戻る    ドクター高岡の健康ルーム
           医師 高岡 寛  (葛飾生活と健康を守る会顧問)
  【高血圧症】 
 生活習慣病の一つである高血圧症について。まず最初に血圧について説明致します。
 心臓は、血液を全身に循環させるためのポンプの役割をしていますが、血液を流すためには、動脈は圧力が必要です。そして、心臓が収縮して強い力で血液が大動脈に押し出される時の動脈の圧が一番高く、最高血圧(または収縮期血圧)といいます。
 その後、動脈圧は次第に下がってきて、一番低くなったときの血圧を最低血圧(または拡張期血圧)といいます。
 血圧測定は、この二つの圧を測定するものです。血圧の最近の基準値は最高血圧(収縮期血圧)が130以下、最低血圧(拡張期血圧)が85以下と、以前より厳しくなっています。この二つのどちらかの血圧が高くても良くないのですが、両方とも高い場合は、更に良くありません。
 健康な人でも体を動かしたり緊張しますと、生理的に血圧は高くなります。また、例えば健康な人に強い負担の運動をさせながら体力測定をしますと、最高血圧が250を越す場合はざらにあります。しかし、こう言う生理的な高血圧は高血圧症とは言いませんし、怖くはありません。
 高血圧症が怖いのは、遺伝的に高血圧になりやすい素質を持った人が血圧が高くなるような生活習慣を長い間続けますと脳・心臓・肝臓・眼の奥にある網膜などの動脈の合併症をきたすからです。高血圧が長く続きますと、一つは動脈壁の懐死をを起こし、最後は高血圧のプレッシャーにより壁が壊れて脳出血を起こすことがあります。もう一つは、高脂血症(総コレステロールや中性脂肪が血液中に多くなる病気)や糖尿病などにより血管壁に動脈硬化をきたしている人に、長い間高血圧が続きますと、動脈硬化がいっそう促進され、その結果、脳や心臓の動脈梗塞をおこすことがあります。
 高血圧症は、大部分は遺伝的素質による本能性高血圧症ですが、別の疾患から二次的に起こるものもあります。
 その場合は、原疾患を治療することになります。日本では、戦前や戦後のある時期までは脳出血が非常に多かったのですが、これは戦前のきびしい生活(貧困・人権無視・栄養不良など)の条件のもとで、高血圧に対する知識も不足し、対処もなされなかったためです。栄養のことで言いますと、特にタンパク質の摂取不足が脳血管壁を弱くし、日本人の食塩の取り過ぎが高血圧に影響したと思われます。
  戦後の豊かな食生活は逆に栄養過剰となり、生活様式が便利なために運動不足になり、糖尿病・高脂血症・肥満症が増えてきました。そして脳梗塞が増え脳出血は激減しました。この両者を含めて脳血管による死亡は日本では13万人と言われています。
 高血圧症と診断されましたら放置することなく、医者の管理を受けるべきです。
 検診では、白衣性高血圧といって、白衣を見ただけで大部分の人が血圧が高めにでます。そこで、日を変えて計りなおす必要があります。診断基準では、三回以上測ることをすすめています。そして、リラックスした状態で測って毎回基準値以上であれば高血圧症と見なします。
 ですから、高血圧症の人は、自覚症状がなくても定期的に血圧を測ることが大切です。しかし、頭痛がして イライラしたり、目眩(めまい)で不安があると、結果として血圧が高くなることもあります。
 高血圧症の治療は、単に血圧を下げることではなくて、合併症を防ぐことです。
 早期発見早期治療ですと合併症もほとんどなくて、降圧剤なしに、生活習慣の改善だけでやっていけることもあります。降圧剤は、一旦飲み始めますと一生飲み続けなければならないのではと心配される方もおられるようですが、必ずしもそうではありません。ケースによっては、ある期間、降圧剤をきちんと飲み、生活習慣をきちんとやっていくと、いつかは降圧剤を止めることが出来る場合もあります。(もちろん、降圧剤を止めてからも血圧の定期的な測定は必要です。この場合血圧計を手に入れて、血圧の自己測定を定期的に行うと、度々医者に行かなくてもすみます。
 最後に、高血圧症の生活上、気をつける点について、いくつか述べます。食事は、一日のカロリーの総量を摂り過ぎないこと、炭水化物・蛋白質・脂肪のバランスをとること、塩分は控えめに(一日10g以下)野菜・果物からカリゥムを多く摂ることです。運動は、適度な有酸素運動・たとえばウオーキングみたいな運動を習慣づけますと、血圧を下げる働きがあると言われています。これは糖尿病・高脂血症・肥満症に対して、動脈硬化の促進を抑え、梗塞を防ぐことにも有効ですし、また、このような運動はストレス解消にも役立ちます。
 喫煙は直接血圧を上げることはありませんが、タバコに含まれているニコチンは狭心症や心筋梗塞の危険因子です。
 アルコールは、それが体内に残っている間は血圧を下げていますが、アルコールが無くなると血圧は元にもどるか、または逆に上がります。特に寒い所では余計上がります。
 入浴も同じです。入浴中は血圧は低くなっていますが、湯冷めの状態では血圧はもとに戻るか上がります、これも寒い所では、上昇は大きいです。
 日常生活のなかで高血圧に一番影響があるのは精神的緊張あるいはストレスでしょう。毎日の個人的あるいは社会的生活のなかで、どのように社会対処できるかが鍵でしょう。

最初に戻る

作成者情報 Copyright (C) 2007 [葛飾生活と健康を守る会]
 All rights reserved.  最終更新日 :2007/06/27