流出油の分解効率化 微生物と栄養分一体に 工業技術院が新技術 Jan.13.1997 日経

 工業技術院は、海洋に流出した石油を微生物を使って浄化する新たな技術を開発した。石油を分解する微生物と栄養分を小さな浮きと一体化し、海上に散布する。微生物の栄養補給を助けて流出油の分解を促進する。これまで効果が薄かった栄養源の乏しい外洋でも適用できると見て早期の実用化を目指す。

開発したのは工技院の四国工業技術研究所と生命工学工業技術研究所。浮きは直径約1センチの球体で、海上に浮かべて流出油を効率よく取り込み、付着させた微生物に分解させる。

浮きは生分解性材料を使用。海上に浮くように鶏卵を添加して発泡させた後、窒素やリンを含んだ栄養分を混ぜて固化し、表面に石油を分解する酵母を吸着させる。鶏卵は酵母の栄養分になる。

人工海水に精製油のテトラデカン1.5グラムを垂らし、開発した浮きを1グラム分投与して春秋の海洋環境に合わせて室内の模擬実験をしたところ、3日後には油を全て吸収した。14日後には油の60%を分解できたという。

今後は海水温や波の状態、油の量や粘度などの条件を様々に変えて実験する。タンカーなどから流出する重油には適用できないが、重油を分解する微生物を使えば同様の方法が使えると見ている。

微生物による生態系の自浄作用を活用する従来の石油浄化技術は栄養分の濃度が非常に低い外洋ではこれまで効果があまりなかった。

微生物と一緒に栄養分を散布しても、微生物が栄養分を効率よく補給できないことが課題だった。


[資料室] [調査日誌] [ご意見・情報交換BBS] [Back]   [Home]