コメント

 今回のボツプロットも、ヴォイスドラマ用に書いた企画書のもの。
 自分は時代劇が好きで、是非とも剣客ものをやりたかったので、こういう話を考えたわけ。
 とりあえず、ヴォイスドラマ自体が宙に浮いちゃってるので、この企画もとりあえずボツってことに。
 企画って、ほんとにどうなるかわからないけど、一番手がかかる作業なんだよね。ちなみに、お世話になっている脚本家の先生には、「水戸黄門の亜流で面白くない」とバッサリ斬られました。
 残念!

 

 

萌えよ剣!

 紀州藩に不穏な動き。
 だが、武士を捨て浪人となった氷室一乃慎(25)にはどうでもいいことだった。やることはただひとつ、脱藩して江戸に行き、用心棒稼業でもしながらスリリングな日々を送る事だ。
 紀州藩家老、斉藤安興(40)の野望は、幕府転覆である。幕藩体制を壊し、新たな秩序=朝廷と組んだ帝政を復帰させようともくろんでいた。
 その野望の影響を受けている集団がいた。根来衆忍の里の面々である。
 斉藤の命には逆らえない。根来忍者は今や陰謀の中核と化していた。
 それに嫌気をさしていたのが下忍のくノ一、鏡花(18)である。鏡花は、斉藤の幕府転覆計画の書かれた巻物を奪取し、根来の里を去った。抜忍をしたのである。
 氷室の脱藩と、鏡花の抜忍に激怒する斉藤。すぐに刺客を送り込むよう命じる。紀州藩剣客や根来忍者達が氷室と鏡花の後を追って秘密裏に藩を出る。
 江戸。
 藩を出てきた氷室と鏡花は、たまたま居合わせた団子屋で喧嘩に出くわす。殺気だった浪人たちをいさめようとする氷室。鏡花は、なるべく関わらないよう無視している。
 だが、浪人たちは治まらず、刀を抜く。しかたなく氷室も刀を抜いた。
 そして、団子屋の決闘が始まる。はじめは団子を食べながら巻き込まれないようにしていた鏡花だったが、そういうわけにもいかなくなってくる。鏡花は団子の串で次々と浪人たちを倒していく。その腕に氷室が感嘆する。
 だが、町方がやってきたので、団子屋の看板娘、おはな(17)の気転で二人そろってその場から逃げさる。
 隅田川ほとりで語らう二人。同じ紀州藩出身で、しかも同じ脱藩ということで意気投合する。鏡花は、斉藤の陰謀を氷室に語って聞かせる。氷室は、その話にあらためて憤りを感じる。
 紀州藩江戸屋敷駐屯の根来忍者は、二人の姿を発見し、二人が合流したことを江戸家老の堀田利信(35)に伝える。堀田は脅威を感じ、即刻二人の抹殺を命じる。
 公儀も紀州藩の陰謀にうすうす気づき始めていた。公儀隠密の何人かは紀州藩に潜入し、殺されていた。だが、その彼らの活躍により、江戸に紀州藩のねずみが潜入している事を知る。公儀隠密の若頭、織田紫園(30)は、氷室と鏡花の存在に気づき、接触を試みる。
 織田に料亭に呼び出された氷室と鏡花は、途中紀州藩刺客の襲撃を受ける。腕は互角だが、数で圧倒されていた。苦戦を強いられる二人。そこに黒装束の忍が複数現れ、紀州の刺客を次々と倒していく。戦闘を終えた忍は、「頭がお待ちかねです」と言い、姿を消す。
 料亭で織田と会う氷室と鏡花。先ほどの忍は織田の配下の公儀隠密だった。鏡花は、織田に巻物を渡す。そこに書かれているのは決起の人数や日時だった。まだ日が少しある。織田は、即座に江戸城に戻り、証拠固めをすると言うと、その場を後にした。
 氷室と鏡花は巻き込まれたくはない。江戸を離れるかどうか悩む二人。
 その帰り道、二人は根来の忍軍団に待ち伏せされる。そこには上忍の道元(40)がいた。道元は、鏡花に根来の里に帰れば、命は助けると言う。氷室はその言葉に嘘を感じ取る。もちろん鏡花も信じない。忍の掟を知っているからだ。
 「ならこの場で死んでもらう」
 道元達は刀を抜いて襲いかかってくる。やはりてだれの根来衆だけあって、苦戦する二人。そこに八丁堀同心達が駆けつける。たまたまその場を見かけたおはなの通報によるものだ。道元達はたちまち姿を消す。おはなに感謝する二人。
 3日後の早朝。
 誰もいない江戸の町に突如騎馬隊が攻めてくる。紀州藩江戸屋敷の手勢である。
 江戸城下町まで侵攻してきた紀州勢は、人っ子ひとりいないことを不審に思う。斉藤が江戸入りした直後、背後から幕府軍が不意打ちをかける。
 乱戦となる江戸。
 その中で、氷室と鏡花は、おはなや江戸の町人達を助けながら紀州勢と戦う。
 鏡花の前に、道元が現れる。
 上忍と下忍。実力には差がある。
 鏡花に一瞬の隙ができたその時、道元の刃が鏡花に迫る。
 が、刃先は鏡花の前に立ちふさがったおはなの胸に突き刺さる。とっさに身を挺して鏡花をかばったのである。道元がひるんだ隙を見逃さず、鏡花は道元の首をはねる。
 鏡花の腕の中で「楽しかった」という言葉を残し、おはなは他界する。
 一方そのころ、氷室は斉藤のいる紀州本陣へと殴りこんでいた。そこで織田とともに紀州勢と闘う。
 「このうつけが!」
 斉藤が自ら剣を取り、氷室に斬りかかる。氷室と斉藤の決闘が始まる。
 拮抗した戦いを繰り広げる二人。だが、氷室は自分の腕と引き換えに斉藤の首をはねる。
 かくして紀州藩家老の謀反は露と消えた。
 幕府から紀州藩に厳重な裁きが申し渡される。堀田以下江戸屋敷の上役はすべて切腹。紀州公も次期将軍の候補からはずされた。
 江戸城と城下ではお祭り騒ぎである。
 城内で宴会に興じる片腕を怪我した氷室、鏡花、そして織田たち。
 すべてが終わったのだ。
 夜空に花火があがって…

Top