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 このプロット「ミノタウロスの末裔」は、某ゲーム会社の書類選考に通過した、アクションアドベンチャー企画で、ドラマ性、アクション性で「バイオ」につぐゲームを作ろう、と当時(5年前)燃えて作ったプロットですが、ウチの会社ではケンモホロロの扱いを受けてしまいました(笑)。
 まず、テーマ性がないということ、いくつもの「なぜ」があること、ストーリー創りの基本がなってないこと、話のネタがやばいこと、などいろいろ挙げられましたが、全部誤解なんだよね〜。
 今回は企画書として提出したわけじゃなかったから、本当は社長なり誰なりと話し合いがしたかったんだよね〜。まさか一蹴されるとは思ってなかったから。馬脚をあらわしだしたのかな?

 ま、なにはともあれボツはボツ、ということで今回めでたくこのコーナーに出品する運びとなったわけで、ま「エイリアン2」みたいなのが好きな人はそれなりに楽しんでいただけるか、と。
 師匠の柏原寛司さんも「エイリアン2みたいで面白いんじゃねーの?」と当時言ってくれたプロットなので。

 人それぞれってことです、この業界は。

 

 

ミノタウロスの末裔

 2001年クレタ島。
 ギリシア遺跡の一つであるクノッソス宮殿では「ラビリンス オブ ミノタウロス」と称する観光用の地下迷宮が新たに建設され、公開されていた。公開当初は大勢の観光客で賑わっていたが、数ヶ月の間に迷宮内や宮殿観光ルート内で行方不明になる人間が続出し始めた。事態を重く見た観光局が捜索隊を派遣し、行方不明者の捜索にあたると、観光用迷宮の最下層部で横穴が発見された。横穴の内部は明らかに人の手が入っており、「本物の地下迷宮か!?」と世間は騒然となる。
 米・サウスカロライナ州立大学の考古学教授であるクリストファー・ウォルター教授(58)は助手のミッシェル・ウェリントン(25)らとともに迷宮の調査へと向かう。
 夜間にクレタ島に着いた一団はまず宮殿の地下一階にある管理施設に赴くが、そこでウォルターと管理責任者のジュリアス・ヤング(36)とで口論となる。ジュリアスは立場上、ウォルター達が確認の取れていない迷宮の下層部分へ行く事に反対するが、ウォルターは「最下層まで調査しなければ、自分達の来た意味がない!」と息巻いている。更に人種に偏見のあるウォルターは、アジア系であるジュリアスに差別的な言葉で罵倒する。ミッシェルらがその場を押さえ、事無きを得るが、気まずいムードが彼らを支配する。結局、宮殿の警備隊数名が同行する事になり、ウォルター達はミッシェルを残し、観光用の迷宮から地下迷宮へと足を踏み入れる。
 ウォルター達が迷宮に入ってから間もなくして、彼らから管理室のジュリアスとミッシェルに無線が入る。そこからは悲鳴と怒号、そして断続的な発砲音が聞こえ、やがて無線は切れてしまう。
 異常事態だと察したジュリアスは警察のレスキュー隊を呼ぶ。到着したレスキュー隊とともにウォルター達の捜索に行くというミッシェルに、ジュリアスは反対するが、結局押し切られてしまう。
 観光用迷宮に到着したミッシェルとレスキュー隊は二手に分かれることにする。ミッシェルはマルス・マクラハン隊長(45)及び隊員数名と、もう一方は副隊長のミル・アンドレアス(28)と隊員数名とそれぞれに分かれ、迷宮内下層部へと入っていく。
 管理室でマクラハンとミルから送られてくるライブ映像をモニタでチェックするジュリアス。地下迷宮は観光用の迷宮とは違って派手な禍禍しさはなく、むしろ簡素で厳かな感じのするものだった。そこに侵入者を知らせる警報が鳴る。場所は観光用迷宮の地上入口。ジュリアスは無線を持ち、ミッシェルらに管理室を離れる事を告げ、警備隊長のダグラスと観光用迷宮へと向かう。
