意見書


平成11年4月5日
(財)2005年日本国際博覧会協会さま


2005年日本国債博覧会に係わる環境影響準備書への意見

 この度同時に告示縦覧された、2005年日本国際博覧会(愛知万博)と名古屋瀬戸道路・新住宅市街地開発(関連事業)の環境アセス準備書は、1997年BIE総会において開催権を得た愛知万博のすがた、【開発を超えて】、【自然との共生】を理念にした環境博というイメージを根底から崩した。「跡地利用」としての住宅開発が実は先にあって、先ずその予定地を造成して、一時的に万博の会場に使うという、いわば万博は開発のための大義名分とされていたことがはっきりしたからである。

 予定地の海上の森がその地理的要因とともに、貴重な植物群や動物群から構成されるゆたかな生態系であり、地元の瀬戸市のみならず215万都市名古屋郊外の里山として、いかにかけがえのない自然であるか、上記事業がいかなる環境破壊をもたらすかは、既に物見山自然観察会や日本自然保護協会など多くの人々の手で明らかにされている。環境博覧会のイメージに隠されていた感のあるこの住宅開発が、この森と里山を引っぺがすように行なわれれば当然予想されることであり、新住宅市街地事業の準備書が「開発の影響は明らか」と自ら認めている以上、いまさら何を言うこともない。

 『代償措置』といわれるものが、言葉通りの代償になるはずもない。
こうした開発のあり方が主流であった時代の計画を、一方で時代の要請に応えるポーズを取りながら、他方ではそのまま押し通そうとしても許されない。とくに1997年以来の大きな状況の変化として、以下の2点を考えるべきである。

@ BIEが日本に開催権を与えたのは、20世紀型の開発のあり方を超えて、21世紀型の「持続的開発」への展望を開く「環境博」を必要とし、「自然との共生」という愛知万博の提案に期待したからである。したがって、今日本(愛知)が選択できる道は二つしかない。ひとつは「環境博」、住宅開発のための看板としての虚像であることを認めて開催権を辞退返上することであり、あるいは、世界への約束を重視して、虚像を実像に変えるために開発計画の全体をご破算にして、博覧会構想と共に見直すことである。
A もうひとつは、名古屋市と愛知県が進めていた、名古屋港の藤前干潟のゴミ埋立計画が断念され、環境保全の歴史上画期的な干潟の保全が図られたことである。当面の代替策は未確定ながら、名古屋市は「非常事態宣言」をして、『先進的なゴミ減量都市』をめざす取組みが始まった。究極の目標として埋立処分場を不要とする都市づくりこそ、「環境博」のテーマでもある『ゼロ・エミッション』の実例として、博覧会のひとつの目玉になるべきである。

私たちは、21世紀へ向けての「環境博」を実像にするための代替案を提出する。
以下に添付する、新たな環境博の構想は、地球の歴史と、人類史上の研鑚と果実、東西分化の融合を視座に置いた、3000年紀の幕開けにふさわしい、あたらしい未来への希望をもたらすものと自負するものである。

添付書類

1. 藤前干潟の保全決定を受けてのあらたな環境博(2005EXPO)の構想(概略)
2. The WEST5 Wisdom Networked 2005 World Exhibition.

以上

以下、添付資料ー1(図を除く)

1999年4月5日
藤前干潟の保全決定を受けての
あらたな環境博(W5 EXPO 2005)の構想(概略)

はじめに

 海上の森は、矢田川・庄内川を通してつながる、藤前干潟の源流の森である。
それは、『森は海の恋人』で明らかにされた、干潟や海の生物にとって生育のために必要不可欠の鉄分が、広葉樹林の落ち葉の堆積下でつくられるフルボ酸鉄によって得られるという意味で必須の母なる森であり、いのちのつながりの輪にあって、海の幸、山の幸を得て暮らす人々にとって、子どもたちの情感や魂をはぐくむ、215万人の工業都市名古屋の水辺であり、里山であるという意味で、ともにかけがえのない都市のオアシスである。

 2005年の開催権を得た愛知万博が、世界に約束し、期待されている【開発を超えて】と、【自然との共生】をメインテーマにする環境博を、「環境破壊の20世紀」から「持続的発展の21世紀」への転機とするために開こうとするなら、これほど格好の舞台とタイミングは他にないだろう。

 折しも、環境博の理念を体現し、その大きな目玉のひとつになるべき藤前干潟の保全が決定し、名古屋市は『先進的なゴミ減量都市』、ゼロ・エミッション社会をめざして動き出した。

 いまこそ、海上の森という里山の自然から、藤前干潟と伊勢湾の海につながる生態系の、生命のつながりを活かした都市のあり方が、世界のGDPの1.2%を支える愛知の首都市であり、デザイン都市を標榜する名古屋の、環境都市としてのグランドデザインが再構築されるときであり、私たちの「WEST5 2005 EXPO」は2005年の環境博を、天与の機会として活かそうとするものである。
 そして、「WEST5 2005 EXPO」は、単に瀬戸市や名古屋市、愛知県の利益にとどまらず、愛知・岐阜・三重の中部圏、日本とアジア、そして世界に寄与することを視座に置いた、21世紀と3000年紀への人類のメッセージを伝える舞台なのである。


