神風

 


 風の、強い日だった。

 それははっきりと覚えている。
 今日みたいな風の日だったかもしれない。
 だが、この風は――大陸の風は乾きすぎていて。
 
 大陸の風は、故郷の記憶をたどるには、少し、足りない。

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 もうじき、秋になるかという頃だった。
 体育館裏の桜の樹が、葉の色を変え始めるかという頃。
 いつものように、部活にも行かず、京一は教室で惰眠をむさぼっていた。
「おい、京一」
 肩を何度もゆすられ、いやいや京一は顔を上げる。が、まだ目は半目だ。
「狂哉、か…」
 自分を起こしたのが同級の、眞崎皐哉だとわかり、京一は再び机にうつぶせる。
中途半端に起こされたせいでよけいに眠い。
「狂哉かじゃないだろ、京一。とっくにHR終わってるぞ」
「知ってるって…それくらい…」
「部活どうするんだ」
「ああ。あんなの俺がいなくたってなんとかなるって。いつも行ってねぇし…」
「お前、今何時かわかってるのか?」
「…放課後」
 頼むから寝かせてくれ。心からそう思った。頭上から降ってきたのは、呆れた
ような眞崎のため息。
「午後4時20分。外ももう暗いぞ」
「…マジ!?」
 あわてて京一は立ち上がる。確かに外も薄暗い。
「誰も起こしてくれなかったのか…薄情な奴らだな」
「お前が叩いても蹴っても起きなかったんだろ」
「――そういえば、なんでお前はこんな時間にいるんだよ」
 帰宅部の彼は部活動などとは縁がない。わざわざこんな時間まで、学校にいる
必要はないわけだ。 
「進路指導で呼ばれてたんだよ。マリア先生に。その後で犬神にひっかかって、
こんな時間」
「そういや、そんな時期だったっけ」
「そんな時期って…まるで他人事だな」
「他人事だぜ? 自分がそうだっていう実感ねぇし」
 さすがにこれ以上寝るわけにもいかず、京一は思いきり背伸びする。あくびと
一緒に自分の将来吐き出したような気がした。
「それで…狂哉はこれからどうするのか決めてるのかよ」
「とりあえずは、大学進学だって言っておいた。まだわからんけどな」
「いいよな、大学行けるような成績の奴は」
「…京一は試験の点の取り方が下手なんだよ。頭の回転がにぶいわけじゃないし、
コツさえつかんで真面目にやれば、そこそこはいけると思うが」
「――お世辞は結構。その『真面目にやる』ってのが俺は苦手でね」
「だろうな」
 眞崎が苦笑する。夏も要領よく補修を免れた彼だ。大学入試も難なくするりと、
要領よく入ってしまうのかもしれない。
「もっとも、今の状況で進路なんて言われてもピンとこないのは、俺も同じだな。
まだ…何も片付いてない」
「そうなんだよな…」
 今年に入ってから――ひょっとしたら、眞崎が真神に入ってから――自分たち
の回りで、不可思議な事件が続発した。今は一見何も起こってないように見える。
 だが、自分の中で何かがささやく声がするのだ。
 これは、つかの間の平和なのだと。
 それはきっと、眞崎にとっても同じことなのだろう。
「だから大学進学って言っておいたんだ。そう言っておけば、たいていの教師は
納得してくれるからな」
「で。大学ってどこか志望校出したのかよ」
 眞崎が大学に行く気があるようには、京一には思えない。大学まで行って何か
をしようという意志が、彼には感じられないのだ。
 ここに転入したときからそうだったが、彼は、他人の前で自分の感情を見せた
がらないふしがある。クラスの中での人づきあいはそれなりによく見えて、一見
しただけではそうは見えないのだが。
 生死を共にした仲間でさえそうなのだ。同じ時間、同じ授業を受けているだけ
の人間では気づきはしないだろう。