 慎重に観光用迷宮を探索したジュリアス達は、下層へと下る階段付近で盗掘集団と遭遇、銃撃戦となる。ダグラスは足を撃たれ重傷を負い、ジュリアスがひるんだ隙に盗掘集団は下層部へと逃げてしまう。彼らを追うようにダグラスに言われたジュリアスは、盗掘集団を追って下層に下りていく。
 ミッシェルとマクラハン達が十字路に差し掛かったところで、突如もう一方のレスキュー隊から無線が入り、隊員の絶叫が聞こえてくる。「どうした!何があった!?」と無線に怒鳴るマクラハンだが、無線からは銃撃音と悲鳴が聞こえてきたかと思うと、プツッと切れてしまう。不安がるミッシェル達。そこに辺り一面からざわめきのような音が聞こえてくる。レスキュー隊は一斉に銃を構え、辺りを見回すが、暗くてよく見えない。突然隊員達の脇の闇が動いたかと思うと、次の瞬間隊員達は血まみれになって倒れる。悲鳴を上げ銃を乱射しながら逃げ出すマクラハン。ミッシェルも慌ててマクラハンとは別方向に逃げ出す。
 その頃、もう一方の隊では、唯一生き残ったミルが通路という通路からゾロゾロと出てくる怪物−ミノタウロス達に銃を乱射しながら逃げていた。何とかミノタウロス達を振りきった彼は、ジュリアスに無線を入れる。
 狗掘集団を追って観光用迷宮最下層まで来たジュリアスは、ミルからの無線を聞く。何か異常事態が起こっている事は把握しているものの、「怪物が襲ってくる」という言葉に今一つピンと来ない。だが、その時観光用迷宮の奥から何かの息遣いと唸り声、そして盗掘集団のものと思われる悲鳴が聞こえてくる。「逃げるんだ!」というミルの叫びに従い、来た道を全速力で駆け戻り始めるジュリアス。
 観光用迷宮入口で待っていたダグラスに事情を話し、ジュリアスは入口のドアを溶接して迷宮を封鎖すると、急いで管理室へと戻る。
 管理室に着いたジュリアスは、マクラハン隊のライブ映像が受信されていない事に気づき、無線でマクラハン達を呼び出すが、応答がない。ミッシェルに携帯電話の番号を聞いていた事を思い出したジュリアスは、ミッシェルに電話をかけてみる。
 泣きながら通路をさまよい歩いていたミッシェルは、ジュリアスからの電話に飛びつく。が、彼から観光用迷宮を封鎖した事、軍に救援を依頼する事を聞かされ、絶望する。ミッシェルが持っている武器といえばサバイバルナイフ一本。装備も数少ない救急用具と懐中電灯にエネルギーバー五個のみ。後退しようにも背後からはミノタウロスが追ってきているに違いない。気を落とすミッシェルにジュリアスは「ミルと合流できるようにナビゲートする」と言い、取りあえず迷宮を先に進むように促す。
 ミッシェルに続いてジュリアスは無線でミルに彼女に言ったのと同じ事を告げ、ミルの位置をスクリーン上のマップに映し出す。ミルが装備しているビデオシステムには彼の居場所を告げる発信機と動体レーダーがついているため、ナビと敵襲の警告が出来る。また、彼とマクラハン隊の死んだ隊員が辿った道はオートマッピングされるようになっている。一方のミッシェルは、携帯電話の電波からある程度の位置は確認できるものの、正確な居場所がつかみにくい。取りあえずジュリアスは微弱な電波の移動が確認できる場所にミルを誘導する。
 ジュリアスの誘導通りに歩いていたミルは、トラップ@にはまってしまう。
 ジュリアスは仕方なくミッシェルに電話をし、今度はミッシェルをミルの方へと誘導し始める。
 ミッシェルは途中で妙な小部塋を発見し、そこの仕掛けの謎を解いてヒント@を手に入れ、ジュリアスに報告する。
 ミッシェルからの報告を受けたジュリアスは、ヒント@をミルに教える。
 ミルはヒント@のおかげでトラップ@を切りぬけ、ミッシェルの方へと進む。
