女と男 最新科学が読み解く性
〜 NHKスペシャル 〜

1998.09.20.swing


■はじめに

・ここでは、NHKで 2009年1月に3回シリーズで放映されたNHKスペシャル『女と男 最新科学
 が読み解く性』について、その内容をかいつまんでご案内をします。
・放映期間:2009年1月11日〜1月18日(43〜59分×3回)
  →参考番組:『XとYのミステリー』(染色体の話)

▽予備知識
 @ホルモン:
  脳内で生産され近くの神経の受容体に作用するものは「神経伝達物質」と呼ばれますが、
  内分泌系によって遠い部位まで伝達されるものや、脳以外の体内で生産されるものは、
  一般に「ホルモン」と呼ばれます。
  体内で作られないものは、「ビタミン」と呼ばれます。
  そのため、例えば、“ビタミンC”は人にとってはビタミンと呼ばれますが、一般の家
  畜(脊椎動物)では自分の体内で生産できるので、「ホルモン」と言うことになります。

 Aドーパミン:
  ドーパミンは神経伝達物質ですが、同番組内でもドーパミンの話が出てきます。

 Bエンドルフィン:
  エンドルフィンについては、同番組では取上げられていませんが、ドーパミンに関連し
  て重要なホルモン・神経伝達物質なので、ここで少し触れておきます。
  エンドルフィンは、俗に「脳内モルヒネ」と呼ばれています。
  名前の由来は、「内因性:endo-」と「モルヒネ:morphine」です。
   ・モルヒネ:ケシの果実→アヘン→モルヒネ→ヘロイン
   ・強力な鎮痛剤として使われるが、中毒作用があるため、「麻薬」とされる。
   ・エンドルフィンはモルヒネの700倍の鎮痛作用があると言われている。
   ・α-,β-,γ-エンドルフィン、メチオニン-エンケファリン、ロイシン-エンケファ
  リンなどの種類が確認されています。
  なお、国内では、春山茂雄さんが『脳内革命』(95年、サンマーク出版)と言う本を著
  したところ大ヒットしたため、「エンドルフィン」と言う言葉はかなり一般化しました。


  ▽ネット情報:(http://blog.goo.ne.jp/docoh/e/df4ef5f46dd57a4a9bd05b05a930bf18)
   ネットに次のような記述をみつけましたので、紹介させて頂きます。

  ■あなたはヘロイン派、それともコカイン派?■
   ・・・
   そこで、ストレス解消行動もエンドルフィン(陶酔)志向とドーパミン(過度覚醒)
   志向の2つに大別出来る。余談ながら、私は、その人がエンドルフィン志向かドーパ
   ミン志向かを見分ける検査「Body So-nic Test」を開発し、ストレスドックに応用し
   ている。
   どちらのタイプか判定し、下記のようなストレス解消法を勧めるわけである。

  ・エンドルフィン志向タイプ
   生物学的次元:有酸素運動、舞踏、Sex
   精神的次元 :個人芸術活動、カウンセリング
   社会的次元 :宗教活動
   霊的次元  :暝想、ヨーガ、宗教的修行

  ・ドーパミン志向タイプ
   生物学的次元:対戦型スポーツ、アウトドアスポーツ
   精神的次元 :旅行、読書、集団芸術活動
   社会的次元 :講演、ボランティア活動、政治活動
   霊的次元  :学問的研究

   カラオケはエンドルフィン志向のようであるが、オーディエンスからの喝采を楽しむ
   のであればドーパミン志向となる。セックスの行為自体はエンドルフィン型の快感で
   あるが、相手をキャッチするのは狩猟行動と同じくドーパミン型の快楽なので、一つ
   の行動に二つの快楽がある。
   下品な言い方であるが、ひとつで二度美味しいというわけである。
   ・・・