 謎めいた、別の言い方をすれば、何を考えているのかわからないというところ
が、眞崎にはある。
「一応、冷峰学院で出しておいた」
「冷峰…知らねぇぞ、そんなとこ」
「関西だからな」
 あっさりと眞崎が返す。もともと出身はそっちだというから、別に不思議では
ない選択だ。
「偏差値高いのか? そこ」
「中堅ぐらいじゃないか? いくら俺でもこの時点でいきなり上位を狙うほど、
無謀じゃないぞ」
「そうか…」
 なんだか自分だけが一人取り残されたような気がした。美里はしっかり自分の
進路を決めて進むのだろうし、小蒔もあれでなかなかきちっとした性格だから、
将来のことも考えているだろう。真面目な醍醐にいたっては言わずもがなだ。
「それで、お前はどうするつもりなんだ? 剣聖殿?」
 年のわりに、揶揄する口調が堂に入っている男である。
「考えてないわけじゃないけどな…。今は、まだ言えねぇ」
「もったいつけるほどの進路か?」
「さぁな」
 机の横にひっかけておいた木刀を取り、立ち上がる。
「まぁ、お前が勉強しに大学に行くなんて思ってはいないけどな」
「わかってるじゃねぇか」
「…自慢げにいうことか、それが」
 たしかにそうである。
「こう、考えることはないか、京一」
「ん?」
 悪戯っぽく、彼が笑う。妙に――楽しそうだ。
「俺たちがここに集まったのは、ほんの偶然の出来事で、目が覚めたらまったく
違う生活を自分がしている――」
「…何考えてんだ、眞崎?」
「時々思うんだよ。俺がやっていることは何なのか」
「らしくねぇぞ」
 即座に否定する。彼らしくない――京一の知る、普段の眞崎なら、絶対に言わ
ないような台詞だ。
「俺らしくないなんて、お前にわかるのか?」
「…少なくとも、俺の知ってる“眞崎皐哉”って人間は、そんな泣き言みたいな
ことを言う奴じゃねぇ」
「――そうか」
 だが、これは本人だ。鬼道衆が化けたものでも、何かに憑かれたわけでもない。
京一の研ぎ澄まされた直感がそう言っている。
 ――それなのに、この危険な予感は何だ。
 目線を合わせる気がしない。
「さっき、俺のこと“狂哉”って呼んでたよな」
「ああ。前いたとこでのあだ名だろ?」
「何で俺が“皐哉”でなくて“狂哉”なのか、話したこと――なかったな」
 そういえばそうだった。転入初日の挨拶、眞崎自身がそんな話をしていたのを
覚えていただけだ。
「俺は――一度火がつくと止められないらしい。だから“皐哉”じゃなく“狂哉”」
「『止められないらしい』?」
「人に聞いた話だからだよ。俺は覚えてないからな、そのときのこと」
「覚えてないって…お前、何かしたのか!?」
 長い前髪の下。鋭すぎる眼光だけが笑っていない。
「さあ。人死にが出たとか出ないとか、噂だけは流れたが」
「お前…」
 何故今それを話す。そんな必要はないはずだ。
「それ以来、ずっと考えてた。俺は何をしたいのか。だからさっきみたいなこと
も考えるんだろうな」
「お前は…お前だよ、狂哉」
 それ以外、言いようがない。
「俺にとっちゃ…お前はこの学校で一緒に騒げる友人で、同じ相手に戦ってきた
仲間だ。それ以外でも、それ以下でもねぇよ」
 ふっと、眞崎の表情がゆるんだ気がした。
「お前は…優しいな、京一」
 自分にしがみついてきた、両の腕。別に、振りほどかなければならないような
理由は京一にはない。
 ただ、あまりに唐突だったから驚きはしたが。
「どうしたんだよ、お前。なんかヘンだぞ、今日のお前は」
「…かもしれないな」
 心臓の鼓動がわかる。かすかに、彼の匂いがした。
「たぶん、また戻ったんだ」
「戻った? 何に?」
 眞崎が顔を上げる。言葉のような頼りなさは微塵もない、その表情。
 京一の耳元で、彼は小さくつぶやいた。