「WEST5 2005 EXPO」:あらたな環境博の会場構想

(地図と会場構想概念図)


藤前干潟保全決定を受けてのあたらしい「愛知万博」代替案

2005年「愛知万博」を、歴史的な「環境博」に

「森は海の恋人」−海の生命に不可欠な広葉樹の森
里山と干潟は人の暮らしとの接点

海上の森と藤前干潟は
215万都市名古屋と中部圏のオアシス

――21世紀の環境博テーマ 「開発を超えて、自然との共生」――

海上の森と藤前干潟を二つの目玉として、観てもらうこと、
その保全のために、共生の理念や循環型の社会システムが
どう具体化されたかを見せることこそ、工業技術圏中部と
環境都市名古屋が世界の期待に応えるいま一番の役割

「過去」(20世紀型開発)――>「未来」(21世紀の持続型社会)へ転換する舞台

第1会場:瀬戸市周辺
海上の森
エコ・ミュージアム
瀬戸セラミックパビリオン

第2会場:名古屋市名古屋港周辺
藤前干潟
西5区:ドルフィンタワー歴史と文化パビリオン
ポートアイランド:ゼロエミッションモデル
木曾岬干拓:エネルギーパーク


詳細は
[The West 5 Wisdom Networked 2005 World Exhibition]
W5(WEST 5)
―第3千年紀(21世紀)への新しい都市のビジョン―

2005年「愛知万博」を歴史的な「環境博」に

●守られた海上の森を歩く、
・森と里山の文化を守って、「自然と共生し、自然の叡智に学ぶ」
・里山の技術を再興し、都市住民の憩いの里として生かす
・森そのものを自然史博物館とする「エコ・ミュージアム」

●守られた藤前干潟に入る、
・臨海工業開発で 95% を埋めた伊勢湾最後の干潟をサンクチャリに、
・日本最大のシギチドリ渡来地、ラムサ−ル条約の国際的重要湿地
・春と秋の渡りの最盛期をカバーする開催期間
・干潟探検隊、干潟の学校、生きもの祭りで子どもたちにセンス・オブ・ワンダー


●干潟と里山の保全を実現した社会システム、自然との共生技術を見せる
・ ゼロエミッション、資源循環型ゴミ処理システム
・ 森と湿地の再生、針葉樹林を広葉樹林に、干拓地に干潟の復元
・ 自然の力を活かした環境復元、ソーラーシステムなどの開発

海上の森と藤前干潟は、水源の森とその河口干潟として、深くつながっています。
共に私たちに身近な、かけがえのない自然であり、子どもたちがそこで育まれ、
渡り鳥によって世界の人々と心を通わすことのできる国際的な自然遺産「地球の宝」です。
ここに起きようとした開発やゴミ埋立の問題は、20世紀潟開発がもたらした
地球環境が危機の典型でした。
自己利益誘導型の開発至上主義と、垂れ流しと使い捨てで環境を圧迫してきた、
普遍的な20世紀の都市や社会のありようを象徴しています。


★ [WEST52005 EXPO]は、20世紀型社会への根本的な対案です。

自然と真に共生し、循環を基調とする社会システムをもった環境都市(エコシティー)を、世界の人々の参加を得て実現することこそ、「開発を超えて、自然との共生」をテーマとする環境博のメインイベントであり、その舞台には、行政主導開発で造成されながら、四半世紀も放置してある名古屋港西5区(West5) や、木曾岬干拓地こそ、もっともふさわしいでしょう。

それは、地球の、いのちの痛みを深く受け止め、20世紀型の開発、有限の資源・環境を浪費してきた人間社会のあり方を省みながら、海上の森での万博構想や里山開発、藤前干潟のゴミ埋立計画の代替案であると同時に、こうした不偏的な問題解決のために、人類の智慧と想像力をここに集めて、地球生命の持続的生存を実現する人間社会のあたらしいあり方を創り出す、21世紀へ向けての世界的規模の挑戦になるでしょう。

WEST5 構想の利点

・ 海上の森里山の森350ha.を保全し、都市のオアシス、として活かせる
・ 里山の生態系そのものが「自然史博物館」として「環境博」の目玉になる
・ ムダなアクセス道路や一過性の宿泊施設を用意する必要がなくなり、
安上がりにできる。

・ 藤前干潟をラムサ−ル登録地にして、東アジア渡り鳥航路をまもれる
・ 「環境博」のもうひとつの目玉として、海上の森とセットにして、内外からのエコツア−の場にできる

・ 伊勢湾の海上交通などにより、愛知・三重・岐阜からのアクセスも良くなる
・ 一過性イベントの宿泊施設に、伊勢湾の海上ホテル(船舶)がつかえる

・ 過去の無意味な自然破壊の象徴である未利用の埋立地や干拓地を有効利用して、自然環境の復元や、ゴミ問題への究極解答を用意した社会システムとして、「環境博」の目玉にするだけでなく、21世紀のモデル都市として活かせる


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