国内最悪 基準値8100倍のダイオキシン  

◆荏原製作所藤沢工場が引地川へ排出

  ポンプなど排水処理装置メーカー大手「荏原製作所」の藤沢工場(藤沢市本藤沢)の工場排水が流れ込む都市排水路から、ダイオキシン類対策特別措置法で定められた河川水の環境基準(一リットル当たり一ピコグラム=一ピコは一兆分の一)の最高八千百倍に相当する極めて高濃度のダイオキシンが検出されたことが二十四日、県と藤沢市の調査で明らかになった。県は同日までに排出源が同工場の可能性が高いと判断、同社もこれを認めた。県は原因とみられる工場内の焼却炉施設の運転を停止させ、排水を止める措置を取った。排水路は近くを流れる引地川につながり、汚染物質は相模湾に流れこんでいた。
  県大気水質課によると、藤沢市が一月二十六日と二月十六日に行った水質調査で検出されたのは、それぞれ一リットル当たり三二〇〇ピコグラムと八一〇〇ピコグラム。同工場と、市内を通って相模湾に流れ込む引地川を結ぶ稲荷雨水幹線から採水した。同特別措置法で来年一月から適用される工場排水基準一〇ピコグラムでも、最高八百十倍の高濃度に当たる。
  県と藤沢市が今月二十三日に立ち入り検査した結果、工場内で出た木くずやプラスチックを焼却している焼却施設で不適切な排水処理が判明。焼却の際に出た排煙を水で洗煙(浄化)しているが、この水が本来の汚水管ではなく雨水管にそのまま流れていた。焼却施設からは日量三トンを流している。洗煙後の排水は本来、自社システムの汚水処理を経るはずが、配管そのものの位置がずれていた。問題の焼却施設は一九九三年に設置されており、県では早くから配管ミスがあった可能性もあるとみている。
  県と市では、排水管以外にもダイオキシンを除去する焼却炉のフィルターのメンテナンスが適切だったかどうかなども調べ、原因の特定を急ぐ。同社に対し焼却炉の停止と配水管の整理を命じ、同社では二十四日朝から焼却炉の運転を停止した。

 
 

  環境庁の一九九八年度全国ダイオキシン類緊急全国一斉調査で引地川の富士見橋付近で採取した水から、全国の中でも三番目に高い三・五ピコグラム(二回調査の平均値)が検出されたことから、上流にさかのぼる形で県と市が原因究明に当たっていた。
高濃度のダイオキシンが検出された雨水幹線と引地川の水は、ともに飲料水などには用いられていない。住民や魚介類などへの影響はについて、流石征治県環境農政部長は「引地川では大きな数値は出ていない。原因調査の結果が出るのを待って、周辺の影響調査も着手したい」としている。

◆万全の対策を取る
荏原製作所の松浦孝一機械事業本部常務取締役は「焼却炉の排水を誤って雨水管に流していた。ダイオキンシンを含んだ排水を排出していたことは間違いない。おわび申し上げたい。大事に至ったことを反省し、住民の皆さんの不安を取り除くため、今後、万全の対策を取っていきたい」と謝罪した。

●荏原製作所 ---- 渦巻きポンプの製造会社として1920年、設立。ポンプ主力では国内最大手。99年3月期決算は売上高4426億円。経常利益4億1千万円。従業員数約5300人。「水と空気と環境」にかかわる企業として広く社会に貢献することを社是としている。藤沢工場は1965年、汎用ポンプの量産工場として稼動開始。ポンプの生産工場としては世界最大規模で同社グループの主力工場。面積は約35万平方メートル。新素材などのハイテク技術を中心とする精密・電子機器製造やバイオ関連技術の拠点にもなっている。98年8月には「生活環境の保全等に関する県条例」に基づき、環境管理事業所として認定されている。公式ホームページでは、同社藤沢地区の環境方針として「環境保全にかかわる継続的改善、汚染の防止に全員で取り組む」など5項目を掲げている。本社・東京都大田区羽田旭町。

神奈川新聞より