「さっき言っただろう? ――“狂哉”さ」

 背筋を――何かが走った。
 自分の耳に触れたのは――眞崎の舌か!?
「狂哉!」
「…お前がその名前で呼ぶからだぞ、京一」
 口調が違う。上着の下に入りこんでくる手を、なんとかして止めようとする。
「ちょっ、待て、――てめぇ、今自分が何してるのかわかってるのか!?」
「お前よりはずっとわかってる」
 首筋をつたう感触。未経験のそれに体が拒否反応を示す。
「お前、絶対わかってねぇぞ! 俺みたいな野郎にこんなことしてどうする気だ!」
「男相手でもできることぐらい、知識はないか?」
 肩を軽く噛まれているせいか、止めようとする手に力が入らない。眞崎の手が
シャツの下の肌に直接触れる。
「だから、俺にそういう趣味は――」
「この状態でそんなこと言ったって、説得力に欠ける」
 まずくるのは嫌悪感。その次にくるのは――。
 腰から力が抜けた。そのまま自分の机に腰掛ける体勢になる。
「――これで王手」
「狂哉――!」
 自分でもそれとわかるくらい、強く首筋にくちづけられる。それが唇にきたら、
舌を噛みきってやろうと思った。
「噛みつきそうな顔だな、まるで」
「…ここがどこだかわかってやってんのか、お前」
「都立真神学園高等学校三年C組教室」
「お前な…」
 理性のタガが切れているのなら、木刀で二三発殴ってやるのに。正気も正気、
はっきりと意識がある。それで――これなのか?
「誰か来たら、なんて言うつもりだよ」
「さあ」
 さっきまで京一の肌をまさぐっていた眞崎の手が、ゆっくりと腰に下りる。
「ちょっ、待てって――!」
 片手で、器用に眞崎は京一のベルトを外す。かすかな金属音の後、ファスナー
を下げる音が聞こえた。
 何のためらいもなく、両の足の狭間に伸びた手は、慣れた手つきで鎌首をもた
げはじめたそれにからみつく。他人に触れられたことのないそれは、あっけなく
その手を受け入れた。
 ゆっくりと、慣らすように動く手に、先に体が反応するようになる。
 空いた左手が背筋をつたう。頬に触れる舌も、京一を煽るようになまめかしく、
かすかにそれとわかるていどに動いている。
 机の上にいるためにその足は、なすこともなく宙に浮いたままだ。
「い、やだって…いっ…」
 息が荒くなる。体が熱い。こらえようとした言葉が艶めいた吐息にすり変わる。
 抵抗――できない状況ではないはずだった。
 両腕を封じられているわけではないし、すぐそばに武器もある。
 ――なのに。
「…いっ…あ…」
 こらえきれない声が、喉の奥から漏れる。
「声を出したら、誰が来るかわからんぞ」
 薄暗い教室に響く自分の声。この時間なら、三階中に響いているだろう。誰か
