菩薩銃・マキシマム セカンドインパクト

 

「うふふ」

 あらゆるものに災厄は等しく振りかかる。
 驚愕せよ。そして恐れよ。
 汝が頭上に抱くもの、その名は天。
 天より来る災いに、人は逃れる術を持たぬ。

 新宿。帝都東京の中心地の一つ。
  そこにセーラー服の高校生が一人歩いていたところで、誰も気にはとめるまい。
 彼女が、世界でも最強の『菩薩眼』であることなど誰も知らないのだから。
 とりあえず、何も知らない一般ピーポーな人々にとって、彼女は何か思案げな
顔をした美人でしかないだろう。
 …それだけなら、どれだけ平和だろうか。前回の物語を知る者は、そっと心の
中で想いをはせるのみである。(犠牲者に黙祷3.5秒←短けぇ!)

「困ったわね…」
 泣く子も(怯えて)黙る菩薩眼、天下無敵の美里葵はいつものポーズで立ち止まる。
「新宿ということしかわからないなんて…。学校帰りに着替えるようなことはしない
はずだから、真神の制服を探せばいいけれど…」
 とはいうものの、この人の多い地区で人一人探すというのもかなりのものだ。

 ――だったら、減らせばいいのかしら。

 麗しき微笑がひらめいた。
 自らの招く悲劇を想い、彼女は嘆きの微笑と共に天を仰ぐ。

 さようなら、思い出の人々。
 熾天使(セラフ)よ、私を守りなさい。


(元ネタわかる人ごめんなさい。作者は反省してます。きっとまたやります)

####                  ####

「ずいぶん人通りが少なくなったわね…。何かあったのかしら」
 彼女はゆっくり辺りを見渡す。
 先程とはかなり情景が違っている。なにやら看板がアスファルトに刺さっているし、
倒れている人もいる。可哀相なサラリーマン。労災降りるといいね。

「君、君は無事か!?」
 救急隊員らしき男が美里に声をかける。

「はい…。あの、人を探しているんです。黒の学生服で、胸に校章の入った、前髪の
長い高校生なんですけど」

 どこから見ても、友人を案じる学生である。隙がない。

「犠牲者の中にはいなかったが。何か爆発物が爆発したらしい。ここは危険だ。早く
ここから離れた方がいい」
「はい…ありがとうございます」

 恋する乙女の前に、醜き男達の悲鳴など届くはずもない。
 所詮、大事の前の小事である。

「なんや、何が起こったんや!」
 聞き慣れた声に、美里が振り向く。眞崎たちと比べると少々小柄な青年。
青龍刀を背負った明らかな銃刀法違反者の高校生。
「劉さん。…よかった」
 一瞬、その眼の底が鋭く光ったのに、陽気な客家人は気付かなかった。
 ――それが、幸せというものである。

菩薩眼ターゲット・ロックオン。目標bS・劉弦月。

「なんや…テロでもあったんかいな。えらいこっちゃなってんなぁ…」
「ええ…。何かが爆発したって…」
「えらいこっちゃ…なんやいうても、人死にはイヤなもんや」
「そうね…」
「ねーちゃんは、怪我はないんか?」
「私は大丈夫。なんとか無事みたい…」
「よかった。ねーちゃんが怪我したらアニキが悲しむからな」

 そう。いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも、
皐哉につきまとっていたわね、貴方。

 ――邪魔なのよ。

「そんな…」
「いや、ほんまやて。アニキは仲間のことすっごく大事にしとるやろ。
柳生のせいやないにしたってな」
 
 あたりまえよ。だって彼は黄龍の器、私の運命の人ですもの。
 貴方のような単純馬鹿とも違うのよ。それくらいはわかっているのね。


「そういえば…。皐哉は一緒じゃないの?」
 京一の最後の言葉を思い出し、軽く首を傾けて見せる。
「アニキ? アニキなら桜ヶ丘の方行くって、さっき別れたとこやけど。
暗殺者の兄ちゃんと一緒に」
「暗殺者?」

 鋭く反応する、『キラーアイズ』菩薩眼。
 
 ――壬生だ。
 菩薩眼・滅殺リストbTの。

「なんや、用でもあったんかいな」
「ええ、とっても大事な用なのだけれど…」
「そんなら今から追っかけてったら向こうで会うんちゃうか」
「そうね」

 (うふふ)

 声無き笑いは、当然ながら劉の耳には届かない。
 

「その前に、一つ簡単な用事をすませないといけないわね」

 おめでとう、劉弦月。君は素晴らしい地雷を踏んだ。

「用事?」
「ええ。簡単な、たいした用事じゃないけれど」
「ほんならワイが手伝ったろか?」
「本当にいいのかしら」
「気にせんといてぇな。同じ仲間やないか」

 貴方、本当はいい人かもしれないわね。
 でも私の運命の恋の成就のために、礎になって頂戴。


 炎の天使が、降臨した。 


 ――なんや…何が起こったんや…? 
 剄の使い手だろうが何だろうが、圧倒的な力の前には無力だ。

「ありがとう。用事が片付いたから桜ヶ丘に行かないと」
 さようなら、これからは邪魔しないでね。 

 足元には青龍刀を背負ったエセ関西人が倒れふしている。
 悶死、という言葉が一番ふさわしいであろう。
 新たな犠牲者、劉弦月。彼も菩薩眼の前には塵に等しかった。

「それじゃあ」
 恋する乙女はこれからも疾走する。すべては愛の言葉のもとに。
 
 ――待っていて。運命の女が貴方のもとへ行くから。
 
 彼女の恋が後何人の運命を狂わせるのか。
 そんなことは、誰にも予想できない。
 ただ一つわかっていること。それは。
 
 彼女の笑顔が輝くとき、人は絶望を知るということだけだ。
 そしてこれからも。彼女の声は人を恐怖に落とし入れるだろう。
 その、あまりに美しい声をもって。


『うふふ』

 


 

そのまま勢いで第2章へ。行くなよ自分。
成仏してくれ劉。お前に罪はない。あるとしたら墓殺癌に愛を覚え始めた俺。
次の犠牲者は、『可哀相キャラ』ということで黒崎隼人、君だ。ご愁傷様。
この調子で続きます。続けるなと言われてもやる。

 

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