 管理室に軍の特殊部隊が到着する。特殊部隊の隊長はマップを見、地下迷宮の一部が宮殿地下二階の倉庫エリアにほど近い事をつきとめ、そこから突入する事にする。
 数々のトラップや仕掛けを乗り越え、また、ミノタウロス達の襲撃を逃れたミッシェルとミルは、巨大な空洞の中の居住区らしきところで再開する。居住区からは無数のミノタウロスが出現し、驚愕する二人。ミルが銃を向けると、何故かそのミノタウロス達は恐れおののき、物陰に隠れてしまう。訝しがる二人にオスとメスらしき二頭のミノタウロスが古代ギリシア語で話しかけてくる。そのミノタウロスのカップルが言うには、彼らはミノタウロスの中では穏健派といわれる草食種で、人間を攻撃する意思はないという。人間を襲ったりさらったりしているのは肉食種のミノタウロス族で、草食派の彼らとは対立関係にあるのだった。考古学者の端くれとして彼らに興味を持ったミッシェルは、彼らミノタウロスにまつわる伝説について聞き始める。
 ミノタウロスはミノス王朝時?にミノス王の后と神牛との間に生まれたとされる伝説の怪物で、あまりの凶暴さゆえ地下迷宮に閉じ込められ、ミノス王から生贄を捧げられては屠っていたというのが伝説だが、本当のミノタウロスは怪物などではなく、元々は人間だった。ミノスの后が生んだ奇形児がミノタウロス伝説の始まりだったのである。醜悪なその風貌を忌み嫌った后はその子を地下迷宮に幽閉した。その後、伝染病の流行やら合成薬品等の影響で急に奇形児が増えたため、宮殿は彼らを次々と迷宮に幽閉し、迷宮もろとも地中に埋める事で彼らの存在をこの世から消し去ったのであった。
 今ミッシェルらの目の前にいるミノタウロス達は、それらの末裔だったのである。そして彼らは凶暴なミノタウロスのイメージとはほど遠く、容貌こそややグロテスクではあるが、知的な感さえある生き物である。肉食種と対立している彼らは、この数ヶ月間に地上で拉致された人間の内の何人かを保護していた。彼らに対面しているところに、突然マクラハンから無線が入る。「迷宮最下層部で怪物を襲撃し、ウォルターを救出した」と言うマクラハン。ミルはミッシェルを残し、マクラハンの元へと向かう。
 その頃、軍・特殊部隊は宮殿倉庫エリアの壁に穴を開けていた。それはやがて貫通し、倉庫エリアと迷宮がつながる。特殊部隊は次々と迷宮内に突入していく。
 管理室でジュリアスは、ミルに無線で特殊部隊が救出に向かった事を告げる。ミルのカメラにウォルターとマクラハンが映し出される。ミルは穏健派ミノタウロスの事と、ミッシェルが彼らの居住区に待機していて自分らもそこに向かう、と告げる。マップで場所を確認したジュリアスは、特殊部隊長にそこに向かうよう要請する。
 穏健派ミノタウロスの居住区を、突如肉食種ミノタウロスの大群が襲撃する。必死に抵抗する草食種達だったが、ミッシェルがさらわれてしまう。
 突然の侵入警報に驚き、モニターを見るジュリアス。倉庫エリアの壁の穴からミノタウロス達がゾロゾロと侵入してきている。バックアップのために残された特殊部隊員数名とダグラスら警備員らで現場に急行しミノタウロスと戦うが、圧倒的なミノタウロスの数に後退を余儀なくされ、管理エリアまで追いこまれたジュリアスらは、管理エリアと倉庫エリアの間にバリケードを築き、立て篭もる。