――まだ校内に残っている人間がいるのか。
 誰が来ても――誰か来てもおかしくない状況なのだ。
 ふと、顔を上げた眞崎と目があった。熱っぽい行為とは無縁な、その冷めた目
に、思わずまた目をそむける。
 眞崎の右手は相変わらず緩慢な動きを繰り返していた。その、単調にも思える
動きのせいで、京一の体から力が抜けていく。
「や、めろ…きょ…う…!」
 かすれがすれになった声。
 不意に眞崎が手を離す。突然の解放に戸惑ったのは京一の方だった。
 かつぐように上げられた脚。その付け根を嬲るように添えられた手。
「な…」
「やめて、ほしいんだろ?」
 呼吸を整えることすらままならない。早くなった鼓動を戻すことも。
「……」
「人が来たらまずいみたいだしな」
「……」
 自分を見上げる、さっきと同じ、その冷めた瞳に煽られる。
「卑怯、だろうが…てめぇ…」
「そうか?」
 表情がない。相手を抱いているとは思えないようなその顔。
「俺ばかり楽しんだみたいだしな。このあたりでやめた方が――」
 右の中指が、硬い屹立を撫で上げる。
「…っ――」
「――お前にいいかと思ったんだが」
 自分は今何をしている?
 まるで女のように息を乱れさせて、男の前で脚を広げて。
 これでは――。
「どうする…と、聞くだけ無駄か」
 腿の内側を舌が這う。それだけで、過敏になっていた体は反応した。
「…あっ…」
 先走った蜜と体液で濡れた手が、また緩慢に動き始める。その濡れた感触が、
さらに快感を増す。
 腰を抱いていた左手が背中へと移り、背筋をすっと上がっていく。鳥肌がたつ
ような感覚に身を震わせながら、なんとか机についた手を動かすまいとする。
 すべてを探っていくかのような手の動きに翻弄されながら、必死で京一は声を
殺す。――全部をこらえることなど、初めから不可能に近かったが。
 眞崎の手が一瞬離れた。その次にやってきた、未知の感触。
「い、あぁ…!」
 こらえるはずの声が喘ぎになる。
 かつぎあげられた左足。その付け根を貪り動くもの。
「そん、なとこ…」
 さっきまで指が動いていたところを、今度は舌が這っている。
 口腔の中に収められ、吸い込まれるようになったかと思えば、その舌が先端を
じらすように撫でる。痺れるような感覚に、両足がふれた。
 淫らな音――おそらくわざと音をたてている――と、舐め上げる舌に我を忘れ、
上気した顔で眞崎を見やる。
「だ、めだ…って…きょ…」
 頭の中が――真っ白になっていく。
 指先が震えた。
 京一の体が大きく跳ね、その先端から、熱を帯びた体液がほとばしる。
 それは、外界に出ることなく、眞崎にすべて――飲み干された。

