『ムーンライト・リハーサル』の稽古が始まり、半月が過ぎようとしていた。・・・・が! しかし、進んでいない!!シーンが全く進んでいない!!ページにすると、なんとたったの2ページ・・・! 2時間の芝居の、初めの五分くらいのものだ!うぉ〜〜〜〜っ!!本当に本当に先が見えない・・・。
シーンは冒頭、劇中劇。爆撃に怯えるマルス(トシ)とマリア(明日香)。
「オレにコーラ投げられるのが恐いようだけど、マルスとマリアに落ちて来るのはコーラじゃない! そんな所にどんな気持ちで住んでいたと思うよ!?」
稽古場にはよくこういう激が飛んでいた。内田さんが演出中キレる時は、なんとなく(うわ〜〜やべ〜〜、もうそろそろ内田さんキレるぞぉぉぉ・・・)というのが空気でわかるのだが、その気配を感じると、隣に座っていたヤス(安田・舞台監督)が、内田さんのコーラのふたを、そーーっと閉めていたらしい。その後、内田さんがキレて、コーラや灰皿が吹っ飛んでいた。
この時の事を内田さんは後々で「(そーーーっとふた閉めてたこと)気付いてたよ。」と笑ってた。という、笑えるような笑えないようなエピソードが残ってしまうくらい、稽古は全く進まないでいた。
この時期、仕事も目に見えて増えてきた。頭の中は公演一色。お客さんに送るDMを作ったのもちょうどこの頃だ。こぼしたら大変なので、ジュースは離れた机に置き、ハジとハジを合わせてチラシを折る・・・。(このホームページを読んでくれている人の手にも、そのDMが届いてたとしたら、なんかうれしい気分だ。)
だけど、これ程までにシーンが進まないなんて・・・。これでこの先、ライト(山田/照明のヤな奴)で時間をとり、私(キャロル・斉藤/女性記者)でつっかえ・・・などとやっていくと・・・・・・。←その先を想像できない程、本当に恐ろしかった。多分、みんなそう想っていたと思う。
4月5日。午後1時、いつものように稽古場に到着。稽古着に着替え、ストレッチで体をほぐす。だがこの日、いつものようには始まらなかった。全員が集合すると内田さんが、「今から桜を観に行こう。」と言い出した。(はにゃ〜〜??)という感じだった。しかも(うぉーーしっっ! これから稽古だー!)と思っていたから余計だ。だが、内田さんはこう続けた。
「オレは演技と桜は似ていると思う。自分はきれいだ、なんていうのはなくて、ただただエネルギー一杯で咲いている。」
公演稽古が始まってから、演技がうまくいかない・・・進まない・・・で、時間ばかりがずうーーーーーっと、過ぎてきてしまった。その流れをどうにか変えないとだめだった。だから今日は気分一転させるためにも、桜に元気をもらってやっていこう!! ということだ。
稽古場からすぐの砧公園に着くと、目の前に、まるで天国に来たかのような、満開の桜だらけの景色が表れた。平日の昼だというのに、花見の人がうじゃうじゃいてちょっと残念だったけど、その人間たちの顔はみな明るく、陽気だった。
この時の感想をトシ(マルス/アーサー役)は後でこう書いている。
「桜は“大きい”と思った。静かにドーンとそこに立っていた。自分はただ力一杯花を咲かせてるんだ、という“強さ”のようなものを感じた。自分はなんて小さいのだろうと思った。」
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