稽古記録第三回【その4】
(1999/10/01)Up Date
私は時々プレイヤーズ・ハウスで演じるということを考える。厳しいけれど楽しい現場。いくつか他の劇団にもいたが、今の場所はひとつの私の理想なのかな?と思っている。そして、この公演を通じて、では役者が本来あるべき稽古場の姿って何なんだろう?と思った。私は、活気があって、役者はのびのびと稽古をするのが本当だと思う。今のトシにその姿はなかった。
それでもトシは頑張っていると思う。トシの稽古を見ていて、「最終的にはやってくれ!」と願うような気持ちで見ている。それは稽古を見ているみんなも同じだと思う。
この前、稽古後の自主トレの話を書いたが、トシもそれをやっていた。私は実際にその場所には居なかったから、これは聞いた話なんだけど、夜中中何度も同じシーンを繰り返し、明け方まで今日(昨日?)やったシーンを体に叩き込み、次のシーンの稽古をする。一緒に練習のサポートで付き合っていたナカジ(中島)、金ちゃん(金子)、ヤス(安田)、それと元劇団員の泉さんも大変だったろうと思う。トシは何日間も合宿のように劇団員の家に泊まりこんで、一緒に台本の解釈や、行動の研究、台詞のニュアンスの調整を、それこそ四六時中稽古をしていた。それでも稽古場でシーンは進まない。地獄だ。
私も前回公演の『最後の太郎』という芝居で“口上ヅトメ”という役をした時、それこそ鬼のように稽古をした。夜中、自分のシーンを部屋で練習していて、つい熱が入りすぎて電話が鳴っているのも気づかなかったり、口上の人の口調をモノにするべく、講壇や、浪曲のテープを片時も離さなかったりと、総ては自分のシーン、自分の演じる“役”を全うするべく頭がいっぱいにになっていた。
それでも私は本番でミスをしてしまった。気合を入れすぎて自分でも納得のいかない演技だった。今考えてもくやしいし、悔いが残る。今更こんなことを言ったって、本番は戻ってこないんだけど・・・。だから今回の“キャロル・斉藤”は絶対に落としたくなかった。
トシは・・・・・・・トシはどうなんだろう?
一方、内田さんのキツさもそうとうだったと思う。
稽古をつける時の内田さんは、時々感情的にサジェストする時がある。この稽古場ではよく見る風景なので、私たちはある程度慣れてしまっているかもしれない。時には聞いているこちらにもキツいサジェストもある。サジェストを受けた側のキツさもすごいと思うけど、それを言った後の内田さんのダメージを、私は(みんなも)よく見かける。激しいサジェストの後、ものすごい勢いで落ち込んでいく姿は、私の心にダイレクトに入ってきて、すごく胸が痛くなる瞬間だ。演出家という立場上、芝居を仕上げていかなければならない。特に今回のような演劇や戦争に対する内容の芝居は、中途半端な作品をお客さんに観せることは、絶対に、絶対に出来ないからだ。
しかし、役者たちがそのレベルまで演技の完成が出来なければ、激を飛ばしてもやってもらわなければならないのだ。誰も好き好んでキツい言葉を相手に掛けたりはしない。
だから、トシ自身にはキツいかもしれないが、公演自体のレベルを落としてしまうのはどうにも納得できないと私も思っていた。
<4>
稽古記録・第三回
<終わり>
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