ひとりごと 


 

第74回:平成24年7月8日のひとりごと

破蕾

 

 

 5月6日(日)。県展の最終日です。

 社中の I さんが出展しているので,行ってみることにしました。何かのイベントがあるらしく城山公園の芝生広場には人があふれておりました。

 

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I さんの作品
県立美術館南館

「破蕾」……つぼみが開くこと

 

 力強く表現されておりました。

 破蕾という言葉はあまり耳にしませんが,文字を見ただけで意味はわかります。

 同じつぼみという字でも「莟」はまだかたいつぼみ。

 「蕾」は今まさに開こうとしているつぼみという違いがあると言われています。

 つぼみが開くには種々の条件が整ってはじめて破蕾となるのです。

 エネルギーの満ち満ちた姿と言えます。

 

 

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かきつばた 5月7日

 

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白花 かきつばた 5月7日

 

 

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朴の花 5月8日

 

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5月9日

 

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5月10日

 

 

 8年程前のいけ花展で,宿り木のついた椿寒桜をいけた事があります。

 ピンクの桜が咲き,その枝の間に緑色の宿り木が丸くついていて面白い……そんな美しい姿を想像して大きな平鉢に活けたのです。

 ところが,桜のつぼみはかなりふくらんでいたのに会期3日目にうなだれてしまいました。

 後日,桜の木を割ってみると,宿り木は,桜の皮の下にとても長く根を伸ばしておりました。

 宿り木に養分を取られ桜は力尽きたと思われます。

 花が咲くためにはそれ相応の力がいることがわかります。

 

 

 古事記の『天の石屋戸(いわやど) こもり』の所で「八百万(やおよろず)の神(とも)(わら)いき」と表現しています。

 咲くという字を書いてわらう(●●●)と読ませているのです。

 人間だって,元気がないとなかなか笑えるものではありません。

 無理して笑おうとすると作り笑いになってしまいます。

 いけ花の稽古用の花材でも,いろいろ養いをしても咲く力のないものもあり,つぼみが次々と咲いて嬉しくさせてくれるものもあります。

 

 

 

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 「ひざがわらう」なんてのはいやだけれど,年をとっても笑う力は残しておきたいものです。

 

 

2012年(平成24年)5月20日 記

宮内 庸洲

 

 


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