■『女と男 最新科学が読み解く性 第1回:惹かれあう二人』
  〜副題:男女関係の秘密〜

・男女では恋をした時に脳の中で変化する部分が同じ部分と違う部分があります。

・男女で共通に変化がみられる部位:
  @腹側被蓋野(ふくそくひがいや、「恋の中枢」とも呼ばれる。)でドーパミンが分泌
   される。
   それにより、同じ行動を起こしやすくする。(快感を得られる行動がまたあることを
   望む。)
  A活動が抑えられる部位:扁桃体、頭頂側頭結合部(批判や判断を行う部位)
    →「恋は盲目」、「あばたも笑窪」…でしょうか

・男女で変化に相違がみられる部位:
  @男性:島皮質(とうひしつ)の一部。
   この部位は主に「視覚」に関係していて、「女性が健康な赤ちゃんを産むことができ
   るかどうか」を無意識に見ているのではないか。
   具体的には、女性の腰のくびれ(ウェストとヒップの関係)を見ていて、体型の細め、
   太めに関係なく、「7:10の比率」の女性を良しとしている。
  A女性:帯状回(たいじょうかい)。
   この部位は主に「記憶」に関係があり、「相手が何を約束したか」、「どう実行したか」
   などを判断基準にしている。

・これらは、どちらも子育て(種族保存)のための行動です。
・何故「子育てか?」:人類の歴史は、400万年前までにアフリカで二足歩行を始めました。
 その結果、女性の骨盤の形が大きく変化し、更にそのせいで、産道を大きく出来なくなっ
 たと言う制約が発生し、そのため、子供を言わば未熟児の状態で生まざるを得なくなった..
 子供に付きっ切りになった女性をきちんと面倒見てくれる相手を記憶を頼りに見極めるよ
 うになったのではないか..

 なお、哺乳類の内でつがいで子育てをする動物は、3%しかいません。
 子育てのために恋愛のシステムが進化したようです。
 「恋は1年半から3年しかもたない」... これは「子供が成長するまでの期間限定」と言う
 400万年前からの恋愛システムによります。

 男女の気持ちのすれ違いのパターンは会話にあります。
 相手を批判すると、相手は自分の立場を守る。
  すれ違いのパターン:批判 → 防御 → 見下し

・心拍数
 男性は口論がストレスになり心拍数が上がるが、女は上がりません。
 女性はホルモンの関係で自分を落ち着かせる能力が高いので、仮に心拍数が上がっても、
 女性は早く下がります。
 男は狩が中心だったため、常に攻撃から身を守る必要があったため、心拍数を急速に上げ
 る能力が必要になりました。

 男性にとって、批判は「攻撃」で、行き詰った時に会話を打ち切るのは男性からです。

・男女関係の障害
 男性は女性の気持ちを読み違い、つい余計なことをやってしまいます。
 男性は女性よりも人の気持ちを読み取るのが苦手です。

・人の表情を読み取る能力
 女性は脳の1箇所、男性は2箇所を使っています。すなわち、女性は能力をさほど使わなく
 ても相手の表情や気持ちを当てることができます。
 これは、女性は「部族の仲間と会話を絶やすことがなかった」ことによります。

 仲間の絆を深めるためには、相手の感情を知ったり、自分の感情を伝えることが必要です。
 男性は(狩猟で)刻々と変わる状況を解決するための「問題解決型」の会話が中心になり
 ました。


■『女と男 最新科学が読み解く性 第2回:何が違う?なぜ違う?』
  〜副題:女と男の違い〜

・命に関わる男女の違い
 狭心症は主に「冠動脈」で起こるとされていましたが、女性の場合には、心臓の筋肉内の
 「微小血管」で起こることが分かって来ました。
 これは、女性の場合は閉経後に女性ホルモン「エストロゲン」が減少することに起因して
 います。

・女と男の脳
 脳の内部に二つある海馬のうちの右側の海馬は、女性ホルモンの受け皿が多いので、幼少
 期では女性の方が小さいが、成長に伴って(15歳以上で)女性の方が大きくなります。
 (米国国立衛生研究所)
 それに対して、危険を感じる所である「扁桃体」は、男性ホルモンの受け皿が多いため、
 (元々男性の方が大きいが)15歳を過ぎる頃から更に大きくなります。

