの携帯電話に残ったメール履歴には、何一つのミスも無くカウントゼロに向けてのメールが残されていた。
カウント記入ミスも無い。
時間的なミスも無い。
届いたメール…自分から送られたカウントメールの全て保存されていた。

結論からいえば、Cさんの死はおそらくカウントメールとは全く関係の無い、偶然の事故死、運命だったのだろう。
ここには、カウントメールの不幸についての例をあげている。
Cさんに訪れた不幸、それは上司の死を願ったカウントメールの件ではない。

Cさんはある意味、カウントメール常習者とも言える人物だった。
大学生の時、初めてカウントメールを試し、そしてそれは成功…願いをかなえることが出来た。
その願いは、就職。
カウントメールで仕事を手に入れることが出来たCさんは、次の願いをカウントメールに託した。
その願いは、恋愛。
そしてCさんは恋人の女性を手に入れた。
仕事を得、恋人をも得たCさんは、カウントメールに恋人との幸せを願った。
だが過去に失敗無く成功が続いたことに気が緩んだのか、Cさんは時間的なミス…つまり毎日送るべきカウントメールを休んでしまっていた。
そして訪れた不幸は、既に書いたとおりである。
ただし、この場合、不幸が訪れたのはCさん自身ではなく、その願いの相手の女性に降りかかってしまったのだ…。

追記:
Cさんがカウントメールで死を願った上司は、まだ健在であるらしい。

追記その2:
Cさんが設定した設定したカウント終了予定日は、私がこの文章を書いている現時点では、まだその日は訪れていない。

追記その3:
このCさんの携帯電話のメール履歴を見れば、カウントメールの不幸を予告する送信元不明のメールも残っているかもしれない。
しかし、Cさんの携帯電話は、今現在、所在が不明。
…たとえCさんの携帯電話の所在が明らかで、それを見ることが出来たとしても…その内容は、やはりここで書くべきではないのかもしれない…



以上がカウントメールの約束を守れず、それ故に不幸を呼び込んでしまった例である。
もちろん、上記のような話はカウントメールの噂とともに広まっている。
だが、経験者は「このような話があるからこそ、信憑性がある」のだという。
確かに何のリスクも無く得られる成功より、リスクがある話のほうが信憑性は高いのかもしれない。
だからこそ、噂となって人の間にも広がっていくのだろうか…。



貴方はカウントメールに何を願いますか?




あとがき
断っておきますが、上記のカウントメール自体も、それに関する不幸の例も全て、私「御那羽忍」の創作です。
もしかすると、実際にこのカウントメールに似たものが存在しているのかもしれませんが…。
もし実存しているとしても、このページに書かれた文章は全て、私の想像の産物であり、実際の人物や出来事などとは一切関係がありません。
また、上記の方法で実際に「カウントメール」が出来てしまったとしても、その行為に関して実行者にどのような利益・損害が起きようとも当方は一切責任を持ちません。

この「カウントメール」は、ある種の都市伝説的なものとして書きました。
携帯などのツールが一般的になり、実際にそれらにまつわる都市伝説的な映画・小説・ゲームなどが既に存在します。
今回の創作は、それらの既存の作品に影響を受けていることは、正直その通りです。
ちなみに、私自身は携帯電話を持っていません。
今時、携帯持ってないなんてダメダメですか。そうですか。はぁ…。

最後に…
こういう系統のおまじないには、実際にかなりの危険が伴います。
所詮、非科学的ななんて〜、と軽い気持ちでやる事だけは絶対に止めてくださいね。
心霊とかの非科学的な力…が実際にあるのかどうかは不明ですが、こういうおまじないの結果、精神に異常を来したり…という事は実際にあるようです。

念のためにもう一度言っておきます。
カウントメールは想像上のおまじないです。
ぶっちゃけた話が、私のでっち上げた存在しないおまじないです。
効力など全くありません。
もし、実行して実際に「何か」があったとしても、それは私とは全く無関係の出来事でございます。
例えば、実際に「何か」あったとしても、それは、貴方の心と貴方の周囲にある何らかの偶然が招いたものです。
○○を見たら死ぬ、とか、○○の時間に○○をすると不幸になる、とかの話は、そうだと思い込みすぎた事によって極まれに実際に起きてしまうのです。
だからまぁ、信じないように。
あくまでも、読み物として…ね?


あとがき追記:
…これ書いてて、ちょっと変でした。
一時間の間に4回もトイレ(小用)に。
その都度…汚い話で申し訳ないですが…嘘みたいに出る。
ここ数時間タバコはガシガシ吸ってましたが、水分は缶ジュース一本ほども摂取してません。
ちなみに、現在住んでる寮のトイレ、実話怪談の方にも書いたと思いますが…ある種の心霊スポット…。
…まさか、呼ばれた…ってことは無いだろうとは思いますけど…。

ではとりあえず、次回の創作までごきげんよう。


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