 居住区についたミル達は、その惨状に愕然とする。生き残った僅かな草食ミノタウロス達から事情を聞こうとするミルをウォルターが止める。彼はミノタウロス達を睨み、言う。「こんなヤツラを信じるな。こいつらはみな下等な獣共だ。腹が減って共食いしたにきまってる。そしてミッシェルも…」マクラハンが草食ミノタウロス達に銃を向ける。ミッシェルにミノタウロスの事情を話したオスとメスが出てきて説明しようとする。そのメスを殴りつけるウォルター。「寄るな!けだもの」怒り狂うウォルターをミルがいさめようとした時、抗議していた草食ミノタウロスの一頭をマクラハンがついに射殺してしまう。怒ったメスミノタウロスがマクラハンの銃に飛びつき、一斉に草食ミノタウロスがマクラハン達を取り囲む。そこに機関銃の乱射音が響き、草食ミノタウロスが次々と倒れる。驚いたオスとメスミノタウロスが銃撃の方を見ると特殊部隊がすばやく左右に展開しながら迫ってきていた。逃げ出す生き残りの草食ミノタウロス達。だが、マクラハンに飛びついていたメスミノタウロスは逃げ遅れ、機関銃の餌食となる。オスミノタウロスは泣き叫ぶが、激しい銃撃にメスの亡骸に駆け寄る事も出来ず、逃げ去る。ミルはマクラハン達と特殊部隊に激しく抗議する。だが、「ヤツラはケダモノなんだ。」とウォルターは全くとりあわない。そして更にミルまでをも見下す。「貴様も所詮ヤツラと大差ない。このクロンボが」ミルは怒り心頭に達し、ウォルターに飛びかかろうとするが、マクラハンに銃を向けられ、ひるむ。一触即発の危機を特殊部隊隊長がいさめる。仲間割れしていては脱出できなくなる、というのだ。ウォルターとマクラハンは特殊部隊とともに脱出する事にするが、ミルはミッシェルを助けに行くと言う。「無茶だ」という特殊部隊隊長の言葉を背に、ミルは居住区を更に迷宮の奥へと進んでいく。
 肉食ミノタウロスに管理エリアに侵入され、銃弾も底を尽き、ジュリアス達は管理室に立て篭もっていた。管理室のドアは今にもミノタウロス達に破られそうである。ジュリアスは、最後の手段として管理室から通風孔を通って一階への階段の所まで行き、その途中に爆弾を幾つも仕掛け、管理エリアを爆破する事を決意する。
 倉庫エリアへと通じる穴の手前まで来たウォルター、マクラハンと特殊部隊一行は、倉庫エリアに出た途端、肉食ミノタウロス達の餌食となる。
肉食種のほとんどが出払い、手薄となった肉食種の部落。ミッシェルは肉食ミノタウロスのボスの目の前にいた。恐怖に震えるミッシェル。今まさにボスがミッシェルを屠らんとした時、ボスの首が飛ぶ。崩れ落ちたボスの体の背後には草食のオスミノタウロスが立っていた。ミッシェルが笑顔で駆け寄ろうとするが、その彼女にも刃を向ける。自分達を虐殺した人間を憎んでいるのだ。昔、自分達の祖先が人間に受けたのと同じ仕打ちを、自分達も受けたのだ。人間の偏見、身勝手、そして残虐性に今オスミノタウロスは極限の怒りを感じている。その相手は目の前にいるミッシェルである。そこにミルが駆けつける。そして死闘の末、オスミノタウロスはミッシェルとミルによって倒される。そこにジュリアスから無線が入る。
 通風孔を走りながらジュリアスが、管理エリアを爆破する事を告げる。背後には肉食ミノタウロスの追手。特殊部隊員が、警備員が、そしてダグラスがミノタウロス達の餌食となっていく。
 管理エリアからも観光用迷宮からも外へ脱出できなくなったミッシェルとミル。二人に倒されたオスミノタウロスが死ぬ間際に二人に助言する。草食ミノタウロスの居住区の最上階には宮殿一階へつながる井戸があるというのだ。オスミノタウロスに感謝の意を伝え、二人は迷宮を居住区へと向かう。
 管理エリアから一階へと続く階段の下に出たジュリアスは肉食ミノタウロス攻撃隊のボスに出くわし、戦う。これを倒した後、一階へ脱出する。そして爆破する。
 轟音とともに爆発が起き、管理エリアが吹き飛ぶ。
 爆発の影響で崩れ始めた迷宮を居住区まで走り、最上階から脱出するミッシェルとミル。
 宮殿の外に出たミッシェルとミルは、そこでジュリアスと再開し、抱き合って喜ぶ。朝日が三人を白く染めて…

END

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