白井克彦総長挨拶「胡錦涛主席閣下をお迎えして」

 

尊敬する中華人民共和国・胡錦涛主席閣下をお迎えし、ここ大隈講堂において特別講演会を開催できますことは、 早稲田大学にとりまして、誠に名誉なことであり、大きな慶びであります。  胡錦涛主席閣下、ようこそ早稲田大学にお越しくださいました。早稲田大学を代表しまして閣下のご来臨を心から 歓迎申し上げます。   昨年末の福田首相の「迎春の旅」に象徴されるように、両国指導者の頻繁な往訪により、日中関係が一段と深まりつつ あります。この度、日中平和友好条約締結三〇周年の節目で、胡錦涛主席閣下にご訪問頂いたことは、 まさに時宜にかなうものであり、両国の親善関係を示すとともに、今後の日中関係に暖かい春をもたらし、 大きく花を咲かせるものとなるでしょう。  中国は近年、目覚ましい経済発展を遂げ、本年八月には北京オリンピック開催、二〇一〇年には上海万国博覧会開催を予 定しています。胡錦涛主席閣下の強力なリーダーシップのもと、「人間本位の立場から社会全体の持続的な均衡の取れた発 展を図る科学的発展観」の視点から、公正、自由、法治、平等を是とする和譜社会の実現に向けて、今後さらに発展すると ともに、国際社会において大変重要な役割を担われることが期待されます。  現在、人類社会は急速なグローバル化により環境・資源問題、民族間題、地域間格差、価値観の衝突などの様々な課題に直面 しています。中国は、多様な民族で構成される一三億人を擁する大国であるがゆえに、国内でこれらの課題が体現されるこ ともあるでしょう。もちろん、日本も例外ではありません。こうしたなか、アジアを代表する日中両国は、手を携えてこれら の課題に取り組むことが望ましいものと考えます。一例を申し上げるならば、発展と環境をいかに共存させ、かつ安定した社 会を創るかということを考えますと、日本の経験は地球規模あるいは様々な地域の課題の解決に生かすことができるので はないかと思います。  日中両国はかけがえのない隣国であり、悠久の歴史のなかで一時期の不幸な時期はあったものの、相互に学びあう姿勢が 貫かれてきました。高等教育に携わる者として、私は、このような日中間の友好交流の歴史を踏まえつつ、新たな日中関係 の担い手となる若い世代を共に育成していくという地道な努力を重ねることの重要性を強く感じております。今週、北京大 学の一一〇周年の式典が開かれました。ここでは北京大学のこの一〇年における目覚ましい発展の姿を感じましたが、そ の前日、胡錦涛主席閣下も北京大学を訪問され、学生たちとも会話されました。この様子は、胡主席閣下の教育・研究重視の 姿勢を示したもので、大変印象的なものでした。  福田総理が昨年一二月の北京大学でのご講演で引用された「十年樹木、百年樹人」とは、まさにこうした若い世代を今 後、両国で共同育成していくことの大切さを示すことばであり、大学が果たすべき責務であると受け止めています。  早稲田大学は一九〇五年に清国留学生部を設立するなど、日中関係における「百年樹人」を理念として、この一〇〇年間積 極的に中国人留学生の育成に取り組んで参りました。中国共産党の創設者のひとりである李大釦をはじめとして、現在の 中国の礎を築いた多くの方々が早稲田で学んだ学生であったことを、私たちは大変誇りに思っています。  こうした中国との歴史的な絆を大切にしっつ、早稲田大学は次の一〇〇年を見据えた日中両国の互恵的発展を担う人材 の育成を目指して、本日午前、北京大学との間で「環境・持続可能発展学」分野における共同大学院の設置構想に関する合 意書に調印いたしました。今後、日中両政府のご支援を頂きながら共同の大学院教育プログラムを実現し、両大学をはじめ 日中の英知を結集し、新たな産学官連携モデルを作り、持続可能な社会の構築に挑戦する指導的人材の育成を目指して参 りたいと考えております。  最後になりましたが、北京オリンピックの成功を祈りつつ、あらためて、胡錦涛主席閣下のご来校を心より歓迎いたします。 ありがとうございました。