「狂――哉!」
 かろうじて息を戻した京一は、紅に染まった頬のまま、眞崎をにらむ。
 口元に残る京一の残滓をぬぐいながら、眞崎がだるそうに顔を上げた。
「どうした」
「お前――今!」
「汚すわけにもいかんだろう。お前の机だ」
 こともなげにそういうと、黒いカードケースのようなものから何かを取り出し、
口にくわえる。それが何かわかったのは、彼が、それを自分のものにあてがった
ときだった。
 そして眞崎は、再び、まだ火照ったままの京一の体に手を伸ばす。
「狂哉!」
 聞く耳持たぬとばかりに、達したばかりの部分を煽る。
「やめろって…」
 上着を引きずり下ろされ、左手でシャツをまくしあげられる。曝された上半身
を動いていた舌が、胸の突起をとらえた。転がされるようにそこをなぞられて、
また体が震えだす。
「…きょ、う…」 
 強く、噛んでいるかのように強くくちづけられた胸。
 獣のような目で京一を見上げ、眞崎はさっき取り出したものと同じのをくわえ、
片手で袋を破る。
「…学校だと、後が面倒なんだ…」
 本当に面倒そうにつぶやきながら、彼はゆっくりと手を動かす。かすかにたち
始めた京一の体にそれをあてがう。
 直接触れることのなくなったそこに、再び刺激を与えられ、京一の吐息が乱れ
始める。鎮まることなく煽られた体は、なおいっそう貪欲に快楽を捕らえようと
敏感になっていく。
 苦悶にもとれるような京一の声にもかまわず、眞崎は情欲のかたまりと化した
部分を嬲る。その指が、さらに奥へと動いた。
「狂…哉、そこは…」
 それが何を意味するのか、本能的な部分で察し、京一はさすがに抵抗しようと
試みる。だが、引きずり下ろされた上着が枷になり、腕を動かすことができない。
 ゆっくりと。だが圧迫感を与えながらそれは入ってきた。
 声を出すことすらできず、京一は息を飲む。
「力抜いてろ。その方が楽だ」
「って…」
 指の付け根まで入ったそれは、内部を確かめるように動き出す。異物感に京一
が身を震わせると、眞崎がそれを押さえつける。
「や……だっ…」
 いびつな痛みに途切れた声。内部を散々に蹂躙する指。
「――いっ…!」
 抜かれたと思った指が、再び入ってくる。今度は、新たな指を加えて。
「きょう、やっ…」
 中で動く指に煽られ、鼓動が早まっていく。捻りこむような乱暴な指に、何度
も京一は息を止めた。
 指を抜き、眞崎は京一の上着を戻し、腰をつかんで抱き寄せる。すでにもう力
の入らなくなっている体は、いともあっさりと彼の手に落ちた。
 京一の体を反転させ、背中ごしに眞崎は京一の胸を愛撫する。
「さっきも言ったが…力抜いておけ。後でくる」
 冷めた声も、耳にあたる吐息は熱い。
 後ろであてがわれるものが何なのかわかっていながら、抵抗すらできなかった。
「うっ…あぁ…」
 強引に侵入してきたその痛みで涙がこぼれ、自分の中に他人がいる違和感が、
体中を駆け巡る。限りなく不快に近い感触に耐えようと、机の上に両手をついた。
 長身の眞崎に後ろから抱かれているせいで、腰が半ば宙に浮き、かかとが床か
ら離れる。その半端な浮遊感が、結局京一の体を昂ぶらせた。
 眞崎の手が自分の屹立に伸びてくる。汗ばんだ体を確かめるよう、もう片方の
手は京一の上半身をまさぐり続けて。
 前後から嬲られ、息も絶え絶えになりながら、京一は小刻みに走る震えを抑え
ようとする。それを許さぬとでもいいたげに、眞崎が動く。際限のないループだ。
 自分の中で硬さを増したそれに翻弄され、喉の奥で言葉にならない声を紡ぐ。
 京一の唇を割って入ってきた、整った指。口腔を犯す指に舌をからめ、自分の
声を封じようとする。
「…っ…ぁ…」
 眞崎の腰が、京一の中の一際深いところまでとらえるかのように動き、右手が
絶頂を導きだすように動きを早める。
「いっ…もぅ…きょう…」
 一度達したはずのものとは思えぬほど、硬く、屹立したそれを嬲られ、京一は
限界を訴える。
「イキたいか?」
 耳にかかる声にすら反応する体。のけぞったまま、京一はうなずいた。
 淫靡な音とともに腰を抱かれ、最深部まで貫かれる。自分を嬲る手の動きが、
さらに凄みを増して。

