【TMN終了宣言】

TM NETWORKからTMNに至った全てのプロジェクトを予定通り終了します。
今後、TMNあるいは、TM NETWORK名義の新作が発表されることはありません。
当然、コンサート及びイベント等々の活動を行う事もありえません。

これは1984年4月21日、TM NETWORKがデビューした時点から想定していたプログラムの実行に他なりません。
ビデオクリップやレーザーディスク等のAUDIO&VISUAL感覚に支えられた、
ニューメディア第一世代を意識した、本プロジェクトは今公演を以て全行程を完了します。
ユニット、終身雇用的なバンドではなく、独立した個性の連帯という形態のTM NETWORKは、デビューから斬新な存在でした。
その精神をTMNも継承し、小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登を中心としながらも、有機的な拡散を行ってきました。
また、ヴィジュアライズされたショーに於いても、ストーリー性を持つコンセプチュアルなステージに於いても、
賛否両論はあったにしても、それまでのコンサートとは一線を画すエンタテイメントを提供できたと自負しています。
そして、音楽的にも後続するアーティスト達にインパクトを与え、アイディアを供給し得たのも事実である、と認識しています。
彼等のヒット曲の中に自分達のオリジナリティーを見い出すことで、本プロジェクトの意義の大きさを客観的に位置づけることも出来ました。
従って、TM NETWORKからTMNへの10年間で日本の音楽シーンに、何らかの形で一石を投じられたものと考えます。
そして、本プロジェクトは当初の予定通り終了します。
10年間にわたり協力、応援、激励して頂いた、全ての方々に、心からの感謝を贈ります。

今後、小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登は、各々が独立した個性であることを前提に新しいプロジェクトへ移行します。
21世紀対応のエンタテイメントとカルチャーを提供し得る存在でありたい、と思います。
今後の活躍にご期待ください。

