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「みんなの中でどう思う? トシ(稲葉稔雄・マルス/アーサー役)はオーディション最下位だった・・・。それが主役をやらなきゃいけない現状を・・・。」
第二章・ミスキャスト
稲葉稔雄。1997年入団。配役のオーディションは、この公演で二度目となる。前回の『悲しい顔のボードヴィル』/「最後の太郎」で、主人公のユウザに恨みを持つ怨霊役が初舞台となる。
しかし今回は主人公である。
それもかなりの大役である。
前記述の通り、結果的には最下位であった。では何故、今回彼が主役となったのか?
内田「キャスティングの問題、これは演劇をやっていくには付いて来る。そこに対してのはっきりとしたプロ意識がまだ曖昧な事を、この前配役の発表をした時感じた。今の現状は、実力が少なすぎて、キャラクターで振り分けていくしかない・・・。」
「今考えると、トシが心配。マルスはエイハブなんかよりも主役。これは今のままじゃ出来ない。本当に血ヘドを吐くようじゃ無いと出来ない。トシがありったけを出せば出来る。オレの心の奥の奥の奥には、本当は応援している気持ちがあるんだという事忘れないでくれ。」
「でも今回はそれも止めていく。オレも甘いから。無理矢理でも、脅迫してでもやる。(この台本は)一つは“戦争”、一つは“狂気”、一つは“演劇”扱っているテーマだから、オレは極にいってしまう。公演が終わってから、トシがオレを恨まないでいられるか。今のままの根性だったらダメだろうな。予想がつく。オレが三十回もダメを繰り返して、それでもダメだったら、衣畑(前回のムーンライトのマルス役。客演)の所へ行って土下座してやってもらわなくちゃいけない。ギャラ50万払って・・・その後は破産だ。」
「あと山田(隆幸・ライト役)も心配。ミスキャスト。ライトも重要。どうしても山田がダメだったら進藤(宏樹・カメラマン役)にやってもらう。インタビュアー。これもミスキャストだよな。綾(佐々木)、そんな感じ無いもんな。あとは前田(裕子)のジェーン・パウエル。オレはジェーンを悪役としてではなく、エイハブとは反対に尊敬を込めて描いている。プライドの塊。真っ向からエイハブと勝負!!前田よりも数段高めな人物。前田が尊敬できる人物だよ。」
ミスキャスト・・・。オーディションに臨んだ11人が、配役の発表を受け、その場の空気が互いに変わったのを感じた事だろうと思う。それは不穏な空気では無く、困惑の空気だったに違い無い。それぞれの想いが交錯して、自問自答を繰り返す。「自分にこの役がこなせるんだろうか?」当時を振り返り、山田はこんな感想を残した。
さらに内田の話は続く。
「きれいな公演にしていく訳で、その中でくさる奴がいたら出来ない。オレに色々言われていくにあたって、気力も何も萎えていくんだろうな・・・予想がついちゃう。分かっている事だけど、全員がへこまないし、くさらないし、恨まないし、プロフェッショナルな事にしていく。全員が変なマイナス思考を持たないと約束してくれ。」
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