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「水に棲む」 あとがき

 

 今回はじめて募集コーナーを更新することができ、紅 草希さんに感謝している。だが、これの主人公は書いてるうちにだんだんイメージが変わっていき、モデルである紅さんとは違うんじゃないだろうかと思い始めた。
 紅さんの指定では、キャラは(要するにご本人)陽気な人物でなければならない。まずこれから外れている。
 だが、これには訳がある。
 紅さんはトップページでも触れたとおりオンライン作家として自作をご自身のホームページで発表されている。作品のタッチは、一言でいうと娯楽ファンタジーである。作家というものは少なからず自作に自分を投影する。したがって娯楽活劇の中で動き回るキャラというのはどのような形であれ、ご自身の分身としてその作品中に登場しているに違いない。
 それと同じ事を私がやっても面白くないのではないだろうか。少なくとも紅さんは違ったものが見たいはずだ。と、こう勝手に考えてしまった結果、話的にダークな物になってしまい、桜木美穂のがんばりもむなしく陽気さにいまいち欠けたキャラになってしまった。
 だが、フォローした部分もある。
 紅さんによると、彼女は”流行に乗りたがらない。コギャルなどを目の当たりにしては、「自分は絶対にならないぞ!」と意をかたくする”人物である。この点は十二分に美穂に投影したつもりである。キャラにだけではない。ストーリーのテーマ自体もこの信念に沿ったものだ。もちろんテーマ自体には単なる高校生の堕落だけではない、人間社会全体の堕落を盛り込んでいるのだが。
 余談だが、シナリオ学校時代に高校を舞台にしたシナリオのあらすじを書いて発表したことがある。その話は、生徒会長に就任したヒロインが、学校や無気力な生徒達と対立しながらも独自の学校自治をやり通そうとする闘争シュミレーションドラマだった。
 これは当時の教室生や作家の先生に大不評だった。まあ稚拙だったことは確かだが、その主な理由はメインキャラに今風の、いわゆるコギャルなどの要素が欠落していたからと、生徒が学校を切り盛りしようというアイディアが古臭かったからであった。
 つまり、例えば主人公をコギャルにして、無気力かつ犯罪の匂いのする退廃的な日々を描けば面白いという事だが、それには今もって疑問がある。
 女子高生=コギャル&援助交際なるイメージはマスコミが勝手に面白おかしく作り上げたものだからだ。
 もちろんそういった連中がいることは否定できない事実だが、そうでない人もたくさんいる。
 「日本の女子高生はみな売春婦」的な事を書いた某アメリカ系雑誌に抗議した高校生グループだってそうだし、つい先日埼玉で起こった生徒会と校長の争いにしたって、みなマスコミの書きたてるイメージが一部の人物達に偏っていることを証明している。
埼玉の件について某雑誌は「今時...」なんて事を書いていたが、その「今時」という観念自体マスコミが作り上げた幻想にすぎな...

 話が反れてしまった。ま、そのストーリーの主人公は、まさに紅さんのキャラにはまりそうなので、初めはここに載せようかと思ったが、何せ400字詰め100枚の長編であるため、断念した。それはまたいずれという事である。
 そして結局この作品を新たに書き下ろした。
 個人的には、稚拙で強引な部分が多々あるが(特に中盤の栄子の堕落から終盤の世界終末まで)、結構気に入っている。
 こういった幻想的なストーリーは、高校時代の自分が得意としていたものだが、卒業以来ほとんどやっていない。久しぶりだったのである。だから「ファイナル・ジャーニー」とは違う意味で懐かしい香りのする作品になった。
 ちなみに一番苦労したのは扉の絵である(一回データが壊れて、改めて描き直した)。

 この作品が紅さんに、そして読者の皆さまにどう映るか、怖くもあり、また楽しみでもある。

 


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