1994.4.21
小室哲哉、宇都宮隆、木根尚登




【TMN終了宣言を検証す!/藤井 徹貫 著】

遂に我らが崇拝のグループ「TMN」がその活動を終了した。
4月21日の朝刊 を見て少なからずショックを受けた人も多いと思うが、少々その終了宣言に疑問を感じた向きも多い。
まずTMNの原点は何かというと、すべてトライアングルで動いてきたことが挙げられる。
メンバーの3人、事務所・アーティスト・レコード会社というトライアングル。
何もかもが3つの要素を基に動いてきたプロジェクトであり、これを忘れないでいてほしい。
また、もうひとつの重大なトライアングルがある。
それはメンバーの3人とファンとTMNという化け物のような「ニューマ」である。
ニューマこそ今回の一連の謎を解くキーワードだ。
つまり雰囲気でありムードであり、誰もがイメージする虚像のようなもの。
もし今回の「終了」が本当に10年前から決まっていたとしたら、
今までの一連の彼らの動きはいったい何だったんだろう。
「TMネットワーク」が完了し、「プロジェクトTMN」の開始を宣言したのも束の間、今度は終了宣言だ。
あの時と違って今回は降ってわいたように混乱をきわめている。
去年「一途な恋」が発表された時、レコード会社も1994年3月にTMNの次のアルバムが発売されると言っていた。
ラジオではウツのコンサートが終わったら何かが動くと期待を持たせるような発言をしていた。
そして4月20日以降、元の雄姿が見られると誰もが思っていた。
このような話は誰かが一人で決められるものではない。
先に言ったとおり、全てのトライアングルが承諾して初めて発表されることになることばかりだ。
おそらくこの時点ですべての内部の人間の了解事項として進んでいたに違いない。
しかし、何かが起こり何かが狂ってしまったのだ。
アーティストを取り巻く契約関係も複雑を極める。
アーティストとレコード会社と所属事務所とのこれまたトライアングルで形成される契約だ。
録音契約・専属契約を始め、原盤契約・著作権契約・芸能契約など数々の契約で結ばれている。
前回の「TMネットワーク」から「TMN」に変わった時はこの契約関係がなんら壊れていないのにも関わらず、今回3人共事務所を離れ独立することに迄なったのは果たしてどういう理由だったのだろうかと、ここに最大の疑問が浮かぶ。
誰もがわかるようなミステイクを冒したのか、それともそこまで頭が回らなかったのか。
いや、そこにこそ今回の終了宣言のメッセージの根源が隠されているとみた。
今回のメッセージの要約は「TMN」という名前は消えても、3人でまたやるかもしれませんよということ。
でも考えてもみたまえ。そういいながら、バンド名を変えたり、休業宣言したりしてきたことは今に始まったことではない。
しかしなぜ今回に限って終了宣言と、まるで解散コンサートと間違えられてもよいかのごとく行なったのか釈然としない。
普通こういう形で終了することを世間では解散と呼ぶが、解散としないところに重大な真実があり、こういう形をとらなかったところに悲劇があるような気がしてならない。
みんなにすぐわかるような嘘をつく人達かどうか。
いや逆に言えばもっともっと上を考えている人達である。
そこで考えられる結論はひとつ。
つまりどこかでトライアングルの崩壊が起きたということである。
メンバー3人の間は依然強固な関係を保っている。
レコード会社との関係も良好である。 とすれば・・・。
プロジェクトが終了したからといって事務所までやめるケースは前代未聞。
しかもまるで櫛の歯が一本一本こぼれるように離れていったのは!?TMNというニューマはあまりにも大きくなりすぎた。 あまりにもビッグになりすぎた。10年という歳月が3人を変えるように、また周りの環境も変えていってしまった。
つまりそもそもニューマというものは3人の分身として存在していたが、
このニューマを利用してやろうという邪魔が出てきたことである。
最初は黙認していたものの、その利用されたニューマに今度は3人自身が振り回されるようになってしまった。
そのニューマが意味するところのTMNであり続けるには、あまりにも制約が多くなりすぎたということだ。
自分達のイメージであり分身であるはずのニューマが勝手に独り歩きするようになってしまったともいえる。
3人の揺れ動く心理状態は極限に達していた。
今年の初め頃はまだ輝く未来を持っていたと考えられる。
ところがこの2〜3ケ月に大きく状況が変化したようだ。
マスコミへのリリース予定、ラジオでの発言がそれらを如実に物語っている。
トライアングルの綻びはそれらをいとも簡単に打ち崩し、スーパースターを伝説に変えてしまった。
メンバーが続けたいと思う意思と、それを拒む何らかの力。
その凄まじい戦いが、見えない所で行なわれていたことは容易に想像がつく。
ニューマというもの、御主人様を裏切って勝手に行動を起こしたり、すぐ別の天使に訳もわからずついていってしまうおおらかさがある。
そこで出した結論がこのニューマを切り捨てるということだったのだ。
要するにニューマを斬るということは、いくつかのトライアングルを壊すということ。
もし仮にこのニューマというものがイコールTMNだとしたら、TMNプロジェクトを終了させればいいだけの話である。
3人に創作活動を続けたい意思があるなら新しいプロジェクトを作り、新しいニューマをまた作っていけばいいのである。
当然、その時はまた新たなファンとのトライアングルが構築される。
3人はどれだけ歳を取っても、どんな状況になろうとも根っからのクリエイター達だ。
創作活動をやめるなんてありえない。 そこで起こした行動が今回の一連の姿だ。
ニューマを利用する誰かに対し、「もうTMNとしての活動は終わりであり 『ニューマ』を利用することは出来ませんよ」
と発しながら、他の誰かには「新しいプロジェクトを期待していてください」と言っているような気がしてならない。
TMNというあまりにもビッグになりすぎた名前の周りにはいろいろな人の思惑が渦巻いていた。
自分達の意思とは違った方向へ動かそうとするベクトルに対し、自らが断を下す悲壮な決意がここにある。
逆に言えば新たなる創造にそれだけ自信があるということの証明かもしれない。
その深い意味を最後のメッセージとしてくれた3人に対し我々が出来ることといったら、静かにその日を待つだけである。
3人は散り際のスタイルもこれからの幾多のバンドに対し新しい道を提供してくれた。
それに答えるには、我々も新しいファンのスタイルを確立することかもしれない。

 



この文章は音楽ライターの藤井徹貫氏が権利放棄されておりオープンで公開していいものです。 他のネットワーク又は文章への転載も構いません。 その時は「藤井徹貫/著」を必ず入れて文面の一部変更や追加・カットは絶対にしないでください。もちろんこの文章はTMNメンバーの承諾を受けています。



『今後、TMNあるいは、TM NETWORK名義の新作が発表されることはありません。当然、コンサート及びイベント等々の活動を行う事もありえません』…と宣言していたのに、また復活してるじゃん☆と思ったりもしたけれど、終了した時の10年間の活動とは違う形で復活するということは3人が終了当時から言っていたことなので、FINAL当時そのままの懐古的復活でないだけ良しとしようと思いました。何やったって、結局ソロよりは3人そろった形態が一番好きなんだからしょーがないです。by nagi(*^-^*)