 自分の中で頂点に達した眞崎の感触と同時に、京一のそれも絶頂に達し。
 ――そして、意識が霧散した。






 …ゆっくりと頭を振る。まだ意識が朦朧としていた。
「――気がついたか」
 着衣の乱れすらなく、平然と眞崎が言う。
「てめぇ…」
 吼えかかるような声の京一のつぶやきに、いきなり眞崎は笑い出した。
「…何がおかしいんだよ!」
 肩を震わせて、笑っている。妙に癪に障る笑い方だ。
「いや、怒ってるわりには、ずいぶん楽しんでいたと思ってな…」
「てめぇ…って奴は…」
 立ちあがり、殴りかかる――つもりだった。
「だから言ったのにな、後でくるから力抜いとけって」
「……」
 床に膝をついたまま、木刀を杖代わりにして京一は眞崎をにらみつける。
「そんな顔しなくても、服装も整えたし、後始末もしておいたから、安心しろ」
「そういう問題じゃねぇっ!」
 だいたい、この手慣れぐあいからして気に食わない。いったい何者なんだか、
この男は。

「君たち…何をしてるんだ?」
 野太い男の声がした。あわてて京一が振りかえる。
「すみません。明日の授業で使うプリントを忘れたもので」
 しれっとした顔で答えたのは眞崎。
「もう遅いぞ。何時だと思ってる」
「すみません」
 本気で謝る気などないときの口調であることに、当然京一は気づいている。
「とにかく、早く帰れ」
「わかりました。ほら、京一」
「あ、ああ」
 …何でこんなに平然と応答できるんだ、こいつは。
 ひょっとしたら、自分はとんでもない人間を相手にしていたのかもしれないと
今更になって思った。

 外はもう暗い。完全に夜になっていた。
 校門を出ると、一気に風が強くなる。
「…次にあんなことしたら絶交してやる」
 他人から見れば子供のすね顔と変わらないような表情で、京一がつぶやく。
「安心しろ。二度とやらない」
「保証できるのかよ」
「天地神明に誓ってもいいな」
「誓われる方が悲惨だろうが」
「それもそうだ」
 笑っている眞崎は、『いつもの』眞崎皐哉で。
「きっと…お前もここを卒業したら、俺のことも忘れるだろうしな」
「ちょっと待て、どういう意味だよ」
「文字通りの意味さ」
 少し悲しそうに笑う、その笑い方も、いつもと同じ彼のもの。
「…今日はいつもより運動したから、ラーメンでも食うか」
「…そんな気になれねぇよ」
「おごるぞ」
「――味噌ラーメン。大盛りな」
「了解」
 
 いつものように笑って、いつものように歩き出す。
 風だけが、強く、二人の髪を乱していた。

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 あれからもう、二年が経つ。
 京一は日本を離れ、大陸に渡っていた。
 ふと気まぐれに出した、真神の仲間たちへの手紙の返事から、皆のだいたいの
進路はわかっている。

 ――ただ一人、眞崎をのぞいて。

 彼がどこへ行ったのか、仲間の誰も知らないと言う。大学に行ったというわけ
でもないらしい。犬神から伝わった話によれば、彼は入学試験当日、入試を蹴り、
どこかへ行っていたらしいということだった。おそらく、東京を離れたのだろう
とも。
 
 もう一つ、不思議なことがある。
 真神の同窓生の誰一人、眞崎を知る人間がいないというのだ。知っているのは
あの戦いを一緒に戦いぬいた仲間と、それを知っている一部の人々だけだ。
 名簿にも、眞崎の名前はなかったらしい。

『きっと…お前もここを卒業したら、俺のことも忘れるだろうしな』
 彼の言葉を思い出したのは、そのときだった。
 たぶん、忘れるように仕向けたのは彼なのだろう。
 だが、自分と仲間たちの絆までは、さすがの彼も断ち切れなかったらしい。

 彼は生きていると信じている。
 あの男が誰も知らないところで死ぬような奴なわけがない。

 西風が、髪を揺らす。
 この乾いた風が巡り巡れば、海を越え、日本までゆけるだろうか。


 そんなことを考えながら、京一はあの日のように大きくあくびした。


 


 

女優だぜ、京一。おうら、熨斗つけてやるぜ、伍號。
俺のエロは長いという大原則に、忠実に従った結果になったぜ畜生。
しかも半分近く(以上?)エロだぜ。恥との戦いだ。けけけ。←コワレ
なんか君に捧げるのは、いつも俺の中でもエロ度高いものばかりのような気がするんだが。
平仮名だと、俺の主人公も君の主人公も「きょう」なんだな。今気づいたよ。
これ、途中でかなりノってきたときにいきなり2回も『強制終了』くらいました。
イイカンジのエロシーンだったのに…おかげで打ち直しだったぜ、まったく。(セーブデータナシ【悲】)
一つわかったコトがある。それは、京一は脱がせる楽しみが少ない。 ってことだ。これ意外と重要らしい。

ああ、とりあえずコレ、返品不可な。京一は。

しかしうちの主人公ダメダメだね…。

 

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