・空間認知能力(「女性は地図が読めない?」)
 数百年前、男は狩をしました。狩では自分で「目的地」を決めることはできません。
 そのため、棲家へ帰るべき道筋は、「頭の中で来た道を振り返って構成して」戻ることに
 なります。
 それに対して、女性は棲家の近くで木の実や果物の採取をしましたが、木の実や果物の収
 穫場所はいつも決まった場所です。そのため、その場所へは「目印を頼り」に往復するこ
 とになります。
 「目印」は言葉で表現したことが推測されます。

・あるIQテストの結果
 男性は空間認知能力に優れていますが、女性は「ブローカ野」と言われる言葉を使う時に
 使われる部分を使っています。

 このように、男女は、脳の違ったネットワークを使って同じ結果を得る(知性を獲得する)
 ことが分かりました。

 これらの「出来る出来ない」と言う男女の能力の違いは、祖先たら受け継いだ「生きるた
 めに必要な役割分担」から出来たもので、「女脳と男脳と言うべき」進化をして来ました。

・仕事上のプロジェクト
 ビジネスでのプロジェクトの提案では、相手が男性の場合は、役職者を伴って、結論をず
 ばり言うのがいいですが、相手が女性の場合は、結論に至るプロセスを大切にするので、
 プロジェクトの実際の担当者を伴い、プロセスを一緒に分析し、早急に結論を出すことは
 しないのがいいようです。


■『女と男 最新科学が読み解く性 第3回:男が消える?人類も消える?』
  〜副題:Y染色体が消える?〜

・性染色体と呼ばれる「X染色体」と「Y染色体」は、男性では「XY」で女性では「XX」です。
 そのため Y染色体は男性特有のもので、父親から息子へと単純コピーで遺伝していきます。
  →Y染色体とは逆に、細胞核の外にあるミトコンドリアのDNAは母親のものしか遺伝され
   ません。そのため、よく人種のルーツを辿る研究などの場合に使われているそうです。
・X染色体は 女性が持っている二つが受精前に交じり合い、更に受精時に男性が持っている
 X染色体と交じり合います。
・そのため、X染色体は傷がついても修復が可能ですが、Y染色体は単純コピーの過程で傷つ
 いたり突然変異が発生すると修復することができません。

・その結果、Y染色体は発生以来退化のみをしているため、現在すでにX染色体よりも1/10程
 度に小さくなっていますが、およそ500〜600万年後には消えてしまうだろうと予測されて
 います。

・処女懐胎
 男性なしで生き残る方法には幾つかの方法があります。

・英国チェスター動物園のコモドオオトカゲ(爬虫類)のフローラちゃんは、処女懐胎で子供
 (7個の卵)を生みました。
・カクレクマノミの場合は、子供時代は雌雄がありませんが、成長すると、「必要に応じて」
 雌雄の別が発生します。
  →カクレクマノミは、アニメ映画『ファインディング・ニモ』でお馴染みですね。
   (「ポニョ」じゃないよ!^^;)
  →番組では他の生物の例は取上げられていません。

・しかし、哺乳類では男がいないと子供ができません!。。
 哺乳類では、胎盤が必須ですが、Y染色体がないと胎盤は作れません。
 (何故そう言う仕組みになっているのか、理由は未解決です。)
 (Y染色体の誕生は、1億5千万年前です。)
・Y染色体がなくなっても生き延びている哺乳類として、「トゲネズミ」(奄美大島、徳之島)
 がいますが、これはY染色体以外の染色体が、Y染色体の代わりでできるようになった稀な
 ケースです。

・不妊治療
 世界で始めて体外受精で誕生した赤ちゃんは1978年生まれのルイーズさんです。
・不妊治療では、その後、「顕微受精」などの手法が開発されています。
・しかし、生殖技術の発達は「精子の質の低下を助長する」とされています。
 昨今では「環境ホルモン」の影響も危惧されています。

(以上です。)

 いずれにしても、能力の話は個人差が非常に大きいと思います。
 個々人にそのまま当てはめて考えるには時として非常に無理があるかと思いますのでご注意ください。